- 投稿日:2024/02/06
- 更新日:2025/11/05
注意点
害虫駆除において種類を特定すること("同定"といいます)は必須です。そのため、写真は実写を使いますので、見るのも嫌!という人はブラウザバックしてください。
(ページ下部"図鑑"に写真使用。まとめより下に配置)
また、基本的には地球の陸上に住んでいる限り、虫と無縁で生活することは不可能だと思ってください。虫がいなければ、ヒトは今ほど豊かな食生活を送ることは出来ません。見えていないだけです(とはいえ別に無理に見る必要もありません)。
虫との距離感は人それぞれなので、各自でいい距離感を見出すためのヒントが本記事の趣旨となっています(そのため害虫"退散"という言葉を使っています)。
害虫とは?
害をなす虫のことです。虫とは何か?という命題については語ると長くなってしまうので、"小さな生き物"くらいで考えておいてください。必ずしも昆虫ではありません。そのため、昆虫ではないムカデやダニ、ナメクジなども害虫と言われることがあります。
害については、害の種類によって下記の通りに分かれます。
農業害虫
その名の通り、農作物を食べる虫です。現代日本においては、あまりニュースにはなりませんが、過去には飢饉の原因になったこともあります。
代表種
✅アブラムシ
✅ウンカ
✅バッタ
✅チョウの幼虫
余談ですが、日本の大学において虫の研究だけが農学部所属になります。それだけ農業と虫とは切っても切れない関係ということです。基本的に生物全般は理学部所属です。
衛生害虫
人体やペットに直接ダメージを与える虫です。直接の痛みや痒みを引き起こすほか、病気を媒介することもあります。現代日本において病気の感染例は多くはありませんが、マダニではSTFSの媒介事例などがあります。
代表種
✅カ(蚊)
✅マダニ
✅トコジラミ(南京虫)
✅スズメバチ
財産害虫
人の財産(基本的に食料以外)にダメージを与える虫です。
代表種
✅シロアリ
→住宅の柱を食害
✅シミ
→本を食害
✅カツオブシムシ
→衣服を食害
不快害虫
特に害があるわけではないが、なんとなく嫌だと思われてる虫たちです。
(´・ω・) カワイソス
代表種
✅ヤスデ
✅ゲジ(ゲジゲジ)
✅カマドウマ(便所コオロギ)
ゴキブリとは?
さて、前置きが長くなりましたが、本日の主役、ゴキブリについてです。
ゴキブリはゴキブリ目に属する生き物です。近縁の仲間としてはシロアリとカマキリが挙げられます。
不完全変態といい、卵→幼虫→成虫の順番に成長していきます。
蛹(さなぎ)にならないので、生まれたときからゴキブリの姿をしており、こどもはミニチュアゴキブリの姿をしています(ただし、こどもは翅がないの飛べません)。
家でよく見るゴキブリは卵鞘(らんしょう)と呼ばれるカプセルに卵を詰め込んで産みますが、種類によっては子育てしたり、体の中で卵を育てる種類もいます。
何害虫?
衛生害虫と不快害虫です。衛生的に特定の病気を媒介したり(単純に不潔な環境に生息&アレルゲンにはなります)、積極的に人を攻撃したり、毒があるわけではないので、不快害虫の面が強いと言われています。
しかし、飲食店などにおいては売り上げに大きく影響があるので財産害虫ともいえるでしょう。
99%はヒトと直接関わりはない
世界には4,000種類以上のゴキブリがいますが、人家に住む種類(コスモポリタンと呼ばれる)は1%にも満たない種類数です。ゴキブリたちの多くは森の中でひっそりと暮らしています。
ヒトよりセンパイ
人は200万年ほど前に今の姿になったと言われています。一方のゴキブリは3億年前から現在に近い姿であったと言われています。ヒトよりセンパイなので敬意をもって退治しましょう。
あなたの家にゴキブリが現れたと思うと不快に感じるかもしれませんが、ゴキブリセンパイの住処にあなたも住んでると考えれば、不快度は下がるかもしれません。え?下がらない?
対処方法
水回りを綺麗にする
とにかく水が好きな生物です。流しや洗面所、お風呂などに水分が残っていると夜な夜な飲みに来ます。ここを綺麗にしておくだけでだいぶ数が減ると思います。
食料元を絶つ
また、ゴキブリの名前の由来は御器被り(ゴキカブリ)とも言われており、食器と深い関連があります。雑食でヒトの食べ残したものは大体何でも食べます。食器の放置や三角コーナーへの生ごみの放置はやめましょう。
そのほかにも人の髪の毛や石鹸カスなども食べます。お風呂場の排水溝はなるべくこまめに掃除しておきましょう。
また、段ボールは住処にもなり、食料にもなるため、段ボールを大量に積み上げるのは良質な住処と餌を与えるようなものです。せどらーのかたは要注意ですね。
薬剤を使う
個人的にはホウ酸団子やブラックキャップなどのベイトトラップ(置き餌剤)をオススメします。理由は、手軽で効果が持続するからです。
バルサンのような燻煙剤も効果が持続し、一網打尽にできますが、事前の準備などが必要になります。
直接使う殺虫剤は結局目視しなければならないので、叩き潰すのとたいして違いはありませんが、直接対峙できないのであれば使用しても構いません。実はゴキブリに限らず、虫全般は台所用洗剤、アルコールスプレー、塩素スプレーなどでも普通に死にます。作用系統については、割愛します。
ベイトトラップの置き場所
よくいる場所は
✅冷蔵庫の裏
✅戸棚の中
✅流しの下
✅洗濯機の隙間
✅トイレの角
✅下駄箱
あたりです。ポイントは温かく、暗く、狭く、湿ってるところ。本来は熱帯の森の中で暮らしていた生物なので、日本の寒さには適応できないのですが、人間生活により居場所が出来ました。
また、集団で生活する性質があるため、背中に物質が当たっていないと落ち着きません。そのため狭い場所を好みます。
卵鞘をつぶす
卵鞘は人工物感があり、知らないとゴキブリの卵だとは思わない場合があります。というか私も見逃したことがあります(笑)。
当然ですが、この卵鞘から幼虫がワラワラ出てきますので、見つけ次第駆除しましょう。
後述の図鑑に写真を貼りますので、見れる人は見てください。
卵鞘は、中の卵をガードしています。外から薬剤等を使っても効き目が薄いので、物理的に破壊するのが確実です。袋などで包んでから圧迫して捨てるか、焼いたり熱湯をかけるなどの処理も有効です。
やってはいけないのが
✅トイレに流す
→下水で孵化、排水溝を伝って上がってくる可能性
✅掃除機で吸い込む
→掃除機の中で孵化
多少嫌でも、袋に包んで物理的に破壊するのが確実ですね。
集合住宅の場合
自室を綺麗にしても、隣の部屋がゴキブリにとっていい環境なら、そこで増えて入ってきてしまいます。3mm程度の隙間でも侵入してきてしまうため、完全に防ぐのは難しいでしょう。自室で大繁殖させないことを意識してください。
上級編:天敵を活用する
ゴキブリの天敵はアシダカグモ、トビズムカデ、オオゲジ、ニホンヤモリなど多くの生き物がいます。しかし、彼らも人間のために狩りをしているわけではないので、家にハンターとして放っても、餌を食べつくせばどこかへ行ってしまいます。常に住まわせるのは不可能だと思って良いです。
また、トビズムカデは人に嚙みつくこともあり、毒を持つので、家に放つのはあまりオススメできません。
とはいえ、家の外に出てまで色んな生き物を薬剤で退治すると、これらのハンターがいなくなり、かえってゴキブリパラダイスになることもあるので生態系を過度に狂わすような行為は控えましょう。
コラム:自分に向って飛んでくる?
よく「ゴキブリが自分をめがけて飛んでくる!」という人がいますが、そんなことはありません。ゴキブリの立場になってみましょう。あなたは巨人です。一撃で倒されるので、本当はあなたのほうへは行きたくありません。しかしゴキブリは飛ぶのがヘタなので、飛行先にあなたが偶然いても、方向転換できません。ゴキブリの世界にはリヴ〇イ兵長もいなければ、立体機〇装置もありません。
深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ
善悪の彼岸 著:フリードリヒ・ニーチェ
アナタがゴキブリを避けようとしているとき、ゴキブリもまたアナタを避けようとしているのだ。
まとめ
✅水回りを綺麗にする
✅洗ってない食器や生ごみを放置しない
✅卵鞘は見つけたら破壊する
✅毒エサは温かい・狭い・暗い・湿ってる場所に置く
という極めて当たり前の対策になります。
駆逐してやる!一匹残らず!という思いを持ってる人はいるかもしれませんが、そもそも不可能なので自分の生活圏に過剰に繁殖しないように、環境を整えていきましょう。
ゴキブリも地球上における生態系の一員です。ゴキブリがいなければ、日本人が大好きなウナギやマグロが食べられなく可能性も十分考えられるので、ゴキブリセンパイたちは敬意をもって退治しましょう。
図鑑:家にいるゴキブリたち(写真注意)
家にいるゴキブリたちを紹介していきます。住んでいる地域にもよりますが通常見かけるゴキブリはこの4種類のどれかです。
ここから実写を使っていきますのでご注意ください。
クロゴキブリ
ザ・ゴキブリの風貌。ゴキブリ中のゴキブリです。成虫の体長は25mm~40mm程度で割と大型です。後述のヤマトゴキブリよりもやや太っていてツヤツヤしているのが特徴。若齢幼虫は首のあたりに白い線があります。
クロゴキブリの成虫(卵鞘付き)
Toby Hudson - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=16198734による
クロゴキブリの卵鞘(がま口カプセルのような形状)
KKPCW - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=96154801による
ヤマトゴキブリ
クロゴキブリと双璧をなす、ザ・ゴキブリ。体長20~35mm程度。クロゴキブリよりやや細長くツヤが少ないです。今回紹介するゴキブリたちの中で唯一の日本在来種で屋外でも生息可能。カブトムシなどを捕るためのバナナトラップに集まるゴキブリは大体コイツです。
日本在来種なので、他のゴキブリたちより寒さに強く、北方でも見かけます。
ヤマトゴキブリ成虫(オス)
yoseop ahn - https://www.inaturalist.org/photos/108071219, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=106537994による
ワモンゴキブリ
屋内ゴキブリでは最大種。体長40~45mm程度。頭の付け根にリング状の模様があるので輪紋(ワモン)ゴキブリ。色は上記2種に比べ茶色っぽいです。熱帯系のゴキブリで寒さに弱く、20℃以下では活動が停止します。
沖縄では普通に見られるため、沖縄旅行者が「沖縄のゴキブリはデカい」と言ったら、コイツを指してると考えてよいでしょう。
近年は沖縄以外にも九州南部、大阪、東京、神奈川、北海道などでも発見報告があります。
Gary Alpert - http://www.uos.harvard.edu/ehs/pes_american_cockroach.shtml, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2236403による
チャバネゴキブリ
上記3種に比べて小型のゴキブリ。体色は茶色で、体長10mm~15mm程度。熱帯系のゴキブリで寒さに弱いです。20℃以下では活動できず、28℃~33℃程度の高温環境を好みます。
また、上記3種は成虫は飛ぶことができますが、本種は飛ぶことが出来ません。
荷物に紛れてよく移動するため、現在は日本各地で見られます。
特に段ボールを好み、段ボールの隙間に小さくて茶色いゴキブリがいたら、大体コイツです。車の中にも割といる印象です。
クロゴキブリやヤマトゴキブリと比較して、民家には出没しにくく、ビルや飲食店などに出没しやすいです。また、木造建築物よりコンクリート建築物などの人工的な環境により適しています。
Lmbuga - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6835727による
図鑑:ゴキブリの天敵たち(写真注意)
ゴキブリハンターたちです。益虫ですので、ゴキブリが嫌いな方は駆除しないようにしましょう。ゴキブリを保護したい人は積極的に駆除してください。
アシダカグモ
通称:軍曹
徘徊性のクモ(巣を張らないタイプ)。体長は20~30mm日本では割と大型のクモで足を広げると、CDくらいの大きさはあります。色と大きさからタランチュラと間違えられることがありますが、生物学的にはクモ内ではかなり遠縁にあたります。
基本的に屋内に生息しており、屋外にはいませんが、沖縄の本種は森の中に生息している個体もいます。また、類似しているコアシダカグモは森の中にもいます。
益虫ですが、不快害虫にされることもあります。
積極的にヒトを噛むことはなく、人体にダメージが出るほどの毒はありません(そのうち毒生物の記事をつくるなら、このあたりの言い回しは補足します)。
高い捕食能力と移動能力から現場のゴキブリをせん滅し、次の狩場へ向かう様から「軍曹」とも呼ばれます。
とはいえ、クモの捕食生態などを考えると現実的には1匹で1日5匹程度のゴキブリの捕食が限界では?と個人的には思ってます。実際にアシダカグモをペットとして飼ってる人によると、食事中に次のゴキブリを与えると4匹目くらいから、反応が鈍くなるとのこと。
余談ですが、沖縄産の本種は同種だが、体の模様が違うため、マニアであれば写真を見るだけで産地が一発でわかります。
クモ類は薬剤抵抗性が低く、薬剤を散布するとすぐ死にます。薬剤により積極的に色んな生き物を殺すと、
ゴキブリ|生き残る
天敵たち|死ぬ
結果 |ゴキブリ大繁殖
というループが発生します(リサージェンスと言います)。

ja:user:Dieno - 投稿者自身による著作物, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=108279171による
トビズムカデ
体長80~150mmのムカデ。日本では最大種。全体的に黒っぽい体に朱色っぽい足と頭を持っていますが、個体変異があり、メタリックな光沢を放つ者もいます。
野生環境下では洞窟や木の洞(うろ)のようなうっそうとしたところに住んでいますが、餌を求めて人家に入ることもあります。
割と攻撃的な性格で、掴んだり踏んだりすると噛まれることもあります。毒があり、噛まれると結構痛いらしいです。
益虫ですが、衛生害虫、不快害虫にされることもあります。
Daiju Azuma - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1017537による
ゲジorオオゲジ
通称:ゲジゲジ
ゲジゲジの仲間にはゲジとオオゲジがいます。ゲジもオオゲジもムカデの仲間でいかつい風貌をしてますが、ムカデと違い積極的に嚙みついてくることはありません。
野生環境下では洞窟や木の洞(うろ)のようなうっそうとしたところに住んでいますが、餌を求めて人家に入ることもあります。
ゲジのほうは体長25mm程度でオオゲジは40mm程度あります。オオゲジはオレンジ色の模様もあるため、ゲジと区別できます。下の写真はオオゲジです。
益虫ですが、不快害虫にされることもあります。
Thomas Brown - Long-legged Centipede (Thereuopoda clunifera)Uploaded by mgiganteus, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=27451620による