- 投稿日:2024/08/18
- 更新日:2025/12/13
【命をつなぐ骨髄移植とは】
骨髄ドナーの必要性
日本では毎年、数万人が白血病などの重い血液の病気(血液のがん)と診断され、その治療には骨髄移植(造血幹細胞移植)が必要となる場合があります。抗がん剤などによる治療法が進歩してきてはいるものの、それでも約2,000人の患者が日々、骨髄バンクドナーからの移植を待ち望んでいるのが現状です。
しかし、移植には患者とドナーの白血球の型(HLA型)が一致する必要があり、その一致の確率は数百〜数万分の1です。そのため、実際に移植を受けられるのは移植を待つ患者さんの半数程度に留まっています。
(一般的に知られている「血液型」は赤血球の型で、A・B・AB・O型の4種類ですが、白血球の型である「HLA型」は数万種類も存在します。)
また近年、ドナー登録者の高齢化が進んでおり、年齢要件を満たせずに登録解除となる人が増えています。このため、特に若い世代の登録が求められている状況です。
このような方にオススメ
私見ではありますが、以下の方に骨髄バンクへの登録をお勧めします。
・大きな病歴がなく、健康には自信がある方
・普段から献血などを行っており、骨髄ドナーや移植に興味がある方
・経済的に余裕がなく寄付金は出せないが、何か他の人の役に立つ事がしたいと考えている方
【ドナーになるために必要な条件って?】
概ね以下の要件を満たす方が登録できます。
・骨髄・末梢血幹細胞の提供の内容を十分に理解している方
・年齢が18歳以上、54歳以下で健康状態が良好な方
(提供できる年齢は20歳以上、55歳以下であるものの、登録は上記の年齢で可能)
・体重が男性45kg以上/女性40kg以上の方
以下に該当する方は、原則として登録できません...。
・病気やけがなどの治療中、または処方薬使用中の方
・以下の病歴がある方(治癒している場合を含む)
〔悪性腫瘍(がん)、白血病、再生不良性貧血などの血液の病気、膠原病(慢性関節リウマチなど)、自己免疫疾患、先天性心疾患、心筋梗塞、狭心症などの循環器疾患、脳卒中、C型肝炎など一部のウイルス肝炎、エイズ、マラリアなどの感染症〕
・血圧が高い方(最高血圧151mmHg以上/最低血圧101mmHg以上)または低い方(最高血圧90mmHg未満)
・輸血を受けたことがある方(自己血輸血を除く)
・貧血の方
・食事や薬等により呼吸困難などの症状が出たことがある方や、高度の発疹の既往がある方
・過度の肥満の方(体重kg÷身長m÷身長mが30以上の方)
・妊娠中および出産後1年未満の方、授乳中の方
【ドナー登録の手続き】
ドナー登録ができる場所や、登録の流れについて説明します。
・どこで登録できるの?
全国の献血ルームや献血バス、一部の保健所で登録手続きすることができます。
また、最近では全国各地でドナー登録会も開催されているので、そちらも利用可能です。普段から献血に行かれる方は、そのついでに登録することもできます。
・登録の流れ
①申込書に記入し、上記の登録場所へ提出します(申込書は窓口にも用意されています)。
② 腕の血管から2㎖採血し、検査を実施(検査費用はかかりません)。
混雑状況によりますが、窓口での所要時間は15分程度です。
③後日、日本赤十字社から「登録確認書」が送付され、登録完了!
(無事登録が完了すると、「ドナーカード」が送られてきます。)
【ドナー候補者に選ばれたら?】
ドナーに登録したとしても、必ずしも提供ドナーに選ばれるわけではありません。登録してすぐに適合通知が来る人もいれば、何十年もの間、一度も通知が来ない人もいます。
以下ではドナー候補者として選ばれた場合の流れを説明します。
1.適合のお知らせ
患者さんとHLA型が適合すると、骨髄バンクからSMS(携帯電話へのショートメッセージ)および郵送で通知が届きます。
通知=提供と決まったわけではありません。ドナー登録していたけれど「いざ適合してみるとやっぱり提供する気になれない…。」という人は、この時点で断ることもできます。
その時点での提供の意思や家族の同意が得られそうか、日程の都合や健康状態などを確認し、回答しましょう。回答後、調整役となる担当コーディネーターから連絡があります。
2.確認検査(2時間程度)
コーディネーターから説明を受けるとともに、健康状態を確認するために指定された病院で医師の問診や血液検査を受けます。ここで異常が見つかるとドナー候補から外されることになるため、体調管理は万全にしておきましょう。
なお、提供方法には以下の2種類があり、どちらか一方だけに同意することも可能です。
A.骨髄移植
全身麻酔下でドナーの腸骨(骨盤)に針を刺し、骨髄液を採取する方法
手術の所要時間は2~3時間で、通常2泊~3泊程度の入院が必要です。
B.末梢血幹細胞移植
ドナーに白血球を増やす薬を数日間注射し、血液中に増えた造血幹細胞を腕から採取する方法
全身麻酔は行わず、成分献血のように機械を用いて採取します。所要時間は3~6時間で、通常4泊~6泊の入院が必要です。
ちなみに筆者が過去に経験したのは前者の「骨髄移植」です。
「骨髄移植」と聞くと、神経が通っている背骨(脊髄)から採取するイメージを持たれる方もいるようで、「麻痺などの危険性があるのでは…」と不安を抱かれる方もいらっしゃいます。しかし、骨髄の採取部位は骨盤の骨であり、神経は関係ありません。
とはいえ、ごく僅かではありますが、ドナー側にも採取手術による健康被害のリスクがあることは、コーディネーターや担当医から確認検査の際に丁寧に説明されました。
3.最終同意面談(2時間程度)
提供ドナーに選ばれると、自身と家族、弁護士などの第三者が立ち会いのもとで、最終的な提供意思の確認が行われます。ドナー自身の同意だけでなく、家族の理解と同意も求められます。最終同意後、患者側は移植に向けた準備を進めるため、基本的にこれ以降は同意を撤回することができなくなります。
4.術前検診(2~3時間程度)
病院で移植に向けた各種検診を受けます。
5.自己血採取(1~2回程度通院)※骨髄移植の場合のみ
骨髄移植の場合、最大で1,200㎖の骨髄液を抜き取ることになるため、事前に自分の血液を抜いて保管しておきます。この血液は移植手術の時に再びドナーの体内に輸血され、術後の貧血を防ぐために使用されます。
6.入院および移植処置
処置の前日に、指定された病院に入院し、翌日に前述のいずれかの移植処置を受けます。処置終了後は数日間、経過観察のため病院に滞在し、その後退院します。
※手術後に受け取った、患者さん側の病院からのお手紙
7.退院および経過観察
退院後も、担当コーディネーターから電話で健康状態の確認があります。一定期間経過後に医師の診断を受け、異常がなければ移植の工程は終了となります。
【ドナーが受けられるサポートってどんなもの?】
ここでは、提供ドナーが受けられる支援制度や助成金について紹介します。
1.交通費および支度金
面談、検査、通院に伴う交通費は全額実費で支給されます。また、採取施設に入院する際には、日用品などの購入のための支度金として5,000円が現金で支払われます。
2.ドナー休暇制度
勤務先に「ドナー休暇制度」などがある場合、それを活用して通院や入院のために有給休暇を使わずに特別休暇などを取得できる場合があります。気になる方は、一度お勤め先に同様の制度があるか確認してみてください。
3.自治体からの助成金(最大14万円程度)
お勤め先に上記のような休暇制度がない場合や、個人事業主および自営業の方の場合、お住まいの自治体に申請することで助成金が支給されます。お住まいの市町村により異なりますが、多くの自治体では、提供のために要した日数×2万円、最大7日間分、計14万円の助成金を得ることができるようです。通常、面談や検査、入院を含めて少なくとも8日以上が必要ですので、このような自治体ではほとんどの場合、満額が支給されるでしょう。ちなみに助成金は非課税です。
参考までに、大阪府高槻市の助成制度を例に挙げておきます。
4.民間保険の保険金
骨髄ドナーとしての入院費用などは、医療保険では給付対象とならないことが多いですが、一部の民間保険商品ではドナーに対する給付が行われています。リベ大では必要のない民間保険の加入は勧めていませんが、もし既に該当の保険に加入している場合は、申請することで保険金が支払われることがあります。保険金の請求には診断書が必要となるため、提供後に受け取れるように担当コーディネーターと事前に調整しておくと良いでしょう。
【患者さんからの「ありがとう」】
プライバシー保護の観点から、文中に個人が特定される氏名、住所、生年月日などを書くことはできませんが、患者さんがドナーに感謝の気持ちを伝えるため、採取後に骨髄バンクを介して手紙のやり取りができる制度があります。回数は採取後2年以内にお互いに2回までです。
手紙の文面や手紙自体の写真をSNS等に掲載することは禁止されているため、詳細はお伝えできませんが、筆者が受け取った手紙には「見ず知らずの私を助けてくれてありがとう。この先どうなるかは分からないが、せっかくいただいた命なので大切に使いたい。」といった内容が綴られていました。
また、それとは別に厚生労働大臣より感謝状が贈られてきます。
【ドナー登録/提供のメリット】
大前提として、ドナー制度は善意によって成り立っており、見返りを求めるべきものではありません。しかし、どのような理由であれ骨髄ドナー登録者が増えることは社会にとって望ましいことだと思います。そこで、ドナー側にどのようなメリットがあるのか、私見を交えながら、あえて挙げさせていただきます。
・助成金や保険金等を得ることができる
前述のとおり、提供ドナーに選ばれた場合、十数万円規模の助成金を受け取れる場合があります。近年では助成金等の制度を拡充している自治体も増えており、その傾向は今後も続くと言われています。
前述の1日2万円という助成金が高く感じるか、安く感じるかは人それぞれですが、ドナー側の経済的負担を減らし、1人でも多くの患者さんにドナーが見つかるようにという社会全体の意向が反映されてきているようです。
・自己肯定感が上がる
骨髄バンクにドナー登録することは、他者の命を救う直接的な行動であり、その行為は自身の自己肯定感を大きく高めるきっかけになります。善意に基づく社会貢献を実感することで、自分の存在が他者にとってどれだけ価値があるかを感じられると思います。
実際に提供ドナーとなった場合、提供を通じて多くの人々から感謝の言葉をかけられたり、患者さんとの命のつながりを感じることで、自分自身に対する尊敬の念を実感できるはずです。ドナー登録は、単なる善意の行動にとどまらず、自分自身の成長や自己理解を深める貴重な機会となり、より前向きな人生を送るための原動力となってくれるでしょう。
・健康管理への意識が高まる!
リベ大でも謳われていることではありますが、健康は人生の土台となる重要な資産です。ドナー登録をすることで、個人のためだけでなく、公のためにも健康資産を高める価値は大きいと感じることができるでしょう。少なくとも、健康管理のモチベーションは人並み以上に高められるはずです。
筆者自身、かつては健康管理を自分だけのためのものと考えていましたが、自分が健康であることが誰か他の人の役に立つこともあるということを、骨髄移植を通じて学ぶことができました。
私見が混ざり恐縮ですが、皆さん自身の健康は資産であり、この資産もまた骨髄提供や献血などを通じて他者にGiveできるということを、多くの方に伝えたいと思います。
【終わりに】
ドナー登録をしていると、一生のうち約4割の人に適合通知が来るそうですが、実際に提供まで至る人はそのうちの5%~7.5%であると、資料に記載されていました。提供できなかった理由で最も多いのは「仕事の都合」だそうで、提供したくても仕事との折り合いがつかない方が多いということが大きな障壁となっているようです。
骨髄移植しか残された治療法がなく、骨髄バンクでもドナーが見つからず、時間だけがむなしく過ぎていく…。患者さんとそのご家族にとって、これほど辛いことはないと思います。
筆者の場合、たまたま都合がついて通院および入院ができましたが、環境が異なれば、適合しても提供できなかったかもしれませんし、今後、企業の休暇制度や自治体の助成制度の導入がさらに広まることを願っています。
筆者自身は、患者さんの治療に貢献できたことはもちろんですが、個人的にも非常に興味深い経験となったので、純粋に提供できて良かったと感じています。
もし骨髄提供やドナーに興味のある方がいれば、献血ルームなどでぜひ登録してみてください。
知らず知らずのうちに、あなた自身が誰かを救う命綱になっているかもしれません。
この記事が少しでも、病気で困っている方々やそのご家族の役に立てば幸いです。
出典
・日本骨髄バンク(https://www.jmdp.or.jp/)
・造血幹細胞移植情報サービス(https://www.bs.jrc.or.jp/bmdc/index.html)
・政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201309/6.html)
※他にも骨髄バンク・移植等に関して「ココが知りたい!」などありましたら、随時加筆修正いたしますので、ぜひレビュー等お願いします!