- 投稿日:2025/10/16
秋が深まる頃、酒屋の棚に並ぶ「ひやおろし」や「秋上がり」。
どちらも“秋の味覚に寄り添う日本酒”として人気ですが、
その意味を知ると、もっと楽しく選べるようになります。
「ひやおろし」は春に一度火入れしたお酒を、
夏の間に涼しい蔵で熟成させ、
再火入れせず(=ひやのまま)出荷するお酒。
一方、「秋上がり」は火入れをしてからしっかり寝かせ、
熟成によって味が上がった(=旨味がのった)お酒を指します。
つまり、
「ひやおろし」=出荷のタイミング
「秋上がり」=味の仕上がり状態
という違いがあるんです🍶
秋の日本酒は、春の若さが落ち着き、
丸みと深みが出てくる“円熟の季節”。
今回は、そんな秋上がりの魅力を感じる3本を紹介します。
秋上がりのおすすめ3選🍂
1. 酔鯨 純米吟醸 秋上がり(高知)
高知を代表する辛口の名酒・酔鯨。
秋上がりでは、夏を越して旨味がぎゅっと凝縮。
もともとのキレの良さに、丸みと厚みが加わった“円熟辛口”です。
冷やではスッとシャープ、常温では米の旨味がふくらみ、
燗にすると軽い酸と甘みが調和してまろやか。
三段階で味の変化が楽しめる、まさに秋向けの一本。
料理との相性も抜群で、
秋刀魚の塩焼き、カツオのたたき、きのこの土瓶蒸しなど、
土佐らしい食中酒として光ります。
高知の空気そのままに、
軽快さの中に芯の強さを感じる一本です。
2. るみ子の酒 純米 秋上がり(三重)
三重県の森喜酒造場による、女性杜氏・森喜るみ子さんの代表作。
“るみ子の酒”は、まるで人の温かさを感じるような味わい。
秋上がりではさらに熟成が進み、
やわらかな旨味と優しい甘味が口いっぱいに広がります。
派手さはないのに、何度でも飲みたくなる不思議な包容力。
冷酒ではすっきり、ぬる燗ではまるで出汁のようなふくよかさ。
秋の食卓にそっと寄り添うタイプで、
きのこのホイル焼きや筑前煮、栗ごはんなどと好相性。
一日の疲れを癒やす、“心で飲む日本酒”といえるでしょう。
3. 黒龍 純米吟醸 秋あがり(福井)
福井・黒龍酒造の秋限定酒。
熟成によって引き出された旨味の深みと、
黒龍らしい上品で透明感のある味わいが共存。
香りは静かで落ち着きがあり、
口に含むと穏やかな甘みと米の旨味が広がり、
余韻はすっと消えていく。
軽やかさと奥行きの絶妙なバランスが魅力です。
秋野菜の天ぷら、鶏の照り焼き、カマンベール焼きなど、
和洋どちらの料理にもスッと寄り添う一本。
食卓の雰囲気を上品に整えてくれる“秋の名脇役”です。
まとめ
「ひやおろし」と「秋上がり」は似て非なるもの。
ひやおろし:蔵出しタイミングの呼び方
秋上がり:熟成によって味が上がったお酒
秋上がりは、夏を越えて深みを増した“大人の味”。
今回紹介した3本は、まさにその魅力を体現しています。
酔鯨:キレと旨味のバランスが冴える王道辛口
るみ子の酒:やさしさと余韻で包み込む癒やしの酒
黒龍:繊細で品格のある熟成美
秋の夜、湯気の立つ料理を前に、
ゆっくり盃を傾けてみてください。
その瞬間、“季節を飲む”とはこういうことかと感じるはずです🍁🍶