- 投稿日:2024/12/15
- 更新日:2025/09/30
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今は公務員として働いているが、「稼ぐ力を伸ばしたい」「資産形成スピードを速めたい」「職場・仕事内容が合わない」などの理由で、転職を考えておられる方もいらっしゃると思います。
安定と挑戦の間で悩んでいるところでしょう…私も同じなのでわかります(笑)
ここ最近の学長ライブでも何度か質問がありましたが、公務員の方は失業保険の対象になりません。雇用保険法の適用除外の対象になっており、雇用保険に加入していないためです。
しかし、その代わりに公務員の方が退職すると退職手当を受け取ることができ、退職手当の額が少ない場合は「失業者の退職手当」を受け取ることも可能です。
※ ただし、退職手当の金額が少ない場合のみ対象になるため、入職から5~6年未満の若手の方しか対象にならないような制度です。
民間の方は退職すると、ハローワークで失業保険の申請を行います。以外かもしれませんが、公務員の方が退職し「失業者の退職手当」を受け取る場合も、ハローワークで手続きを進めます。(一部地方公務員の方を除く)
私自身はまだ退職していませんが、ハローワークに勤める中で手続き・制度については一通り学び、実際に支給手続きも行っております。皆様の背中を押す一助になれば、と、この記事を作成しました。
この記事では、公務員の方が退職した場合に支給されるお金について、以下の3点から解説します。
・退職手当とは
・失業者の退職手当とは
・各退職手当をもらう方法
なお、失業者の退職手当制度についての詳細・質問については、それぞれ以下の窓口で確認してください。
国家公務員の方
・ハローワーク
・人事院・内閣官房
地方公務員の方
・各所属自治体・団体
参考 内閣人事局 「失業者の退職手当の支給要件及び支給額算定基準」
退職手当とは
公務員の方が退職した場合、退職手当が支給されます。この退職手当は、通常以下の3つの要素から金額が算定されます。
・勤続年数
・退職理由
・退職時の俸給
退職手当の計算式は以下のとおり。
退職手当 = 退職時の俸給 × 退職手当支給率 + 役職加算額
退職手当支給率は、勤続年数と退職理由で決まります。勤続年数が長ければ長いほど支給率は高くなり、自己都合退職よりも、定年や応募認定早期退職で退職した方が支給率が高くなります。
実際の支給率について、国家公務員の方は、国家公務員退職手当支給率早見表(内閣官房)から確認出来ます。地方公務員の方は「所属自治体・団体名+退職手当支給率」で検索してみてください。
※注意
地方公務員の方は、お勤めの自治体・団体によって計算方法が若干異なります。制度の詳細については条例・規則等で確認しましょう。知り合いに人事・厚生・総務担当がいる方は、その人にそれとなく聞いてみるのがいいかもしれません。
国家公務員退職手当支給率早見表(内閣官房)を見ていただければお分かりかと思いますが、勤続年数が少ない方は退職手当も少なくなります。
実際に自身に当てはめて計算してみると、「一応もらえるみたいだけど、これだけか…」という気持ちになってしまう方もいらっしゃるのでは。
失業者の退職手当とは
退職手当の金額が少ない場合、「失業者の退職手当」が支給される可能性があります。対象になるかの分かれ目は、「雇用保険に加入していたと仮定したときに、失業保険としてもらえるはずだった金額と退職手当額を比較して、退職手当の方が少ない場合」です。
「失業者の退職手当」の支給の対象になる場合は、失業保険金額から退職手当を差し引いた差額分が支給される金額になります。もらえる金額の計算式は以下のとおり。
失業者の退職手当 = 失業保険金額 ー 退職手当
つまり、「退職手当をもらったけど、この金額なら雇用保険に加入していた方がもらえる金額が多いじゃないか!」となる場合に、その差額分を「失業者の退職手当」として支給される。ということです。
失業保険の計算方法
失業保険金額の計算方法は以下のとおり。
失業保険金額 = 1日当たりの支給金額 × 給付日数の上限
1日当たりの支給金額(”基本手当日額”といいます)は、退職直前6ヶ月間の給与の金額から計算します。月給制か時給制かで計算方法が変わりますが、基本の計算式は以下のとおりです。
1日当たりの支給金額 = (6ヶ月間の給与の合計÷180日) × 給付率
給付日数の上限(”所定給付日数”)は、離職時の年齢・離職理由・雇用保険加入期間で決まります。90日~330日と幅があり、加入期間が長い方が給付日数は多くなります。公務員の方は雇用保険に加入していないので、計算する際には加入期間=勤続年数で計算されます。
実際に比較してみよう
今、自身が退職した場合にいくらもらえるのか、失業者の退職手当の対象になるのか、実際に計算してみましょう。
退職手当の金額は、国家公務員の方は、国家公務員退職手当支給率早見表(内閣官房)から確認し、地方公務員の方は「所属自治体・団体 + 退職手当」で検索してみましょう。
失業保険の金額は、各サイトに計算ツールがあるのでそれを利用してみてください。ここでは失業手当(失業保険)の給付額はいくら?計算方法は?(doda)を利用します。
これから、若手職員K君を例に計算してみましょう。前提として、K君の情報は以下のとおり。
・国家公務員
・年齢は25歳
・入職から満3年(役職なし)
・自己都合での退職
・退職前6ヶ月間の給与は定額25万円
・欠勤や休職期間無し
退職手当の金額は、退職時の俸給×支給率 です。勤続3年、自己都合退職の場合の支給率は1.5066になります。
計算すると以下のとおり。
25万円 × 1.5066(自己都合,勤続3年) = 37万6,650円
民間で働いていたと仮定して、雇用保険に加入していた場合の失業保険金額は、1日当たりの支給金額 × 給付日数の上限 です。いちいち計算するのは手間なので、計算ツール(doda)を使ってみましょう。
6ヶ月間の給与合計は 25万円×6ヶ月 =150万円です。これを計算ツールに入れると、総額は50万2,800円になります。
退職手当の金額は37万6,650円、失業保険金額は50万2,800円ですので、差額は 50万2,800円 - 37万6,650円 = 12万6,150円 になります。
この差額の12万6,150円が、「失業者の退職手当」として受け取ることの出来る金額になります。
なお、ここでは、分かりやすいようにざっくりとした計算を行いました。厳密な金額を計算したい方は、退職手当については所属の人事・給与担当、失業保険の金額については、給与明細を持って最寄りのハローワークで確認してみましょう。
失業者の退職手当をもらう条件
失業者の退職手当は、民間の方が退職したときにもらう失業保険と同じく、もらうための条件があります。それが「失業状態」であることです。
失業状態とは、「週20時間以上の仕事を探し、見つかればすぐ働ける状態であるが、まだ見つかっていない状態」です。
そのため、以下に当てはまる方は失業保険の対象になりません。
・すでに週20時間以上で働いている
・すでに新しい勤め先から内定をもらっている
・自営業を行っている(行う予定がある)
・週20時間以上の仕事をしない(家事・育児・介護などに専念する)
・週20時間以上の仕事が出来ない(ケガや病気など)
特に、リベシティの皆様は自営業を考えていたり、在職中から転職活動を始めてすでに就職先が決まっているケースが多いと思います。当てはまる方は、失業者の退職手当の対象にはなりませんので、ご注意ください。
なお、自営業について、自営を考えている段階で実際に行動には移しておらず、仕事探しと並行する場合は失業者の退職手当の対象になります。
また、通常の失業保険と同じく、最低でも1年以上の勤務期間があることが必要になります。ただし、病気やケガなどのやむを得ない事情で退職した場合は、1年未満の退職でも対象になる可能性があります。
詳細については、国家公務員の方はハローワーク、地方公務員の方は各所属自治体・団体で確認しましょう。
各退職手当をもらう方法
それでは、実際に各退職手当をもらう方法について解説します。結論から言いますと、退職手当は人事・給与担当が計算し、自動で振り込まれます。失業者の退職手当は、退職票や退職証明書などの書類を持って、最寄りのハローワークで手続きを行います。
退職手当は特に申請作業が必要ではないため、詳しい説明は省略します。
失業者の退職手当の申請から支払いまでの流れをまとめると、以下のとおりです。
① 所属から必要書類を受け取る
② 必要書類を持ってハローワークへ行き手続きを行う
③ (地方公務員の場合)必要書類を所属自治体・団体へ提出
④ 毎回の認定日ごとにハローワークへ行く
⑤ 所属から失業者の退職手当の支払いを受ける
⑥ 支給終了or就職まで続ける
①所属から必要書類を受け取る
所属の人事・総務担当の者に依頼し、失業者の退職手当の申請に必要な書類を受け取りましょう。
必要書類は、国家公務員の方であれば退職票、地方公務員の方の場合は、様々な名称があり退職票や退職証明書などと呼ばれる書類です。
必要書類の発行・交付を依頼する場合は、「失業者の退職手当の手続きを行いたい」と申し出ればOKです。
必要書類の発行・交付は、早めにお願いしましょう。公務員組織は、そもそも退職者があまり出ない組織であることが多いので、人事・総務の担当の方が退職手続きに不慣れな場合があります。
担当が不慣れな場合、制度があること自体知らず、結局もらえずじまいになるケースもあります。対象になりそうな場合は、早めに書類発行・交付の依頼をしましょう。
②必要書類を持ってハローワークへ
必要書類を受け取ったあとは、ハローワークの窓口へ申請に行きます。
各ハローワークには、受付や総合案内があります。そこで「失業者の退職手続きをしに来た」と申し出ましょう。あとは受付の方の案内にしたがってください。この時の必要書類は以下の2つです。
・退職票
・本人確認書類
失業者の退職手当の手続きを行う際に、同時にハローワークで求職登録を行います。求職登録とは、ハローワークで仕事探しを始めていくための登録で、氏名・住所・所持している資格、免許・前職の内容・希望職種などを登録します。
求職登録は、失業者の退職手当を受けるために必須な登録になりますので、忘れず行ってください。地方公務員の方は、この求職登録を行ったことの証明をハローワークからもらう必要がある場合があります。ハローワークの証明が必要な書類がある場合は、窓口で職員に渡して証明の依頼を行いましょう。
なお、求職登録を行ったとしても、仕事探しにハローワークを利用しなくてOKです。転職サイトや転職エージェントも利用しながら、仕事探しを行いましょう。
個人的には、ハローワークの利用もオススメします。企業で人事担当をしていた方や、キャリアコンサルタントの資格を持っている方しか相談窓口に配属されません。求人は玉石混交ですが、「一緒にキャリアを考える」という点で、職業相談窓口は有効です。
営業活動もほとんどないので、キャリアに迷われる場合は、ぜひ一度利用してみてください。
③(地方公務員の場合)必要書類を所属自治体・団体へ提出
地方公務員の方は、ハローワークでの手続き後に、必要書類を所属自治体・団体へ提出する必要がある場合があります。
ここでの提出書類は、地方公共団体によります。書類の提出が不要な場合もありますので、詳細は所属の人事・総務担当に確認しましょう。提出が必要なケースでは、以下のような書類を提出します。
・ハローワーク受付票(求職登録時にもらえます)
・求職登録証明(ハローワークから証明をもらったもの)
④毎回の認定日ごとにハローワークへ行く
最初の手続きが終われば、失業認定日が設定されます。この失業認定日にハローワークで手続きを行い、国家公務員の方はそのまま窓口で認定を受けます。地方公務員の方は、窓口で証明書類をもらい元所属に提出します。
失業認定日は、通常、元の所属の毎月の給料日と同じ日に設定されます。設定された認定日には窓口に行きましょう。
失業認定日までに、規定の回数以上の求職活動実績が必要になります。どこまでを求職活動実績と認め、何回以上必要になるかは所属によって変わりますが、基本は以下のとおりです。
必要な回数
・毎回の認定日ごとに2回以上
認められる求職活動の範囲
・求人への応募
・ハローワーク窓口での職業相談
・(教員の方)講師名簿への登録
求職活動の詳細については、各所属に確認しましょう。
⑤所属から失業者の退職手当の支払いを受ける
失業認定日の手続きが完了すると、実際に失業者の退職手当の支払いを受けます。国家公務員の方は一律で労働局から、地方公務員の方は各所属から支払いを受けます。
支払われる金額は、「前回手続きを行った日から、今回手続きを行う日の前日までの期間分」です。退職前6ヶ月間の給与から、1日当たりの支給金額を計算し(「対象になるか」で確認した金額と同じです)、1日当たりの支給金額×認定された期間分 で分割して支払っていきます。
支払いの時期やタイミングは、国家・地方公務員の両方とも認定日から1週間程度です。ただし、認定日のタイミングによってはもっと遅くなることもあります。
失業者の退職手当は、手続きを行ってから待期期間と給付制限期間があり、この2つの期間を経過した後に支払いが開始します。
給付制限期間は、自己都合退職であれば2ヶ月間、懲戒解雇は3ヶ月間かかり、それ以外の退職理由の場合は無しです。待期期間は、先に受け取った退職手当の金額によって変わり、退職手当が多ければ多いほど待期期間も長くなります。
これらの期間を踏まえたうえで、手続きを行ってから実際に振り込まれるまでは4~5ヶ月かかることが多くなります。手続きの手間もあるので、すぐに再就職を考えている方は、「手続きをしない」という選択肢も検討してみてください。
⑥支給終了or就職まで続ける
上記の④~⑤を繰り返しながら、失業者の退職手当分を全てもらいきるか、就職するか、で手続き終了になります。
なお、早期に就職が決まった場合は、失業保険制度と同じく「再就職手当」の対象になる可能性もあります。対象になる条件は、失業保険制度と同じ場合がほとんどです。
まとめ
以上、公務員の方が退職した場合に支給される退職手当・失業者の退職手当について解説しました。まとめると以下のとおりです。
・入職から5~6年目以下などの若手職員が対象になる
・失業保険の総額から退職手当を引いた差額分が支給金額になる
・退職後、必要書類を持ってハローワークで手続きを行う
・手続きを行ってから実際に支払われるまで4~5ヶ月かかることが多い
・実際に支払いを行うのは、国家公務員は労働局、地方公務員は各所属自治体・団体
・失業者の退職手当制度の詳細については、国家公務員の方はハローワーク、地方公務員の方は各所属自治体・団体で確認
入職から間もない方が対象になる制度です。対象にならない方も、一度退職手当の金額を計算してみるのはいかがでしょうか。
適切なリスクを取りながら、一緒に小金持ち山を登っていきましょう!
質問等ありましたら、答えられる範囲で対応いたしますので、コメントやDMでご連絡ください。