- 投稿日:2025/12/09
【第36話】FIREについて研究してみた
~お金があれば、幸せなFIRE生活が送れるの?~
🔶 FIREを実現するための3つの鍵
リベシティのみなさん、こんにちは!社会人大学院生のOGAです。
大学院で「FIRE(Financial Independence Retire Early)」をテーマに修士論文を書いた経験を、みなさんにも共有したいと思います。
FIREを達成するには「お金を貯めるだけ」では足りません。
研究を整理すると、FIREを支える基盤は――
・安定した資産形成
・計画的な資産運用
・高い金融リテラシー
――の3つが欠かせません。
それらの背景には、“心理的安心”をどう作るかという深いテーマが存在します。
つまり、FIREとは「資産の額」ではなく、「心の自由を得るための準備」でもあるのです。
今回は、国内の先行研究をもとに、FIREを支える3つの基盤をわかりやすく解説したいと思います。
1. 資産と幸福の関係:若いほど“お金の安心”が幸福に直結する
釣氏(2022)は、内閣府の「満足度・生活の質に関する調査」データをもとに、 所得や消費水準と幸福度(ウェルビーイング)の関係を分析しました。
その結果――
・現役世代:資産・収入の影響が大きい
→ お金があるほど「安心できる」と感じやすい
・高齢世代:健康・家族関係の影響が強い
→ 健康、人間関係、家族とのつながりなどが生活満足を左右する
――ということが分かりました。
つまり、若いうちほど「お金で得られる安心」の効果が高い。
これはFIREの考え方と完全に一致します。
FIRE達成者が現役時代に資産形成を急ぐ理由は、“老後に得られる安心を前倒しで獲得するため” ということが分かります。
2. 60代の生活満足度:老後は“収入”より“蓄え”が幸福を左右する
野尻氏(2022)の研究によると、60代の大規模アンケートから、老後の生活満足を決める要因を分析しました。
特に強く影響していたのは次の2つ――
・資産額の多さ(世帯資産)
→ 資産が多い人ほど 生活全般の満足度が高い
・資産運用をしているかどうか
→運用している人の方が 心理的に安定しやすい
――逆に、年収はほとんど影響しませんでした。
また、現役時代の年収よりも、「退職後にどれだけ蓄えがあるか」 が満足度を左右することが分かりました。
これは、FIREの合理性を裏付ける結果です。
多くのFIRE実践者は「現役時代に資産を積み上げて、将来の安心を早く手に入れる」ことを目指し、老後のリスクを主体的にコントロールしていることが分かります。
3. 金融リテラシーが「自由への道」を広げる
橋長氏・石島氏(2017)は、高校生と大学生を対象に金融リテラシー(お金の知識)と経済的幸福度の関係を調べました。
その結果――
・金融知識が高いほど将来不安が小さい
・計画的な貯蓄・運用行動につながる
・大学生では金融教育が自立的行動を促す
・金融教育を受けた学生は計画的に貯蓄を行い、経済的幸福度が高い
――という傾向が見られました。
これもFIREの核心を突いた調査結果です。
FIREを実現する人たちは、「投資の才能」があるのではなく、金融知識を土台に合理的に考える力が高いのです。
金融リテラシーを身につけることは、単にお金の知識を得るだけでなく、それを活用して人生の幸福度を高めることにもつながるのです。
🔶 まとめ
経済的基盤を整えたとしても、FIREの決断には「職場との関係」や「仕事の意味づけ」も大きく影響します。
① 資産保有:
安定的かつ十分な資産の確保 生活の土台・心理的安心感を生む
② 資産運用:
リスクを抑えた長期的な運用 継続的な経済的自立を支える
③ 金融リテラシー:
投資・支出管理の知識 自己判断と自由な選択を可能にする
この3つがそろって初めて、「働く・働かないを自分で選べる自由」―― すなわち真のFIREが実現します。
今回紹介した論文では、次のことが示されています。
・お金は若いほど幸福度を押し上げる
・老後はお金よりも健康、人とのつながりが重要
・金融知識は全世代で幸福の土台になる
FIREのように「お金で安心を前倒しする戦略」は、これらの研究知見と矛盾しません。
FIREを目指すなら、お金の増やし方だけでなく、「なぜ自由になりたいのか」「どんな人生を送りたいのか」を考えることが、本当のスタートラインになるのではないでしょうか。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
次回も、研究で得た知見をわかりやすく紹介していきます!
・釣雅雄(2022)「経済状況が主観的ウェルビーイングに与える影響:年齢階級・都道府県別クロスセクション分析」 ・野尻哲史(2022)「60代の生活全般の満足度に与える資産水準の影響」 ・橋長真紀子、石島 恵美子(2017)「高大比較の経済的幸福度と金融知識の関係」