- 投稿日:2025/05/17
- 更新日:2025/10/01

初めまして!シロマサルです。
知ることで、人生はもっと楽しくなる!
今回はプラトン著『ソクラテスの弁明』(2012年発行)をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
著者:プラトン出典:Wikipedia
ギリシアの哲学者(前427-347年)。アテネの名家の出身。政治家を志すが、ソクラテスの事件などにあい現実の政治に絶望した。各地を遍歴後、アテネ郊外にアカデメイアという学園を創設して弟子たちの教育に専念した。
✅ 本当の知は「自分は知らない」という自覚から始まる。
✅ 批判的思考こそが、知の探求の鍵である。
✅ 情報が溢れる現代こそ、ソクラテスの思考が求められる。
ソクラテス
出典:Wikipedia
アテナイ出身の古代ギリシアの哲学者。
西洋哲学の基礎を築いた人物の1人。
ちなみに、ソクラテス自身は一切の著述を行わなかった。
理由は、対話に夢中で書く余裕がなかったといわれている。
ソクラテスは、あらゆる「知の追求」の出発点と言える。
経済・哲学・歴史・科学は神学から派生したといっても過言ではないように、これらの前には「知の追求」がある。
プラトン著『ソクラテスの弁明』はソクラテスが生涯を捧げた「知の追求」への謙虚な姿勢を示している。
よく見ると、書いたのはソクラテスではなく、弟子のプラトンである。
詳細は後述するが、ソクラテスは「若者を堕落させた」として裁判で訴えられた。
その裁判の一部始終を弟子のプラトンが書いたのが本書である。
つまり、裁判記録集なのだ。
始まりからこんな語り口である。
まず、私は古くから私に向けられてきた非難について弁明し、その後、新たな告発について説明します。長年にわたり、多くの人々が私について根拠のない噂を広めてきました。彼らこそ、私が最も恐れる告発者です。なぜなら、彼らは皆さんがまだ若く、影響を受けやすい頃から、私について嘘を吹き込んできたからです。 彼らは「ソクラテスは天体や地下の事象を研究し、悪事を善とするよう教えている」と言ってきました。そして、人々はこのような探求をする者は神を信じないに違いないと考えました。このような噂を流した者たちが、実は私にとって最も危険な敵なのです。 彼らは長年にわたって私を攻撃してきましたが、その中のほとんどは私の前に姿を現すことさえしませんでした。私は彼らの名前すら知りません。ただ、ある喜劇作家が私を風刺したことは知っています。しかし、他の者たちは誰一人、私と正面から議論することなく、私を悪者として仕立て上げたのです。
プラトン著『ソクラテスの弁明』
ソクラテスが生涯を捧げた「知の追求」への謙虚な姿勢は、最新テクノロジーが神の領域に届きつつある現代だからこそ、その重要性を増していると私は思うのだ。
「どんな伝統も、最初は新しいものである。」
『ソクラテスの弁明』
ソクラテスの「知の追求」とは?
「無知の知」は誤解?
プラトン著『ソクラテスの弁明』(2012年発行)には特徴がある。
ソクラテスといえば?と聞かれたとき「無知の知」という単語が浮かぶ人が多い。
「無知の知=知らないことを知っている」は大きな間違いだと指摘する。
では、ソクラテスは、本当はなんと言ったのか?
事の始まりは、ある日、神殿で「神のお告げ」を担当する巫女が、ソクラテスの知人にこう言った。
「ソクラテスより知恵がある者は、誰もいない」
このことにソクラテスはマジメに考え込んでしまった。
「知恵なんてない。でも神様が嘘つくわけもない。これは神様の謎かけではないか?」
ソクラテスは早速、検証することにした。
自分より知恵がある人物を見つければ「神様は間違いだった」と言える。
「自分は知識も知恵もある」という知識人たちをつかまえては、問答を繰り返した。
「Aとは?」「Bということです」「ではBとは?」「Cということです」「ではCとは?」……これをとにかく繰り返した。
問答を5〜6回以上も繰り返すと、トートロジー(同じ言葉の繰り返し)になったり、矛盾が生じてくる。
ソクラテスはこんな調子でアテナイの知識人と問答を繰り返して、わかったことは「『自分は知らない』と自覚するだけマシ」ということだった。
⇒ 「無知の知」ではなく「不知の自覚」こそが真理。
⇒ 物事への「認知」ではなく物事への「姿勢」の話である。
ソクラテスは「自分は知らない」という自覚を持つことが、知の探求の出発点だと説いた。
彼の鋭い問答によって、知識人たちは自分の無知をさらけ出すこととなった。
面目丸つぶれの知識人たちから「恥をかかされた」と逆恨みされた。
一方で若者は「知識人は偉そうだけど、大したことない」と考えてソクラテスの真似を始めた。
その結果、ソクラテスは「若者を堕落させた」として裁判で訴えられたのだ。
そして、裁判で死刑を宣告されたソクラテスは、嘆き悲しむ弟子たちを戒め、自ら毒杯を飲んで世を去った。
こうしてみると、一時期、「論破」という単語が一部で流行ったのも、歴史を繰り返しているのかもしれない。
大抵は、「姿勢」を間違えている。
ソクラテスの問答は揚げ足取りに見えるが、実は違う。
揚げ足取りは相手を茶化したいだけ。
主張をぶつけ合うのは議論ではない。
主張を聞き届け、互いの矛盾点を指摘し合うのが、本来の議論である。
相手の主張をしっかり聞き、矛盾を指摘しながら真実に近づく姿勢が重要である。決して、勝ち負けではない。
この点をできれば、心がけたい。
ソクラテスの哲学が現代に必要な理由
AI時代にこそ「知の探求」が求められる。
ソクラテスの考えの根っ子にあるのは「自分は知らないという自覚」である。
現代では検索エンジンやAIで、過去のたいていの情報は検索できる。
ここで怖いのは、検索だけでわかったつもりになってしまうことである。
検索エンジンやAIの答えは、世の中にある玉石混交の情報に基づいている
もちろん、正しいこともある。
しかし間違っていることも多い。
インフルエンサー(影響力の大きい人)と呼ばれる人のさまざまな解説動画やブログ、SNSが真実を語っているわけではない。
参考にするのは構わないが、その事実や責任までも他人にゆだねているようではいけないのだ。
⇒ 情報過多の現代だからこそ、批判的思考が重要。
⇒ 情報を発信する側も意識しなければならない。
知を追求する組織の事例
エイミー·C·エドモンドソン著『恐れのない組織』
ピクサーの「ブレイン・トラスト・ミーティング」
映像制作会社ピクサーは、どの作品も最初のバージョンは駄作と語られる。
映画制作中、数カ月ごとに関係者が集まり、直近につくったシーンを観て評価し、忌憚のない意見を監督に伝え創造的な解決を手伝う。
ただし、ミーティングには3つのルールがある。
❶建設的なフィードバック
批判者は、個人でなくプロジェクトに意見する。
監督は喜んで批判に耳を傾けることが奨励されている。
❷相手には強制しない
意見の採用・却下は、監督が最終責任を持つ。
❸共感の精神
フィードバックの目的は「粗探しで恥をかかせる」ことではなく、作品を改善することである。
この会議の狙いは、誠実で正直なフィードバックを繰り返し行うことである。
制作者が弱さを認めて意見を求める。
結果、ピクサーは長編映画17本を製作し、1本当たりの収益は平均5億ドル以上。アカデミー賞も13回受賞している。
⇒ 建設的なフィードバックが、創造的な作品を生み出す。
相手の意見を尊重しながらも、問いを立て続けることで、より良いアイデアを生み出している。
本来の議論は「主張を聞き届け、互いの矛盾点を指摘し合う」ことである。
ダニエル・コイル 著『THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法』
記事ではこちらで紹介している。❷弱さを見せるに該当。
最強チームを作る際に共通する3つのスキル
❶安全な環境をつくる❷弱さを見せる❸共通の目標をもつ
まとめ
✅ 本当の知は「自分は知らない」という自覚から始まる。
✅ 批判的思考こそが、知の探求の鍵である。
✅ 情報が溢れる現代こそ、ソクラテスの思考が求められる。
⇒ すべての出発点は「知らないことを自覚すること」である。
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆