- 投稿日:2026/03/23
◆「搾乳」ってどんな作業?
搾乳ロボットの説明の前に、酪農家のメインのお仕事である「搾乳」について軽く説明します。
牛から牛乳を分けてもらう、大切な作業
牛たちが命がけで作ってくれた牛乳を可能な限り衛生的に搾乳し、冷蔵タンクに保存します。
こうして生産した牛乳の販売が、酪農家の売り上げの大半を占めます。
1日、2回、朝晩
多くの酪農家は1日に2回、搾乳しています。ただ2回搾乳すれば良いわけではなく、おおよそ12時間ごとに作業しなければなりません。
これが酪農の大変なところで、搾乳の合間に他の作業をこなしつつ、休息をとることになります。
このような労働スタイルに馴染めない方も多く、常に人手不足に悩まされている業界です。
個人的には1日は24時間ではなく、12時間の2セットという感覚でしょうか。
サボるのダメ、絶対
搾乳牛を飼う以上、搾乳しないのはご法度です。長時間、搾乳をしないでいると、牛が乳房炎などの病気になるからです。もちろん、搾乳をしないと酪農家の収益もなくなります。
いわゆる「一人親方」なら、多少の体調不良でも搾乳します。私も新型コロナウイルスに感染し、高熱を出しながら作業したことがあります。
どうしても自分で作業できない時は人に頼ることになり、その分の費用が発生します。
腰や膝、痛めがち
40~50代になると、腰や膝を痛める人が増えてきます。腕の良い整形外科や整体師を探し始めるのも、この年齢からですね。
また牛との接触の際に「牛に蹴られた!」「足を踏まれちゃった!」などの怪我も少なくありません。
ちなみにホルスタイン成牛の体重は雌で600~700㎏で、彼女らに足を踏まれると・・・

このように搾乳は酪農家にとって最も重要な作業ですが、肉体的にも精神的にも負担が大きい作業でもあります。
◆ 搾乳ロボットはどんな機械?
搾乳ロボットができること
搾乳ロボットは人間に代わって搾乳前の乳頭洗浄、搾乳、搾乳後の乳頭の消毒、そして搾った牛乳の貯蔵タンクへの輸送など、一連の作業を自動でやってくれる機械です。

搾乳ロボットが搾乳できる頭数は?
一日に搾乳できる頭数は最大で60頭です。我が家でも55頭前後の牛をロボットに預けており、全体の搾乳牛の約3分の2をロボットが担当しています。
搾乳にはどれくらいの時間がかかる?
1頭あたり7~10分くらいで搾乳します。55頭の牛をすべて搾乳するには、トータルで9時間前後の稼働が必要です。また搾乳ロボットを導入した場合、1日2回の搾乳を3回に増やす牧場も多く、その場合はほぼ24時間稼働することになります。
◆ 搾乳ロボット導入後の変化
夫婦で合計6時間の時短に
ロボット導入前は夫婦2人で搾乳するのに、2時間30分くらいを要していました。
ロボット導入後は人が搾乳する牛が1/3になり、作業時間は夫婦2人で1時間程度に短縮されました。
つまり夫婦で合計3時間の時短になり、それが朝晩あるため、1日に6時間ほどの時短になります。

搾乳ロボット導入後の生活や仕事の変化
搾乳ロボット導入後は空いた時間で、より細やかな牛の管理が可能になり、生産性の向上につながりました。
また家族と過ごす時間も増やすことができ、子どもたちも喜んでくれています。
仮に私が1人で搾乳した場合でも、1回の搾乳が2時間ほどなので、妻も「搾乳を休んで外出しやすくなった」と満足度が高いようですね。
大幅な時間の節約に加え、身体への負担も軽減されました。アラフォーになった頃から、寒い季節には膝の痛みに悩まされていましたが、最近はかなり痛みが緩和されたように思います。
事業をフロー型からストック型へ
私は数年前、農作業中の事故で足に全治3か月の怪我をしました。
それまでは自分の体力に自信があったのですが、「自分の働く能力は永遠ではない」「突然、働けなくなる日は来るのだ」ということを痛感しました。
以来、自分が「いないと回らない牧場」を「いなくても何とかなる牧場」へ変えることを考え始めました。
まだまだ完全なストック型にはほど遠いですが、搾乳ロボットの導入で事業をストック型へ寄せることはできたと思います。
◆ まとめ
搾乳は酪農家にとって最も重要な仕事であり、1日2回、約12時間おきに行う必要がある過酷な作業です。
体調不良でも休めず、身体への負担やケガのリスクも伴うなど、肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。
こうした課題を解決する手段として注目されているのが搾乳ロボットで、導入後は夫婦で1日あたり6時間もの時短を実現しました。
さらに、空いた時間を牛の健康管理に充てることで生産性が向上し、家族と過ごす時間も増加。身体的な負担の軽減にもつながっています。
私の地元では、ミドルエイジの酪農経営者が健康上の理由から事業の継続を諦めるという残念な事例があります。
また、高齢で引退を検討している酪農経営者からは「搾乳がなければ、まだまだ経営を続けられるんだが・・・」という声も聞かれます。
搾乳ロボットの導入は、単なる省力化にとどまらず、「人手不足でも回る牧場」へと近づける大きな一歩となり、事業継続のための選択肢として、大きな可能性を秘めています。
「転ばぬ先の搾乳ロボット」この記事が導入について考える機会になれば幸いです。
