• 投稿日:2025/08/17
  • 更新日:2025/10/09
【福祉】特別児童扶養手当と「所得制限の壁」

【福祉】特別児童扶養手当と「所得制限の壁」

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桜 梅子@サブカル療育論noteで発信

桜 梅子@サブカル療育論noteで発信

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要約
障害のある子を育てる家庭を支える特別児童扶養手当。 でも「所得制限の壁」で急に止まることも。 特別児童扶養手当の解説と所得制限に対する考え方を書きました。 ご参考にして下さい。

こんにちは、🌸桜🌸です。

障害のある子を育てる家庭にとって、特別児童扶養手当は生活や療育を支える大切な柱です。
しかし、この手当には「所得制限の壁」があります。
わずか1円の差で毎月3〜5万円がゼロになる──そんな現実が、働き方や生活設計に影響を与えているのです。

この記事では、制度の基本と具体的な金額、所得制限の問題点、そして現行制度でできる「壁」を避ける戦略、さらに制度そのものを改善するための提案までをまとめます。

1. 特別児童扶養手当とは?

障害のあるお子さんを育てる家庭に、国が毎月支給するお金です。
対象は20歳未満で、障害の程度が国の基準にあてはまる子。

1級(重い障害):月 55,350円

2級(中程度の障害):月 36,860円
(2025年4月時点)

たとえば1級の場合、1年間で 664,200円。
医療費や介助費用、療育に必要な教材や交通費の一部を補うことができます。


👉【福祉】障害児福祉手当と特別児童扶養手当──制度の理解と我が家の活用法

🌸 梅コラム🌸:制度誕生の背景

特別児童扶養手当が誕生したのは、今から半世紀以上前の1970年(昭和45年)。
当時の日本は、高度経済成長の影で、障害のある子どもとその家庭への支援がほとんどありませんでした。

戦後間もない頃は、障害児家庭は医療費も教育費もすべて自力負担。
生活は厳しく、特に母子家庭や低所得世帯では、障害児を育てながら働くことは非常に困難でした。

こうした中で制定されたのが、「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」です。

目的は明確で、

当初の対象は障害の重い子どもだけで、金額も現在より低額。
その後、1973年に精神障害児も対象に加わり、国際障害者年(1981年)を契機に対象年齢や基準が見直されるなど、少しずつ制度が拡大しました。

しかし、所得制限や併用制限といった創設当時の仕組みは今も残ったまま。
物価や生活環境が大きく変わった現代では、「創設の精神」に沿った見直しが求められています。

2.特別児童扶養手当の申請の流れ

スクリーンショット 2025-08-17 13.11.51.png申請のコツ

・診断書は有効期限があるため、取得時期を申請日に合わせる

・書類不備があると審査が遅れる

・所得制限や扶養人数は申請時にしっかり確認する

もらえるのはいつから?

支給は申請をした翌月分から始まります。
遡って支給されることは原則ありません。

例:

・6月15日に申請 → 7月分から支給

・6月1日に申請でも 6月分はもらえず、7月分から

そのため、条件に当てはまることがわかったらできるだけ早く申請することが大切です。

(💡 ポイント)

・診断だけでは支給されない(必ず申請が必要)

・診断と申請を同時進行で準備すると支給開始が早くなる

以下の文章は、特別児童扶養手当の所得制限に引っかかりそうな方に向けて書きました。
ご参考にしてください。

3. 所得制限とは?

この手当は、一定額以上の所得があると支給されないルールがあります。
判定は給与の総額ではなく、控除後の「所得」で行われます。

例:扶養1人の場合の所得制限はおおよそ約602万円(給与収入ベースではもう少し高め)。
扶養人数が増えると制限額も上がります。

最大の問題点は「崖ルール」。
1円でも超えると、満額支給から一気にゼロになるのです。

4.所得制限の壁がもたらす影響

働く意欲をそぐ
「超えたらゼロだから働きすぎない方がいい」という逆転現象が起こります。

生活設計が不安定
残業やボーナスで一時的に超えるだけでも翌年は支給ゼロ。月3〜5万円の収入減は生活に直撃します。

障害家庭の実態とズレ
医療費・福祉用具・通院交通費など健常児家庭より支出が多いのに、判定は単純な所得額だけ。

地域間の違い
制度の基準は全国一律ですが、必要書類や扶養親族の認定方法など運用面で自治体ごとの違いが生じることがあります

5.現行制度でできる「壁」を避ける戦略

5-1. 家族全体の働き方を調整する

所得判定は「請求者本人・配偶者・扶養義務者(生計を同じくする親族など)」の所得が対象です。
同居家族すべてではありませんが、合算対象者の勤務形態を調整し、年間合計所得が制限を超えないよう計画する方法です。

5-2. 扶養親族を正しく申告する

祖父母や兄弟姉妹など、実際に経済的に支えている家族がいれば、扶養親族として申告
扶養人数が増えると制限額が上がります。申告漏れは損になります。

5-3. 他制度との組み合わせ

所得制限で手当がなくなっても、自治体独自の障害児手当や医療費助成などで支援を補えることがあります。
「現金支給がなくても、サービスでカバー」という発想も有効です。

5-4. iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用

iDeCoの掛金は全額所得控除
わずかに制限を超えている場合、掛金で所得を下げ、支給対象に戻る可能性があります。

メリット

・所得を直接下げられる

・老後資金の積立になる

注意点

・60歳まで引き出せない(資金拘束)

・毎月掛金負担がある

・受け取り時には課税

・制度改正リスクあり

5-5. 生命保険料控除

生命保険料の一部は所得から差し引けますが、最大でも年間12万円程度の控除額です。
本質的に所得制限突破に大きな効果はありません
数万円〜十数万円分の所得減にしかならず、制限額を大きく超えている場合は効果が限定的です。

5-6. ライフプランは「収入変動前提」ではなく「支出の安定」を重視する

1年だけの支給に固執せず、複数年単位で働き方や所得を設計。

・支給がある年は生活支援費として貯蓄

・支給が止まる年は収入増を資産形成に回す
といった攻守の切り替え戦略です。

🌸梅コラム🌸

障害児の育児・介助がある家庭では、親が自由に働き方を変えられる状況は難しいのが実情です。

そのため、収入を増減させて支給の有無を調整するよりも、支出の予測と安定化を優先したほうが現実的です。

・固定費の見直し:住居費・通信費・保険料など、長期的に下げられる支出を削減

・突発費用の備え:医療費や用具購入など、発生時期が読みにくい支出は積立で対応

・手当停止時の予備資金:所得制限にかかった場合に備え、生活費3〜6か月分を目標に貯蓄

💡 ポイントは「収入の波で調整する」のではなく、「支出と備えで吸収する」発想です。

6. 就学援助との違い

特別児童扶養手当は「障害のある子を育てる家庭」への支援ですが、
似た制度として「就学援助制度」があります。
どちらも家計の負担を軽くするための制度ですが、目的と対象が大きく違います

就学援助は、障害の有無にかかわらず「経済的に厳しい家庭」の小・中学生を対象に、
学校生活にかかる費用(学用品費、給食費、修学旅行費など)を補助する制度です。

一方、特別児童扶養手当は、障害のある20歳未満の子を育てる家庭に、
生活全般の支援を目的として毎月定額を支給します。
使い道は自由で、学校費用以外にも医療費や交通費、療育にかかる費用など幅広く活用できます。

比較ポイント

対象
 特別児童扶養手当 → 障害のある20歳未満の子
 就学援助 → 障害の有無は問わず、小・中学生で家計が厳しい家庭

目的
 特別児童扶養手当 → 生活全般の負担軽減
 就学援助 → 学校生活にかかる費用の補助

支給内容
 特別児童扶養手当 → 毎月定額(例:1級55,350円)
 就学援助 → 実費補助(年数万円程度)

所得制限
 どちらもあり。ただし基準や計算方法は異なる

併用
 同時受給はできない

このように、特別児童扶養手当と就学援助は目的・対象が異なる制度であり、どちらを使えるかは家庭の状況と子どもの条件によって決まります。

まとめ

特別児童扶養手当は、障害のある子を育てる家庭にとって命綱のような存在です。
しかし「所得制限の壁」によって、生活や働き方が左右される現実があります。

特に娘・梅子のような重度発達障害を持つ子どもは、社会性が乏しく危険認識が育ちにくいので目が離せません。
母親が仕事に行くこともままならない状況です。

この記事が少しでも読んでくださった方のお役に立てれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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