- 投稿日:2025/08/02
- 更新日:2025/09/30

「うちは財産なんて大してないし、相続で揉めることなんてないよ」
そう思っていませんか?
実は、相続トラブルは“お金持ちのご家庭”よりも、“ごく一般的なご家庭”で多く起きています。
大切なのは、「どれだけ財産があるか」ではなく、「どれだけ準備しているか」です。家族が揉めずに、スムーズに相続手続きができるように、今からできる対策を始めてみませんか?
① まずは現状把握から
自分の資産を正しく把握していますか?
相続対策の第一歩は、「現状把握」です。自分がどんな財産を持っているのか把握していない方は意外と多いです。
たとえば、こんな資産があります。
・不動産(自宅、土地、貸家など)
・現金、預貯金(タンス預金、銀行口座など)
・有価証券(株式、投資信託など)
・保険(死亡保険金、医療保険金など)
・その他(自動車、宝飾品、金地金、骨董品など)
特に注意したいのが「保険」です。誰が受取人になっているかで、相続の流れが大きく変わることもあるので、今一度確認してみましょう。
相続人は誰になるの?
また、自分の相続人が誰になるのかも確認しておきましょう。
まず、配偶者は必ず相続人になります。ただし、正式に婚姻している必要があり、内縁関係の方は相続人になれません。
配偶者以外の相続人については、相続人になれる順位が決まっています。第1順位は子ども、子どもがいない場合、第2順位は親、子どもも親もいない場合、第3順位は兄弟姉妹となります。
また、子どもが先に亡くなっていた場合には孫、兄弟姉妹が先に亡くなっていた場合には、甥や姪が相続人(代襲相続人)となります。
特に子どもがいないご家庭については、両親が先になくなっていた場合、配偶者と自分の兄弟姉妹や甥姪が相続人となりますので、注意してください。
② 財産の分け方
「平等」と「公平」は似て非なるもの
相続でトラブルになりやすいのが不動産、特に自分が住んでいる自宅です。
たとえば、
・長男は県外でマイホームを持ち、生活している
・長女は県内にいるが、嫁いで生活している
このような状況で、誰が自宅を相続するのか話し合わずにいると、「平等に分けたい」という気持ちがかえってトラブルの原因になることもあります。
平等=全員に同じ金額を分ける
公平=それぞれの貢献や事情を考慮して分ける
不動産は現金のように分けられません。代償分割(家を相続した人が他の相続人に現金を渡す)や、売却して現金化するなどの工夫が必要です。
とはいえ、田舎の土地や農地など、簡単に売れない不動産もありますよね。維持管理にもお金と手間がかかります。こうした不動産を誰かに引き継いでもらう場合には、「現金を多めに渡す」など、バランスを取ることも検討しましょう。
「財産が少ないから揉めない」って本当?
「うちの家庭は財産が少ないから揉めるはずがない」という考えは大きな誤解です。
最高裁判所が発行している『令和6年 司法統計年報 』によれば、相続争いと呼ばれる遺産分割事件のうち、4件に3件程度は遺産額が5,000万円以下の家庭で発生しています。財産が少ないからこそ「取り分が減る」ことに敏感になり、感情的な争いが起きてしまうのです。
家族仲が良くても油断は禁物
他にも、「うちの家族は仲が良いから揉めることはない」という考えの方もよくいらっしゃいます。
この場合も一見するとなんの問題もないように思えますが、家族間の仲は良くても、子どもの配偶者などいわゆる義理の家族が関与することで、相続争いになることが少なくありません。
③ 相続手続きの内容を理解しておく
相続手続きってそんなに大変!?
相続手続きはあなたが思っているよりも、時間と手間がかかります。
相続が発生すると、故人名義の預金口座や証券口座は凍結され、すぐには使えなくなります。その後の手続きは、相続人全員の協力が不可欠です。
主な相続手続きの6ステップ
主な相続手続きの流れは以下の通りです。
1.戸籍謄本を取得し、相続人を確定
2.銀行や証券会社から残高証明書を取得
3.財産が確定したら、相続人全員で財産分けの話し合いを実施
4.相続人全員の署名・実印+印鑑証明書を揃えて、各金融機関の口座解約
5.不動産については「遺産分割協議書」を作成し、法務局へ名義変更申請
6.相続税の申告・納税(該当する場合は10ヶ月以内)
証券口座は特にややこしく、故人が使っていた証券会社で相続人も新たに口座を作らなければならないケースが多いです。
また、相続人が遠方に住んでいる場合、協議書の作成や署名を集めるだけでも一苦労です。手続きには「時間」と「エネルギー」が必要です。
相続手続きは人生で何度も経験するようなことではないですし、大切なご家族を亡くされた中でこのような手続きを行うことは、相続人にとって身体面、精神面の両方で大変な負担となります。
④ 揉めない相続の秘訣とは
一番大切なことは、生前の話し合い
相続を円滑にする最大のカギは、生前に家族で話し合っておくことです。
・自宅は誰に継いでほしいか
・子どもたちにどう分けたいか
・介護をしてくれた人への感謝の気持ち
これらの想いを「言葉」にするだけでも、相続はぐっとスムーズになります。
財産を遺す側の想いも大切ですが、財産を受け取る側の想いも大切です。
遺す側は良かれと思って不動産を遺すようにしたものの、受け取る側は実は不動産を受け取りたくなかったといったこともよくあります。これらの想いの行き違いは、生前に話し合っておくことで解決することができます。
遺言の活用
さらに、想いとして伝えるだけでなく、遺言書という形で残すことで、法的にも家族の道しるべになります。
遺言書にはいくつか種類があり、公証人が作成する公正証書遺言が一番確実ですが、作成の手間と費用がかかります。
そこでおすすめなのが、「遺言保管制度」の活用です。遺言保管制度は自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる仕組みであり、手軽さと実効性のバランスが取れています。
遺言書は15歳以上であれば作成することができますし、いつでも内容を変更することもできます。「今日が人生で一番若い日」、あなたも遺言書を作成してみてはいかがでしょうか。
⑤ 知って得する!相続の豆知識
終身保険の意外な活用方法
終身保険は学長曰く「ゴミ保険」「ぼったくり保険」と呼ばれる、近付いてはいけないリストにも入っている商品です。もちろん私も学長の考えに共感していますし、保険会社や販売代理店が高額な手数料を徴収していることも理解しています。
しかし、そんな終身保険にも唯一といっていいメリットがあります。それは、相続においては「確実に現金を渡す手段」として有効であることです。
・保険金は受取人固有の財産となる
・財産分けの対象にならず、確実に受け取れる
・原則、遺留分の対象にもならない
「どうしてもこの人にだけ、確実に渡したい」という想いがあるなら、選択肢として検討してもいいかもしれません。仮に契約するなら、手数料が比較的安い一時払いの円建て終身保険にしておきましょう。ただし、生前に家族で話し合っておけば、保険に頼る必要もありませんので、やはり生前に話し合っておくことが何よりも大切です。
確実に遺しておきたいという想いはあるものの、それでもやはり終身保険の契約に抵抗がある方につきましては、次に説明する生前贈与を検討してみてはいかがでしょうか。
生前贈与の活用
生前贈与とは自分の財産を無償で他人に渡すことを指します。
生前贈与であれば、毎年110万円まで非課税で現金を渡せます。たとえば10年かけて贈与すれば、合計1,100万円まで贈与税がかからずに現金を渡すことが可能です。
ただし、一度にまとまった現金を渡すと贈与税が発生します。たとえば、500万円を一括で贈与すると、約48万円の贈与税がかかってきます。早めに計画し、時間を味方につけて、無理なく贈与を進めていきましょう。
まとめ:相続は「思いやり」の準備
相続は、「お金の問題」ではなく「家族の問題」です。特に子どもの立場からは、親に相続の話を切り出しづらいものです。だからこそ、親の方から話し始めてほしいのです。それが、子どもたちの負担を軽くし、残された家族の絆を守ることにもつながります。
・自分の財産を見える化する
・家族の想いを聞く・話す
・必要に応じて遺言や贈与も活用する
相続は「信頼貯金」の集大成。
今から少しずつ始めれば、きっと家族の未来に“安心”をもたらせます。まずは、できることから一つずつ始めていきましょう。
「家族が笑顔でいられる相続」、あなたも今日から準備してみませんか?