- 投稿日:2025/10/05

老後の年金を「早くもらう」か「あとで増やす」か
——迷う方も多いと思います。
今回は、「繰上げ請求」と「在職老齢年金」の関係について、整理していきます😊
(在職による支給停止額の計算方法は令和7年度の金額です。)
繰上げ制度とは?
老齢年金(基礎年金・厚生年金)は原則65歳から受け取りますが、
60歳から最大5年前倒しで受け取れる制度が「繰上げ請求」です。
ただし、早くもらう分、年金額は一生減額されます。
1か月繰り上げるごとに0.4%減額(昭和37年4月2日以降生)され、
たとえば60歳(5年繰上げ)で請求すると 24%減額 になります。
⚠️昭和37年4月1日以前生まれは1ヶ月繰り上げるごとに0.5%減額
<イメージ図>
(日本年金機構H Pより)
老齢厚生年金のどの部分が減額されるかというと、
✔️ 老齢基礎年金
✔️ 老齢厚生年金の「報酬比例部分」
✔️ 経過的加算額(差額加算)
です。つまり、老齢年金全体がまるごと減額されるイメージです。
繰上の注意点(デメリットなど)は日本年金機構HPを参照ください。
在職老齢年金制度とは?
一方、「在職老齢年金」制度とは、老齢厚生年金を受けている人が、働きながら厚生年金に加入している人の年金を給与等に応じて減額する仕組みです。
簡単にいうと、給与+年金の合計額が一定額を超えると、年金の一部が減らされるという制度です。
(日本年金機構HPより)
用語の説明
⚫︎総報酬月額相当額
(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
⚫︎基本月額
加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額
👦 ざっくりいうと、1ヶ月の給与と老齢厚生年金の報酬比例部分が51万円を超えると、超えた半分の金額を減額するということです。
繰上げと在職老齢年金の関係
ここで誤解しやすいのが
「在職老齢年金による支給停止は、繰上げによる減額とは別の調整」
ということです。
つまり、繰上げで減ったうえに、給与が一定額を超えるとさらに支給停止(減額)される可能性があります。
結果として、
✔️ 「繰上げによる減額」+「在職による支給停止」の二重減額
✔️ 想定よりも受取額が少なることがある
という点に注意が必要です。
シュミレーション例
では、具体的にどのような計算方法で減額されるのか見ていきましょう。
✔️ 在職老齢年金の対象となるのは「老齢厚生年金の報酬比例部分」のみ
✔️繰上げで減額された後の年金額を使って計算
つまり、繰上げによって報酬比例部分が小さくなると、支給停止額も減るということです。
<具体例>
おわりに
繰上げ請求をすると、老齢基礎年金・報酬比例部分・経過的加算額のすべてが減額され、
その減額は一生続きます。
一方で、在職老齢年金の対象となるのは報酬比例部分のみであり、
しかもその金額は繰上げによって減額された後の年金額で計算されます。
つまり、繰上げ請求をすると年金自体は減りますが、
同時に在職老齢年金での支給停止額も小さくなるため、
「働きながらでも年金を受け取りやすくなる」という一面もあります。
ただし、ここで注意が必要です。
在職老齢年金による支給停止は、繰上げによる減額とは別に行われるため、
両方の影響を受けると、実際に手元に入る年金額が想定よりも少なくなることがあります。
特に給与が一定額を超える場合は、
「繰上げによる減額+在職による支給停止(減額)」
という二重の調整がかかる点を意識しておく必要があります。
さらに、繰上げ請求は一度行うと取り消しができません。
また、加給年金や振替加算を受けられなくなるケースもあるため、
働く期間や収入見込みをふまえ、年金事務所などで事前に試算しておくことが大切です。
老後の年金の受け取り方に「正解」はありません。
ご自身やご家族のライフプランに合わせて、
「いつ・どのようにもらうのが安心か」
をじっくり考えることが、最良の選択につながると思います☺️