- 投稿日:2025/12/04
はじめに
私は学生時代、先輩からの紹介で一人の高校生の家庭教師を3年間行っていました。先輩は教員志望で、アルバイトで家庭教師をされていましたが、先輩の大学院卒業時、家庭教師の引継ぎを考えていた相手から突然引き継げなくなったと連絡があったとのことで、私がピンチヒッター的に家庭教師をすることになりました。教員志望でもなかった私は、はじめはできるか不安でしたが、一人の人の人生に大きく関わる仕事です。引き受けた以上できることは精一杯やろうと覚悟を決めて、家庭教師に臨みました。
この記事では私が家庭教師として生徒との信頼関係を構築するうえで意識していたことと、その具体例について書きたいと思います。同じ生徒はいないため必ずあてはまるとは言えませんが、家庭教師をはじめてみたいな、と思っている人や現在家庭教師をされている方などに少しでも参考になる部分があれば幸いです。
高校生の家庭教師に求められていること
大学受験を控えた高校生の家庭教師に求められていることは、目標とするレベルまで学力をアップさせる、ということだと思います。
ただ私が担当していた生徒は注意力散漫で勉強嫌いな高校生でした。学力アップのためにはまず何より勉強をする必要がありますが、そんな生徒に机に向かってもらうためには、まず信頼関係の構築が必要でした。
以下では信頼関係の構築のために私が意識していたことと具体例について書いていきます。
意識していたこと3つ
結論下記3点を意識していました。
・シンプルに伝える
・教師というよりも戦友として一緒に勉強する
・生徒の力を信じる
信頼関係を構築するスタートとして最も大切だと考えていたのは、この人の話なら聴きたい、と思ってもらうことです。話に耳を傾けてもらうためにはこの人の言っていることは腑に落ちる、と思ってもらう必要があります。何を言っているかわからない、自分が言いたいことを言っているだけだ、と思われては話を聴いてもらえません。そのため、生徒に伝わりやすいよう前提の説明や問題の解説はできるだけシンプルに行いました。
次のステップとして、信頼関係を築いていくために重要だと考えていたのは、戦友のような気持ちで一緒に勉強することです。教師として強制的に問題をこなさせることは可能ですが、それでは勉強とは言い難いです。そのため一緒に勉強しようというポジションを取り続けました。
最後に生徒の力を信じる、ということです。本人が苦手だと言う科目でも、私は本気で得意になると信じていました。理由もあわせて本人に伝え続け、共に勉強を続けることで、受験前には本当に得意科目となりました。
シンプルに伝える
具体的には下記のようなことを行っていました。
・前提の説明をするときに難しい言葉を使わない
・解説をするときに色や図を使って視覚的にわかるようにする
・問題集はできるだけ見開きの情報量が少ないものを選ぶ
・その日に解く問題を限定して提示する
特に印象に残っているのは最初の授業で数学の因数分解について一緒に勉強した時のことです。初回の授業ということもあって生徒は私の様子をうかがっていましたし、数学への拒否反応が強かったです。数字や文字の羅列を見ても意味がわからないと言うので、因数分解についてマーカーを使いながら説明しました。すると先ほどまで落ち着きがなかった生徒が、私の話を聴いてくれている感触がありました。この時、自分にもわかりそうだと思ってもらえれば、話に耳を傾けてくれるということを感じ、別の苦手科目でもできるだけシンプルに少しずつでも理解できる範囲が増えるように説明することを心がけました。また、勉強にとりかかるモチベーションを下げないために問題集もシンプルなものを選び、その日に勉強する内容もできるだけシンプルに伝え、実践していきました。
戦友として一緒に勉強する
・強制的に問題を解かせない
・授業のための勉強(手間)を惜しまない
私の生徒は最初はとにかく勉強をしませんでした。音楽が大好きで勉強中も気になる動画を見始めたら止まらないですし、友人とのラインも活発で通知が入ればスマホに飛びついていました。そこでスマホを取り上げて強制的に勉強させることも可能ですが、それでは主体性がないので頭に入らないだろうと思い、そうはしませんでした。生徒がスマホを触っている間、私は勉強の説明に使用する図をかいたり、よりわかりやすい説明の仕方を考えたり、今後の勉強計画を見直したりとブラッシュアップに努めていました。すると急に我にかえったように生徒のほうから勉強をはじめることもありますし、なかなか勉強にかえって来ない場合は、「そろそろ再開する?」など声をかけていました。強制的に問題を解かせるのではなく、私もあなたの勉強のためにしっかり勉強をするよ、という姿勢を取り続けました。
生徒の力を信じる
・絶対に投げやりな態度はとらない
・できる、好きになれる、得意科目になると伝え続ける
(そう思う理由もあわせて伝える)
・障害になっている部分を見極め、潰しにかかる
やはりどうしても苦手な科目はあります。しかし、自己効力感が育てばよいなという考えから、テスト対策では解けそうな問題を集中的に練習し、「勉強すればできる」という感覚を持ってもらうようにしていました。そして苦手でありながら受験に必要であった古典は、最終的に絶対得意になると信じて接し続けました。どれだけできなくても絶対に投げやりな態度はとらず、根気強く一緒に問題を解き、解説し続けました。また、生徒は歴史が好きで古典常識になじみがあり、現代文が得意で文章の読解力があったことから、絶対に古典を好きになれると伝え続けました。そして問題を解く際にどこでつまづいているのかを注意深く見極め、基礎を固めることで障害を潰していきました。古文独特の助動詞や文法、古語のポイントをおさえた生徒は持ち前の読解力と歴史・文章を楽しむ力を発揮し、高校3年生の時には授業で周りから頼られるほど古典が得意科目となりました。
最後に
この記事では、家庭教師を行う上で信頼関係を構築するために意識していたことを3つ紹介しました。シンプルに伝えることでまずは話を聴いてもらい、戦友のように共に勉強し、生徒の力を信じ続けました。結果、生徒本人の頑張りとご両親の献身的なご協力のすえ、高校一年生のときにはE判定だった志望校に合格し、憧れの大学で大好きな歴史を勉強することができました。勉強嫌いな生徒でしたが、私のおかげで受験勉強を最後まで頑張れたと言ってくれたときには、誠意を持って向き合ってよかったと思いました。
最初にお伝えしたように、同じ生徒はいないので全員にあてはまることではないと思いますが、この記事は勉強が苦手な生徒さんと一緒に勉強する際の一助になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
