• 投稿日:2025/11/30
整体・小顔矯正で顔の骨格は矯正できるのか?―騙されないための医学的事実―

整体・小顔矯正で顔の骨格は矯正できるのか?―騙されないための医学的事実―

みつの@学び続ける鍼灸師/大学助手

みつの@学び続ける鍼灸師/大学助手

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結論:顔の骨格は整体やマッサージでは動かせません

👩‍⚕️「整体で○cm小顔になります」
🧑‍⚕️「頭蓋骨の歪みを整えて美人になります」
こうした言葉を聞いたことはありませんか?

結論から言います。
成人の顔の骨(顎骨・頬骨など)は、整体やマッサージ程度の力では動きません!!

人の頭蓋骨は複数の骨が縫合(ほうごう)と呼ばれるつなぎ目で、非常に強固に結合した構造になっています。
成長期を終えた成人では、この縫合はほぼ完全に癒合しており、外力で位置が変わることはありません。

もし本当に手で押すだけで骨が動くとすれば、それは矯正ではなく骨折レベルの外傷です。
「骨を動かして小顔になる」という発想自体が、医学的に成立しないのです。

なぜ頭蓋骨は動かないと言い切れるのか?
〜顎骨・頬骨の可動性と頭蓋骨の構造〜

成人の頭蓋骨は、約23個の骨(脳頭蓋8個+顔面頭蓋14個)で構成されています。これらの骨同士は「縫合(ほうごう)」と呼ばれる繊維性の関節によって強固に結びついており、基本的に動いたり隙間がある構造ではありません。

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生後間もない赤ちゃんであれば、頭蓋骨の隙間(大泉門など)が存在しますが、これは出産や脳の成長に必要な構造であり、通常は成長とともに乳幼児期に完全閉鎖します。

そのため、整体などで見られる
🧑‍⚕️「頭蓋骨の隙間を埋める」
👩‍⚕️「縫合が開いて顔が大きくなる」
といった表現は、解剖学的には誤りです。

「縫合は年齢とともに開く」という説は医学的な裏付けがなく、縫合は本来、不動関節として設計された構造であることが解剖学的にも証明されています。

じゃあ施術後に顔が小さく見えるのはなぜか?

整体や小顔マッサージを受けた直後に「顔がスッキリして小さくなった」と感じる人がいるのは事実です。しかし骨格が変化したわけではなく、多くの場合は軟部組織への作用による一時的な変化と考えられます。

一部ですが、具体的には以下の要因が挙げられます👇

むくみ(浮腫)の改善

マッサージによって顔面のリンパ液や静脈血の流れが一時的に促進され、滞っていた余分な水分や老廃物が排出されると、フェイスラインが引き締まり小顔になったように見えます。いわゆるリンパドレナージュ効果です。

筋肉の緊張緩和

顔の咬筋や側頭筋などが過緊張するとエラが張ったり側頭部が膨らんだりして顔が大きく見えます。小顔矯正の施術で顔面の筋肉をほぐすと、これら筋の過度なこわばりが一時的に緩和されて筋腹の張りが減り、顔幅がわずかにスリムに見えることがあります。特に咬筋(エラ部分の筋肉)の発達は顔の下半分を広げる原因になりますが、マッサージやストレッチで筋緊張を和らげればエラの張り感が軽減します。

姿勢矯正や錯覚

整体で身体全体のバランスを整えると、首の位置や姿勢が改善して顔の見え方が変わる場合もあります。猫背を矯正すると顎が引けてフェイスラインがすっきり見える、といった効果です。ただしこれも骨格が縮小したわけではなく、筋骨格の配置バランスが最適化されただけです。また施術後のリラックス効果で表情が和らぎ、主観的に顔が小さく感じられる心理効果も考えられます。

以上のように、小顔矯正で得られる「小顔効果」は根本的変化ではなく筋・筋膜・リンパ系の状態改善による見かけ上の変化に過ぎません。

医学的エビデンスと専門家の見解

そのほか小顔矯正に関しては医学・解剖学の専門家や公的機関からも否定的な見解が示されています。

消費者庁による措置命令

消費者庁は2011年にある整体協会が謳っていた「頭蓋骨のつなぎ目(縫合)を詰めて小顔にする」という広告表示に対し、合理的根拠がないとして再発防止の措置命令を出しています。(「小顔矯正」根拠なし 消費者庁が再発防止で措置命令
消費者庁の調査では、その協会が施術前後の顔の寸法データを提出したものの、当局は「マッサージで瞬間的に小顔になることは考えられるが、骨を内側に詰めるとか持続するといった主張には合理的根拠がない」と判断しました。

美容外科の意見

高須クリニックの高須幹弥医師は、小顔矯正サロンなどの宣伝する「加齢で頭蓋骨の縫合線に隙間が生じる」といった説明について「大人の頭蓋骨で縫合線に隙間なんてものはありません」と明言しています。(小顔矯正は本当に効果あるのか?

まとめ

以上のように、整体やマッサージによって頭蓋骨や顔面骨格そのものの位置を変えることはできません
本気で輪郭そのものを変えたい場合、骨格に原因があるのであれば、骨切り術や歯列矯正などの医療行為によって骨自体を動かす必要があります。

一方で、「骨を動かして小顔にする」といった小顔矯正の宣伝には、医学的な根拠がありません。
さらに、無資格者による強い施術で、神経麻痺・めまい・痛みなどの健康被害が報告されているケースもあり、安全面でも注意が必要です。

現在、国や美容外科医などの解剖学の専門家の間では、
「骨の歪みを矯正して小顔にするという理論は成り立たない」
「小さく見えるのは、筋肉やむくみなど軟部組織への一時的な影響に過ぎない」
という見解で一致しています。

ただし、整体やマッサージそのものを否定しているわけではありません
顔の筋肉の緊張をほぐしたり、むくみを改善したり、姿勢を整えたりすることで、「結果的に小顔に見える」「顔がスッキリする」と感じる効果は現実にあります。

大切なのは、
✅ 何が変わって
✅ 何が変わらないのか
を正しく知ったうえで、施術を選ぶことです。

正しい知識が、あなたのお金と健康を守ります。

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みつの@学び続ける鍼灸師/大学助手

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この記事のレビュー(1
  • 会員ID:Ax4tWPCi
    会員ID:Ax4tWPCi
    2025/11/30

    同業の私も大変納得が行く内容です👍 施術の本質を理解して、お客様側も一定の知識があった上で施術を受けていただけるとより安心できるかと思います😌

    みつの@学び続ける鍼灸師/大学助手

    投稿者

    2025/11/30

    レビューありがとうございます😊 つっつーさんにもそのように言っていただけて、とても嬉しいです! 正しい知識はより良い施術につながりますので、私たちだけでなく患者さんにもぜひ知っていただきたいと思っています。

    みつの@学び続ける鍼灸師/大学助手

    投稿者