- 投稿日:2024/08/13
- 更新日:2025/09/29

ゲームセンターのオペレーターとして私が今まで実際に経験した、店舗でのクレーマーやカスハラ、不良客の対応方法をお伝えします。
自己紹介
私は18年間、ある大手アミューズメント施設の運営会社で勤務していました。立場的には責任者というポジションでしたので、その店舗で発生する全てのトラブルを対応していました。
そこで発生した様々な案件から、未然に防ぐ&発生後の対応などの経験談をシェアしたいと思います。
そのクレームは、なぜ発生した?
私はクレームが発生する理由を大きく3つに分類していました。その理由を一瞬で判断し、その後の対応方法を決めていました。
①店舗側がお客様に損害を与えた。(店舗側の問題)
料理の提供が遅い、オーダーミス、スタッフの態度が劣悪、具体的に損害を与える(衣服にペンキ塗料が付着する)など、お客様は全く悪くない場合。
②お客様による勘違い。(店舗側の説明不足、お客様も確認不足)
スタッフの説明だけでなく、広告表示の読みにくさや、期間限定・属性限定(学生のみ割引など)で誤認がある場合。また、説明を聞いていないお客様が勝手に判断し、間違った認識をしていた場合。
③クレーマー(お客様側の問題)
お客様自身のマイルールを押し付けて、店舗に無茶な要求をする。一定数いますが、要求内容が店舗ルールや法律を逸脱している場合。
それぞれの対応方法と、心構え
もちろん細かく言えばケースバイケースになりますが、大きくは上記3パターンに分け、それぞれ切り替えて対応していました。
①店舗側がお客様に損害を与えた。(店舗側の問題)
まずは誠心誠意(フリでも)お客様の話を全部聞くことからスタートです。途中で話を遮らないよう注意しましょう。気をつけるポイントは
・自分の顔を、お客様の顔より低い位置に持っていく。かがんだり、腰を曲げたりしましょう。物理的に、お客様が上・自分が下になるようにポジション取りします。これで心理的にも「話の流れが、お客様→自分に向いている」と感じてもらえます。水の流れと同じイメージです。
・眉間にシワを寄せ、苦しそうな表情を演出します。笑顔は厳禁⚠です!
・あまり動きすぎない。相槌が多かったり、返事が多いと、深刻さが薄れます。お客様の言葉が途切れた瞬間、しっかりと頭を下げて返事をします。
お客様の話が一通り完結したら、「お話頂きありがとうございます。今回の件に関して深くお詫びいたします、こちらからの対応としまして…」と、さっそく解決に進みましょう。ここから先は全てこちらのターン。相手にはターンを与えません。
この先お客様から不満が出るとしたら、解決内容の話題になります。(もうクレームの原因の話は出ません)なるべく一撃で決まるような、納得感のある解決策を提案しましょう。
②お客様による勘違い。(店舗側の説明不足、お客様も確認不足)
ここも①と同じで、まずは誠心誠意(フリでも)お客様の話を全部聞くことからスタートです。途中で遮らないように注意しましょう。気をつけるポイントは、お客様が勘違いしている箇所を、なるべく店舗側の「分かりにくかったですよね、申し訳ありません」に繋げる事です。お客様の確認不足でしょ、という流れに持っていくと、逆にヒートアップします。
「さっき言いましたよね?」は厳禁!「お伝えはしたのですが、うまく伝わっておらず申し訳ありません」と言いましょう。
空気感にもよりますが、この場合、基本的には割引や保障関係は何も提案しません。ただただお客様に恥をかかせないように丁寧に対応することに徹底します。「我々としても大変心苦しいのですが、お客様に保障できる具体的なものがございません。何かあればスグにでもご案内したいのですが、非常に残念で、何かして差し上げたい気持ちはあるのですが」と、誠意のみで頑張ります。私は誠意を見せる(演出する)事に関しては最高に上手でした。
「何もできませんが、せめて最高の気遣いをします」と言って、怒ってるお客様に許して頂いてました。
③クレーマー(お客様側の問題)
念の為、最初は言い分を聞きます。ここでは2通り。
①初めてのクレーマー②2回目のクレーマー
それぞれ同じく、最終目標は「二度と来店させないこと」でした。
①丁寧に、帰っていただくことを目指します。「そうなんですね、ただ何もできることがないですから、一旦出直してもらって良いですか?」「一度お帰り頂いて、まだ何か言い足りない事があれば、また後日でいいですか?」という感じで、とにかく帰らせていました。
②カスハラ編でも後述しますが、丁寧さは皆無です。何だったら腕組みしながら聞いてました。①で帰らせたクレーマーが再度来店したという状況ですね。
「お店は他にたくさんあるから、他のお店のほうが聞いてくれるんじゃないですか?当店は恐らくお客様とは合わないですよ」と教えてあげます。
クレームが発生しないように、未然に防ごう
とはいえ、どれだけ注意喚起しても発生するのがお客様クレーム。一番の対策は、けっこう意外な事だと思われるでしょうが…これです!
「みだしなみ」「あいさつ」「笑顔」
お客様クレームは、心のバケツから不満が溢れ出した時に起こります。スタッフの態度が悪い、無視される、無表情、、、そしてオーダーミス→ここでクレームになります。(器の大きさは個人差ありますが)
ただし、スタッフは清潔感があり、挨拶も目が合って素敵な笑顔、気にかけてくれてる、優しい話し方で丁寧、ですとオーダーミスの際に「いいよ、でも次回は気をつけてね」となる可能性が高いです。
店舗でスタッフさんの教育指導を最優先にする理由がコレです。身だしなみが悪いとフロアに出さない、挨拶や笑顔ができないならお客様の前に出さない、ここで妥協は許されません。(忙しくても絶対フロアに出しません。クレームが発生して余計に忙しくなり悪循環になる)
毎日スタッフのモチベーションを上げる等、いわゆる「ESの向上」に努めましょう!
カスハラに対して
スタッフに嫌がらせしたり、大声で怒鳴ったり、話が長かったり、様々なタイプがいますよね。
まず責任者としてのマインドで、「必ず全て自分が受け止める」と決めて下さい。「スタッフには、何も嫌な思いはさせない」事が最重点項目です。
こういうお客様がいたら、とりあえず呼んでくださいね、と最初に決めておくのが効果的だと思います。
カスハラさんには、毅然とした態度で接しましょう。お客様と店員さんは、立場が対等なのです。感情的にならずに、「大声だと他のお客様が驚くので、普通のボリュームで話してもらえますか?」「その話、あと5分で終わります?他のお客様もいらっしゃるので」など、淡々と応対します。ただし決して横柄にならないようにして下さい。
冷静に対応すると、相手も「意味がないこと」をしていると気付くので、自ずと退散します。対応中の所々で、お帰りの際はあちらですよと出口の案内をしてあげて下さい。(相手に帰るタイミングを与えてあげる)
クセで「またのご来店を」などは言わず、無言で見送りましょう。
【大事なこと】何でも「お客様が絶対優位」と思わない
お客様は丁重に扱うのが基本ですが、クレーマーやカスハラ、犯罪行為に対してまで「お客様扱い」する必要はありません。そこをお客様扱いしたら、スタッフが不安になります。
「また後日、あのお客様が来るんじゃないか?」「いつまで嫌な思いをするんだろう」スタッフさんがこう思っては、普段から萎縮してしまいます。
「これは理不尽だな」「これはカスハラだな」そう判断した瞬間、お客様への接客<スタッフを守る、に意識を切り替えましょう。
「俺は俺の責務を全うする!! ここにいる者は誰も死なせない!!」
たとえ不器用でも、スマートでなくても、ボロボロになろうと、スタッフを守って不良客が退散したら、周りからの評価も上がるはずです。
「いつだって店長は、お前らに有利な、お客様優位の中で戦っているんだ!」
「生身の人間がだ!」
「傷だって簡単には塞がらない、失った手足が戻ることもない」
「店長は負けてない、誰も死なせなかった!」
「戦い抜いた、守り抜いた!」
「店長の勝ちだ!」
と、称賛されるかもしれません。(鬼滅を知らない方ごめんなさい)
警察対応に変わる判断基準は?
シンプルに「法律に違反している」瞬間に、通報していました。
・暴行、傷害、器物損壊、窃盗、恐喝、詐欺、放火、業務妨害、不退去あたりが主です。
例としては、
・数名に囲まれ、胸ぐらを掴まれる。→暴行
・刃物をちらつかせ、金銭を要求(割引しろ等)される。→恐喝
・反社会団体と名乗り、他のお客様を帰らせる。→業務妨害
・たむろ、居座り、閉店時間になっても帰らない。→不退去
こうなると頑張っても大変ですから、通報して警察の方に協力してもらいましょう。
警察対応時に気をつけていたこと
警察の方々も、トラブルが好きでやってる訳ではないので(^_^;)わかりやすく丁寧に効率的に応対しましょう。
緊急の場合は110番→現に目の前で犯罪行為が認められる。
緊急でなければ管轄の警察署に電話→盗難車っぽい車がある等。
では具体的に、会話の例をお伝えします。リスクマネージメントの一環として、イメージ訓練してもらえればと思います。
①「警察です、事件ですか事故ですか?」→「私◯◯株式会社の◯◯です、お店の店員が来店者から殴られているので通報しました、住所は◯◯です」
②「相手はどんな人ですか?」→「5人で、男性4女性1です。年齢は20歳ぐらいに見えます」
③「そちらに警察官を向かわせます、何階に行ったらいいですか?」→「入口でスタッフを立たせますので、来られたらご案内します」
この会話パターンがほとんどでした。
聞かれることは同じですので、緊張せずに通報して下さい。
通報した後に逃げられても大丈夫です。警察官の方も「また何かあったら呼んでくださいね」と言ってくれます。サッと名刺を渡しておきましょう。(通報者を記録されるため)
よく聞かれる「不退去」についての対応方法
「不退去罪」って何ですか?どういう要件で適応されるんですか?など、部下によく質問されてました。
細かい規定などあるのでしょうが、現実問題として、警察官立会いのもと下記で対応していました。
①「帰って下さい(お願い)」ではなく、「去りなさい(命令)」と言う。
②管理者の立場として言う。
③しっかりと「指示・命令である」事を伝える。
この3点セットで対応していました。
具体的には、居座るグループに向かって「管理者の立場として、おたくら全員に指示します。この敷地内から、直ちに立ち去りなさい。これはお願いではなく、指示・命令です。ここから直ちに、立ち去りなさい。」
→「いやだ」と言ったら、警察官の皆様に目配せし、強制退去で終了です。
たむろ行為など、これで一発KOです。宜しければ参考にして下さい。
出入り禁止(BAN)に関して
よく聞かれるのですが、出入り禁止の判断基準は具体的にありません。総合的に判断するとしか言いようがないのですが、それでも共通して言える事があります。
できれば出入り禁止(BAN)したくないのが本音
相手は今までお客様でしたから、できることなら厳しい処置を取りたくないというのが本音です。
しかし、お客様がルールを逸脱しているのは事実…徹底的に証拠を集めて、あらゆる角度から精査して、なるべく逃げ道を作ってあげて、お客様自身で改善できるように手配して、できれば勘違いでしたで済ませられないか様々なパターンを準備して、それでも「どうしようもない」場合に、仕方なく出入り禁止という厳しい処置をしていました。
「なぜ上手く言い訳して改善に向かってくれないの…ここまで逃げ道も作って誘導しているのに、なぜ怒鳴って台無しにするの…空気読んでよ…」と、ひょっとしたらお客様自身より運営側のほうが傷ついている場合もあります。少しでも分かっていただければ嬉しいです(泣)
まとめ
クレームに関しては、アドラー「嫌われる勇気」の中にある、課題の分離という考え方が参考になります。
「そのクレームは誰の課題なのか」「最終的に責任を引き受けるのは誰か」という部分で、冒頭の3パターンのように問題を切り分けていました。
お店側の問題ではないと思ったら、少し考えを切り替えて進めてみて下さい。何でもかんでも謝罪する必要もありません。
無駄なクレームに対しては時間をかけず合理的に対応し、その分もっと質の高いサービスを提供できるようになってもらえれば幸いです。