- 投稿日:2025/09/01
- 更新日:2025/10/11
こんにちは。元大手大学受験予備校職員の”たけいし”といいます!
私はこれまで大学受験予備校で多くの受験生、保護者と関わってきました。
この記事では
「勉強時間はそれなりに確保しているのに、成績が伸び悩んでいる」というお子様や受験生を支えるために、保護者の方や先生が知っておきたい目標設定の考え方をまとめています。
それなりに勉強時間は確保しているのに受験勉強が上手くいかない原因として
【BAD】
目標設定がなく、なんとなく勉強している
目標設定が誤っていて、非効率な勉強になっている
といったことがあります。
これを
【GOOD】
正しい目標を設定して、その達成に向けたアクションプランが立てられる
という状態にできれば、勉強の効率は飛躍的に向上します。
お子様と勉強方法や成績について話をする場面…
生徒面談や指導の場面…
そんな時にしっかりとした目標の立て方をお子様や生徒に理解してもらうことができれば、その目標に沿って自走できるようになってくれるはずです。
この記事では、成績が伸び悩むお子様や生徒との面談を通してやる気を引き出し、合格まで導く「正しい目標設定の方法」を、模試成績表の活用例や具体的な面談事例と共に紹介します。
※志望校の見つけ方のようなそもそものゴールの見つけ方ではなく、ゴールに至るまでの道筋の立て方の話です
この記事を読むことで以下の効果が期待できます。
●実践的な目標設定のステップが分かる
●模試成績表の活用方法が分かる
●生徒が自分自身で目標設定できるまでの指導例が学べる
※以下の本文では、「生徒との面談」といった場面を前提で進めていますが、ご家庭でお子様と模擬試験の成績表をチェックするときなどにも適用できるようになっています。
受験にも役立つ!目標設定にオススメの「SMARTの法則」
目標設定の際によく用いられるオススメのフレームワークに「SMARTの法則」というものがあるので、ご紹介します。
SMARTとは、
①Specific(具体性)
②Measurable(測定可能)
③Achievable(達成可能)
④Relevant(関連性がある)
⑤Time-bound(期限がある)
の頭文字を取ったコトバになります。
目標設定をするときは、この頭文字それぞれの要素を意識しましょう。
ということで、受験勉強に当てはめた一例として以下のように考えることができます。
-Specific(具体性):目標は具体的で明確なものにしましょう。「英語の点数を上げる」ではなく、「英語の模試で80点を取る」といった数値目標を設定します。
-Measurable(測定可能):進捗を測定できるようにします。例えば、月に何冊の参考書を仕上げるか、週に何回問題を解くかを決めます。
-Achievable(達成可能):自分の現在の実力を考慮し、無理のない範囲で設定します。例えば今の成績が50点であれば、最初の短期目標は60点に設定するなど、段階的に上げていくことが継続のコツです。
-Relevant(関連性がある):漠然と参考書を読んだり問題を解いたりするのではなく、自分の志望校や最終的な目標との関連性を意識してモチベーションを高めましょう。
-Time-bound(期限がある):目標には期限を設けましょう。例えば「3ヶ月後の模試で80点を取る」といった具体的な締切を設定します。
SMARTの要素が無い曖昧な目標設定では、
■目標設定がなく、なんとなく勉強している
■目標設定が誤っていて、非効率な勉強になっている
このような勉強になってしまい、思うように実力がつきません。
ただし「SMARTの法則を意識しましょう」という指導では上手くいかない|実践しやすい目標設定の3ステップ
しかし、生徒と面談をする際に、「SMARTを意識して目標を設定しましょう」と言えばいいのかというと、私の経験上、それではなかなか上手くいかないのが実際だと思います。
「なんとなく目標は立てられそうだけど、その目標の達成に向けて、結局何をしたらいいの?」と立ち止まってしまう生徒がほとんどではないでしょうか。
ですので、もう少し簡略化して伝える、かつその生徒に「アクションプラン」までイメージしてもらうことが必要になります。
簡略化した【目標の立て方のステップ】は以下の通りです。 ①ゴールと自分の現在地(得意・不得意や状態)の差を知る ②差を埋めるための数値目標を考える ③数値目標から行動目標を考える
正しい目標設定をするためには、自分の現在地(得意・不得意や状態)をきちんと把握するところから始まります。
ですので、自分の現在地をきちんと把握するためのコツや、さらには模擬試験の成績表のチェックポイントについても合わせてご紹介します。
自分の「得意・不得意や状態」を把握するためのフレームワーク
自分の現在地(得意・不得意や状態)をきちんと把握することについては、「メタ認知」の考え方を使います。
ここでいうメタ認知とは簡単に言うと、「わかったつもりになっていないかな?」と自分に問いかけて、理解度を確認しながら学びましょうということです。
自分の理解度をメタ認知的に確認するときのフレームワークの例を挙げます。
例1「初級・中級・上級・達人」分類 初級:学び初めの段階で、まだ理解できていない状態 中級:理解し始めてはいるが、まだ誰かの助けやヒントが必要な状態 上級:自分なりに理解して、活用することができている状態 達人:確実に理解して、他者に説明ができる状態 解いている問題に対して自分が初級~達人のどの地点にいるかを確認します。
例2「わかる×できる」分類 ①わかる かつ できる:習得できているので、定期的な反復を。 ②わかる しかし できない:習得まであと一歩。実践的に訓練・練習が必要。 ③わからない しかし できる:答を覚えているだけ=わかったつもり。文脈や形式が変わるとできない→本質の理解へ。 ④わからない かつ できない:インプットから始める。人から教えてもらう。 解いている問題が自分にとって①~④のどれに分類されるかを確認します。
このように理解度を確認しながら問題に取り組むことで、ただ闇雲に勉強するのではなく、特にどの問題に注力すればいいのかが見えてきます。
意外と知らない⁉模試の成績表の活用方法
模擬試験の成績表をチェックすることも、自分の現在地を知る上でとても大切です。
大学受験の模擬試験の成績表には、以下の項目が掲載されていることがほとんどです。(河合塾さん、駿台予備学校さんの模擬試験成績表を参考にしています)
①成績概況(教科・科目ごとの得点や偏差値など)
②設問別成績(各教科・科目の設問ごとの得点や偏差値など)
③志望校判定(A判定・B判定・C判定・・・など)
多くの受験生にとっては志望校判定こそが気になりますが、実は成績表は①~③の「見る順番」が最も大切なのです。
はじめに見るのは、③志望校判定です。
③志望校判定の欄では、「ボーダーまであと何点必要か」といった情報や、「1つ上の判定にはあと何点必要か」といった情報を確認することができます。
まずはここから大まかな目標点を把握します。例えば、「いまC判定で、B判定のためにはあと合計で+30点必要・・・」といった感じです。
次に①成績概況に戻ります。
③で把握した目標点を教科・科目ごとに振り分けていきます。
その際、よくできている科目をさらに大幅に得点UPさせることは難しいため、「あまりできていなかった不得意科目でどれだけ得点UPできそうか」から考えることがポイントです。例えば、合計で+30点必要な場合に、「今回数学の自分の得点は50点だった。平均点は65点なので、まずは平均点がとれるようにしたい。よし、数学で+15点UPを目標にしよう。」といった感じです。
最後に②設問別成績をチェックします。
③→①の順番で、「数学で+15点UP」のように教科・科目ごとのおおまかな目標が考えられているはずです。
とはいえ数学の何ができるようになれば実際に+15点UPを達成できるのかまで決めなければいけません。
そこで②設問別成績で、今回の模擬試験で出来の悪かった設問に注目をしてやりましょう。例えば、「確率の問題は満点近くとれているからOK。一方で二次関数の問題は(1)まで解けていたが(2)から間違えていて、20点中の5点しか得点できていない。基本が定着していれば完答できる問題だから、二次関数を克服して+15点UPをめざそう」といった感じです。
模試成績表の分析3ステップ まとめ ステップ1)志望校判定欄から「必要得点差」を確認する ステップ2)教科・科目ごとに必要得点差を分配する ステップ3)設問・単元別に注力するポイントを決定
このように大きい目標から、順々に小さい目標に細分化することで、「なんとなく成績を上げなきゃ、勉強しなきゃ、数学を伸ばさなきゃ・・・」といった状態から、「志望校でB判定をとるためには、数学なら特に二次関数のこーゆう問題を正解できるようにしなきゃ」といった具体的な目標が考えられるようになります。
※実際の数値目標を考えるときは、①成績概況と②設問別成績の両方を同時に考慮しながら、数値のバランスを取っていく必要があります。なぜなら、①成績概況で「数学+15点UP」と決めても、②設問別成績を見てみると、+15点UPさせる余地がない場合もあるからです。
あらためて目標設定の3ステップ
あらためて【目標設定の3ステップ】に戻ります。 ①ゴールと自分の現在地(得意・不得意や状態)の差を知る ②差を埋めるための数値目標を考える ③数値目標から行動目標を考える
ご紹介してきたような「メタ認知」の考え方や、模擬試験の成績表のチェックポイントを、面談などで生徒に伝えてみてください。
そうすることで多くの場合、生徒自身でも①②のステップを実行できると思います。
自分で考えられる生徒であれば③まで自力でできると思います。
しかし自力では行動目標、つまり「数値目標達成のために、具体的にどの教材に取り組むか」「いつまでに取り組むか」が決められない生徒とは、改めて面談の場で教材の提案などをしてあげるといいでしょう。
また、もしもゴールまでの全体像が見えていなければ、受験までの残り期間をふまえて、いつまでにどんな目標をクリアできていればいいかを考えてあげてください。
ポイントは【いつまでに】【何を】【どのくらい】取り組むかを決めることです。そこまで具体的に決めないと、目標を設定したことにはなりません。
そして、一定の期間が経過したら、必ず「どのくらい取り組めたか」の進捗確認を行ってあげるといいです。
ケーススタディ
では、具体的なケーススタディを用いておさらいします。
【ケース】 ●高校3年生の受験生との面談 ●志望校の合格者成績データによると、共通テストの目標点は700/1000点(素点)だが、6月に受験した共通テスト型模擬試験では550/1000点だった ●いまは7月中旬 ●これから夏休みに入るタイミングでの面談 ●一生懸命に勉強している様子だが、なんとなく漠然とした勉強になってしまっており、不安そうである ●9月には再度、共通テスト型の模擬試験を受験予定である
今回は共通テストの得点に焦点を当てて、この夏どんな勉強をするのかを一緒に考えてあげよう
【面談例】
●「本番で700/1000点」という大きな目標に向けて、短期目標を設定する
本番の目標点から逆算して9月の目標点(=数値目標)を決めていきます。
そのために、自分の現在地を確認させましょう。
例えば6月の模試では、ケアレスミスによる失点は何点分あったのでしょうか?そのケアレスミスを防ぐことができれば、それだけで得点UPです。
次に6月の模擬試験で出題された問題を、「初級・中級・上級・達人」分類や「わかる×できる」分類で分析していきます。特に「中級レベル」や「わかる×できない」に分類される問題から先に克服していくことを決めます。
あわせて6月の模擬試験の成績表も確認しておきましょう。具体的にどのくらいの得点ができていたらどんな合格可能性判定になっていたのかをチェックして、目標が現実的かどうか、十分かどうかを確認しておくといいでしょう。
模擬試験の成績表を振りかえるときは、ぜひ「配点」にも注目してください。
例えば「あと+15点UP」という視点から、配点に注目することで「これとこれとこの設問を正解できれば+15点になるから、その問題を解けるようにしよう」といった感じで、より具体的な目標になると思います。
ここまでの確認を経て、
ケアレスミスでの失点分も含めて、
数学なら+何点UP、英語なら+何点UP、国語なら・・・といった具合に、各教科・科目での数値目標が見えてくると思います。
それらを足し算して、9月の模擬試験の合計目標点が決まります。
もしも、本番の目標点から逆算して考えたとき、9月段階でこのペースでは不足があるようなら、+αどの問題で正解できるようにするかを追加で考えてください。ここでも模擬試験の成績表を参考にしましょう。
●数値目標から行動目標を考える
9月の目標点(=数値目標)が決まった時点で、「具体的にはどの設問を正解すればいいのか」が見えてきていると思います。
次に考えることは、「この夏(7・8月の2ヶ月間)どんな勉強をすれば、その設問を正解することができるのか」です。ここまで考えられれば、とりあえず問題集を1ページ目から順に解くといった勉強はせずに済むようになります。
もしも生徒自身で何に取り組めばいいかが見つけられていなければ各教科の先生からアドバイスをもらうのも手ですが、なるべく、まずは生徒自身に考えさせて、生徒自身に決めさせることをオススメします。
●必ず振り返りをする
目標を立てたら、やりっぱなしにせず、必ず振り返りをしましょう。
目標通りに得点を伸ばすことができたのか、目標に届かなかったのであれば原因は何なのか、次回の目標はどうするか・・・
このようなサイクルを本番まで実行していくことが大切ですが、何度か繰り返せば生徒自身で実行できるようにもなります。
最後に
今回は【目標の立て方】というテーマで生徒面談のポイントを書いてきました。
漠然と勉強してしまっている生徒との面談では、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
今回は以上です。
ありがとうございました。