- 投稿日:2025/04/16
- 更新日:2025/10/07

「この薬、捨ててもいいのかな」と友人宅で聞かれたことがあります。
よく見ると同じような薬がたくさん保管されています。
「同じように見えるけど、違うようだしよくわからない。賞味期限みたいなのも書いてないよ。」
こんにちは、私は薬学部を卒業後、薬剤師として病院勤務を10年以上していました。特に院内全体の医薬品を管理する、「医薬品管理責任者」を務めていました。医薬品管理で特に問題となるのは「医薬品の期限」です。
ここではご家庭の中の「お薬の期限」について説明し、どうして古いお薬は捨てないといけないのか?ということをお話します。
この記事をお読みの方は、きっとクリニックや病院でお薬をもらったことがあると思います。あなたは、お薬の期限を気にしたことはありますか?
期限なんてあるの?賞味期限?
使い切らずに残るんだよね。
もったいなくて、捨てられないよ。
心配だから捨てずに保管しておきたい。
何の薬かわからなくなってしまった。
そんなあなたに向けた記事です。ぜひ最後までお読みください。
【前提条件】
このノウハウは飲み薬(内服薬)に限ったお話です。
目薬や貼り薬、注射薬のお話ではありません。
結論:古い薬はなぜ捨てるべき?
先に結論から述べてしまいます。古いお薬は飲んでしまうと、
効果が減る、またはなくなる可能性。
成分が変化して体に悪影響を及ぼす可能性。
万が一の副作用の際に公的な救済制度の対象外になる可能性。
古いお薬は、「百害あって一利なし」と言えます。
それではこれらを説明していきますね。
古いお薬は捨てた方が良い理由
お薬には期限があります
病院、薬局でもらった薬は期限があるのをご存じですか?
「え?そんなこと考えたことないよ」
「どこに書いてあるの?」
そうですよね。錠剤のプラスチックシート、粉薬の入った一回分の袋を見ても期限は書かれていませんね。薬局でお薬をもらうときの紙の袋はどうでしょうか?
賞味期限とは違います。
食品の賞味期限は、「ちょっとすぎちゃったけど大丈夫だよね」と言ってしまいますよね。賞味期限は「味」の期限なので、そもそも曖昧なものです。
でも、お薬の期限は「使用期限」です。この期限は製薬メーカーが医薬品の品質と一定の効果があると保証する期限です。
古い薬はリスクがいっぱい。整理と廃棄のススメ
古い薬は成分が分解しているかも?
お薬は、その有効成分によって効果が発揮されます。
ところが、その有効成分は時間とともに分解していきます。
分解が進んでしまうと、治療効果が十分でないどころか
分解した成分が体に悪いものになってしまう可能性も出てきます。
重大な副作用が出ても救済を受けられない可能性も
重大な副作用が出てしまったとき、その治療費などを公的に救済される制度があります(医薬品副作用救済制度)
ただし、「適切に保管された医薬品を適切に使用した場合」に限られます。使用期限が過ぎてしまったお薬は「適切な保管」とは言えず、万が一副作用が出てしまってもこの制度を使用することができないのです。
例えば福岡県の薬剤師会は次のように回答しています。
https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1636.html?blockId=38842&dbMode=article
期限切れのお薬は百害あって一利なしですね。
医薬品副作用救済制度については薬剤師ほんおーさんのノウハウ図書館への投稿がありますよ。
市販薬や処方薬を正しく使ったにもかかわらず、思いもよらない副作用が出てしまうことがあります。 そのような時、医療費や給付金を支給してくれる制度として医薬品副作用救済制度があります
知っていますか?「医薬品副作用救済制度」のこと
https://library.libecity.com/articles/01JDATY8TFRSN5PXYKFSTFGQMQ
お手元にあるお薬の使用期限の確認方法
市販薬:箱に記載あり。箱を捨てないように。
処方薬:シートや袋には基本的に記載なし。だから困る!
ドラッグストアで購入した、処方箋のいらない医薬品については
医薬品の箱(パッケージ)に記載されています。
ドラッグストアで購入する医薬品は、箱を捨ててしまうと使用期限がわかりにくくなりますので注意しましょう。
薬局でもらう処方薬は、ほとんどの場合で箱が渡されません。
患者さんでは簡単にわからないのが現状です。
薬局で処方薬のパッケージを渡せない理由
処方薬はあなたの体格・年齢・症状に合わせて処方・調剤されたものです(いわゆるオーダーメード)。
液体や粉の薬は混ぜられたり、プラスチックシートに入っている錠剤は必要な日数分だけ切り取らています。このような形で交付されるので、薬剤師が医薬品のパッケージ(箱)を患者さんに渡すことはまずありません。
では、どうしたらよいのでしょうか?
医薬品を受け取るときに薬剤師に質問する
この方法はお互いの手間がかかり、お勧めはしません。それでも一つの方法として説明します。お薬を渡されるときに質問する方法です。渡されるときであれば薬剤師はパッケージを確認できるので、質問に答えることが出来ます。しかし、お薬の種類が多い場合は一つ一つ調べたり、それを記録しておく患者さんも手間がかかります。
また、数か月や数年経ってしまうと、どの期限のお薬を渡したのか、薬剤師も調べることが難しくなります。
一般的な使用期限から推定する
処方箋でもらうお薬の使用期限はおおよそ3年程度です。
病院などで処方された医療用医薬品は、製造後、未開封の状態で3~5年が使用期限です。
製薬協ホームページ
https://www.jpma.or.jp/about_medicine/guide/med_qa/q29.html
使用期限は工場で作ってからの期間
先ほど引用したように、使用期限は「作ってからの期間」です。
重要なのは患者さんの手元にわたってからの期間ではないということです。
では、患者さんの手元にわたるまで、どれくらいの時間が過ぎているのでしょうか?
手元にわたるまでの期間はわからない
処方薬は、薬局で渡される時点で、製造から時間が経っていることもあり、残りの使用期限がわからないことが多いです。以下にこの説明をします。
製薬工場で作ってから、あなたのお手元に届くまでにどれくらいの期間が経過しているでしょうか?実はこの期間を知る方法はほとんどありません。
※医療機関を通してわかる可能性もあります。
例えば、製造後卸売業者等へ流通、保管で半年程度、薬局に販売され保管されます。市場でよく処方される医薬品であれば、薬局から患者さんへ渡される頻度が高いためおよそ数か月間です。花粉症のお薬など、季節性の高いものは次のシーズンまで処方がありません。そうすると、薬局での保管期間は一年以上になることもあります。このようにあなたの手元にわたったお薬は、製造からどれくらいの期間経過したわかりにくいものとなります。
薬局では期限管理がされています。
薬剤師は薬局内の医薬品の使用期限を管理しています。万が一にも使用期限が切れたお薬をお渡しするわけにはいきません。また患者さんが医師の処方通りに服用したとして、その期間にお薬の使用期限が切れてしまうことが無いように調剤しています。二か月間服用する処方なのに、服用中に期限が切れてしまうと大変ですよね。
逆に言うと、薬剤師は服用期間が終わると、すぐ使用期限がきれるくらいギリギリのものでも交付しても良いということになります。その理由は薬剤師の責任は「処方通りに服用したものまで」であるためです。例えば、咳止めの薬を1週間分もらったけど、すぐに咳は止まったとします。数日分の咳止めのお薬が残ってしまいますよね。このような残ってしまった医薬品に関して、どのように扱うかは患者さんの自己責任となるのです。
余ったお薬は捨てた方が良い理由
・使用期限が容易にわからないから
・古いお薬は副作用のリスクが上がるから
・何のお薬かわからなくなるから
余ったお薬の管理をするだけで、頭のリソースを使ってしまいますよね。このような悩みに時間を取られていてはいけません。
それでも捨てられないあなたへ
そうはいっても、お薬の中には高額なものもあります。保険で一部負担であっても「もったいない」ですよね。どうしたらよいのでしょうか。
ご自身の判断になりますが、次のように決めてしまうことが大切です。
【提案】家庭での保管期限を決める(自己判断)
薬剤師の経験としては多くの薬局で薬局薬剤師が交付するまで、製造からおよそ半年から一年経過している医薬品が多い印象でした。調剤薬局では長いもので一年程度の保管でした。となるとおおよそ患者さんのお手元には使用期限まで、あと一年程度のものが渡されていると考えられます(もちろん、これは経験にすぎません)。
どうしても捨てられないという方には、調剤日を基準とする方法をお伝えします。薬局でももらうお薬の袋などに「調剤日」が書かれていることがあります。この調剤日を確認しましょう。
ほとんどの場合、調剤日がお薬をもらった日です。この日から「一年以上経過したお薬は捨てる!」とご自身で決めてしまうことです。一年間そのお薬のお世話にならずに済んだのでラッキー!とポジティブに思うことも大切です。お薬を飲まずに済んだので、副作用のリスクもなかったわけですから。
適切に管理してお金と健康を守る
いかがでしたか。最後はどうしてもご自身の判断で管理になってしまいますが、古いお薬を管理する手間、副作用のリスクを考えると「捨ててしまった方が良い」ということをご理解いただけたでしょうか?
期限を意識して管理して、余分なお薬をもらわない
もし、捨てることができなくても、使用期限を意識して管理していると「解熱薬、あと3回分あったな」「咳止めはまだ5日分あったな」とわかります。
クリニックで医師の先生が「咳止め二週間分だしておきますね」と言われたら、「家に5日分ありますから、減らしてください」と言えますね。その分お薬代の節約になりますね。
医師の先生に言えないときは、薬局薬剤師の先生に伝えるのも一つの方法です。処方箋を薬局に出すときに「このお薬、家に○○日分残ってて」と伝えましょう。
こうしたことを伝えやすいように「かかりつけ薬局」・「かかりつけ薬剤師」をもってお話するようにしましょう。
ご家庭でのお薬の管理はご自身の判断の範囲になってしまいます。そのため、健康という大切な資産を守るためにしっかり管理していきましょう。