- 投稿日:2025/10/03

はじめまして!看護師のゆずと申します🍊
これまで急性期病棟や救急外来等で7年間働き、人生で2度心臓マッサージを行った経験があります。
今回は、救急蘇生法=人の命を守るために必要な知識と手技について、解説していきたいと思います。
7月にリベシティに入会し、様々な方のお話を聞く中で感じたことがあります。
リベシティには、
「大切な人との未来のために」
お金の勉強や資産形成を頑張っている方がたくさんいるなあと。
本記事では、救急蘇生法について、一般の方向けに解説していきます。
(決して簡単ではないけれど)誰にでもできる命を救う方法を、皆さんの心情に寄り添いながら、経験を交え、かなり具体的に行動レベルで示しました。
大変辛い状況ですが、大切な家族や友人が突然倒れたとき、その命を守るために自分が助けるしかない状況を想像しながら、読んでいただけますと幸いです。
※日本救急医療財団心肺蘇生法委員会監修『救急蘇生法の指針2020市民用』を参考にしています。
救急蘇生法とは:分類をちょっとだけ解説
市民が行う救急蘇生法は、一次救命処置とファーストエイドに分かれます。
一次救命処置とは、突然の心停止、もしくはこれに近い状態になった傷病者を社会復帰に導くための方法のことで、主に以下の3つの処置を指します。
①心肺蘇生(胸骨圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸)
②AED(自動体外式除細動器)の使用
③気道異物除去法(食べ物などがのどに詰まって呼吸が出来なくなった場合、のどに詰まった物を取り除くための方法)
一方、急な病気やけがをした人を助けるために最初に行う一次救命処置以外の行動をファーストエイドといいます。例えば熱中症への対応や、出血に対する圧迫止血などが含まれます。
今後、ノウハウ図書館でこれらに関する記事を投稿していきたいと考えていますが、今回は一次救命処置の心肺蘇生・AEDについてそれぞれの手順を説明していきます。
誰かが突然倒れるところを目撃したり、倒れているところを発見し、周囲の安全を確認できている状況を思い浮かべてください。
倒れている人を見つけてからの手順
①反応を確認する
傷病者の肩をやさしくたたきながら大声で呼びかけます。
目を開けるなどの応答や目的のある仕草があれば、「反応あり」と判断します。なければ「反応なし」です。
突然の心停止が起こった直後にはけいれんが起こることもあります。ピクピクと体が動いていても、呼びかけに反応しているわけではない場合、「反応なし」と判断します。
「反応なし」もしくは、反応があるかないかの判断に迷う場合、またはわからない場合も心停止の可能性を考えて次の行動にうつります。
②119番通報をしてAEDを手配する
「誰か来てください!」などと大声で叫んで応援を呼びます。
そばに誰かがいる場合は、119番通報を、さらにもう一人以上いる場合は、AEDを持ってくるよう頼みます。
そばに誰もいなければ、自分で119番通報をします。
119番通報をすれば消防庁につながりますので、聞かれたことに、落ち着いて答えます。
①(消防庁です。火事ですか。救急ですか。)「救急です。」
②(救急車が向かう住所を教えてください。)「〇〇市××・・・です。」
③(どうしましたか?)「人が倒れました。」
④(名前を教えてください。)「〇〇(電話をかけたあなたの名前)です。」
ここまで伝えれば、まず救急車は向かってくれます。あとは電話口の指示に従い、問いかけに応じましょう。
ここで問題になるのは、住所が分からない場合です。
施設内にいるならその施設名を伝えればOK。
屋外にいるなら、傷病者から離れず、救急車が来る住所の目印を探してみます。
具体的には次のような目印です。
・信号機(交差点名)
・周囲の店舗の支店名
・住所が表示されている家の表札
・駅、トンネル、橋の名前
・高速道路なら〇〇(数字)キロポストと書かれた看板
今いる自分の場所から見て、すぐにこれらが見つからない場合は、スマホで調べましょう。
例えばGoogle Mapsの場合、その地点を長押しすると住所が表示されます。
一度、ご自身のスマホで使用しているマップで、現在地の住所をどのように調べるか、確認しておくことをおススメします😊
また、すぐ近くに確実に使えるAEDがあり、その施設が施錠されていないであろうことがわかっている場合、電話をかけながらAEDを取りに行きます。
分かりづらいと思うので、順を追って説明します。
まず、AEDは主に、次のような場所に置いてあります。
・医療機関(病院や診療所、歯科医院)
・公共施設(学校や市役所、スポーツセンター、公民館)
・ターミナル駅
・デパート、コンビニ、ドラッグストア
・マンションの共用部、遊園地やホテルなどの観光施設
また、財団全国AEDマップを見れば、現在地周辺でどこにAEDがあるか分かります。(ぜひスマホのホーム画面に入れておくことをおススメします。)
しかし、(情報が古いなどで)上記の施設に必ず置いてあるとは限りません。
さらに、置いてあっても、夜間休日等で施錠されていれば使用できません。
分からない場合は、傷病者のそばにいて、心臓マッサージを開始した方がよい可能性があります。
ここの判断(AEDを自分で取りに行くか行かないか)は、すごく難しいと思います。
私自身が、今住んでいる郊外部でそういった事態になったら、
大声で叫びながら119番通報をしながら心臓マッサージを開始するかな、と思います。
私の住んでいる周辺なら、叫べばたぶん誰かしらは来てくれると思うからです。その誰かにAEDを取りに行ってもらいます。逆に、叫んでも誰も来てくれないような場所であれば、AEDを探しに行くのは賢明な判断ではないでしょう。
というわけで、すぐ近くに確実に使えるAEDがあり、その施設が施錠されていないであろうことがわかっている場合、電話をかけながらAEDを取りに行きましょう。(AEDを置いてある施設の方に助けを求めることもできますしね。)
そうでなければ、できれば電話で話しながら、次の手順にうつります。
③普段どおりの呼吸があるか確認する
傷病者の上半身をみて、10秒以内で胸と腹の動き(呼吸をするたびに上がったり下がったりする)を観察します。呼吸をしていない、またはしゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸である、と判断した場合は心停止と考えて、ただちに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を開始してください。
しゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸というのは、「死戦期呼吸」と呼ばれるもので、突然の心停止直後にみられることがあります。
「死戦期呼吸」の参考動画(動画はshishin2020_shimin_hp.pdfより引用)
約10秒かけても普段どおりの呼吸かどうか判断に迷う場合、またはわからない場合も心停止とみなして、ただちに胸骨圧迫を開始してください。
心停止でない傷病者に胸骨圧迫を行ったとしても重大な障害が生じることはないとされていますので、ためらわずに胸骨圧迫を開始してください。
そうは言っても多分、皆さんはこの時こう思うでしょう。
「本当に心臓マッサージしていいの?」
私も、思いました。
私が心停止の発見者だったときです。
場所が病院で、自分は看護師6年目で、その患者さんはもともと具合が悪く、心電図モニターを貼っていて有効な心拍がみられない、呼吸も脈も確認できない、という、もうどう考えてもすぐに胸骨圧迫が開始される状況なのに、ベッドの上に膝を乗せながら、1.5秒迷いました。
人の心臓を押すんですもん。心臓って胸骨という硬くて厚い骨で守られてるんですけど、その先にある心臓が動くように力を込めて押すんですもん。時には肋骨が折れるくらいに。
一般の方にとっては、もう本当に、怖いと思います。
でも、大丈夫です。その状況になったら、もうやるしかないんですよ。できます。体が勝手に動きます。
もし、傷病者の方に心臓マッサージが必要ない状態だったら、痛がったり嫌がるような素振りが見られます。そうじゃなければ、自信を持って続けてください。
というわけで、胸骨圧迫の方法です。
④胸骨圧迫を行う
胸骨圧迫(心臓マッサージ)によって、止まってしまった心臓を物理的に動かすことで、心臓や脳に血液を送りつづけることができます。これにより、AEDによる心拍再開の効果を高めたり、脳の後遺症を少なくする可能性があります。
ここから胸骨圧迫の手順を説明しますが、どこの説明を受けても大体同じことを教えてくれますので、YouTubeなどで動画を見た方が分かりやすいかもしれません。(飛ばす方は次の項目⑤人工呼吸へ)
胸骨圧迫のやり方
乳頭と乳頭のちょうど真ん中を、両手を重ね、下の手のひらの付け根で押します。(指や手のひら全体に力が加わると肋骨骨折のリスクが高まります。)
垂直に体重が加わるよう両肘をまっすぐに伸ばし、圧迫部位の真上に肩がくるような姿勢をとります。
傷病者の胸が約5㎝沈み込むように強く圧迫します。(圧迫の強さが足りないと十分な効果が得られません。)
子どもの場合は、胸の厚さの約1/3沈み込む程度に圧迫します。両手では強すぎる場合は片手で行ってもよいです。
💡強さの程度は、文章では分かりづらいと思います。ぜひ、講習会などを受けてモデルで体験してみてください。
圧迫のテンポは1分間に100~120回です。アンパンマンのマーチ(そうだ♪おそれないで みんなのために♪)のテンポを参考に、というのが有名です。
圧迫と圧迫の間は、胸が元の高さに戻るように十分に圧迫を解除します。手は傷病者の胸に当てたまま、手が離れて宙に浮かないように注意します。
上記のような胸骨圧迫を繰り返すのは大変疲れます。
疲れてくると気がつかないうちに弱く、遅くなってしまいますので、ほかに手伝ってくれる人がいる場合は、1~2分を目安に役割を交代します。
交代による胸骨圧迫の時間をできるだけ短くするため、胸骨圧迫している方が「イチ、ニの、サン!」と声を出し、タイミングを合わせて交代します。
⑤胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の組み合わせ
講習を受けて人工呼吸の技術を身につけていて、人工呼吸を行う意思がある場合には、胸骨圧迫に人工呼吸を組み合わせます。
人工呼吸のやり方に自信がない場合や、人工呼吸を行うことにためらいがある場合には、胸骨圧迫だけを続けます。
窒息や溺水による心停止、子どもの心停止、救急隊が到着するまでに時間がかかる場合などでは、人工呼吸も組み合わせた心肺蘇生を行うことが強く望まれます。特にお子さんがいる方など、講習会で訓練を受けておくことをおススメします。
人工呼吸をする自信がない方は、この項目は流し見してください。
人工呼吸は、気道確保ができていることが重要です。
のどの奥を広げ、空気の通り道を確保することを気道確保といいます。
片手で傷病者の額を押さえながら、もう一方の手の指先を傷病者のあごの先端、骨のある硬い部分に当てて押し上げます。
気道を確保したまま、自分の口を大きく開いて傷病者の口を覆って密着させ、息を吹き込みます。このとき、吹き込んだ息が傷病者の鼻から漏れ出さないように、額を押さえているほうの手の親指と人差し指で傷病者の鼻をつまみます。
息は、傷病者の胸が上がるのが見てわかる程度の量を約1秒間かけて吹き込みます。吹き込んだら、いったん口を離し、もう一度、口で傷病者の口を覆って息を吹き込みます。
胸骨圧迫30回に対して、2回の息の吹き込みを行います。人工呼吸をする間は胸骨圧迫が中断されますが、その中断は10秒以上にならないようにします。
吹き込みを2回試みても胸が1回も上がらない状況が続くときは、胸骨圧迫のみの心肺蘇生に切り替えます。
⑥AEDを使用する
AEDを取りに行った場合、AEDが設置されているボックスを発見したら、ボックスを開けます。すると警告ブザーが鳴ります。ブザーは鳴りっぱなしにしたままでよいので、すぐに傷病者のもとに持参してください。
AEDが到着したらただちに、AEDを使用する準備をします。
その場に2人以上いれば、1人は胸骨圧迫し続けながら、もう1人がAEDの準備をします。
自分しかいなければ、AEDの準備を優先します。(AEDがあって自分ひとりしかいない状況はあまりない気がしますが。)
まず、AEDのふたを開けます。ふたを開けると自動的に電源が入るタイプと、ボタンを押して電源を入れるタイプがあります。
電源を入れたら、以降は音声メッセージなどに従って操作します。焦らず、音声をよく聞いてください。
傷病者の胸をはだけて、電極パッドを貼り付けます。
胸をはだけるのが難しければ、ためらわずに衣服を切ります。一般的に、AEDにはハサミが付属されています。
AEDのケースに入っている2枚の電極パッドを袋から取り出し、まず片方の電極パッドを保護シートから剥がして、胸の右上(鎖骨の下、胸骨の右)に直接貼り付けます。次にもう一方も同様の手順で、胸の左下側(脇の下から5~8㎝下、乳頭の斜め下)に貼り付けます。
電極パッドは肌に直接貼り付け、しっかり密着させます。下着が邪魔になる場合には、下着を切るか、ずらして、電極パッドを貼り付ける部位の肌を露出させます。
幼児や乳児には、もしあれば、未就学児用パッドや未就学児用モードを使用します。なければ大人用パッドを使用してください。
電極パッドを肌に貼り付けるとき、傷病者の胸が濡れていたら、乾いた布やタオルで胸を拭いてから電極パッドを貼り付けてください。(AEDにタオルも付属されていることがあります。)
電極パッドを貼り付ける位置に湿布薬や貼り薬などがある場合には、まずこれらを剥がし、さらに肌に残った薬剤を拭き取ってから、電極パッドを貼り付けます。
皮膚の下に心臓ペースメーカーや除細動器を植え込む手術を受けている傷病者では、胸に硬いこぶのような出っ張りがあります。電極パッドは出っ張りを避けて貼り付けてください。
電極パッドが肌にしっかり貼られると、「体から離れてください」などの音声メッセージとともに、心電図の解析を始めます。
このとき初めて、胸骨圧迫を中断します。AEDから「体から離れてください」と言われるまでは、胸骨圧迫(と人工呼吸)を繰り返しながら、電極パッドを貼るなどの準備をします。
心電図解析の結果、電気ショックが必要な場合には、「ショックが必要です」などの音声メッセージとともに充電が開始されます。
充電が完了すると、連続音やショックボタンの点灯とともに「ショックボタンを押してください」など電気ショックを促す音声メッセージが流れます。誰も触れていないことをもう一度確認して、ショックボタンを押します。
2021年7月に、ショックボタンを押さなくても自動的に電気が流れる機種が認可されました。「体から離れてください」と言われたら、必ず離れて待っていてください。
電気ショックが行われると、AEDから傷病者に強い電気が流れ、身体が一瞬ビクッと突っ張ります。
電気ショックのあとは、ただちに胸骨圧迫から心肺蘇生を再開します。「ただちに胸骨圧迫を開始してください」などの音声メッセージが流れるので、これに従ってください。
AEDから「ショックは不要です」と音声メッセージが出たら、ただちに胸骨圧迫から心肺蘇生を再開してください。(心肺蘇生が不要なわけではありません。)
AEDは2分おきに自動的に心電図解析を始めます。電極パッドは常に貼ったままで心肺蘇生を続けます。
⑦心肺蘇生を続ける
心肺蘇生は到着した救急隊員と交代するまで続けることが大切です。効果がなさそうに思えても、あきらめずに続けてください。
心臓マッサージの目的は、心臓が再び動くために、の他に、心臓が停まっている間、代わりに物理的に心臓を動かして心臓や脳に血液を送り、機能を保つため、が大きな理由です。ですから、心肺蘇生をしている間に心臓が再び動き出さなければ意味がなかったなんてことは、全くありません。
まとめ
以上、倒れている人を見つけてから、救急車が来るまでの動きを、経験をまじえながら解説しました。
あなたの勇気ある一歩が、大切な命を救う力になります。
完璧にできなくても大丈夫です。胸骨圧迫を続けるだけでも、生存率は大きく変わります。
この記事が、皆さんや皆さんの大切な人を守るための一助となれば幸いです。
有識者の方、経験をされたことがある方からのコメントもお待ちしております。謙虚に受け止めますので、ぜひご指摘ください。
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