- 投稿日:2025/10/29
- 更新日:2025/10/31

「アニマルレスキュー」
この言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?
保護施設の犬や猫、ボランティアの人たち、SNSで見かける里親募集の投稿。
なんとなく知っているけれど、自分とは少し距離のある世界だと感じている人も多いのではないでしょうか。
少しでも興味を持ったあなたに、自称猫オタクの私ちくねこが、「野良猫」「地域猫」「保護猫」の違いと、それぞれの成り立ちをわかりやすくお伝えします。
知ることで見える景色が変わる。そんな小さな一歩になれば嬉しいです。
実は「野良猫」は自然に生まれたものじゃない

「野良猫って自由でいいよね」
「猫は野生に帰れるんでしょ?」
私が育った離島の漁師町では、こんな言葉が当たり前でした。
港の倉庫で昼寝をする猫。
売り物にならない魚を漁協にもらいに集まってくる猫。
近所のおばあちゃんに、残り物のご飯をもらっている猫。
それが日常の風景でした。
でも、実は「野良猫」という存在は、自然に生まれたものではありません。
人間が飼い、そして手放した結果として生まれた存在。
それが、私たちが「野良猫」と呼んでいる猫たちです。
猫はもともと「イエネコ」という動物

猫は、人と一緒に暮らすことで進化してきた動物です。正式には「イエネコ」と呼ばれ、ライオンやトラのような野生の猫科動物とは、まったく別の生き物です。
私たちが「野良猫」と呼んでいるのは、飼い主がいないまま、街の中で暮らしている猫たちのこと。
自由に見えても、実際は寒さや空腹、病気、交通事故といった危険と常に隣り合わせです。
「猫は自由を好む生き物だから、外に放しても生きていける」
そう思われがちですが、それは誤解です。
運よく餌場を見つけたり、安全な場所にたどり着ければ、生き抜ける子もいるでしょう。
でも多くの場合、捨てられた猫や迷い猫は、恐怖で身動きが取れなくなり、そのまま命を落としてしまいます。
ちなみに、日本にも「野生の猫」はいる
※この画像は実際のヤマネコではありません。生成AIのイメージです。
日本には、ツシマヤマネコやイリオモテヤマネコという固有の野生種がいます。彼らは人と関わらず、自然の中で独自の生態系を築いてきた、本物の野生の猫です。
見た目はイエネコに似ていますが、遺伝的にも生態的にもまったく別の生き物。街で見かける猫たちとは、根本的に違う存在なんです。
また、「ノネコ」と呼ばれる猫もいます。これは、もともと人に飼われていたイエネコが野外で繁殖を繰り返し、人の生活圏から離れて山や森で暮らすようになった猫のこと。
環境に適応してはいますが、その始まりは人が飼っていた猫です。
つまり、ノネコもイエネコも、すべて人間の生活と切り離せない存在なんです。
「地域猫」という仕組みを知っていますか?
「地域猫」という言葉、聞いたことはありますか?
知らないだけで、あなたの家の近くにも、実はいるかもしれません。

地域猫とは
地域の人たちが見守り、その場所で穏やかに一生を終えられるように管理されている猫のことです。
野良猫をそのまま放っておくのではなく、地域の人たちが協力して「この場所で、最後まで見守りながら生きてもらおう」という取り組み。
これを「地域猫活動」といいます。
具体的には、地域のボランティアや住民が協力して、猫を捕獲し(Trap)、不妊・去勢手術をして(Neuter)、元の場所に戻す(Return)
これを「TNR活動」と呼びます。
手術によって猫の繁殖を防ぎ、結果的に野良猫の数を減らしていく仕組みです。
「さくらねこ」って何?

避妊・去勢手術を受けた猫は、耳の先を桜の花びらのようにカットして元いた場所に戻されます。
この印がある猫は「さくらねこ」と呼ばれ、「もう手術済みですよ」「地域で見守られている猫ですよ」という目印になります。
少し痛々しく見えるかもしれませんが、耳カットは麻酔中に行われるため、猫に大きな負担はありません。
特にメス猫の場合、避妊手術が済んでいるかどうかは外見だけでは判断できないため、「すでに手術済みなのに、また捕獲して手術してしまう」というリスクを防ぐ、とても有効な方法なんです。
地域猫活動は「共生」のための活動
地域猫活動は、野良猫を「排除する」のではなく、「人と猫が共に生きる道をつくる」活動です。
その土地に住む人、猫、ボランティアがそれぞれの立場で関わりながら、小さな共生社会を築いています。
「保護猫」ってどんな猫?
さて、ここまで「野良猫」と「地域猫」についてお話ししてきました。
最後は「保護猫」について。

保護猫とは
さまざまな理由で、人の手によって保護された猫のことです。
飼い主に捨てられた飼い主が亡くなった、高齢で飼えなくなった多頭飼育崩壊で行き場を失った地域猫活動の中で保護された事故や病気で瀕死の状態だったなど。
その出発点は、それぞれ違います。
保健所や動物愛護センター、地域のボランティア団体などが一時的に保護し、必要な医療ケアを受けて、里親との出会いを待っている猫たち。
その中には、ケガをしていたり、人に慣れていなかったりする子もいます。
けれど、どの猫も「もう一度、幸せに生きていくチャンス」をもらった存在です。
「かわいそう」だけじゃない

「保護猫」という言葉を聞くと、"かわいそう"というイメージを持たれがちです。
たしかに、過酷な環境で生きてきた猫の中には、人間に不信感を持ち、心を閉ざしてしまう子もいます。
でも、猫も人と同じです。
安心できる場所を与えてくれて、自分を大事にしてくれる人には、ちゃんと心を開いてくれます。
我が家の愛猫も、最初は人間不信でした。
撫でられるようになるまで2年。
隣で眠ってくれるようになるまで、10年かかりました。
今では、小学生の息子にまで撫でてほしくて寄っていく、甘えん坊に成長しました。
その姿を見るたびに、「ああ、この子の心が少しでも落ち着く場所を作れてよかった」と、心から思います。
さいごに

野良猫も、地域猫も、保護猫も。
すべては、人間と猫の関わり方が生み出した"かたち"です。
知ることで、街で見かける猫たちの見え方が少し変わるかもしれません。
耳がカットされた猫がいたら、「ああ、地域で見守られているんだな」と気づくかもしれません。
そして、もしいつか猫を飼いたいとあなたが思っていたら…
「保護猫を迎える」という選択肢が、あなたの中に少しでも芽生えるかもしれません。
それは、とても温かくて、意味のある選択だと私は思います。
保護猫を迎えること、それは猫を救うだけでなく、あなたにとっても意味のあることになるかも知れません。
まずは、知ることから。
それだけで十分です。
大事な話
※地域猫を見かけたら、覚えておいてほしいこと
耳カットされた地域猫を見かけても、人馴れしているとは限りません。
あくまで「見守られている猫」という認識でいてください。
また、人間の食べ物(たまたま持っていたお菓子など)を与えることは、猫の健康を害する可能性があります。
「お腹を空かせていてかわいそう」
そう思ってくれる優しい気持ちは、とても大切です。
もしその気持ちを形にしたいなら、地域の保護団体への寄付や、ボランティア活動への参加を検討してみてください。
一人ひとりができる形で関わることが、持続可能な「アニマルレスキュー」につながります。
