- 投稿日:2025/06/17
- 更新日:2025/10/26
はじめに
「鍼灸って興味はあるけど、何に効くのかわからない」
そう思われる方々は多いと思います。
今回は鍼灸が何に効くのか大まかに理解しやすいように西洋医学的観点からご説明させていただきます。なので、東洋医学的な内容(ツボや経絡)は割愛させていただきます。ご了承ください。🙇
⭕️筋肉のコリをほぐす効果
鍼灸と聞いて、まず思い浮かべるのが「筋肉のコリをほぐす」効果ではないでしょうか?
筋肉は、細い筋繊維が束になってできています。その筋肉は、ゴムのように柔軟な性質を持っているのですが、使われなかったり、逆に負荷がかかりすぎたりすると、血流が滞って酸素や栄養が届かなくなり、徐々に硬くなってしまいます。これが「コリ」と呼ばれる状態です。
鍼やお灸を用いることで、筋肉にごく微細な刺激を与えます。すると、その“傷”を修復しようとして血小板などの修復因子が集まり、血管が拡張。血流が促進されることで、酸素や栄養がその部位にしっかり届くようになり、筋肉は本来の柔らかさを取り戻します。
さらに、鍼に電気を流す「パルス鍼(通電療法)」を組み合わせると、より強力に血流を改善することができ、効果の実感もしやすくなります。
鍼灸の大きな魅力は、「身体の奥深くに、直接アプローチできること」。たとえば、耳の奥がかゆいとき、指では届かないけれど耳かきならピンポイントで届きますよね。鍼灸もそれと同じように、指やマッサージでは届きにくい部分にも的確に刺激を届けられるんです。
⭕️痛みをやわらげる効果
2つ目の効果は、「痛みの緩和」です。
これは、鍼灸の持つ大きな強みのひとつと言えるでしょう。
鍼を刺すと、身体の中では鎮痛物質(痛みを抑える成分)が分泌されます。この働きにより、痛みが和らいでいくのです。
痛みを抑える仕組みは1つではなく、いくつかのメカニズムが関わっていることが研究で分かっています。たとえば、専門的には「ゲートコントロール理論」「下降性疼痛抑制系」「軸索反射」といった用語で説明される現象があり、それぞれが痛みの伝達をコントロールしていると考えられています(※詳細はここでは割愛します)。
さらに、鍼や灸によって血流がよくなると、痛みを引き起こす「発痛物質」も血流に乗って流れ去っていきます。これも、痛みが和らぐ理由のひとつです。
また、鍼灸は薬を使えない状況の患者さんにも選ばれることがあります。たとえば、がん患者さんなどで強い痛みがあっても、薬の副作用や制限があるケースでは、鍼灸が痛みを和らげる選択肢のひとつになることもあります。
⭕️血流を促す効果
鍼灸には血流を促進する働きもあります。
鍼やお灸によって血管が拡張し、血液がスムーズに流れるようになると、疲れた組織や冷えた部位に新鮮な酸素と栄養が行き届きやすくなります。
そのため、施術後に「身体がポカポカしてきた」「手足が温かくなった」と感じる方が多くいらっしゃいます。特に冷え性の改善にも効果があるとされているのは、この血流改善によるものです。
イメージとしては、血液は身体の中を流れる川のようなものです。もしその川が渋滞していたり、途中で詰まっていたりすると、水(=血液)がうまく流れず、必要な場所に届きませんよね。
鍼灸は、その川の流れを整えて、全身に栄養や酸素がスムーズに巡るようにサポートする役割を果たしてくれます。
⭕️自律神経を整える効果
鍼灸には、自律神経のバランスを整える働きがあります。
自律神経とは、血圧や心拍、呼吸、胃腸の動きなどを24時間自動でコントロールしている神経のこと。車でいえば“オートドライブ機能”のような存在です。
ただこの自律神経、ストレスや疲れ、不規則な生活習慣によって簡単に乱れてしまうのが特徴です。
鍼やお灸による刺激を受けることで、交感神経(活動・緊張モード)と副交感神経(休息・リラックスモード)の切り替えがスムーズになり、身体が自然とリラックスしやすい状態に整えられます。
これは、私たちの身体が持つ恒常性(ホメオスタシス)=バランスを保とうとする働きが関係しています。
たとえば、自動車を運転するときには、アクセル(交感神経)とブレーキ(副交感神経)をバランスよく踏み分ける必要がありますよね。鍼灸はその自動操縦システムをいったんリセットして、スムーズな走行モードに戻すようなイメージです。
この自律神経の調整作用によって、
不安感や気分の落ち込み(うつ)といったメンタルの不調お通じの乱れや胃の不快感などの内臓症状などにも効果が期待されています。
⭕️免疫力を高める効果
鍼灸には、免疫力(=身体を守る力)を高める効果も期待されています。
私たちの体内には、**T細胞やNK細胞(ナチュラルキラー細胞)**といった「免疫細胞」が常に巡回しており、ウイルスや細菌、異常な細胞などから身体を守っています。
近年の研究では、鍼の刺激によってこれらの免疫細胞の数や活動が増加することが報告されており、鍼灸が体の防御力を高める一助になると考えられています。
実際に、
🧑「花粉症が軽くなった!」
🧑「風邪をひきにくくなった!」
👩「季節の変わり目でも体調を崩しにくくなった!」
といった声もよく聞かれます。
イメージとしては、免疫力は身体の中の「警備隊」のような存在。鍼灸は、その警備隊の人数を増やし、動きを活発にするサポート役です。
病気にかかりにくい、丈夫な身体づくりを目指すうえで、鍼灸は“日々のメンテナンス”としても取り入れられる存在なのです。
⭕️どんな疾患に効果があるの?
「鍼灸って、どんな症状に効くの?」と気になる方も多いと思います。
実は、WHO(世界保健機関)では、鍼灸の効果が示唆されている疾患・症状をまとめた「適応疾患リスト」を発表しています。
神経系疾患
• 神経痛
• 神経麻痺
• 痙攣
• 脳卒中後遺症
• 自律神経失調症
• 頭痛
• 偏頭痛
• めまい
• 不眠
• 神経症
• ノイローゼ
• ヒステリー
• 三叉神経痛
• 顔面神経麻痺
運動器系疾患
• 関節炎
• リウマチ
• 頚肩腕症候群
• 頚椎捻挫後遺症
• 五十肩
• 腰痛
• 腱鞘炎
• 外傷の後遺症(骨折・打撲・むちうち・捻挫)
• 坐骨神経痛
循環器系疾患
• 心臓神経症
• 動脈硬化症
• 高血圧
• 低血圧
• 動悸
• 息切れ
呼吸器系疾患
• 気管支炎
• 喘息
• 急性気管支炎
• 風邪およびその予防
• 急性副鼻腔炎
• 急性鼻炎
• 感冒
• 急性扁桃炎
消化器系疾患
• 胃腸病(胃炎・消化不良・胃下垂・胃酸過多・下痢・便秘)
• 胆嚢炎
• 肝機能障害
• 肝炎
• 胃十二指腸潰瘍
• 痔疾
• 食道・噴門痙攣
• しゃっくり
• 麻痺性イレウス
• 急性・慢性腸炎
• 急性細菌性下痢
代謝内分泌系疾患
• バセドウ病
• 糖尿病
• 痛風
• 脚気
• 貧血
生殖・泌尿器系疾患
• 膀胱炎
• 尿道炎
• 性機能障害
• 尿閉
• 腎炎
• 前立腺肥大
• 陰萎
• 月経困難症
• 月経異常
• 不妊(女性・男性)
• インポテンツ
• 遺尿症
• 尿失禁
• 夜尿症
婦人科系疾患
• 更年期障害
• 乳腺炎
• 白帯下
• 生理痛
• 月経不順
• 冷え性
• 血の道
• 不妊
耳鼻咽喉科系疾患
• 中耳炎
• 耳鳴り
• 難聴
• メニエール病
• 鼻出血
• 鼻炎
• 蓄膿症(ちくのう)
• 咽喉頭炎
• 扁桃炎
眼科系疾患
• 眼精疲労
• 仮性近視
• 結膜炎
• 疲れ目
• 霞み目
• ものもらい
• 白内障
• 近視
• 中心性網膜炎
小児科疾患
• 小児神経症(夜泣き・かんむし・夜驚・消化不良・偏食・食欲不振・不眠)
• 小児喘息
• アレルギー性湿疹
• 耳下腺炎
• 夜尿症
• 虚弱体質の改善
その他
• 肥満
• メニエール症候群
• 片麻痺
• うつ病
• 薬物中毒
• アルコール中毒
• 線維性筋痛
• テニス肘
• 手根管症候群
• 手術後や化学療法による吐き気・嘔吐、歯科の術後痛
• 脳卒中後リハビリテーション
注意点
ただし、ここで大切なのは、「鍼灸で病気が完治するというわけではない」ということ。
あくまで、症状がやわらぐ、体調が整う、日常生活が楽になるといった形で、補助的な役割を果たす場合があるということです。
また、すべての疾患や症状に対して、鍼灸が最初に選ばれる治療というわけでもありません。状態によっては、病院での検査や治療が優先されるケースもあります。
さらに、鍼灸が適応とされている症状でも、すべての鍼灸院・鍼灸師が対応できるわけではない点にもご注意ください。珍しい疾患や重篤な病気に関しては、対応経験が乏しいこともあります。
したがって、鍼灸治療を検討する際には、かかりつけの医師や専門医と相談のうえで進めるのが安心です。
また、症状やご希望に合った施術が可能かどうか、鍼灸院に事前に問い合わせてみるのもおすすめです。
最後に
鍼灸は、筋肉のコリや痛みをやわらげるだけでなく、血流の促進や自律神経の調整、免疫力の向上など、身体全体のバランスを整える働きがあります。
「なんとなく調子が悪い」「病院では異常なしと言われたけどツラい」と感じている方にとって、鍼灸はもう一つの選択肢になるかもしれません。
もちろん、すべての病気や症状が鍼灸だけで改善するわけではありません。症状によっては医師の診察が必要な場合もありますので、無理をせず適切に併用することが大切です。
まずは、気になる症状や体調について、信頼できる鍼灸師に相談してみてください。あなたの身体に合った、やさしいケアのヒントが見つかるかもしれません。
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