- 投稿日:2025/11/08
- 更新日:2025/11/08
はじめに
「糖尿病」は体内で血糖値を下げる作用を持つインスリンというホルモンの働きが低下することで発症する病気です。その発症には過食や運動不足といった生活習慣の影響も一因となりますが、加齢や遺伝も大きな要因となります。つまり、「糖尿病」は自己責任だけで起こる病気ではないということを理解してください。また、「糖尿病」は正しい治療を行うことで糖尿病のない方と同じ生活を送ることができますので、しっかりと病気に向き合い、適切な治療を受けるようにしましょう。
それでは「糖尿病」と言われたらやるべきこと、5選!を解説していきます。
1.食事の内容を見直す。
糖尿病治療の基本は食事療法、という話はよく聞くと思います。ただし、食事療法とは「食べるものを制限すること」ではありません。重要なことは「適正なエネルギーを、適正な栄養バランスで摂取すること」です。
1日に必要なエネルギー量は【標準体重×活動係数】で求められます。
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
活動係数 活動量が少ない=25〜30、普通=30〜35、多い=35以上
例えば、身長 160cmである程度体を動かす仕事をしている方では、
1.6×1.6×22×30〜35≒1700〜1900
となるので、1日あたり1800kcalを目安に考えるといいでしょう。1日に3食に分けることが推奨されていますので、1食あたり600kcalとなります。
ここでは詳しい栄養バランスの解説を省きますが、栄養素としては炭水化物(米やパン、麺、果物など)を全体の50%とし、残りをタンパク質(肉や魚、卵など)や脂質で摂ることが良いとされています。重要なことは栄養素が偏らないようにバランスよく摂ることであり、糖尿病だから食べてはいけない食べ物はない、ということを知っておいてください。
2.体を動かす量を増やす。
次に重要なことは「身体活動量を増やすこと」です。身体活動量とは、単に運動することだけに限った話ではなく、普段の生活で体を動かすことも含みます。具体的には、家事(掃除、洗濯など)や通勤、買い物などで動いていれば、それは身体活動量に含まれます。そのため、「運動する時間がない」、「もともと運動習慣がないから続けられるか不安」という方でも、まずは「通勤を車ではなく電車やバスにしてみよう」とか「家が4階だからエレベーターじゃなく階段を使ってみよう」といったことから始めてみると良いでしょう。
そしてデスクワーク中心の仕事をされている方は、「30分ごとに立ってウロウロする」ことをオススメします。日本人は世界で最も座っている時間が長い、と言われています。座っている時のエネルギー消費量は寝ている時間とほとんど変わらないので、座っている時間が長いということは寝て過ごしていることと同じことになります。そこで30分に一度、立って歩き回ることで座っている時間を減らし、エネルギー消費量を増やすことにつながります。これは厚生労働省やスポーツ庁からも推奨されていることなので、ぜひ取り入れてみてください!
3.かかりつけの医師と治療についてよく話し合う。
冒頭にも書きましたが、糖尿病は生活習慣だけが原因で発症する病気ではありません。つまり、生活習慣をどれだけ気をつけていても糖尿病の治療がうまくいかないことがあります。そこで必要となるのが糖尿病治療薬になります。糖尿病という病気は人によって原因や特徴が異なるため、使うべき薬が異なることがよくあります。そのため、自分に合った治療薬について、かかりつけの医師とよく相談して決めることが重要です。かかりつけの医師も判断に迷う場合は糖尿病専門医を紹介してもらうと良いでしょう。
4.眼科を受診する。(重要!!)
糖尿病という病気は他の病気の原因となります。それらの病気を合併症と呼び、腎臓の合併症(糖尿病腎症)は日本人の透析となる原因の第一位であり、他にも心筋梗塞や脳梗塞の原因となります。最近では、認知症や一部の癌のリスクを高めることもわかっています。そして、合併症の一つに糖尿病網膜症という病気があります。糖尿病網膜症は眼の内部にある網膜と呼ばれる場所に障害が起きる病気で、ひどくなると失明することもあります。しかし、初期は症状に気づきにくく、かなり悪くなって見えにくさに気づくことも少なくありません。そのため糖尿病と診断されたら、できるだけ早めに眼底検査を受けることをオススメします。眼底検査は内科で実施できないことがほとんどですので、眼科を受診して検査を受けるようにしてください。なお、その時は瞳孔を開く目薬を使用して検査するため検査を受けた後はしばらく眩しい状態が続きます。車の運転は危険ですので、眼科を受診するときは公共交通機関を利用するか、ご家族に運転してもらうようにしましょう。
5.家族や友人に協力を求める。
「糖尿病」と診断されたことを周囲の方に隠そうとする方は少なくありません。その原因は最初にも述べたように、糖尿病が生活習慣の乱れによって起きる病気であるというイメージが強いことにあります。自分が糖尿病になってしまったのは自分がだらしない生活をしていたからだ、といった間違った認識を持ってしまうことで、周囲の方に非難されるかもしれないと考えて病気のことを隠すようになってしまいます。しかし、食事療法や運動療法は生活に関連する治療であり、周りの方の協力なくして継続は困難です。誰にでもカミングアウトする必要はありませんが、家族や近しい友人には「糖尿病」であることを伝えてください。そして、治療に協力してもらうようお願いするようにしてみましょう。もちろん、相手の方の認識によっては非難されることがあるかもしれません。しかし、病気について理解してもらうことは治療に重要なことですので、根気強く説明してください。時にはかかりつけの病院で医師や看護師さんに相談してみるのも良いでしょう。インターネットやSNSで情報発信している方もいらっしゃいますので、それらを一緒に見るのも良いと思います。
おわりに
「糖尿病」という病気は症状に乏しく、少しずつ進行していく病気です。しかし、多くの病気の原因となるため、適切な治療をすることは健康寿命を伸ばすことにとって重要となります。過去の研究で、早期に糖尿病の治療を十分におこなった方は合併症発症が抑えられただけでなく、あとになって十分な治療をした方と比べても長期の合併症発症が減っていたという報告があります。つまり、早く取り組むことが重要であり、そのためには病気を受け入れて治療をしていくことが必要です。1人ではなかなか上手くいかなくても家族や友人と一緒に取り組むことで継続しやすくなります。また、同じ病気を持つ人と交流することもいいでしょう。「人に会いや〜!」です。糖尿病があっても前向きに楽しく生きられるよう、一緒に頑張っていきましょう!