• 投稿日:2025/08/26
  • 更新日:2025/09/29
賃金が未払のまま倒産→未払賃金立替払制度利用

賃金が未払のまま倒産→未払賃金立替払制度利用

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レベック@中小企業診断士10/26受験

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要約
賃金が未払のまま、勤めていた会社が破産手続きに入りました。既に事務所オフィスは退去し、実態としての会社は無くなってしまいました。結果的に会社所在地の労働基準監督署を通じて厚生労働省より立て替え払いが行われました。その経緯をお話しします。

会社の資金繰りが悪く給料遅配

私は2度勤めていた会社が倒産する経験をしています。どちらも給料遅配から問題が表面化していきます。もちろん、最初に支払を止めるのは税金や源泉徴収している社会保険料です。こちらは相手が国家のため大人の対応で社員の耳に入らずに支払交渉をしていきます。次に取引先との支払関係を止めます。ここも代表者自らが交渉して支払を猶予して貰います。従って従業員の給与支払いが滞るといよいよといった感じになってきます。

給与支払いの滞りで半分近くの社員は退職する

すぐ転職先が見つかりそうな若手や、お子さんがいらっしゃる社員の退職は早いです。もちろん会社が給料の支払いを期日通り守らないため仕方の無いことです。一方で会社の事務所は早々に移転することが出来ません。事務所の賃貸は住宅の賃貸と異なり多額の敷金と礼金が必要です。社員が少なくなったから事務所も小さいところに移転して家賃を抑えようなんて、直ぐに出来ることではありませんでした。

年末調整は貰っていない給料にも税金が課税される

未払給料であっても給料を貰う権利がある時点で課税がされます。貰っていないのに税金が掛けられるので、いわゆる給料を受け取ったものとして課税されます。

弁護士に相談して会社の破産を決断する

会社の代表者である社長が決断して、会社を破産法に基づいて倒産させることにしました。今現在(2025年)では会社と代表者の連帯保証を切り離せる制度が信用保証協会により進められていますが、当時はそのような制度はなく、いわゆる法個人一体として会社が破産したら代表者である社長も自己破産することとなります。社長からは生活費として99万円のみ残されて全て没収と聞いています。

弁護士主導で会社の整理が始まる

最期まで残った従業員に社長名での解雇通知書が配られた後、事務所家賃が払えないため事務所を引き払いました。もう目に見える形では会社はありません。登記簿謄本があるのみです。この後は、社長が依頼した弁護士から東京地方裁判所に申し立てを行います。裁判所はこの弁護士とは別の弁護士を破産管財人として選任して法的に破産処理を行います。運が良かったのはこの弁護士費用を残しておいたことでした。お金がないと倒産も出来ません。このことは最期まで残った社員を今後助けることに繋がりました。

各元従業員がハローワークにて失業保険申請を行う

会社都合退職の雇用保険被保険者離職票を持って従業員の住まいにあるハローワークに失業保険の申請に行きます。会社都合であるため7日間の待機期間の後、失業保険の受給期間になります。

誰でも良いから会社所在地の労働基準監督署へ行ってくれ

未払給料と1か月前予告解雇がなされなかった分の解雇予告手当として1か月分の賃金のうち、6か月分が厚生労働省から立替払いされます(簡単に言えば5か月分と解雇予告手当の1か月分の合計6か月分の賃金、一方で退職金制度がある会社の退職金分は対象外です。公的機関で行っている退職金共済制度は、公的機関が別途管理していますので受取が可能です。)そこで、職業訓練校に通いながら職業訓練校最寄りの労働基準監督署に相談に行きました。「最初は督促状を会社に出しましょう」と労働基準監督署の職員さんに言われたのですが、事務所は退去していて送り先となる住所がないと説明しました。すると、会社の住所を管轄する労働基準監督署に未払賃金を有する元従業員のうちひとりで良いので、退職後6か月以内に認定申請を行わないと、制度が適用されないと言われました。私は職業訓練校に通っていたため元同僚にお願いして認定申請をして貰いました。

※事業主が夜逃げの場合この制度を利用できるかという問題があります。いったん管轄の労働基準監督署に認定申請は行っておきましょう。事実上の倒産の場合には、労働基準監督署長が確認の必要があります。恐らく認定して貰えると思います。もし認定して貰えなかったとしても、取引先事業者が倒産した際に、売掛金などの回収が困難になったときの経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)も夜逃げが対象外なんです。私が商工会議所経営指導員として独立行政法人中小企業基盤整備機構共済相談室に電話相談した際には、第三者が法律上の倒産手続きを裁判所に申し立てるケースがないわけではないとの解答を頂いたことがあります。ご自身のコントロール範囲外ですが、認定申請だけは期限が切れる前に行っておきましょう。

東京労働局立替払事務処理センターからの呼び出し

破産管財人の弁護士の先生経由で会社が存在した管轄の労働基準監督所長名で、未払賃金の立替払いについて(ご案内)という書類が届きます。同封されているものと証明資料が求められます。

・確認申請書(未払賃金の詳細を記載する書類)

・上申書(雇用されていた状況等)

・本人確認書類

・給与口座の預金通帳(預かっているお金がないか確認するようです。)

・タイムカード等出勤日数や出勤時間が確認できる書類。

・未払賃金に関する質問書 (質問内容は以下の通り)

(1)賃金が未払である期間中どのように生活費をまかなわれていましたか?

(2)賃金の未払について代表者に督促しましたか?督促していた場合、どのような頻度で、どのように督促していましたか?

(3)賃金の未払について、労働基準監督署等へ相談しましたか?

訪問すると個別ブースで1対1で面談します。給料以外に入金された形跡がなければすぐ済みます。不動産会社でしたので歩合で報酬を貰っていた従業員は細かく審査されたそうです。

労働基準監督署名で確認通知書、未払賃金の立替払請求書(控え)

確認通知書と請求者控用として未払賃金の立替払請求書(控)を郵送で頂きました。この後東京地方裁判所より債権者集会の開催通知が届きましたが、立替払いにより救済されるため、返送等の対応はしませんでした。

この後、私が指定した金融機関の預金口座にお金が振り込まれていました。

残念ながら元同僚のうち1名だけ全額の立替払いがされなかった。

未払賃金の立替払いは額面の8割補償ですが、遅延損害金の加算金額が補償されます。ただし、年齢によって上限があり20代の元従業員が1人、他の元従業員よりも低い金額での補償となりました。立替払いも年齢によって上限額が定められているため確認しましょう。

未払賃金立替払い制度の表の見方

厚生労働省 未払賃金立替払制度の概要と実績

スクリーンショット 2025-08-30 095445.png1.未払賃金総額の限度額

2.立替払の限度額(未払賃金に8割を掛けた金額)

以上により算出された金額に加えて、遅延損害金を上乗せした金額です。

実際に私が受け取った金額の計算式

基本賃金+時間外割増賃金+通勤手当+資格手当=合計金額

合計金額と220万円のいずれか低い額×0.8=未払賃金立替払いの金額

未払賃金立替払いの金額+遅延損害金の金額=私の銀行口座へ入金金額

以上となります。お気づきでしょうか?この金額は額面です。通常ですとここから社会保険料や税金を源泉徴収されるはずですが、引かれる前の金額で計算されています。後述の破産管財人の先生によって社会保険料は支払い済みで手続きがなされています。また、所得税や住民税は給料での受取ではなく退職金の受取となったため、退職所得として処理されます。私の実感としては実質ほぼ100%の補償対応となっているかと思います。一方で私はあくまでも制度利用者です。この分野の専門家ではありませんので、実際に利用される場合は労働基準監督署や社会保険労務士等にご相談ください。

破産管財人の弁護士の先生が活躍

法的に整理したことにより社会保険料を会社が払っていなかった分は支払い済みとして弁護士の先生が手続きをして頂きました。これが法的整理をするかしないかの大きな違いと思っています。一方、未払給料が発生している時点での年末調整の修正は上手く出来ませんでした。弁護士の先生は税理士ではなく、経理担当者も我々と同じように職を失っている上に、経理会計ソフトが入ったパソコンは破産管財人の先生の手元にあるため、修正した年末調整書類の作成は困難でした。倒産前年の納税については諦めざるを得ませんでした。

おわりに

最近は私の倒産による失業経験を記事にしています。嫌な経験であり好き好んでした経験ではありません。この経験で国のセーフティネットの政策によりサラリーマンが安定していると感じると共に、他人によっていくらでも人生が転がってしまうとも感じました。今回の経験が個人で独立してやりたいという気持ちをより強く持つきっかけになりました。

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