• 投稿日:2025/06/10
  • 更新日:2025/10/26
鍼灸師が行かない鍼灸院の特徴7選

鍼灸師が行かない鍼灸院の特徴7選

みつの@学び続ける鍼灸師/大学助手

みつの@学び続ける鍼灸師/大学助手

この記事は約10分で読めます
要約
・グループ院(チェーン店) ・無理に回数券を売りつけてくる院 ・「骨盤矯正」「姿勢改善」「産後矯正」を掲げる院 ・不安を煽ってリピートさせようとする院 ・問診や検査をろくにしない院 ・「〇〇メソッド」「当院独自の施術」で差別化を狙う院 ・西洋医学や病院を否定する院

はじめに

鍼灸院は外から見ても何しているか分かりづらく、どこの鍼灸院に行けばいよいか迷いますよね。

今回は鍼灸師の私が行かない鍼灸院の特徴について紹介させていただきます。おすすめの鍼灸院は相性や地域などで一概には言えないのですが、逆にお勧めできない鍼灸院の特徴には共通点があります。

以下の該当する鍼灸院は避けていただく方が無難かと思います。(同業の方に怒られるかも知れませんが笑)

整体院や接骨院にも該当するので参考にしてみて下さい。

グループ院(チェーン店)

グループ院やチェーン展開している接骨院・鍼灸院では、保険診療を中心とする関係上、短時間で多くの患者をこなす流れ作業になりやすい傾向があります。そのため、1人ひとりに丁寧に向き合う時間がどうしても限られてしまいます。

また、こうした施設では施術のばらつきを防ぐため、施術内容や刺鍼部位を画一的に決めたプロトコルが設けられているケースも多くあります。

たとえば、私の友人が勤務しているあるグループ院では、
「肩こりの患者には、風池・肩井・肩外兪・秉風の4点、鍼は最大8本まで」
というように、症状ごとに施術箇所や鍼の本数が厳密に定められているそうです。

しかし本来、肩こりと一口にいっても、その原因や体質、生活背景は人それぞれ。その人の体全体を見て施術を組み立てるのが本来の鍼灸の魅力であり、強みでもあるはずです。
画一化されたプロトコルでは、どうしてもその魅力が活かしきれないと感じてしまいます。

無理に回数券を売りつけてくる院

とくにグループ院で多いのが、「回数券の強引な販売」です。

もちろん、回数券そのものが悪いわけではありません。通院頻度が高い患者さんにとっては、経済的なメリットもあり、うまく活用すれば双方にとって良いシステムとも言えます。

しかし現実には、毎月の販売ノルマや利益確保のために、患者さんの不安を必要以上に煽り、半ば強引に購入を勧めるケースが少なくありません
「今買わないと損ですよ」「このままだと悪化しますよ」といった言葉を繰り返されれば、知識のない一般の方は不安になってしまうものです。

さらに問題なのは、いざ解約や返金を希望しても対応してくれないという点です。回数券や商品券は「資金決済に関する法律」に基づいて規制されており、原則として払戻しができません。実際、国民生活センターや消費者庁には、こうした鍼灸や整骨院での“回数券トラブル”に関する相談が毎年多く寄せられているのが現状です。

個人的に、とりあえず全ての患者さんに回数券を売っていくというのは治療家を志した人がやりたかった事なのかなと感じます。

以下のは実際あった事例です。

事例1: 整体院での回数券購入に関する相談

近所の整体院で、1回あたりの施術代が安くなると勧められ、16回分の回数券を8万円で現金払いで購入しました。しかし、施術を受けた後に体に痛みが出たため、今後通うのをやめることにしました。整体院に残りの回数券の払戻しを求めたところ、一切できないと断られました。

事例2: 整体院での解約希望に関する相談

腰痛のため整体院に通い、継続的に施術を受けるよう勧められ、24回分の回数券を購入しました。しかし、施術を受けても改善が見られず、通うのが大変になったため、解約して未使用分を返金してほしいと求めました。契約時に解約についての書面は受け取っていませんでした。


「骨盤矯正」「姿勢改善」「産後矯正」を掲げる院

院の前に「骨盤矯正」「姿勢改善」「産後矯正」といったキラーワードを並べた“のぼり”が乱立している院を見かけたら、私は迷わずUターンします。

こうした言葉は、何も知らない患者さん、特に産後の女性や慢性的な不調を抱える方の“漠然とした不安”にうまく刺さるワードです。ですが、その中身はエビデンス皆無の“それっぽい施術ごっこ”であることが非常に多いのが実情です。

まず大前提として、人の身体は左右非対称が正常です。多少の骨格の偏りは生理的な個性の範囲であり、「歪んでいる=悪」というのは単なる脅し文句です。
それにもかかわらず、その人の本来の健康な状態を知りもしないまま、“歪みが原因”と決めつけるような説明は、もはや“健康ビジネス”というより“思考停止マーケティング”です。

極めつけは、「ポキポキ」と関節を鳴らすような施術。これを“矯正”として売り出している院もありますが、厚生労働省が2020年に都道府県に出した注意喚起文書では、こうした施術による重篤な事故が複数報告されていると明記されています。

「柔道整復施術所等における重大な健康被害の発生について」(厚生労働省 令和2年3月24日付)関節に過度な力を加えることで、脊髄損傷・血管損傷・脳出血等の重大事故が発生している。→ 医業類似行為の施術者には、安全性の確保と適切な説明責任が求められる。

厚生労働省「柔道整復施術所等における重大な健康被害の発生について」通知(令和2年3月24日)https://www.mhlw.go.jp/content/000614798.pdf

つまり、国家レベル“危ないから気をつけてね”と言われていることを平然と続けている施設が未だにあるということです。

こうした現場を見ると、「鍼灸師としての矜持とは何なのか?」と考えさせられます。曖昧な理論に頼るより、根拠に基づいた安全な施術を提供するのが本来の専門職の姿勢ではないかと思いますね。


不安を煽ってリピートさせようとする院

🤪「このままだと寝たきりになりますよ」
🤪「今のうちに治さないと腰が曲がって戻らなくなりますよ」
そんな言葉で患者の不安を煽る──この手法、保険のセールストークとまったく同じです。
そして残念ながら、こうしたトークでリピート率を稼ごうとする治療院が今も一定数存在しています。

たしかに、東洋医学には「未病(みびょう)」という考え方があり、病気になる前の段階で体の変調に気づき、養生や施術でケアすることはとても大切です。
私自身、この考え方には深く共感しています。

ですが、それと「不安を植え付けて通院させる」のはまったく別次元の話です。
本来、未病のアプローチとは、患者さん自身の体への理解とセルフケア力を高めることが目的であり、恐怖を与えて依存させるようなものではありません

根拠もなく未来を悲観的に語るような発言は、治療家としての信用を損なうだけでなく、患者さんの自己判断力と尊厳を奪う行為です。
それはもはや“治療”ではなく、“洗脳”です。

鍼灸師であればこそ、冷静な観察と誠実な説明、そして前向きな提案が求められていると私は思います。


問診や検査をろくにしない院

鍼灸に限らず、すべての医療類似行為に共通して大切なのが「問診(=患者の状態を把握するための情報収集)」です。
にもかかわらず、初診でも問診票だけ軽く書かせて、「どこがつらいですか?」の一言でそのまま施術に入る──そんな院が未だに存在します。

これははっきり言って治療ではなく、ただのルーティン作業です。

我々鍼灸師は、症状や体質、既往歴、生活背景などを総合的に判断して、はじめて施術方針を決定します。問診を省くということは、その人の身体をちゃんと診ようという姿勢すら放棄しているのと同じです。

そしてこれは、単に質の低い施術にとどまりません。重大な疾患の見逃しにつながる危険すらあります。

たとえば、腰痛を訴える高齢女性に対して何度も施術を行っていたものの、一向に改善せず、病院で検査をしたところ実は骨折だったという事例もあります。
問診・検査をしっかり行っていれば、「これは普通じゃない」と気づいて、医療機関への受診を勧める判断ができたはずです。

病態がわからないまま治療方針を立てることは不可能です。
むしろ、そんな状態で鍼を打つほうがリスクです。

だからこそ、問診や検査を軽視している治療院には、私は行きません。
そして、患者さんにも胸を張って「そこはやめておいたほうがいい」と伝えます。


「〇〇メソッド」「当院独自の施術」で差別化を狙う院

最近よく見かけるのが、「○○式〇〇療法」「当院独自の施術法」などとそれっぽい名前をつけて差別化を狙う院です。
その実態はというと──ただ名付けているだけ。中身は他と大差ないことも少なくありません。

もちろん、施術に工夫を凝らすことは大切です。
ですが、本当に効果がある手技であれば、いちいち名前を付けて売り出す必要は無く、自然と患者さんが自院を選んでくださります。


ネーミングを駆使して他院と差別化するその裏には、「技術で勝負するのは難しいから、名前で釣る」という姿勢が透けて見えることもあります。

特にこうしたコピーには要注意です:

「どこに行っても治らなかったあなたへ」
「医学では治せない痛みに挑みます」
「国家資格ではできない、本物の施術を」

ここまで来るともう香ばしいを通り越して、もはや危険な香りがしてきます。笑

本来、我々の仕事は「名付けて売る」ことではなく、一人ひとりに合わせて、根拠ある施術を提供することです。
オリジナル施術を名乗るなら、せめて施術理論の根拠効果検証の過程くらいは説明すべきでしょう。

患者さんの信頼を得るには、“名前の派手さ”ではなく、“内容の誠実さ”こそが大事だと思います。


そのほかにも、「◯万人が満足」「改善率◯%」などと、やたらと数値を強調した広告を掲げている治療院にも要注意です。

一見すると「すごそう」に見えるこれらの数字、よく見ると出典不明なものがほとんどです。統計の取り方も不明確で、「満足」とは何を指すのか、何をもって「改善」としているのかの基準すら書かれていないことが大半です。

つまり、中身ではなく見た目のすごさで勝負しようとしているわけです。
施術内容や臨床的根拠ではなく、数字マジックで信頼を獲得しようとする姿勢そのものが不誠実に感じます。

実際には、こうした表現はコンサルタント業者の入れ知恵によるものであることが多く、営業のためのマニュアルトークとして指導されている場合も少なくありません。

西洋医学や病院を否定する院

たまにある「病院に行っても意味がない」「薬は毒」「医者には治せない」といった、西洋医学を真っ向から否定するような主張をする鍼灸院もお勧めしません。

もちろん、現代医療では対応しきれない不定愁訴や慢性症状があるのは事実ですし、東洋医学が得意とする領域があるのも確かです。
ですが、だからといって「病院は悪」「医者は信用するな」と極端に走るのは、単なる偏見であり、非科学的な態度に過ぎません

実際、西洋医学アレルギーとも言えるような鍼灸師の先生も一定数存在します。
ですが私たちが目指すべきは、「どちらが正しいか」ではなく、お互いの良さを理解し、必要に応じて補完し合う統合医療の実現です。

東洋医学の立場から「これは病院での検査が必要」と判断するケースもありますし、逆に西洋医学の医師から鍼灸治療を勧められるケースも増えています。
排他的な思考は、結果的に患者さんの健康を狭めることになるため、西洋医学や病院を否定する院はお勧めしません。

その他、個人的に微妙な院の例

そのほか絶対行かない方が良いと言うレベルではないですが、個人的にはあまりお勧めしない院の例をご紹介します。

美容鍼灸をしている院で「顔に100本打っています!」など大量の本数を主張する院

美容鍼灸で効果を出すには症状に合わせて適切な箇所適切な刺激量を加えることなので本数で売りにしている院はセンスが感じられません。

「ルート鍼」を掲げている院

ルート鍼とは鍼灸の一種の流派みたいなもので悪い箇所やコリに大量に太い鍼を刺すやり方です。

一般的な鍼灸治療と比べ、事故や内出血や身体への負荷などの安全性の懸念や、医学的根拠の不足などがあり、鍼灸業界でも賛否が分かれているため、個人的にはおすすめできません。
(リベでルート鍼をされている先生がいたらすみません🙇)


終わりに

鍼灸院ってどこにいけば良いかわからない。選び方がわからない。
そんな人が一人でも減り、鍼灸院へのハードルが下がると嬉しいです。

いいねやコメントをしてくださると励みになります。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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みつの@学び続ける鍼灸師/大学助手

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みつの@学び続ける鍼灸師/大学助手

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    会員ID:ZRlAoHh0
    2025/06/10

    ノウハウ投稿ありがとうございます。 同業者として全て同意できる内容でした。

    みつの@学び続ける鍼灸師/大学助手

    投稿者

    2025/06/10

    レビューしていただき、ありがとうございます! 同業の先生にそう言っていただけて嬉しいです!

    みつの@学び続ける鍼灸師/大学助手

    投稿者