- 投稿日:2025/02/24
- 更新日:2025/09/29

「学問のすすめ」有名な冒頭「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」が、なぜ学問のすすめにつながるのか、については、以下の記事をご覧ください。
今回は「学問のすすめ」の後半部分の要点まとめです。
全17編のうち、12編以降は1編ごとに、項目を絞って、学問を活かすため、あるいはよりよく生きるために必要な行動や考え方が書かれていますす。
そのなかで特に「現代にも通じる!」、「これいい!」
そして個人的に「学長のお話に通じている!」と感じた内容を紹介します。
12編。演説、スピーチを学ぶことをすすめています。
学びとはインプットだけでは成立しません。学んだことを活かすことはもちろん、学んだことを広めることも学びの一部です。
学んだことを広めるためには、伝えるための技術が必要!
だから「演説、スピーチ」を学ぶことが必要だというのです。
文書(書き言葉)も大事ですが、
スピーチなど、直接言葉で訴えることで伝わりやすくなったり、
相手の心に響きやすかったりもします。
アウトプットのひとつとして、話す技術も、書く技術同様に必要ですね。
13編。怨望、羨望には害しかない!
怨望、羨望とは、「ねたみ」や「嫉妬」のことです。
例えば…
出世したAさんをうらやましく思った時、
「Aさんも失敗して転落すればいいのに!」と、
相手の不幸を願ってしまうような気持ちです。
こうした望みには、いいことなんかひとつもないですよ!
ということ。
なぜか!?
仮にさっきのが、私の願いだったとして、その願いが叶い、
Aさんが大きなミスをして会社に損失を出したとします。
Aさんは叱られて降格! 私は「いい気味だ!」と喜んだ…として…。
Aさんと私が同じ会社の社員だったら、
Aさんが出した損失は、私にとっても損失なのです。
私は「いい気味だ!」という、どうでもいい小さな喜びの為に、
会社(場合によっては社会の)損失を願ったことになります。
その会社(社会)に、自分も所属しているのにね。
だから誰かをうらやましいなと思ったら、
人の転落を願うのではなく、
自分を高める方向にそのエネルギーを振り向けるべきだ、という話。
ちなみに、怨望(妬みや嫉妬)を感じた時、
ひとは行動が制限されていたり、
正しく評価されない場にいることが多いのです。
本編の例は、昔のお城に集められた奥女中たちでした。
褒められるのも、叱られるのも、お殿様の気まぐれ…。
自分の生殺与奪を握っているのが、バカ殿だったら!?
正しい努力をしても報われない。
努力したくても努力ができない環境、
江戸時代の奥女中だったら、怨望を持っても仕方ないかも…!
でも、今は違います。自分がいる場所を選べます。
ねたみや嫉妬のエネルギーを、自分を高める努力や行動に向けましょう。
14編。心事の棚卸をしよう。
自分の現状と目標を定期的に確認することが大事。
棚卸:商店などが定期的に在庫確認や決算して、仕入れの商品や個数に反映させるように、
ひとの人生においても、定期的に現状を確認して、必要があれば軌道修正や、学習が必要だという話。
なぜなら、人は想定外に間違ったことをしてしまうものだし、
たいていの物事は、計画どおりに進まないものだから。
1,過去を確認して、失敗があればそこから学ぶ。
2,現状を確認して、今やっていることはこれでいいのか考える。
具体的に、方向性が合っているか、やり方は適切か!?
3,計画を修正する。夢や目標を再確認する。
そして、夢や目標のために、現在の行動を修正する。
昔の計画通りにすすんでいないのは普通だし、
失敗や間違いをするのも普通だから、
現状を知って、その上で計画を立て直すのが大事とのこと。
15編。信じるなかにも間違いはあるし、ダメだと決めつけた中にも真実はある
丸ごと信じるのではなく、ちゃんと自分で知識をつけて、
ひとつひとつを判断すべき。
権威ある人(インフルエンサー)の言葉もまるごと信じてはダメ。
ひとつひとつ、ちゃんと見て、考えて自分で判断すべし!
16編。本心? 考えたことを行動してる?
買い物は本当に自分で決めましたか?
すてきな服も、きれいなアクセサリーも、
隣の家を見下ろす立派な3階建ての家も、
本当に自分の頭で考えて、購入を決めましたか?
知らず知らずのうちに、
「みんながそうだから」と流されたり、
「だって、あの人が買ったから」と張り合っていたり
していませんか?
実態のない幻想に振り回されて、
本当は必要でもないし、欲しくもない物を買い続けていたら、
お金を失った後に残るものは、
本当は必要でもないし、欲しくもなかった物ばかりですよね。
守銭奴がいいとは言いませんが、
大事なお金は慎重に使いましょう。
思考と行動のバランスはとれていますか!?
考えなしで行動すれば、
成果を得られないだけでなく、他人に迷惑をかけますが、
その分目立つので
外圧もあるし、修正しやすいものです。
が!どんなに勉強しても 思考ばかりで行動しないでいると…、
自分の頭の中にある理想と、現実社会の他人の行動を比べますから、
現実はどれも不完全で、みんな足りない、できていない!と見えます。
だから、不満や不平ばかりを感じてしまう。
世間に文句をつけてばかりのひとは、
「あの人は不平ばっかりで、自分では行動しないよね」と
思われるようになり、
次第に周囲からも孤立していきます。
世間がダメなのに、周囲は自分を遠ざけると思うと
さらに不満や不平は募り…、心の中に毒を溜め込んでしまう。
これでは頭の中にどんな理想があっても、活かすことはできません。
真面目な勉強家、学問に励んでいるひと陥りやすい罠です。
誰かの仕事に不満を感じたら、自分でその仕事をやってみましょう。
頭のなかの理想と現実とを比較するのではなく、
実際にやってみてから比べましょう。
17編。人望は大事です。
どんなに学んでも、
身に着けた知識や技術も、社会に活かさなくては意味がない。
多くの人がいる社会で、
まったく信頼のないひと、つまり人望がない人は、
学びを活かす機会を得られません。
千円のお遣いを頼まれるということは、
少なくとも千円分の人望があるということ。
人望は、実際に所有している財産ではなく、
積み重ねた実績や、そのひとの行動に対して寄せられるもの。
名声や評判、などとも似ています。
でも、目立つ看板を使ったり、
本当は読めもしない分厚い専門書を並べて見せるとか、
実力があるように見せかけるようなことは中身のない名声ですから
そんなものを求めてはいけませんが、
本来の実力に見合った名声なら求めるべきです。
あえて実力を隠したり、
人を遠ざけるような態度や外見もよくありません。
出会った人、目の前の人が避けたくなるような
服装や態度、表情は改めるべきです。
多くの人がいる社会で、
学んだことを役立てるには、以下の3つが大事です。
●表現力である言葉を学ぶこと。
→相手に合わせて、適切に伝える技術が必要です。
●表情や見た目に気をつけて、人に親しみを持たれるようにすること。
相手に不快感を与えるような服装、態度、不安を感じさせる表情は改める。
→健康的で元気な態度でいることで、多くの人が近づきやすく感じます、
●分野が違う人でも毛嫌いせず、多くの人と積極的に交流すること。
→偶然の出会いのなかに、運命も出会いがあるかもしれません。
まとめ
「学問のすすめ」後半は、
人と交流が必須の社会で、学んだことを役立てるために、
必要な技術や、心構えが具体的に書かれていました。
そして最後の17編では、人望が大事と締めくくっています。
一般に「学問のすすめ」のキモは「初編」にあると言われます。
有名な「天は人の上に人を造らず…」はまさに冒頭ですし。
でも、今回紹介した12編以降の後半も、具体的で
まさに現代でも通じる内容が多くて興味深いです。
最後に
紹介したのは「学問のすすめ」のほんの一部、
個人的に共鳴した部分です。
偏った解釈もあるかもしれませんので、
機会があれば本編に触れてみてくださいね。
そして、その際には、以下の点にご注意ください。
福澤諭吉の感覚は、驚くほど現代の私たちに近いのですが、
ベースには150年前、当時の社会の常識や考え方があります。
現代の感覚からすれば、許容できないというか、
不快な差別的な表現はありますので、
そこはちょっとだけ切り替えが必要となります。