- 投稿日:2025/08/06
- 更新日:2025/10/15
◆ カバードコール戦略
「株式などの原資産(現物)を保有しながら、その資産を将来売却する“権利(コールオプション)”を売る投資戦略」のことです。
つまり、買う権利(コール)を売る=カバードコール。
「買う権利を売る」と言われても、すぐにピンとこない方が多いかもしれませんね。
インデックス投資を長期で行うだけなら、S&P500やオルカンのようなシンプルなインデックスファンドで十分です。
このまま回れ右で全然構いません。
ただ、ちょっと興味を持った方や高配当銘柄を探していた時に見掛けて疑問に思っていた方、より知識を深めたい方はこのユニークな仕組みを具体例を交えて見ていきましょう。
◆ 仕組み
この戦略は、次の3つのステップで成り立っています。
1.原資産の保有
まず、投資家は特定の株式やETFなどを原資産を保有します。これが「カバード(=覆われている)」という名前の由来です。
(例:A社の株を100株持っている)
2.コールオプションの売却
次に、保有している原資産のコールオプション(買う権利)を売ります。これは「この株を、将来ある特定の価格(権利行使価格)で売る権利を、他人に売る」ということです。 この権利を売った対価として、買い手からプレミアム(オプション料)を受け取ります。このプレミアムが、この戦略の主な収益源になります。
(例:A社株のコールオプションを売る)
3.どうなるか?
原資産の価格が権利行使価格を上回った場合
オプションの買い手は権利を行使します。あなたは、事前に決めた権利行使価格で株を売却することになります。
(例:A社株が手元からなくなるがプレミアムが手元に残る)
原資産の価格が権利行使価格を上回らない場合
買い手は権利を行使しません。あなたは、保有している株と受け取ったプレミアムを両方保持できます。
(例:A社株もプレミアムも手元に残る)
◆ メリット
◇ プレミアム収入の獲得
オプションを売却することで、継続的にプレミアム収入を得ることができます。これにより、原資産の価格が横ばいまたは緩やかに下落している局面でも安定した収益(プレミアム収入)を確保できる可能性がある。
◇ 下落リスクの軽減:
原資産が下落した場合でも、オプション料(受け取ったプレミアム分)だけ損失を軽減できます。
◆ デメリット・リスク
◇ 上昇益の限定
原資産の価格が権利行使価格を大幅に超えて上昇した場合、「超えた分の利益」が取れなくなります(=頭打ち)。権利が行使されると、事前に決めた権利行使価格で原資産を売却することになるためです。
◇ 原資産の下落リスク
オプション料(プレミアム)を上回る原資産価格の大幅な下落があった場合、「株の下落リスクは持ったまま」でトータルで損失を被る可能性があります。
◇ 複雑性
オプション取引は、通常の株式取引よりも仕組みが複雑です。権利行使価格や満期日など、複数の要因を考慮する必要があるため、十分に理解した上で行う必要があります。
◆ まとめ
◇ カバードコール戦略の本質
カバードコール戦略は、保有している株式やETFを担保に「将来売る権利(コールオプション)」を売り、その対価(プレミアム)を受け取る投資手法です。
「緩やかな株価上昇」や「横ばい相場」の時に、インカムゲインを積み重ねる戦略として有効です。
◇ 購入検討時の注意点
ただし、この戦略はオプション料を払って売買したい人がいるからこそ成り立つこの仕組みですが、「株価が大きく上がる局面では利益が制限される」ことや、「大きな下落時にはプレミアム以上の損失が発生する」リスクもあります。
いかがでしょうか?
カバードコール戦略を用いたETFや投資信託は、配当金+プレミアムが分配されるので通常の配当金より多く受け取れたり、プレミアムは毎月入るために毎月分配になる設定のものが多く大変魅力的です。
最近は、この戦略を使ったETF(例:JEPQ、QYLD、JEPIなど)も人気で、「配当金+プレミアムで高分配」「毎月分配」といった魅力をうたっています。
しかし、こうしたETFは「買う権利を売っている仕組み=利益の上限あり」という特徴を持ち、相場によっては期待したリターンが得られない可能性もあります。
インデックス投資で長期的な資産形成を目指すなら、S&P500やオルカンのようなシンプルな商品でも十分です。
「買う権利を売る」という、仕組みが分かりにくいカバードコール戦略の仕組みを理解して初めて、購入を検討する価値があると言えるでしょう。