- 投稿日:2025/12/24
生成AIの台頭と取り巻く環境の変化
チャットGPTを始めとした、生成AIの急速な台頭により、ロゴデザイナーを取り巻く仕事環境は大きく変化しています。
専門的な知識がなくても、簡単な指示を入力するだけでロゴビジュアルを生成できるようになりました。
その結果、特に低予算やスピードを重視する案件を中心に、ロゴデザイナーの仕事が減少していると感じる場面が増えています。
実際に仕事が減っているのを実感している
先に僕の現状についてお話させて下さい。
僕はロゴデザインをメインに、名刺やパンフレット、インフォグラフィックス、クリアファイル、パッケージ等のデザインを幅広く引き受けています。いわゆるグラフィックデザイナーに分類される職業だと自認していています。
3つのデザイン会社と業務提携をしているフリーランサーですが、ここ数年…特に2024年の終わり辺りから、徐々に依頼件数が減っているのを実感しています。
「干されたのかな?」と不安に思い、担当のディレクターさんに相談したところ「そもそも依頼が減った」「キャンセルされることが増えた」といった回答が出てきました。
生成AIの画像をベクター化する仕事が増えた
かねてよりクライアントから「こういうロゴを作って!」と手書きだったり、ペイントツールで描いたラフ案を送って頂き、それをリメイク・リファインするケースは少なくありませんでした。
しかし生成AIが普及した今、送られるラフ案が生成AIによるものであるケースが相当増えています。
「ベクター化するだけだから楽」「キャンセルされる可能性が低い」「修正回数が少なくて済みそう」という考え方もありますが、複雑なグラデーションや光彩効果など、Illustratorでベクター化・表現することが困難なケースも多々。
同時に「僕の役割って何だろう?」とモヤッとした気持ちにもなります。
悲しいかな、流用・盗用されるケースもかなり増えた
キャンセルされたロゴがどうなったのか、ディレクターさん達が忙しい中で適宜追って下さっているのですが、盗作されているケースが今年だけで3件も発覚されました。おそらく未発見のものも相当数あると考えています。
しかも厄介なのが、提出案を生成AIにリメイク・リファインさせている点です。
そのまま使用していれば、画像検索等で簡単に見つけられますが、生成AIで形や色を変更されるとそうはいきません。
もちろん見つけ次第、法的な対処を取っていただいて、きちんと支払って頂きます。
ただし業務提携先の方が流用を発見し、かつ法的な話を進めて下さらないと成しえないことです。
完全個人で活動していると、仮に流用・盗用を発見しても、法的な手続きのことを考えると、泣き寝入りせざるを得ないケースもあるでしょう。
少なくとも僕は自身で行うリソースを割くくらいなら、次の案件に取り組む方を選びます。法的な知識は何もありませんし…。
とても悲しいですが、そういうクライアントが少なからず存在していることは事実として受け入れる必要があります。
ロゴの本質を突き詰める道が正解か?
前置きが長くなりましたが、今後、僕たちデザイナーに求められるものは何でしょうか。大きく分けて次の3つがポイントになってくると考えています。
1.ベクター化する(キレイに仕上げる)
2.ロゴの本質を具現化してブランディング
3.AIと上手に付き合っていく
それぞれ具体的に紹介していきます。
ベクター化に特化する
先述したとおり、クライアントによってはご自身で生成AIを送って「ロゴのラフ案をブラッシュアップしてほしい」というケースが多々あります。
しかし現状、一般的な生成AIではベクターデータを作ることはできません。
ホームページや名刺に印刷する程度なら十分でしょうが、看板やカッティングシート等など、どうしてもベクターデータが必要になる場面はあります。
adobeのIllustrator等を使って、キレイに整える作業を請け負う仕事は、2025年12月時点で、まだまだ需要があります。

もちろん今後はAIがベクターデータを生成できる時代がやってくるかもしれません。
あまり知られていませんが Vectorizer.AI などのベクター化生成AIサービスが既に存在していますが、やはり手作業には敵わない精度です。
別記事でいずれ Vectorizer.AI について紹介したいと思っています。僕達デザイナーの強い味方になってくれるツールではありますので。
AIでは再現できないロゴの本質を具現化してブランディング
僕達デザイナーの最大の武器は、クライアントの意図を汲み取り、ロゴを完成まで導けることです。
よくあるのは会社の頭文字を使ったロゴ。
それに加えて、会社の理念である「成長」「飛躍」「チームワーク」「伝統」「未来」「先進的」といったワードを抽象的に組み込む。
あるいは特定の道具…例えば塗装会社なら「刷毛やローラーを取り入れてほしい」といった要望もあるでしょう。
もちろんこれらのワードをAIに打ち込めば、それに即したロゴを作ってくれます。
しかし企業やサービスの背景を理解し、想いや理念を整理し、それを視覚的な意味として落とし込む力は、依然として人にしか担えない領域です。
役割はより高度で専門的なものへと変化しています。これからのロゴデザイナーには、デザインスキルだけでなく、ブランディングスキルも求められます。
いかにクライアントを納得させられる意味をもたせるか。
いかに第三者の目に止まり、印象に残せるデザインを作り上げるか。
僕は提案書にできる限り詳細な解説文やカラーバリエーションを提示して、ロゴの意味合いを提示し、クライアントに納得してもらえることに心血を注いでいます。


中でも特にモックアップはイメージしやすく、提案書作成での重要度がかなり高いと考えています。クライアントとのヒアリングで、ロゴの用途を聞いておくと、該当するモックアップを制作できるので覚えておくと良いかもしれません。
AIと上手に付き合っていく
僕はAIを道具として使いこなしながら価値を提供していく姿勢は必須になると考えています。上手に付き合っていけるデザイナーを目指すことが大事かな、と。
僕はずっとadobeのソフトを利用していますが、adobeもAIに注力しています。メーカー側も、クリエイターにAIを活用する方向に取り組んでいるわけですよね。
この時流にきちんと乗り切れないと、今後の制作に大きな差が生まれると思っています。
では具体的にどのような活用方法があるでしょうか。
1.ロゴの初期アイデア出しや方向性検討のためのラフ案を高速で生成する
2.クライアントへの提案用に、複数テイストやバリエーション案を短時間で用意する
3.抽象的なキーワードやコンセプトを視覚化し、イメージ共有をスムーズにする
4.自分では思いつきにくい形状や構成のヒントを得て発想の幅を広げる
5.デザインの方向性A・B・Cなどの比較検討用素材として活用する
6.モチーフやシンボルの組み合わせパターンを試作し、可能性を探る
7.配色やトーンのバリエーション検討の叩きとして使う
8.時間短縮によって生まれた余力を、コンセプト設計やストーリー構築に充てる
9.ロゴの使用シーンや展開イメージを仮想的に可視化し、提案の説得力を高める
10.解説文やコンセプト説明の文章作成を補助させる
AIにたたき台を作ってもらって、そこからヒントを得て発想を広げ、形に落とし込む。そして時間短縮で余った時間を提案書のクオリティアップに注ぐ。
結果としてクライアントが納得しやすいロゴを制作できる可能性が高まりますよね。
生成AIで作ったロゴをそのまま提出するのはリスクが高い
言うまでもありませんが、生成AIで作ったものをトレースして、そのまま提出するのはオススメしません。
著作権のあるロゴを元に生成された可能性があったり、類似したデザインが生成される可能性があります。要はリスクが高い。
あくまでも参考にしつつ、最終的なデザインや判断はデザイナー自身が行うのが望ましいと考えます。
個人的には解説文やコンセプト説明の補足にAIを活用するのは非常に有用だと思っています。自分では思いつかなかった、ある種「こじつけ」のようなコンセプトを盛り込んでくれることも。
終わりに:質の高さで勝負するクリエイターを目指す
結論です。
ロゴは会社の顔となる、最重要なブランディングのパーツです。
そこに予算を割けない会社はたかが知れていると、個人的には思っています。
「時間と予算を割いてでも、きちんとコンセプトのある上質なロゴを作りたい!」というクライアントの目に止まるクリエイターを目指すことが、これからの僕達の活路。
そのためには、上質なロゴのポートフォリオを作り、コツコツと実績を積み重ね、ブランディングの手助けになれる実力を手に入れることが必須です。
ただし、どれだけ実力があっても、目に止まらなければ声を掛けてもらえるはずがありません。時には営業をかける必要もあるでしょう。
僕は営業が苦手なので、デザイン会社と業務提携をすることで、制作活動に専念できる環境を構築しました。
仕事の依頼が減りつつある今、フリーランスの営業マンを雇い、タッグを組んで活動することも検討しています。
皆さんは皆さんなりのやり方・考え方があると思います。
ぜひご意見等をお聞かせ下さい。
最後まで読んで下さりありがとうございました!