- 投稿日:2025/04/02
- 更新日:2025/10/09
こんにちは、名古屋市守山区で自宅整体サロンを運営する理学療法士のきむです。
私は17年以上、理学療法士として、股関節の痛みに悩む方々と数多く接してきました。その中で、股関節の前方滑りが股関節の痛みの原因であることを数多く経験してきました。
股関節の痛みは、多くの人が経験する問題の一つです。特にアスリートや運動習慣のある人に多くみられますが、デスクワーク中心の生活を送る人にも発生することがあります。その中でも「股関節の前方滑り症候群(Anterior Glide Syndrome)」という概念は、理学療法士の Shirley Sahrmann(シャーリー・サーマン)によって提唱され、注目を集めています。
本記事では、サーマンの理論に基づき、前方滑り症候群の原因や症状、対策について詳しく解説します。
1. 股関節の前方滑り症候群とは?
前方滑り症候群とは、大腿骨(太ももの骨)の骨頭が正常な可動範囲を超えて前方に移動しやすくなる状態を指します。この異常な動きが股関節周囲の組織にストレスを与え、痛みや可動域の制限を引き起こします。
主な原因:
サーマンは、股関節の前方滑り症候群の原因として以下のような要因を指摘しています:
1. 殿筋群(特に大殿筋)の弱化
• 大殿筋は股関節を安定させる役割を果たしますが、弱くなると大腿骨が前方に押し出されやすくなります。
2. 腸腰筋の過活動
• 腸腰筋(大腰筋・腸骨筋)が過剰に働くことで、大腿骨が前方へ引き出されやすくなります。
3. 股関節後方の柔軟性低下
• 股関節の後部の組織が硬くなると、前方への可動が増え、負担がかかります。
4. 姿勢や動作のクセ
• 過度な骨盤前傾や不適切なスクワット・ランニングフォームも前方滑りを助長します。
2. 症状と診断のポイント
股関節の前方滑り症候群の主な症状は以下の通りです。
症状
• 股関節の前面に痛み(特に長時間座った後や、歩行時・運動後)
• 股関節の詰まり感(曲げたり伸ばしたりすると違和感がある)
• 大腿部の前面に張りを感じる(特にランニングや階段昇降時)
• 可動域の制限(特に股関節を深く曲げる動作)
診断のヒント
理学療法の評価では、次のようなポイントをチェックします。
• 股関節の前方突出が見られるか
• 殿筋の筋力低下があるか
• 腸腰筋の過活動があるか
• 姿勢や歩行のクセがあるか
トーマステスト(股関節の柔軟性評価)や股関節の後方関節包の動きを調べることで、前方滑りの兆候を確認することができます。
3. 改善のためのエクササイズとストレッチ
前方滑り症候群の対策として、殿筋の強化・腸腰筋のリラクゼーション・股関節後方の柔軟性向上を重視します。
① 殿筋を活性化するエクササイズ
クラムシェル(Clamshell)
• やり方:
1. 横向きに寝て膝を軽く曲げる
2. かかとをつけたまま膝を開く
3. 10〜15回を2〜3セット
ブリッジ(Hip Bridge)
• やり方:
1. 仰向けになり膝を立てる
2. お尻を持ち上げ、肩から膝まで一直線にする
3. 10〜15回を2〜3セット
② 腸腰筋のストレッチ
ハーフニーリング・ストレッチ
• やり方:
1. 片膝を床につけ、反対の膝を立てる
2. 骨盤を後傾させながら前方に重心を移動
3. 30秒キープ×2セット
③ 股関節後方の柔軟性向上
大腿四頭筋のリリース

• フォームローラーを使い、大腿部の前面をゆっくりほぐす
ヒップヒンジ(Hip Hinge)

• 腰を曲げずに股関節を後方に押し出す動作で、股関節の後方組織を伸ばす
4. 日常生活での注意点
前方滑り症候群を防ぐためには、日常生活の姿勢や動作にも気をつける必要があります。
• デスクワーク時の姿勢
• 骨盤をやや後傾させ、椅子に深く座る
• 長時間同じ姿勢を避け、こまめに立ち上がる
• 歩行・運動時の意識
• 股関節を後方へ引く動作を意識する
• つま先重心ではなく、かかとから踏み出す
• ストレッチとエクササイズの継続
• 1日5〜10分のエクササイズを習慣にする
まとめ
サーマンの「股関節の前方滑り症候群」は、股関節前面の痛みの原因の一つとして重要な概念です。殿筋の弱化や腸腰筋の過活動が主な原因となるため、適切なエクササイズやストレッチを行うことで改善が期待できます。特に、大殿筋の強化と腸腰筋のストレッチを意識しながら、日常生活での動作も見直すことが大切です。