- 投稿日:2025/12/07
- 更新日:2025/12/07
こんにちは!リベシティ会員の皆さん。
介護業界に身を置いて20年、数え切れないほどのご家族と向き合ってきました。居宅ケアマネジャーとしての経験を活かし、リベの皆さんのお役に立ちたいと思って記事を書いています。
突然ですが、皆さんに質問です。
「親の介護なんて、まだまだ先の話」だと思っていませんか?
ある日突然、実家から電話がかかってきます。「お父さんが倒れた」「お母さんが骨折した」。
その瞬間から、待ったなしの「決断の連続」が始まります。
病院の手続き、退院後の行き先、お金の管理、仕事との両立……。
現場で私が一番胸を痛めるのは、親御さんの意識がない状態で、ご家族が頭を抱えて悩む姿です。
「お父さんは、延命治療を望んでいたんだろうか?」
「お母さんは、やっぱり家で最期を迎えたかったんだろうか?」
答えの出ない問いに苦しみ、「自分の決断は正しかったのか」と何年も後悔し続けるご家族をたくさん見てきました。
だからこそ、伝えたいのです。
「親が元気な今こそが、介護の準備をする唯一のチャンス」なのだと。
この記事では、現役ケアマネジャーの視点から、「親が元気なうちに何を聞いておくべきか」「気まずくならずにどう切り出すか」という具体的なノウハウをお伝えします。これは、将来のあなた自身を守り、そして親御さんの人生を尊重するための、最高の親孝行です。
第1章:なぜ「元気なうち」じゃないとダメなのか?
「よかれと思って」が招く悲劇
多くの方が、介護が必要になってから「どうしたい?」と聞こうとします。しかし、認知症が進んでいたり、病気で会話が困難になってからでは、本音を聞き出すことは非常に難しくなります。
よくある失敗例をお話ししましょう。
子供たちは「親に苦労をかけたくない」「安心できる場所がいいだろう」と考え、設備の整った綺麗な老人ホームを選びました。
しかし、親御さんの本音は「どんなにボロくても、住み慣れた我が家で、近所の友達と茶飲み話をしながら最期を迎えたい」だったのです。
結果、親御さんは施設で塞ぎ込み、ご家族は「これでよかったのか」と悩み続けることになりました。
ケアマネジャーが知りたいのは「人生の価値観」
私たちケアマネジャーがプランを作成する時、一番重視するのは「その人らしさ」です。
お風呂の回数やベッドの種類を決めるのは、あくまで手段。「その人が、人生の最期をどう締めくくりたいか」という価値観こそが、ケアプランの羅針盤になります。
この羅針盤を持っていれば、いざという時に迷わずに済みます。
第2章:絶対に聞いておくべき「3つの柱」
では、具体的に何を聞けばいいのでしょうか。漠然と「老後どうする?」と聞くのはNGです。範囲が広すぎて、親も答えられません。
以下の3つのポイントに絞って聞いてみてください。
1. 「暮らし」の場所についての希望
単に「施設か、在宅か」という二択ではありません。「状態によってどうしたいか」というグラデーションを聞くのがコツです。学長はマーブル模様🌀という表現をされますね。
質問の深掘りポイント「足腰が弱って、買い物に行けなくなったらどうする?」「もし、トイレに一人で行けなくなったら、誰の手を借りたい?」「一人暮らしが怖くなったら、施設という選択肢はあり?」「最期を迎える瞬間は、どこにいたい?」
これを聞くことで、「ギリギリまでは家にいたいけど、シモの世話が必要になったら施設がいい」といった、具体的なラインが見えてきます。
2. 「医療」についての価値観(究極の選択)
これは少し重い話題ですが、最も重要です。いざ病院に運ばれた時、医師から「どうしますか?」と数分での決断を迫られます。
確認すべきキーワード延命治療: 人工呼吸器をつけてでも長く生きたいか、自然な最期がいいか。胃ろう(経管栄養): 口から食べられなくなった時、お腹に穴を開けて栄養を送る処置をするか。
「あくまで自然に任せたい」のか「1日でも長く孫の顔を見ていたい」のか。正解はありません。親御さんの「死生観」を知っておくことが、土壇場での子供の精神的な負担を劇的に減らします。
3. 「お金・管理」の現実
介護にはお金がかかります。しかし、親の貯金額を正確に把握している子供は稀です。金額そのものを聞く必要はありませんが、「どこに何があるか」は知っておく必要があります。
聞いておくべきことメインの銀行口座と通帳・印鑑の保管場所加入している生命保険、医療保険の証券不動産の権利証など
認知症になると、口座が凍結されるリスクもあります。「介護費用が必要になった時、どこの口座から出せばいい?」と確認しておくだけでも安心です。
第3章:親を怒らせない!スマートな「切り出し方」スクリプト
「そんなこと聞いて、早く死ねってことか!」
親御さんによっては、老いの話題を嫌がり、怒り出すこともあります。これが怖くて聞けないという方が大半でしょう。
ここでは、私が実際にご家族にアドバイスして成功した、会話の切り出し方(スクリプト)をご紹介します。
パターンA:【第三者の話題】から入る(オススメ!)
自分事として突きつけるのではなく、ニュースや知人の話題をクッションにします。
★ポイント: 「喧嘩したくない」「お父さんの意思を尊重したい」という愛を伝えることです。
パターンB:【お盆・正月】のタイミングを利用する
親戚が集まるタイミングや、久しぶりに帰省した時はチャンスです。
★ポイント: 「ずっと元気でいてほしい」という前提で、「もしもの時」の軽いシミュレーションとして話すこと。
パターンC:【自分(子供)の老後】の話から入る
親ではなく、自分の話を先にします。
★ポイント: ハードルを下げる効果があります。「お前もそんな歳か」と笑い話になればしめたものです。
第4章:これだけは注意!対話の「NG行動」
せっかくの対話も、態度一つで台無しになります。以下の3つだけは絶対に避けてください。
結論を急ぐ・強要する 「施設に入るって約束してよ!」「今ここで決めて!」と迫るのはNGです。親御さんにも心の準備があります。一度で決めようとせず、「今日はこういう話題が出た」くらいでOK。種をまく気持ちでいてください。否定する 親が「絶対に家から出ない!」と言った時、「そんなの無理に決まってるでしょ!」と即座に否定しないでください。まずは「そうか、やっぱり家がいいよね」と受け止める(受容・共感)。その上で、「でも、もし歩けなくなったらどうしようか? 一緒に考えよう」と提案してください。「あなたのため」を連呼する 「あなたのためを思って言ってるのよ」という言葉は、しばしば「こちらの都合」の押し付けに聞こえます。「私が安心したいから教えて」「お父さんの生き様を応援したいから教えて」と、I(アイ)メッセージで伝えてください。
第5章:ケアマネジャーからのメッセージ
ここまで読んで、「やっぱり聞くのは怖いな」と思った方もいるかもしれません。
でも、大丈夫です。完璧に聞き出せなくてもいいのです。
一番大切なのは、「あなたのことを大切に思っているよ」というメッセージを伝えることだからです。
「もしもの話」ができる関係性を作っておくこと。
それ自体が、将来、介護保険サービスを利用する際や、ケアマネジャーと相談する際に、何より強い味方になります。私たちケアマネジャーも、ご家族が「親は昔、こう言っていたんです」と教えてくれるだけで、プランの質をぐっと上げることができます。
次の帰省の際、お茶を飲みながら、あるいは散歩をしながら。
「ねえ、ちょっと聞いていい?」と、小さな一歩を踏み出してみてください。
その勇気が、未来のあなたと、あなたの大切な親御さんの笑顔を守ることになります。
【次回予告】
さて、いよいよ介護が必要になった!あるいは、そろそろ怪しい…。
そんな時、ケアマネジャーとの面談で「絶対にやってはいけないこと」と「必ず準備すべきメモ」があるのをご存知ですか?
次回の記事では、【直面中の方へ】ケアマネジャーへの相談前に!家族会議で決めておくべき「できないことリスト」について、詳しく解説していきます。
https://library.libecity.com/articles/01KBWD4KT2Y9Z6GFS0WP8P2WYA
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。もし、この記事が参考になったよ!パワーもらったよ!と思っていただけましたら、コメントやいいね!やタグ付けで応援してください。これからも、ケアマネジャーや介護士さん、がんばるシングルマザーを全力で応援📣していきます。