- 投稿日:2025/10/14
- 更新日:2025/11/05
会計基準や税法が毎年のように改訂される現在、経理は常にキャリアアップを図る必要があります。資格取得を通じて経理の専門知識を身につけることで、経営管理の視点や財務管理、税務申告に必要なスキルを習得できます。
ただ、経理の資格は種類が多すぎてどれがいいのかわからない、と考えられている方もいると思います。
目的に合った資格の学習を行わないと、時間をかけて得た資格と知識が無駄に終わってしまう可能性があります。
・資格が多すぎて選べない(簿記・FP・税法?)
・資格がどのように経理の実務に役立つかわからない
・働きながら取得できる資格でどれが有効かわからない
僕自身、複数の資格を取得しましたが、結果的に実務に役立てられずに知識が陳腐化してしまった苦い経験があります。(例:知的財産検定、メンタルヘルスマネジメント検定。)
この記事では、経理歴15年以上のメーカー社員(簿記1級保有)である僕が、経理資格をレベル別に紹介したうえで、実務に活かせるおすすめの経理資格5選を解説しています。
読むことで、経理資格への理解を深め、目的に合った資格を見つけることができます。
経理資格の必要性とは?経理職に資格が必要な理由
経理の仕事は、企業のお金の動きを管理し、正確な財務状況を把握する重要な役割を担います。この責任ある仕事を遂行するためには、専門的な知識と技能が求められます。経理資格は、その知識と技能を証明する手段となります。
経理が資格を取得するメリット・デメリット
経理資格を取得するメリットは以下の通りです。
・専門知識の証明: 経理資格は、経理業務に必要な知識を持っていることを証明します。これにより、採用時や昇進時に有利に働くことがあります。
・信頼性の向上: 資格を持っていることで、職場内外での信頼性が高まります。正確な会計処理は、企業運営において不可欠であるため、この信頼は非常に重要です。
・実務での活用:簿記や税法などは、経理業務に直結するため、業務をスムーズに進めるのに活用できます
デメリットは以下の通りです。
・取得の難易度: 経理資格は、専門性から、取得するのが難しいものもあります。難易度の高い資格の取得には、多くの時間と労力が必要であり、繁忙期の業務を行いながらの学習は困難な場合があります。
・継続的な学習の必要性: 経理に関わる基準や法律は毎年変わるため、資格取得後も最新の知識を維持するために継続的な学習が求められます。必ずしも業務中に学習時間を取れるわけではないです。
経理の資格がキャリアに与える影響
経理資格は、キャリアに大きな影響を与える可能性があります。資格を持つことで、より高度な職務に就くチャンスが増え、結果として給与アップや昇進につながることがあります。また、資格は経理の専門知識だけでなく、問題解決能力や分析力などの重要なスキルの習得を促すため、キャリアの発展に大きく貢献します。
例えば「日商簿記2級」は経理関係では最もメジャーな資格ですが、資格保有事態が昇進や転職時の応募要件となる場合があります。
・昇進の要件
・転職の応募要件(経理)
経理資格の取得は、一朝一夕には行えない努力が必要です。ただ、その努力は正しく取得資格を選択すれば、確実に実務に結び付くものです。
おすすめ経理関連資格5選
ここでは、知名度や実用性を考慮した上で、僕のおすすめ経理資格5選を順番に解説していきます。
簿記検定 (日商簿記検定)
難易度(10段階):3~6(簿記3級~2級)
経理実務直結度 :9
学習期間 :2~3ヶ月(3級)、3~6ヶ月(2級)
簿記検定は、資格自体の知名度の高さもあり、経理未経験者~経理初心者が最初に取り組むのにおすすめの資格です。理由は以下の通りです。
・経理の共通言語といえる簿記の用語理解が進む
・多くの経理担当が関わる、財務諸表作成の流れを理解できる
簿記検定で有名なのは日商簿記検定です。特に日商簿記3級は、初心者向けの試験範囲となっています。
簿記特有の用語やルールに慣れるまで少し時間はかかりますが、約3ヶ月程度の学習で合格可能な試験範囲です。
経理未経験者や初心者は、まず簿記3級、できれば簿記2級まで取得を目指すことで、基本的な簿記の知識を身につけ、経理としての活躍の幅を広げることができます。
ファイナンシャルプラニング技能検定(FP)
ファイナンシャルプラニング技能検定は、簿記の次に学習するのにおすすめの資格です。理由は以下の通りです。
・お金に関する幅広い知識を身に着けることで、担当できる経理業務の幅が広がる
・簿記とのダブルライセンスで経理処理の理解が深まり、突発的な事態にもスムーズに対応できる
FP試験の学習内容は、経理業務のうち、特に資金繰りや税務申告の業務を行う際にベースの知識となります。
FP試験の試験範囲は以下の6分野に分かれており、学科・実技試験に分かれています。それぞれ6割以上の得点で合格となります。
(きんざいでは5分野から出題)
・ライフプランニングと資金計画
・リスク管理(保険等含む)
・金融資産運用
・タックスプランニング
・不動産相続・事業承継
試験学習は独学でも可能ですが、時間がない社会人は通信講座を受講し、スキマ時間で学習しながら効率的に合格するのがおすすめです。
MOS (Microsoft Office Specialist) (Excel)
MOS(Excel)は、簿記と並んで経理未経験者~初心者に優先して取得をおすすめする資格です。
なぜなら、Excelは、あらゆる経理業務で活用する機会が多く、早々にスキルを磨く必要があるためです。また、Microsoft Officeの使い方を認定する公認資格であることから資格の知名度も高く、資格としての価値もあります。
経理業務全般に関わる資格ですが、特に経営管理系の、Excelでの資料作成や分析がメインとなる業務の効率化に活用できます。
Mos試験は7割程度の点数を取ると合格と言われています。3ヶ月程度の学習で合格できますが、それによって得た知識はその後の業務で大きく活用できます。
また、ExcelについてはMos試験と合わせて、ショートカットキーの習得もおすすめします。Mos試験の学習によって得た知識をショートカットキーで効率的に運用できるからです。
ビジネス会計検定
難易度(10段階):6 (2級)
経理実務直結度 :7
学習期間 :3~6ヶ月
ビジネス会計検定も、経理未経験者~経理初心者におすすめの資格です。
ビジネス会計検定は、会計の基礎的な知識と実務に必要なスキルを身につけるための資格であり、ビジネスの現場で実践的な会計スキルを身につけたい方に適しているからです。
会計処理がメインの簿記検定の、試算表等の処理に苦手意識を持った方は、ビジネス会計検定で幅広く会計の学習を始めるという手もあります。
税法能力検定(消費税・法人税)
難易度(10段階):6 (2級)
経理実務直結度 :7
学習期間 :3~6ヶ月
税法能力検定のうち、最初は消費税法能力検定をおすすめします。なぜなら、税務申告業務に関わらなくとも、経理として仕訳を切る際、消費税の知識は必須だからです。
税法能力検定は、公益社団法人全国経理教育協会(全経)が実施している消費税に関する資格です。
消費税はビジネスにとって非常に重要な税金であり、今年度から適用されるインボイス制度も含め、税制改正も頻繁に行われるため、消費税に関する正確な知識を持っていることが求められます。
よくある質問
Q: 経理資格を取得するためには、スクールに通う必要がありますか?
A: スクールに通うことで、効率的な勉強方法やアドバイスを得られるなどのメリットがありますが、必ずしも通う必要はありません。自己学習での取得も可能です。ただし、自己学習では勉強の計画を立てたり、自己管理する能力が必要となります。僕は、忙しい社会人は、スクールを利用して最短で効率的に合格するのをおすすめします。
Q:簿記検定は何級まであるのですか?
A:1級から3級まであります。
目安として、主な出題内容は以下のようになっています。ただ、2級は連結決算が出題されるようになってから難化傾向があります。
1級:大企業の経理処理
2級:中小企業の経理処理
3級:個人事業主の経理処理
Q:経理資格を持っていると給料が上がるのでしょうか?
A:企業によっては資格取得手当が出るところもあります。また、経理の管理職昇進のために簿記2級が条件、という企業もありますので、長期的にみると給与アップに寄与します。
短期的には転職により、給与のアップを狙う際のアピール材料にもなります。
Q:経理資格を持っていない人でもビジネス会計検定は受けられる?
A:ビジネス会計検定に経理資格の要件はありませんので、問題なく受験できます。簿記検定や、消費税法/法人税法能力検定も同様です。
まとめ:経理資格の取得でキャリアアップを図ろう
この記事では、経理資格について紹介した上で、僕がお勧めする経理資格5つについて、それぞれのメリットや取得方法、勉強費用、勉強時間の目安を解説しました。以下、重要なポイントをまとめます。
簿記検定:3級は初心者におすすめ。経理未経験の転職では2級が必須条件の場合有。1級は難関資格。
ファイナンシャルプラニング技能検定(FP):お金の知識全般の他、FP業界での就職にも役立つ
MOS(Excel):経理職の必須スキルであるExcel知識を網羅的に学習するのに最適。
ビジネス会計検定:会計の基礎知識を広く学びたい人におすすめ
税法能力検定:消費税・法人税等、企業経理に必要な税務知識を得たい人におすすめ
経理資格の取得は、専門のスキルアップにつながります。ただ、働きながらの資格取得には時間の制限があることから、通信講座や書籍の活用で、効率的に資格取得に取り組んでみてはいかがでしょうか。