- 投稿日:2025/10/04

たとえ話 3つのファンド
皆さん、ちょっと想像してみてください。
今、皆さんの前には100万円と、3つのファンドがあります。しかし、その交付目論見書は汚れていて、全部は読みとれません。
1つ目は、どうやらS&P500のインデックスファンドである様子です。手数料の欄も汚れて見えにくいですが、どうやら0.1%代であることは読み取れました。
2つ目は、アクティブファンドです。どうやら新興国に多く投資している様子ですが、内訳は不明です。手数料の欄は8%代であることが読み取れました。
3つ目は、交付目論見書の中身がまるまる汚れていて、何も読み取れませんでした。しかし、交付目論見書の表紙はとてもきれいで格好良くて素敵な表紙です。
この3つのうち、100万円をすべて使い切ってどれかを購入しなければなりません。何を買いますか?
さて、どうでしょう? リベ大生の皆様なら、ざっくり
1つ目 インデックスファンドであり手数料もまずまずなのでこの中では良い方かも
2つ目 手数料高すぎて明確なハズレ
3つ目 よくわからない
と、判断が付くのではないでしょうか。結論は「消去法で一番マシそうな1に全額投資」が妥当でしょう。
さて、急に何の話なんだと思うかもしれませんが、今日は「リベシティには、栄養情報の面では3つ目のよくわからないファンドを買っちゃう人がいそうで心配だよ」という話をしようと思います。
1.エビデンスのない栄養情報を求めるのは目をつぶって投資するのと同じ
金融リテラシーの偏差値がバグっているリベシティの皆さまなら、上記の問いには正しく答えられるでしょう。
しかし、栄養情報に関する事となると、3を選択していらっしゃる方も少なくないようにお見受けします。
格好良かったり、素敵だったり、目新しい情報は世の中に沢山あります。サムネが格好良かったり、きれいなモデルが広告をしていたり、とてもキャッチーで面白そうなタイトルが付いていたりする栄養情報、沢山ありますよね。
しかし、そのエビデンス(根拠)が示されていることは稀です。
そもそも健康に良いかどうかというのは、膨大な観察、実験、疫学、それら人類の叡智の果てに判明することなのです。個人の主観ではわかりようもありません。
私が◯◯食べたら健康になった! だから、◯◯は健康に良い! というのは根拠でもなんでもありません。ただの主張です。
そうした栄養情報は、交付目論見書がついていないファンドと同じです。「儲かります、中身は非公開ですけど」って書いているだけのファンド、皆さんなら買わないでしょう? 栄養情報についても同じように慎重であるべきなのです。
ただ、こう、リベシティ内のつぶやきとかを拝見していると「その情報大丈夫そう? ちょっと怪しげじゃない~!?」としばしば感じてしまうのです。
正直普通のSNS上での出来事だったら「まあ魑魅魍魎が跋扈するインターネットだからな」と思って捨ておいているところです。ですがリベシティでそれというのは……。
別に他のSNSの友人らがどうなっても良いというわけではないですよ? 友人が怪しげな栄養情報に首突っ込んでいたらさっそうと駆けつけてお節介焼いてウザがられたりしてますし。ですが、理を持って人生を良くしていこうというリベシティの仲間たちがそういうのに興味を示しているのはちょっと……。
というわけで「コストを払うべき栄養情報は、パフォーマンスがよいというエビデンスがある栄養情報だけ。エビデンスがない栄養情報は、どんなに格好良くても手を出すべきではない」と申し上げる次第です。
2.エビデンスに基づいた栄養情報へのアクセスは「発信源」の精査が重要
素人が1つ1つ情報精査するのは難しいのでよい情報源を探す
じゃあ何がエビデンスに基づいて健康に良いといえる栄養情報なのか? それを一般の方が判断するのは極めて難しいのが現状です。
根拠となる論文を読めればよいのですが、専門外の論文なんて読んでもなんにもわからないし、解釈のしかたにも気をつけなければならない。
昨今ではハゲタカジャーナル(お金さえ出せばどんな論文でも載せられてしまうような雑誌)を利用していかにも根拠があるようなことを言っていたり、論文自体は正当なものでもそれを恣意的に解釈してセンセーショナルな結論を出しているケースもあります。一つ一つを精査するのは、専門家の私でも難しいのです。
なので実用的な対策として、情報一つ一つではなく「発信源」の精査をすることを提案したいです。
もちろん「この人が言っていれば大丈夫!」という盲信も危険ではあるのですが、それでも精査すべき情報が絞られるのは効果があります。
例えば、皆さんだって投資家100人のブログを読むのであれば、とりあえず学長のブログから読んで情報を精査していくのではないですか?
時間は有限ですから、ハズレの可能性が高い情報には触れず、アタリの可能性が高い情報から精査していくのが良いですよね。
というわけで、栄養業界の学長とも言える信頼性が高い書籍やwebサイトを4つご紹介します。
世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事
画像はAmazonより引用
世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事は、理屈はどうでもいいから結論だけ欲しい! という人にオススメです。これの目次だけ見て食事してれば及第点くらいはいけそうな、栄養界のオルカンです。学長の動画でも紹介されていましたね。
明確にわかっているアタリとハズレがきちんと記載されており、極めて実用的な1冊となっています。
読んでいただくとわかると思いますが、私が書いている「コスパと健康の栄養学」は、本書に大きな影響を受けています。この本にコスパの概念をねじ込んだらどうなるかな、という視点が執筆のきっかけでした。
佐々木敏のデータ栄養学のすすめ
画像はAmazonより引用
佐々木敏のデータ栄養学のすすめは栄養疫学(何をどれだけ食べている人・食べていない人が病気になったり健康になったりするかを研究すること)のプロフェッショナル佐々木敏先生の著書です。エビデンスを噛み砕き、なぜそうなるのか、どう解釈すべきなのかを一般の方にもわかりやすく解説しています。
究極の食事と比較すると、日々の食生活には役立たない情報が乗っていたり、結論がハッキリしない印象があると思います。
しかしそれは当然で、栄養疫学という分野でハッキリとした結論が出ること自体稀なのです。
ブログやショートのタイトルにできそうな、わかりやすくキャッチーで単純な結論を出さずに、誠実に丁寧に栄養情報を解説してくれています。
実用書としてももちろんですが、読み物としても抜群に面白いので、ぜひ手にとって頂きたい1冊です。
Lumedia
Lumediaは、医師主導の発信で、「科学的に根拠のある、読む価値のある情報」を継続して届けるニュースサイト (メディア) を標榜しています。
私も数年にわたって見てきましたが、誠実かつ根拠に基づいた記事が多く参考になります。
インターネットには不適切な情報が反乱してしまっていることを憂いて、それらを量と質で駆逐しようとするストロングスタイルな運営方針にも共感できます。
このメディア、マジで素敵ですよ。先日公開されたダイエット情報ぶった切り記事とか私もブログで一記事なりとも力添えしたなあと思っています。
食事の情報だけが掲載されているわけではありませんが、その他の情報も有用です。SNSもやっていらっしゃいますので、ぜひおすすめしたい情報源です。
コスパと健康の栄養学
で、それらを3つとも読んで書いているカッコいいテキストが俺のノウハウ図書館のコスパと健康の栄養学シリーズってワケ。いいねとブックマークよろしくゥ!
というのは、流石に手前味噌ジョークです。しかし、栄養に関する情報については、誠実にエビデンスを拾いながらお届けしたいと思って書いています。
3.食に関するコストを上手に支払うには
まずは『根拠に基づいた健康に良い栄養情報』に全力投球
上記でご紹介したような栄養情報は、数は多くありません。なぜならば、エビデンスが確立されるためには時間と手間とお金がかかるからです。
例えば、以前私がご紹介したような未精製の炭水化物に関する研究は、45件の研究を参照したコホート研究(たくさんの研究を参照して全体の傾向を明らかにする研究のこと)です。1年や2年で、ましてや個人で研究できるものではないのです。
全世界を見渡しても、クリティカルな論文が出てきてガイドラインが書き換わることは稀なのです。
しかし、そうした研究のステップを踏まずに個人の感覚や伝聞だけで良いとされた栄養情報は、枚挙に暇がありません。だって粗製乱造できるんですから。
私だってその気になれば「管理栄養士オススメ! 絶対痩せるヨシメソッドの秘密は◯◯!?」みたいな記事を余裕で書けますもの。
もうまじで余裕っすよ余裕、俺話うまいもん。魂を売って、そういう記事で煽りに煽ってアフィリエイト始めれば売れる自信がある。その時は誰か殴って止めてください。
まあ、それは冗談としても、そうした背景から、世の中の栄養情報の多くはエビデンスに基づいていません。悪貨は良貨を駆逐するのです。
もちろん、上記で紹介した書籍やwebサイトに載っていないものの健康に良い栄養情報は、この世のどこかには存在すると思います。研究が追いついておらずまだ誰にも気付かれていないけど、実はメチャメチャ健康に良い「◯◯健康法」や「◯◯メソッド」があるかもしれません。
しかし、自分がそんなアタリを引けると思わないでください。それは「自分だけはインデックスファンドに勝てる」と根拠なく信じて、アクティブ投資をすることと何ら変わりません。
あのインフルエンサーが提唱している栄養情報も、あの雑誌に載っている格好いい栄養情報も、10年後に健康に関する横断的研究が行われ論文が発表され効果が認められ、世界のガイドラインを書き換えているかもしれない。未来は誰にもわかりません。
ですが、今はまだ違います。
未来がわからない我々がやるべきことは、面白くなく、30年前から言われているような、退屈で、全然インスタ映えしない、それでも健康に良いというエビデンスがある食生活です。つまらなくても淡々とそれを積み上げていく。インデックス投資と同じです。
エビデンスがある部分に気をつけるだけで、ほとんどの人はコスト(食費、食べる食品の選定・食材調達・調理などにかかる労力)を使い切ってしまうはずです。
皆さんに余剰資金はありません。お遊びでよくわからないファンドを買う余裕はないのです。あなたの栄養関係のコストは、すべてエビデンスがある健康情報の遵守に費やすべきです。
『おいしい』『楽しい』『楽ちん』に割り振るのもすてき
エビデンスがないけど例外としておすすめできることが、3つだけあります。『おいしい』『楽しい』『楽ちん』です。
「健康には悪いのは分かっているけど、仲間と飲む酒はうまいし楽しいんだ!」
「健康的に100点じゃないかもしれないけど、今日は食事に時間や手間をかけたくないので冷凍弁当で済ますぜ!」
こういう感情は人間として真っ当なものでしょう。私もキャンプに行ったときには加工肉をジュウジュウさせながらお酒を飲んでしまいますし、冷凍弁当の注文も行っています。
健康的な食習慣を保つことはあくまで健康を保つための手段に過ぎません。目的が「おいしい食事を楽しみたい」「手軽に済ませて他のことをやりたい」なのであれば、手段が変わるのは当たり前です。
ですが、おいしくも楽しくも楽ちんでもない『根拠に基づいていないけども健康に良いかもしれない栄養情報』にコストを払ってしまうのは、本当に不幸なことだと思っています。
ちょっとドキドキするけど結語
というわけで、改めて結語です。
「そもそもコストを払うべき栄養情報は、パフォーマンスがよいというエビデンスがある栄養情報だけ。エビデンスがない栄養情報は、どんなに格好良くても手を出すべきではない」
実は結構ドキドキしています。あの記事とか、あのつぶやきとか、大丈夫!? というのは、リベに入った直後から感じていたところでした。
しかし、新参者がいきなりそれは良くないと言い出したら(科学的には正しいことだったとしても)受け入れられる可能性は高くないでしょう。
情報は、受け取っていただいてこそ価値があるものです。まずは、批判ではなく、自分が思う正解を積み重ねることを選択しました。
栄養まいにち便100日投稿(実は本日までつぶやきでエビデンスに則った情報発信を続けておりました)などの情報をコツコツ更新し、ある程度色々積み上げてからこういう話をしたいな、と思って温めてきました。
とりあえず、ノウハウ図書館のコスパと健康の栄養学シリーズとしてはこれにて最終章でございます。ありがとうございました。
今後は自身のブログを中心に情報提供をしていこうと思うんですが、たまにノウハウ図書館も更新すると思います。その際はまた対戦よろしくお願いいします!