• 投稿日:2024/02/08
  • 更新日:2025/09/29
害虫退散!【トコジラミ編】

害虫退散!【トコジラミ編】

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BAL@虫料理研究家

BAL@虫料理研究家

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要約
彼を知り己を知れば百戦殆からず 味方と敵をよく知っていれば、何度戦っても勝てるということわざです。 家に害虫が出て嫌だなぁ~と思う人は虫についてよく知れば、 出ないようにする方法もわかるはず。 虫嫌いほど虫に詳しくなれ! というわけで今回はトコジラミ編!

注意点

害虫駆除において種類を特定すること("同定"といいます)は必須です。そのため、写真は実写を使いますので、見るのも嫌!という人はブラウザバックしてください。

(ページ下部"図鑑"に写真使用。まとめより下に配置)

害虫とは?

ゴキブリ編の冒頭に記載しておりますので、主な害虫の分類はそちらを参照ください。

トコジラミは衛生害虫にあたります。一度は日本からほとんどいなくなった虫ですが、近年急激に相談件数が増えています。特に旅行でいろんな場所に宿泊する人は注意してください

トコジラミとは?

トコ"ジラミ"という名前ですがシラミの仲間ではありません。カメムシやセミの仲間であるカメムシ目(半翅目)です。世界中どこにでも生息しており、日本には江戸時代にやってきたと言われています。南京虫と呼ばれることがありますが、中国の南京とは無関係です。

カメムシ類は不完全変態であり、卵→幼虫→成虫のサイクルで生活環を形成します。

成虫は体長は4~5mm程度で、ひらべったい形をしています。体色は茶褐色~赤褐色。ダニとは違い大型なので、肉眼でもはっきりと見ることが出来ます。

幼虫は若齢段階では1mm程度、白色から淡黄色と成虫に比べ薄い色をしており、成長するにしたがって褐色味を増していきます。

吸血後に非常に大きくなり、体長1.5倍、体重は3~4倍程度まで膨れ、色は黒褐色になります。大量の吸血をするため、吸血行動は10分以上かかり、吸血後には血糞(けっぷん)と呼ばれる赤黒い糞を大量にします。


1970年ごろには衛生環境の改善により日本ではほぼ見ることがなくなりました。ところが、2010年ごろから、ホテルや旅館、海外旅行からの帰国者などを通じて再度広がりがみられています

ヒトの血を吸う性質があり、血を吸われると患部が赤く腫れ、猛烈な痒みに襲われます。痒みに個人差はありますが、ヒトによっては眠れないほどの痒みに襲われるそうです。また、痒みが長く続くのも特徴で1~2週間ほど継続します

非常に厄介な特性として、旅行先から家に持ち帰ってしまうと、完全な退治が非常に困難である点です。木製の家具は廃棄したうえで、専門の業者を呼ぶと数十万円の損害となります。

旅行する方は、持ち帰らないように注意しましょう。

最近だと2023年11月に、トコジラミが発生したとの情報から(真偽は不明)、大阪メトロ線にて車両の一斉清掃が行われるなどの事態も起こっています。

毎日放送ニュースより


旅先での注意点

トコジラミの基本的な生態として夜行性で明るいところは苦手です。基本的に物の隙間に隠れており、深夜にヒトが寝ているときに吸血しに来ます。

また、移動能力は低く、飛翔することも出来ません。

旅先において一番注意することは自宅へ持ち帰らないことです。

宿泊先をGoogleレビューで確認

確実ではありませんが、念のため宿泊前に確認しておきましょう。場合によっては写真付きでレビューがありますので、宿泊先を変更するか、より注意して宿泊しましょう。

まずは荷物は風呂場へ

浴槽のタイルはツルツルしているので、トコジラミは移動することが出来ません。荷物をいったん風呂場へ置き、部屋を確認することで荷物へトコジラミが乗り移るのを防ぎましょう

のちのベッドチェックを終えて、いないことを確認してから通常の場所へ荷物を置きます。

どうしても心配なら常に荷物をビニール袋で覆うなどしておけばOKです。

ベッドのチェック

ベッドのシーツをめくって、マットレスの継ぎ目、角、ベッドの裾などをチェックしましょう。肉眼で見えるとはいえ、成虫でも5mm程度、幼虫や血糞は2mm程度しかないため、要チェックです。

本体は隠れていて見つけにくいので、血糞、抜け殻などの痕跡を探しましょう。ゴマ粒大の赤黒いしみがマットレスに染みついていたりしたら可能性が高いです。

痕跡を発見したなら、風呂場においてある荷物をもってフロントへ。フロントで事情を話して部屋を変更してもらいましょう。

少しでも被害を減らすなら

明かりをつけたまま寝たり、就寝時の肌の露出を避けることで被害を軽減できます。が、基本的にはいないところに宿泊するのが一番なので、前述の2つよりは優先度が下がります。

旅先から家に帰った後

旅先で刺された症状が出た場合は荷物や衣服に付着している可能性があります。痒み自体は1~2週間で治りますが、自宅で繁殖されると、とても厄介なことになります

まずはホテルと同様に荷物は浴槽へ持って行きましょう。ビニール袋で包んでいる状態ならそのままでも大丈夫です。拡散を防いだ状態で荷解きしてトコジラミの有無をチェックしていきましょう。

場合によっては荷物をすべて廃棄したほうが安上がりな場合もありますので、選択肢として検討しておいてください。

衣服は一番トコジラミが付着している可能性が高いので、すぐに洗濯して乾燥機にかけましょう。トコジラミは熱に弱いので、乾燥機が有効です。

もし持ち帰ってしまったら?

掃除の徹底

初動がとにかく大事です。掃除機や粘着テープなどで徹底的に掃除しましょう。掃除機は吸引後にごみをすぐに捨てて密封してください。放置しておくと掃除機内で卵が孵化して家中に広がってしまいます。

熱駆除

衣類やシーツなどは80℃以上のお湯に5分以上つけましょう。トコジラミは熱に弱く50℃程度で死滅すると言われていますが、避難場所があれば50℃以上にならない箇所も出てきてしまいます。高温のスチーマーなども有効です。

粘着トラップ

新たな吸血を防ぐための応急処置として、部屋の真ん中で寝て、周囲を両面テープで囲うという方法があります。しかし、根本解決ではないのであくまでも応急処置です。

殺虫剤

近年は抵抗性を持つトコジラミの集団が発見されており、市販の薬剤は効果が薄い可能性があります。また、卵にはそもそも効き目が小さいため、物理的に駆除するほうが確実です。そのため、個人で殺虫剤による駆除はあまりオススメ出来ません。

最終的には業者依頼

個人での完全駆除は難しいと言われています。最寄りの行政へ相談したうえで、業者を紹介してもらい、徹底的に駆除することになります。

また、木製の家具は焼却処分したほうがよいでしょう。

まとめ

✅Googleレビューで宿泊先を確認

✅旅先では荷物はまず風呂場へ

✅ベッドをめくって血糞の確認

一度は日本からほとんどいなくなったトコジラミ。しかし、近年は外国からの旅行客の増加や、外国への旅行の帰国者が分布を広げています。特に韓国への旅行者は注意してください。

東京都での相談件数は2016年では150件程度だったのに対して、2023年は300件を超えているそうです。

対策は、とにかく自分が分布を広げないこと。宿泊先のホテルを事前に調べる、ホテル到着後は荷物をツルツルしたタイルの上に置き、ベッドのチェックをしましょう

万が一、旅行先でトコジラミに刺されたかも?と思ったら、自宅到着後は自宅内で繁殖させないように十分注意してください。


5/29追記

トコジラミが家にいるか心配の場合は

"うそ寝作戦"が有効とのこと

1.部屋を暗くした状態で30分横になる

2.30分後に明るくして周囲を確認する

3.3日間確認できなければいない可能性が高い

出典|https://toyokeizai.net/articles/-/752807











図鑑(写真注意)

ここからは実写を使用しますのでご注意ください。まとめより下に配置してるのは、写真を使うのと、ここからは生物学的な話(基礎論)になるので、実生活(応用論)にはまとめまでで十分な内容だからです。

というわけで興味のある方だけどうぞ~。

トコジラミ

本記事の主役。ヒトに害を与える厄介な性質がなければ、結構愛嬌のある姿をしてる気がしますよね?気がしませんか?

Bedbug004.jpgJiří Humpolíček - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2251393による

探知犬

カメムシ目だからというわけではないのですが、独特の体臭がするらしいです。フランスなどでは探知犬による、発見と駆除を行っていると聞いたことがありますが、日本ではまだ精度が低いそうです。

激減の理由は薬剤による衛生環境の向上

本種が日本で1970年ごろに激減したのは、終戦後に人体にDDT(プロレス技じゃないよ)をぶっかけて、衛生害虫を撲滅していたからだそうです。おおらかな時代ですよね(笑)。

DDTいうのは"沈黙の春(著:レイチェルカーソン)"で有名な殺虫剤で、環境ホルモン的な効果が疑われています。現在は日本では使用が禁止されております。

このような歴史から現在の法が作られているので、基本的に添加物農薬は安全ですよという記事も書いてますので、よろしければご覧ください(ダイマ)。

とはいえDDTも成分そのものより、使い方の問題で、「大量に使いすぎたのでは?」ともいわれています。現在はマラリア対策として再評価されている最中の薬剤でもあります。

痒みについて

吸血されたときに痒みが出るのはアレルギー反応です。そのため、過去に吸血された経験や、個人差による体質で痒みの強さが大きく異なります。

アレルギー反応なので抗ヒスタミン系の痒み止めが有効なようですが、基本的には病院で受診しましょう。医師に旅行先の状況なども伝えると、診察の正確度が上がると思いますので、心当たりがある場合は伝えてください。

下図、刺された痕

Bedbugb1.jpgJames Heilman, MD - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=25580046による

不思議な繁殖行動

なお、交尾行動が特殊でオスはメスの体のどの部分に交尾器を指しても受精します。これはメス側の防衛反応ではないないかと言われており、進化生態学において、同種間での軍拡競争の例として取り上げられています。

トコジラミ以外の危険なカメムシ

ここからは完全な蛇足です。

サシガメ

カメムシの仲間で、肉食性のものをサシガメといいます。いわゆるカメムシと違って、臭くはないのですが、口吻で刺し、毒を注入されます。

口吻とは口の牙が変化してストロー状になっていることです。カメムシ目(半翅目)の共通した特徴で、カメムシ以外にセミ、タガメ、アメンボ、アブラムシなどもこの仲間に属します(蚊は独自の進化で針を獲得しています)。

サシガメすべてが危険というわけではありませんが、一部紹介しておきます。日本で刺されたら、ちょっと痛いサシガメを紹介しておきます。

ヨコヅナサシガメ

日本のサシガメでは最大級で成虫で20mm前後の大きさです。成虫は5月~8月ごろに、公園や街路樹などで普通にみることが出来ますが、普段は樹の上の方で活動しているので、見る個体は産卵のために人の目の高さまで下りてきた個体がほとんどです。

サクラやケヤキのイモムシ類を食べてくれるので、益虫でもありますが、成虫に刺されると結構痛いらしいので、害虫でもあります。

見た目が結構毒々しいので(特に脱皮直後)、見かけると不安になるかもしれませんが、触って刺されに行かなければ特に問題ないので優しく見守ってあげましょう

幼虫では特に集団性が強く、群れで狩りをする行動も見られます。


成虫は白黒

Agriosphodrus_dohrni_back.jpgPhonon.b - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=90511829による

脱皮直後は赤い

横綱刺亀_羽化後体色変遷.jpgPhonon.b - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=90511829による

幼虫も赤い

YokozunaAssassinBug_NymphalMolt01.jpghttps://commons.wikimedia.org/wiki/File:YokozunaAssassinBug_NymphalMolt01.JPG#/media/ファイル:YokozunaAssassinBug_NymphalMolt01.JPG

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