- 投稿日:2025/10/05
- 更新日:2025/10/08

叔父の孤独死により、賃貸の「保証人」だった夫に死後の手続きと清算の全責任が突然降りかかりました。
叔父が「もしもの為に」と遺してくれた200万円がなければ、私たちは限界だったでしょう。
夫が経験した過酷な日々の記録と、動いたお金の全てを記します。
📱突然の電話と、動けない週末
土曜の夜8時、警察からの着信
土曜日の夜8時。夫の携帯電話が鳴りました。相手は警察署でした。
「叔父様が、ご自宅で亡くなっているのが見つかりました」
新聞配達員が、ポストに溜まった新聞を不審に思い管理会社へ連絡。
駆け付けた職員が、玄関で倒れている叔父を発見したとのこと。
死後、数日が経過しているようでした。
夫は賃貸保証人になっていたため、連絡が入ったのです。
高齢者は賃貸の保証協会が使えず、夫が保証人
夫が保証人になった経緯は、まさに「高齢者の賃貸問題」そのものでした。
叔父は高齢を理由に一般の保証会社の審査に通らず、部屋を借りるために夫が個人の保証人になるしかなかったのです。
ちなみに、リベシティ会員で日頃からお金の話をする私に対し、夫は「お前は金の話ばかりだが、人の心は金じゃない」と少し顔をしかめるタイプ。
根っからのお人好しで、困っている人を見ると放っておけず、頼まれごとは断れない性格です。
そんな夫の性格を知ってか、他の兄弟から保証人を断られてしまった叔父が、最後に「頼む、なってほしい」と頭を下げに来たのです。
夫が高齢の叔父の保証人を引き受けたのは、そんな経緯からでした。
遺体と対面できず、警察も動けない現実
遺体の発見が土曜日だったため、事態はすぐには進みませんでした。
休日が挟まったため、遺体は警察署の安置施設に保管されたまま。
遺体の損傷が激しく、私たちは叔父の顔を見ることなく、火葬の際に葬儀社が遺体袋のまま棺に納めるという現実を受け入れるしかありませんでした。
部屋の惨状と、費用負担の始まり
5万円の死亡診断書と、最初の現場確認
週が明け、夫は病院で死亡診断書を発行してもらい警察へ提出。
費用は5万円。
医師は検視をしたわけではなく、状況から死を判断した、老衰です。と淡々と告げたそうです。
夫はそのまま市役所で死亡届を提出。
火葬を終えた日、夫と親戚は警察から部屋の鍵と叔父の所持品を受け取り、初めて部屋の確認へ向かいました。
「部屋は荒れている可能性が高い。血痕もあるかもしれないから、土足で入ってください」
警察官の助言通り、夫と親戚はブルーシートを手に、恐る恐るドアを開けました。幸い玄関で亡くなっていたため、想像していたような惨状はありません。
しかし、室内は警察の現場検証でひっくり返され、叔父がヘビースモーカーだったため、壁や天井はヤニで茶色くベトついていました。
この日は状況を確認しただけで、部屋を後にしました。
防護服での遺品整理
警察から最初の電話があった日から1週間後、夫と親族数名で本格的な遺品整理に臨むことに。
感染症のリスクも考え、全員が防護服を着用。室内に残された家財を分別し、貴重品や思い出の品を運び出しました。
この作業は、精神的にも肉体的にも過酷なものでした。
最大の難関「原状回復」という120万円の壁
保証人として最も重くのしかかるのが、この「原状回復費用」の清算です。
9月27日(土)、不動産管理会社の担当者と、紹介された清掃業者が立ち会い、見積もりが行われました。
提示された金額は、安く見積もって以下の通りです。
遺品片付け費用:約200,000円
原状回復費用(予算):1,000,000円
問題は、長年の喫煙によるヤニ汚れでした。壁紙の全張り替え、備え付け家具のヤニ落としは必須。
業者からは「床までヤニが染み込んでいる。床材を全て剥がして張り替えるならさらに数十万円は見てほしい」と告げられました。
合計120万円。まさに「壁」でした。
せめてもの救いは、リフォーム担当者から「既存の床の上に新しい床材を重ね張りすれば、費用を抑えられるかもしれない」という提案があったこと。
最終的な金額はまだ確定していませんが、私たちはこの言葉に一縷の望みを託しました。
「もっと交渉すれば安くなるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、かなり疲弊して余力がないのが現実です。
同時進行する行政手続きと、最後の別れ
部屋の片付けと並行して、夫は様々な手続きに奔走しました。
🔸インフラ・金融機関:片付けのために電気・水道は契約を継続。銀行に連絡すると、窓口で手続きしない限り口座は凍結されないとのこと。光熱費の引き落としが残っていたため、しばらく口座はそのままにしました。
🔸相続相談:司法書士に相談し、今後の相続手続きについてアドバイスを受けました。
🔸年金・車:社会保険事務所に年金の受給状況を確認。警察が探し出してくれた叔父の車は、親戚が引き取ることになりました。ただ、バッテリーが上がっており、交換費用として27,000円が発生。
🔸47万円の永代供養と、9万円の会食
火葬の際、私たちはお骨を持ち帰らず、永代供養を依頼しました。
9月28日(日)、永代供養を依頼した宗教施設へ(神式)。
名前が刻まれた札と、叔父の写真や時計といった遺品を棚に納めました。費用は470,000円。
その後、親族10名ほどでささやかな会食の席を設け、叔父を偲びました。費用は90,000円でした。
【費用総額】「200万円の壁」の内訳
最終的に、叔父の死後処理で夫が支払った、あるいは予算として確保した費用の概算です。
費用項目金額(概算)備考
✅不動産屋への原状回復費用 1,000,000円 (予算)
✅永代供養の費用 470,000円
✅遺品片付け費用 約200,000円
✅親族の会食代 90,000円
✅死亡診断書作成費用 50,000円
✅故人の車(整備費)27,000円
✅遺体袋代(警察へ返却)10,000円警察に新品を返却するための費用
✅司法書士への支払い 180,000円
合計(概算)2,027,000円
この約200万円という金額は、叔父が残してくれた200万円があったからこそ、何とか支払うことができました。
最後に:これは、誰にでも起こりうる
独居の親族を持つ、あるいは、ご自身の将来に一抹の不安を覚える。
もしそうであるならば、この記録が「他人事」ではないことをご理解いただけたかと思います。
私たちの経験が少しでもお役に立てば幸いです。
【補足】現場でわかった、手続きのリアルな裏側
ここまでが手続きと費用の大きな流れですが、最後に、実際に動いたからこそ分かった細かな点や、数字には表れない負担について補足します。
👮警察や行政とのやり取り
警察とのやり取りは、想像以上に複雑でした。
担当は若手の警察官でしたが、最終的な判断は県警の指示を仰ぐため、上司の確認が入るたびに言うことが変わり、必要な書類や日程の調整で10回以上電話を重ねました。
社会保険事務所での年金手続きは、電話と郵送(年金手帳を送付)のみで完結し、一度も出向く必要がありませんでした。
🏦銀行口座の凍結について
銀行口座の凍結は、意外にも親族が「止めてください」と申し出ない限り、自動的には行われないとのことでした。
これは地域や金融機関によってルールが違う可能性が高いため、必ず確認が必要です。
私たちは、光熱費などの引き落としがまだ残っていたため、しばらく口座はそのままにしておきました。
数字に出ない、本当の負担
そして最も伝えたいのが、数字に表れない負担です。
記事で算出した費用には、親族が動いた交通費や、仕事を休んだことによる負担は一切含まれていません。
平日に有給休暇を取って親族に集まってもらい、遺品の運び出し、火葬場への立ち会い、部屋の下見などを一日で一気に済ませる必要がありました。
こうした時間的・精神的な負担こそが、最も重いものだったかもしれません。