- 投稿日:2024/11/05
- 更新日:2025/10/02

はじめに
近年、インデックス投資の人気が高まっており、特にeMAXIS Slimシリーズの米国株式(S&P500)や全世界株式(オール・カントリー)ファンドが注目を集めています。
これらのファンドの運用実績を参考に、資産がどのように増えていくかを予測できる投資シミュレーションがあります。
実際に使用してみた結果、当面の運用実績のみに基づくシミュレーションに問題を感じました。
ある投資運用会社の投資シミュレーション
ある投資運用会社は、投資家向けに様々な投資シミュレーションツールを提供しています。
・つみたて投資シミュレーション
・一括投資シミュレーション
・取り崩しシミュレーション
これらのシミュレーションツールは、投資家が自身の投資計画を立てる際の参考として広く利用されています。
しかも、例えば「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を保有した場合」など、具体的なファンドや保有年数を選んで計算できます。
eMAXIS Slimシリーズのような比較的新しいファンドでも、設定来(ファンドが作られてからの)データに基づいてシミュレーションが行われてしまいます。
シミュレーションの問題点
データ期間の短さ
eMAXIS Slim シリーズは設定から約6年という短期間しか経過していません。
この当面のデータでは、長期的な市場の変動や経済サイクルを正確に反映できません。
にも関わらず、このシミュレーターでは約6年間の(好調な)成績を基に長期リターンが計算されます。
特殊な市場環境
過去6年間は、新型コロナウイルスのパンデミックや大規模な金融緩和など、特殊な経済環境下にありました。
これらの損失が通常以上の良好なパフォーマンスをもたらした可能性があります。
楽観主義
今後の好調な成績が将来も続くと誤って想定してしまう可能性があります。
シミュレーション ツールの利用者は、この点に十分注意する必要があります。
リスクの過小評価
約6年間という短期間のデータでは、市場の大きな下落や長期的な停止期間を正しく反映できません。
これにより、投資リスクを過小評価してしまう危険性があります。
より信頼性の高いアプローチ
このようなシミュレーションツールを利用する際は、以下の点に注意することが重要です
長期データの活用
可能な限り長期的な指数データを使い、様々な市場環境を含めたシミュレーションを行います。
例えば、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の設定来(約6年)の年率は「19.22%」です。
しかし「S&P500 過去50年 利回り」で検索すると「9.9%」、「100年」だと「約6%」と、まったく異なる数値が出てきます。
長期的な視点を持つことが大切です。
複数のシナリオ分析
楽観的、慎重的、悲観的なシナリオを想定し、概略結果を検討します。
シミュレーション ツールの設定を変更して、様々なケースを検証しましょう。
リスク指標の重視
リターンだけでなく、標準偏差やシャープレシオなどのリスク指標も考慮します。
これらの指標がシミュレーションツールに含まれていない場合は、別途計算して参考にすることをお勧めします。
定期的な見直し
市場環境の変化に応じて、シミュレーションを定期的に更新します。
一度行ったシミュレーション結果を固定的に認識するのではなく、定期的に再計算することが重要です。
おわりに
各投資運用会社などが提供する投資シミュレーションは有用なツールです。
しかし、eMAXIS Slim シリーズの当面の運用実績(約6年)のみを基にしたシミュレーションには注意が必要です。
投資家にはこれらのツールを賢明に活用し、長期的な視点を持って投資判断を行うことをお勧めします。