• 投稿日:2025/10/20
  • 更新日:2025/10/20
金谷啓之著『睡眠の起源』:眠りは進化の遺産か?

金谷啓之著『睡眠の起源』:眠りは進化の遺産か?

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シロマサル@本の要約:計300冊達成🍀

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要約
人類を含むあらゆる生物はなぜ眠るのか?その根源的な問いに挑む『睡眠の起源』。 脳を持たないヒドラから、遺伝子変異による短眠家系、さらには進化論の視点までを交え、眠りが私たちの本質であることを示す一冊を要約。

初めまして!シロマサルです。

知ることで、人生はもっと楽しくなる!

今回は金谷啓之著『睡眠の起源』2024年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。

著者:金谷啓之

1998年生まれ。山口県出身。東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学教室大学院生(博士課程3年)。2020年3月九州大学理学部生物学科卒業。同年4月より東京大学大学院医学系研究科所属。高校時代から化学・生物部に所属し、数々の科学コンテストに入賞。2017年九州大学山川賞。2018年第25回日本時間生物学会学術大会優秀ポスター賞。2019年度日本学生支援機構(JASSO)優秀学生顕彰学術分野大賞。2024年度日本動物学会成茂動物科学振興賞。本書が初の著書となる

00000.png✅ 眠りは無駄ではなく、生物に刻まれた本質である。

✅ 遺伝子や進化の中に、睡眠の仕組みが隠されている。

✅ 眠りを理解することは、人間の生き方を見直すことにつながる。

そもそも、なぜ私たちは毎日眠るのか? 一日8時間眠るとすると、人生の三分の一ほどを眠って過ごしていることになる。人生が90年だとすると、約30年を眠って過ごしているのだ。はたして、そこまでたくさん眠る必要があるだろうか。

金谷啓之著『睡眠の起源』


「なぜ私たちは眠るのか?」という問いは誰もが一度は考えたことがあるだろう。

睡眠は人生の3分の1を占める行為でありながら、依然として謎が多い。

本記事では『睡眠の起源』を手がかりに、遺伝子・進化・生物学の視点から睡眠の本質を解説する。


『睡眠の起源』

Image_fx (1).jpg始まりが海なら、私たちの身近な始まりは眠りから目覚めるときだ。

起きている姿と眠っている姿──どちらも私たちの生きる姿である。はたして、〝本来の姿〟はどちらだろうか。

金谷啓之著『睡眠の起源』

1. 睡眠は生物の基本リズムである

Image_fx (5).jpg睡眠時間を削るのは、身を削る行為である。

私たちは、起きている間に、いろいろなものが蓄積する。起きている間には、体の疲れが溜まり、脳の疲れも蓄積する。遺伝子の発現が変わり、脳のなかでシナプスが増大していく。起きている間に存在する意識は感情を伴い、それゆえ心理的ストレスが蓄積する。 

金谷啓之著『睡眠の起源』

0.png眠りは生命の設計図に組み込まれた必須機能である。


眠りは単なる休息ではなく、体のリズムや遺伝子に刻まれた生理的な必然である。

人は平均7~8時間の睡眠を必要とするが、短時間睡眠で平気な体質は遺伝子のわずかな変異によって説明される。

睡眠は脳や神経の働きだけでなく、細胞レベルでも重要な現象であり、細胞の修復やホルモン分泌の調整、免疫機能の維持など、全身に影響を及ぼす。

つまり、睡眠は「心身のメンテナンス」と「遺伝子に組み込まれた生命のリズム」の両面を担う基本的な機能である。


2. 眠る生物の共通性と進化の視点

Image_fx (6).jpg眠るという行為は動植物関係なく行われている。

ヒドラには、脳がない。脳をもたず、たった二つの細胞の層からできた体。水の中でゆらゆらと揺れ動く姿は、思考や感情を伴わず、流れに身を任せて生きているようだった。でも、そんなヒドラにも、自ら体を動かして餌を採り、ときに動きを止めて休む状態がある。それは、まるで眠っているかのようだった。

金谷啓之著『睡眠の起源』

0.png眠りは進化の基礎、起きることは戦略である。


睡眠は脳の有無にかかわらず、ほぼ全ての生物に共通する現象である。

一般的に、脳を休めるために「睡眠」は必要だと私たちは考えている。

hydra.jpg引用画像:基礎生物学研究所

しかし、脳を持たないヒドラ(クラゲやイソギンチャクの仲間)でさえ「眠る」状態を示し、昆虫や魚、爬虫類なども必ず休息をとる。

進化の過程を考えると、眠りは後から獲得された機能ではなく、生物のデフォルトの状態である可能性が高い。

すなわち、生物は眠ることを前提に進化しており、「起きて活動すること」がむしろ特殊な戦略だと言える。

睡眠は進化的に守られてきた基本的な行動であり、生命維持の中心的役割を果たしてきたのだ。

例えばライオンは1日10時間以上眠るという。草食動物たちは、天敵から身を守るために、睡眠を極限まで削ってきたのだろう。だが、それでもやはり、1日数時間の睡眠は必要なようだ。天敵に襲われるかもしれないという恐怖に怯えながら、細切れの睡眠をとるのだ。

金谷啓之著『睡眠の起源』

睡眠が前提の身体なのに、どうして睡眠を削ってしまうのか?

一時的ではなく、慢性的な場合は特に改善しなければならない。


3. 遺伝子が決める眠りの個性

Image_fx (7).jpg個人によって必要な寝具が違うように、睡眠に関する遺伝子も異なる。

生き物は、一生のうちに、環境に合わせて体の形やサイズを変えるわけではない。何が起こっているのかというと、世代を経ることで進化していくのだ。 有利な特徴をもつ(環境に適した)個体の方が、生存して子孫を残しやすい。そして、環境に適さない個体は子孫を残すことなく絶えていく。

金谷啓之著『睡眠の起源』

0.png眠りの個性は遺伝子に刻まれている。


睡眠の量や質は個体差が大きく、これは遺伝子によって決まる部分がある。

例えば、ショートスリーパー家系では遺伝子のわずかな変異が神経細胞の活動パターンを変化させ、短時間睡眠でも問題なく機能できる体質を生む。

ショートスリーパーだと自称する人の多くは、眠気を我慢しながら過ごしていると考えられていて、睡眠が少なくてもまったく平気な真のショートスリーパーはじつは珍しい。 2019年に発表された論文では、家族性自然短眠について調査し、Adrb1と呼ばれる遺伝子の変異が、自然短眠と関連していることが報告された。

金谷啓之著『睡眠の起源』

つまり、他の人がショートスリーパーになるのは不可能といってよい。
(遺伝子改造しない限りは…。)

ちなみに、この変異を持つ人は平均より短い睡眠時間(通常4~6時間程度)でも健康と認知機能を維持できる。

またこの変異を導入したマウスもやはり睡眠時間が短縮することが実験で示された。この発見により、ヒトの自然な睡眠時間の個人差の一因が遺伝子レベルで解明された論文である。

参考:"A Rare Mutation of β1-Adrenergic Receptor Affects Sleep/Wake Behaviors"


遺伝子は単に睡眠時間を左右するだけでなく、眠りの深さや覚醒のタイミングまで制御しており、個体の生活リズムや適応能力に直結している。

つまり、私たちの「眠る力」は生まれながらに設計されており、生活習慣だけでは完全には変えられない側面を持つ。


生物学という点から見れば、個体差は遺伝子で大きく決まり、その中でも環境やあらゆる外的要因で個人差も決まってくる。

自分の性質を他人に簡単に当てはめることはできない。

私たちは生きている間に、自分自身が進化することはない。
進化することなく一生を終えるのだ。

金谷啓之著『睡眠の起源』

進化は未来で生まれた者の結果である。

まずは自分のことは自分が最も理解しなければならない。

8時間は眠らないと良くないのであれば、7時間睡眠で我慢するのではなく、8時間ちゃんと寝られる環境にシフトしていかなければならない。

もし睡眠に異常を感じたなら、一歩踏みとどまって、自身の状態を確認してみるべし。

睡眠を改善することで、日々の生活はもっと豊かになる。

良い睡眠は、覚醒を充実させ、良い人生へと導いてくれる。


0000000.png249-2.png片野秀樹著『休養学 -「休み方」を20年間考え続けた専門家がついに編み出したあなたを疲れから救う』

博士(医学)であり、休養学の第一人者の本。

睡眠以外にも効果的な休み方を提示する。

睡眠の大事な役割の1つは、なんといっても細胞の修復です。昼間の活動で傷ついた細胞の修復が、主に睡眠中におこなわれます。厳密にいえば昼間でも細胞の修復はされています。しかし昼間は体を動かすほうに酸素が優先的に使われるので、あまり細胞の修復には手がまわりません。 その点、睡眠中は消費する酸素が少なくて済むので、細胞の修復に酸素を使うことができます。細胞の修復を助ける成長ホルモンも夜、寝ているときに分泌されるので、眠ると疲れがとれるのです。

片野秀樹著『休養学 -「休み方」を20年間考え続けた専門家がついに編み出したあなたを疲れから救う』


197.png保坂隆著「毎日がスッキリする『老後の快眠術』」

こちらも睡眠に関わる本。こちらは精神科医の話。

⇒ 体温変化の少なさが不眠感を強める。

⇒ 加齢には体温管理が良い睡眠の秘訣!

実は、人間の体温は一日中同じではなく、少しずつ変化しています。体温が最も低いのは朝起きる直前で、そこから日中に向けてだんだん上昇し、夜寝る前にピークを迎えます。しかし、エネルギーの代謝を抑えて脳を休ませるため、体温はそこから一気に急降下。その体温の下降中に、人は眠気を感じるようになっています。

保坂隆著「毎日がスッキリする『老後の快眠術』」


307.png小林弘幸著『疲れたら動け!』

シンプルなメッセージ。疲れたときほど、動くこと。

理由は肉体的な疲れよりも「精神疲労」がほとんどだからと著者の小林医師は分析する。

睡眠だけが体のメンテナンス方法ではない。

「疲れ」の理由となっている自律神経の乱れは、あなたの気持ちの変化やちょっとした運動、取り巻く環境の改善によって整えることができるのです。

小林弘幸著『疲れたら動け!』


まとめ

note_見出し用.png✅ 眠りは無駄ではなく、生物に刻まれた本質である。

✅ 遺伝子や進化の中に、睡眠の仕組みが隠されている。

✅ 眠りを理解することは、人間の生き方を見直すことにつながる。

睡眠とは何か──それは、起きている間に蓄積したものを解消する行為、なのだろう。

金谷啓之著『睡眠の起源』


⇒ 眠りは私たちの本質を映す進化の窓である。


知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。

是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!

見ていただきありがとうございました!😆

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