- 投稿日:2024/11/09
- 更新日:2025/10/05
1. 高齢者にとって金銭や書類の管理は何気に大変
「自治体から書類が送られてきた。返信用封筒が入っているけれどどうしたらいいかわからない」「介護保険証をなくしてしまったみたい」「ATMでなくて、銀行や郵便局の窓口でお金をおろすようになった」など。
ケアマネジャーとしてご利用者様のお宅に訪問すると、このような話を聞くことがあります。この様なことが何度も繰り返された場合、ご利用者様の金銭、書類の管理が難しくなったと私は判断しています。
金銭や書類の管理がうまくいかなくなったりすることは、日常生活をスムーズに送れないだけでなく、人に出来ないと気づかれないように、なんとかしなくてはいけない。という精神的な負担にもつながります。そのためにも、本人と共にこれらのことをしてくれる人が必要なのです。
2. 金銭管理や書類整理は介護保険の対応外!!
ケアマネジャーが来てくれているなら、支援してあげればいいのでは?と思う方もいるかもしれませんが、ケアマネジャーは金銭管理をすることはできません。
訪問介護(ヘルパー)ならと思う方もいるかもしれませんが、ヘルパーは主に高齢者の日常的な生活支援を目的としており、金銭管理や書類整理のサポートは含まれていません。
つまり、金銭管理や生活費のやりくりに困ったり、自治体からの重要な書類に対応できなくなったりした場合、介護保険のサービスでは解決できないのです。
例えば、以下のような困りごとを抱えている場合:
- 通帳をなくしてしまった
- 自分で税金の書類を記入できなくなった
- 銀行口座の手続きを行うのが難しくなった
これらの問題に対して、介護保険では「サポートできません」となってしまいます。しかし、これらの問題を放置しておくと、本人の生活や経済的な状況が悪化する恐れがあります。
では、どのようにして金銭管理や書類整理をサポートすれば良いのでしょうか?
**日常生活自立支援事業**は、こうした問題を解決するために活用できるサービスです。
この事業は、介護保険とは異なり、金銭管理や書類整理をサポートしてくれるので、安心して日常生活を送れるようにサポートを受けることができます。
3. 日常生活自立支援事業とは?
**日常生活自立支援事業**は、高齢者や障がいを持つ方が、日常生活をより自立して安心して送れるように支援する制度です。
この事業は、介護保険と異なり、金銭管理や書類整理など、生活全般に関わる支援を行います。具体的には、以下のようなサポートが提供されます。
**福祉サービスの利用援助**福祉サービスを安心して利用できる様にサポート
**金銭管理**:預金の出し入れや日常的な支出の管理をサポート
**書類手続き**:年金や税金の支払い、自治体からの書類の対応をサポート
**大切な書類の保管**:通帳や証書など、重要な書類を安全に保管
日常生活自立支援事業は、福祉サービスを提供する地域の社会福祉協議会が運営しており、支援員が定期的に訪問し、必要な支援を行います。
4. サポートを受けるための手順
日常生活自立支援事業を利用するためには、以下の手順を踏んでいきます。サービスを利用することで、安心して生活できるように支援を受けることができます。
1: 相談する
まず、日常生活自立支援事業を利用したい場合は、**お住まいの地域の市町村や特別区の社会福祉協議会**に連絡を取りましょう。電話やウェブサイトで相談の予約をすることができます。この初回の相談は無料ですので、気軽に問い合わせてみましょう。
2: 訪問を受ける
社会福祉協議会の専門員が、利用希望者の自宅に訪問し、現在の生活状況や悩みを詳しく聞いてくれます。その際、利用者本人が契約を結ぶために十分な判断能力があるかどうかも確認されます。もし本人が判断能力を失っている場合、利用できないこともあります。
3: 支援計画を作成する
訪問の結果、専門員が支援計画を作成します。この計画は、家族の希望や利用者の生活状況を踏まえて、どんな支援が必要かを考えて作られます。計画には、金銭管理や書類整理など、どのようなサポートが提供されるかが明記されます。
4: 契約を結ぶ
支援計画が完成したら、社会福祉協議会との契約を結びます。契約書には、提供されるサービス内容や料金などが記載されています。この契約を締結することで、正式にサービスを利用できるようになります。
5: サービス開始
契約後、生活支援員が定期的に自宅に訪問し、支援計画に基づいてサポートを開始します。金銭管理や書類整理、必要な手続きの支援が行われ、利用者が自立して安心して生活できるようサポートします。
注意点とサービス利用の前提条件
日常生活自立支援事業を利用する際に、いくつかの重要な点に注意が必要です。利用前にこれらを理解しておくことが大切です。
利用の前提条件
この事業は、本人が契約内容を理解し、同意する意思があることが前提です。つまり、利用者に**契約締結能力**があることが重要です。もし認知機能が低下し、本人が契約を結べない状況にある場合は、このサービスを利用できないことになります。
認知機能の低下と契約の問題
認知機能が低下して、判断能力が不十分になった場合、この事業の利用を続けることが難しくなります。その場合は、他のサービス(例えば、成年後見制度など)に繋がることになります。社会福祉協議会は、そういった場合でも次のステップに進むための支援をしてくれますので、安心して相談することができます。
早めに話し合い、計画を立てよう
金銭管理や書類整理の負担は、認知機能が低下していく中でますます大きくなります。日常生活自立支援事業は、自立した生活を送り続けるために非常に有効な手段です。
しかし、利用するためには契約能力があることが前提となります。もし本人がこれらの管理に困り始めたら、早い段階で皆で集まって話し合い、どのような支援を利用するのか、利用しない場合は、誰がどのようにサポートするのかを話し合っておくことをお勧めします。
参考
ここが知りたい 日常生活自立支援事業 なるほど質問箱
https://www.shakyo.or.jp/news/kako/materials/100517/nshien_1.pdf
*日常生活自立支援事業について、わかりやすく説明されています。
世田谷区 あんしん事業
https://www.setagayashakyo.or.jp/service/anshin
*成年後見制度との違いも説明されています。