- 投稿日:2025/09/17
- 更新日:2025/09/29

会社が滞納してもうるさくない順に払わない
私は従業員として会社の倒産を2度経験しています。そこでの体験を基にお話しします。
社会保険料
取引先に支払を遅らせるとクレームが入る訳ですが、それ以上に取引先が支払いに困るケースまで誘発させるのは心苦しい(そもそも払えれば払いたいのですが)。そこで一番に滞納になるのが社会保険料です。会社は従業員と折半で社会保険料を負担し源泉徴収で社会保険料を納めます。相手は国家ですから倒産することはありませんので、一番最初に滞納します。遅くなった分、遅延損害金が発生し年率14.6%の高い金利が課されます。
消費税等税金
不動産取引では10%の消費税が課されますが、支払に困っている会社は当然キャッシュに困っているので、取引金額の10%は大きな金額のため一度滞るとなかなか払えないです。また、法人は利益が出ていなくても毎年7万円課税されます。国税局から担当官が来て話し合いになります。国税局は事前に電話でアポイントを取ってくれるため、従業員への不安が広がらないように配慮してくれます。
家賃
いよいよとなると事務所の家賃です。事務所のオーナーさんは基本的に家賃の保証会社に入っていますので、督促に来るのは家賃の保証会社です。当然ですが代表者が連帯保証人になってますので、代表者の自宅にも督促が来ます。
取引業者
不動産取引における業者や不動産管理会社への支払が滞ると支払がない旨の電話が会社に入るようになり従業員の知るところになります。何ヶ月遅れかで支払っている状況になります。
従業員給料
ここで初めて従業員への給料が遅配になる旨が従業員に知らされます。ここまで色々払えなくなっていますので、かなり深刻な状況です。給料遅配は失業保険の会社都合退職に相当するため、諦めて退職する人も何人も出てきます。
会社の倒産、代表者の自己破産へ
会社の倒産を決断する際、破産法に基づいて地方裁判所に破産手続きの申し立てが必要になります。ここで弁護士に破産手続きの依頼をします。新型コロナウイルスの前の相場で60万円でした。ここに出てくる弁護士の先生を1人目の弁護士とします。この弁護士の先生は会社と代表者が依頼した弁護士ですからこちら側の弁護士先生です。しかし、会社の利害関係人は多数存在します。会社の従業員、金融機関、取引先等多数です。そこで地方裁判所は破産管財人の弁護士の先生を選任します。この先生を2人目の弁護士先生とします。この2人目の弁護士先生は不動産会社が開業する際に必要な供託金を報酬とします。日本国内では、公益社団法人全日本不動産協会(ハトのマーク)か公益社団法人全日本不動産協会(ウサギのマーク)に加入すると法務局への供託金が、主たる事務所(本店)の場合1,000万円→60万円となるのですが、この60万円を報酬にすることとなります。合計120万円がないと倒産手続きに入れないことになります。
倒産、自己破産は現代の徳政令!リセットボタンを押して再出発
株式会社や有限会社は代表者(株主)に有限責任のみの責任になります。つまり、出資分のみ無くなるだけです。一方で、代表者である社長が一緒に自己破産となるのは金融機関の融資に対し代表者が連帯保証人に入っているためです。金融機関では法人は目に見えない存在であり、その法人は代表者によって意思決定がされているため法個人一体として融資判断がされるのが一般的です。(近年これについては見直され、経営者保証を不要とする制度が始まっています。)一方で、税金の滞納は自己破産で免責されないのかと心配になる方もいらっしゃると思います。しかし、法人は、破産手続の終了により消滅し、法人格を失います。滞納税金等の債権も含めた一切の債権が消滅します。会社が破産した場合代表者が、滞納していた税金等の債権を支払う必要はありません。これが普通です。
でも・・・学長🐯がと思う方もいますよね。毎日ライブで学長🐯が若かりし頃、高額の追徴課税を課されて自己破産を考えたけれども許して貰えないことが分かった。1億税金を払うのに2億稼いで半分の1億納税してその残った1億で追徴課税を払ったと・・・。あのエピソードは学長🐯が紹介されて依頼した税理士がしっかり仕事してくれず、税理士を変えたというお話でしたね。悪質と認められた脱税は追徴課税を課されて自己破産では免責されないとされているためです。
売上不振で破産した場合は免責となるので大丈夫でしたよ。(免責というのは請求されないという意味です。借金がなくなったという意味ではないそうです。)
会社の破産と一緒に代表者の破産もやってもらえる
会社の破産手続きと一緒に代表者の破産も一緒にやって貰えるので追加の費用は発生しないようです。(当時の社長から伺ったので恐らく間違いないと思います。)また、99万円の金額を残して没収となりますが、この99万円は当面の生活費という側面があります。当時の代表者は破産手続きを終えた後不動産会社に再就職しています。さらに、過去に納めた年金が没収されることはありません。奥様や家族名義のお金も没収の対象外です。金融資本は没収されますが、ご自身の身体である人的資本、ご自身の周りの社会資本は没収されないことはご理解頂けるのではないでしょうか。お金を失って去って行く人は遅かれ早かれ去って行くと思われれば、どうということもないと思います。
地方裁判所での債権者集会も弁護士の先生にお任せして出席しなくても大丈夫と聞いています。
従業員は未払賃金立替払い制度で救済を受ける
2人目の弁護士先生によって従業員の未払賃金立替払い制度の手続きを進めて頂きました。この未払賃金も立替払いですから国が立て替えて法人に請求されます。しかし、破産しますので結果国家が支払うことになります。このことから考えても夜逃げはせずに破産手続きをすべきだと思うのです。夜逃げの場合は労働基準監督署が事実上の倒産として認めることとなります。この場合遅延損害金として年率14.6%の高い金利が課されますから、逃げられず見つかってしまった場合大変です。それこそ破産手続きへのお金もないと言う事態になりかねません。また、この2人目の弁護士先生によって従業員の厚生年金等社会保険料の支払い記録は、年金事務所で払い済みとして記録を訂正して頂きました。
※一方で私の2回の従業員としての会社の倒産はどちらも法人です。個人事業主の場合は異なるかもしれません。必ず専門家に相談してください。
未払賃金立替払い制度についてはこちらの記事をご覧ください。
結局元従業員は散り散り
みなそれぞれの再就職先に就くことが出来たようです。ただ、不動産業は選任の宅地建物取引士として登録する場合、破産者でないことの証明書が必要となります。この点代表者の再就職は難しいですが、営業職として不動産会社に再就職したと教えて貰いました。今日が一番若い日ですからまだまだみんなこれからです。
ここまでいかがでしたでしょうか?
このようなことを言ってはいけないのかもしれませんが、セーフティネットとして破産制度があって再チャレンジ出来る仕組みがあるのですから、どうしようもない場合はこの制度を使うのも選択肢のひとつだと思います。ご自身ではコントロールできない外部要因(大震災、リーマンショック、新型コロナウイルス等)もあります。制度を正しく理解して活用することは恥ずかしいことではありませんよ✨
もし万が一倒産するお金がなくてどうにもならない人へ
私の経験では最低120万円ないと倒産できません。しかし、既にそのお金さえない状態になってしまった場合、最適な相談機関は中小企業活性化協議会という公的機関です。各都道府県に一カ所設置されています。再生支援も行っていますので、お早めにご相談されれば何かしら手立てがあるかもしれません。また、いったん会社をたたんで再チャレンジ支援も行っています。通常ここまで来てしまうと商工会議所・商工会などの地域経済団体では手に負えないです。遠方の方は不便かも知れないですが相談されることをお勧めします。