- 投稿日:2025/10/12
初めまして!シロマサルです。
知ることで、人生はもっと楽しくなる!
今回は三原聡子著『マンガケーススタディゲーム依存』2023年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
著者:三原 聡子
独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター主任心理療法士。法政大学卒業後、埼玉県内精神科病院を経て、2009年より独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター勤務。臨床心理士、精神保健福祉士、公認心理師。筑波大学大学院博士後期課程修了。生涯発達科学博士。2011年ネット依存専門治療外来開設時よりネット依存の治療・研究に携わる。国内外の学会においてネット依存に関する発表を多数行う。文部科学省委託事業「情報化の進展に伴う新たな課題に対応した指導の充実に関する調査研究」調査研究委員。同省委託事業「青少年教育施設を活用したネット依存対策研究事業」事業企画運営委員。インターネット使用障害に関するWHO東京会議(2014年)事務局委員。WHOソウル会議(2015年)およびWHO香港会議(2016年)、WHOトルコ会議(2017年)、WHO中国会議(2018年)、WHOアブダビ会議(2019年)参加者。日本公認心理師協会アディクション臨床委員会委員長。日本臨床心理士協会アディクション臨床委員会委員。関東甲信越アルコール関連問題学会理事
✅ ゲーム依存は進行性の病気である。
✅ 家族の理解とルール作りが回復の第一歩。
✅ 「やめさせる」より「支える」姿勢が必要。
私は臨床心理士・公認心理師として長年、久里浜医療センターなどの医療機関で、アルコール依存症や統合失調症、うつ病、境界性人格障害や社交不安障害などの方々の相談、支援に携わってきました。2011年に久里浜医療センターが日本で初めて「インターネット依存専門治療外来」を開設してからは、インターネット依存、ゲーム障害の方のカウンセリングや認知行動療法などの集団精神療法、デイケアやキャンプ、インテークや心理検査などに取り組んできました。
三原聡子著『マンガケーススタディゲーム依存』
「うちの子、ゲームばかりして全然勉強しない」
「スマホを取り上げると暴れる」
そんな悩みを抱える親は少なくない。
本書は、そんな家庭に向けて、「依存は誰のせいでもない」という視点から、回復のための現実的なアプローチを教えてくれる。
叱るより、まず「理解」することから始めよう。
本書はいくつかのケーススタディや図を多く用意しているので、「ゲーム依存」といった状況や改善方法を提案してくれる。
人間はどう抗っても、何かしらに依存する。
これは問題ではなく、仕組みから生まれるのだ。
『マンガケーススタディゲーム依存』
ゲームでも動画でもスマホでも何でも。依存するには理由がある。
依存とは、対象にとらわれのめり込むあまり、ほかの生活に支障を来すことです。代表的なものにタバコやアルコール、薬物などの物質依存、ギャンブルやゲームなどに依存する行動嗜癖があります。そのほかにも人によってはさまざまな対象に依存することがあります。
三原聡子著『マンガケーススタディゲーム依存』
依存は“意志の弱さ”ではなく、脳の仕組みの問題である
世の中よりも画面内のほうが、見つめていて救われる場合だってある。
依存状態の人の脳では、神経伝達に異常が起きていることがあり、本人の意思の力に任せていても解決が難しいのです。本人も「やめたい」と思っていることもあります。しかし、自力ではなかなかやめられません。
三原聡子著『マンガケーススタディゲーム依存』
⇒ 依存は「努力では治らない」脳の変化。
ゲーム依存を「意志の弱さ」と誤解してしまう人は多い。
しかし、依存とは単なる怠惰ではなく、脳の報酬系が繰り返し刺激されることで起こる「神経回路の変化」である。
ゲームの勝利やレベルアップの瞬間、脳内ではドーパミンが分泌され、「快感と達成感」を強烈に刻みつける。
これが報酬系を強化し、同じ刺激を繰り返し求めるようになる。
最初は「暇つぶし」や「ストレス発散」だった行為が、次第に生活の中心に取って代わる。
授業中も仕事中もゲームのことが頭を離れず、現実生活に支障を来すようになる。
放置すると、少しの刺激では満足できず、より長時間のプレイ、より強い課金へとエスカレートしていく。
注意したいのは、依存は進行性の病気で放置すると悪化してしまうということです。そのうち飽きるだろうと放っておくとエスカレートすることのほうが多いのです。
三原聡子著『マンガケーススタディゲーム依存』
この過程は、アルコールや薬物依存と同様に進行性の病であり、意思や根性で解決できるものではない。
依存の入り口は誰にでもあり、特別な人だけが陥るわけではないのだ。
「気をつけよう」ではなく、「仕組みを理解しよう」。
そこが予防と回復の第一歩である。

アンナ・レンブカ著『ドーパミン中毒』
ドーパミン:脳内で合成される神経伝達物質。
「脳を喜ばせる」ホルモンの一種。
つまり、中毒を生み出す要因。
スタンフォード大学医学部教授で、かつて自身も依存症を経験した第一人者が教える脱出法と、心豊かに生きるための防衛術の本。
痛みと快感はバランスを取って働いている。 脳の中に快感と痛みのシーソーがあると想像してみよう。なにもなければシーソーは拮抗したままだ。 私たちが快感を経験すると、シーソーは快感の方に傾く。 傾くほど、快感は加速する。
アンナ・レンブカ著『ドーパミン中毒』
つまり、自己嫌悪も「当たり前に起こる」ということ。
不思議なことに脳が快感に傾くと、次は痛みが押し寄せるメカニズムが働くと語る。
ゲーム依存が崩す現実――家族、学校、そして心
引用画像:三原聡子著『マンガケーススタディゲーム依存』
家族の前で「もうやめる」と約束したのに、その約束を破ってしまうというお話は多くの家族から聞かれます。また「やってない」と嘘をついたり、自分が依存状態であることを認めず(否認)もめてしまうこともあります。
三原聡子著『マンガケーススタディゲーム依存』
⇒ 見えない崩壊は、家庭の沈黙から始まる。
依存が進行すると、まず生活リズムが崩れる。
夜中までゲームをし、朝起きられず学校や職場を休む。
次に学業成績や仕事の能率が下がり、周囲との摩擦が生じる。
やがて家族に嘘をつくようになり、暴言や暴力といった形で緊張が高まる
親が「ゲームを取り上げる」と言えば、子どもは怒り、扉を閉ざす。
こうして家族の信頼関係は少しずつ壊れていく。
だが、この変化は「人が変わった」わけではなく、依存症による典型的な症状である。
これも依存の典型的なあらわれです。依存対象を禁止されると強く抵抗したり、暴言を吐いたり、家族の目を盗んで使用しようとしたり、なかには対象を使用したいあまりに犯罪行為に手を染めてしまう人もいます。人が変わってしまったように見えることもありますが、これらも依存によるもので、あまり珍しいことではありません。
三原聡子著『マンガケーススタディゲーム依存』
ただ、本人も苦しんでいる。
「やめたいのにやめられない」という葛藤を抱えながら、罪悪感と無力感に沈んでいくのだ。
ここで大切なのは、叱るより理解すること。
「そのうち飽きる」「成長すれば治る」という楽観的な放置は、依存を深刻化させるだけである。
特に思春期の子どもにとって、ゲームは“逃げ場”にもなる。
学校でのいじめ、孤独、挫折――そうした現実の痛みを和らげてくれる「自己治療」の手段でもある。
つまり、依存を断ち切るためには、単にゲームをやめさせるのではなく、本人の心の痛みに寄り添う必要がある。
家庭が敵ではなく“避難所”になること。
それが、崩壊を立て直すための出発点である。

カル・ニューポート著『デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方』
子どもだけでなく、大人もスマホ依存に簡単になる。
スマホとうまく付き合い、デジタルに人生を奪われない考え方。
それがデジタル・ミニマリズムである。
★★デジタル・ミニマリズムの三原則★★
原則1:あればあるほどコストがかかる
多くのデバイス、アプリ、サービスで埋め尽くされると、それぞれがもたらす小さなメリットを帳消しにしかねないデメリットがある。
不必要に触り、本来の重要な時間を奪われる。
原則2:最適化が成功のカギである
自分の大事な目標を後押ししているか否かを見極めること。
そのテクノロジーをどのように利用するかを慎重に判断しなくてはならない。
原則3:自覚的であることが充実感につながる
新しいテクノロジーと関わる際、「気づいたら」、「なんとなく」ではなく、自覚して利用しているか?
⇒ 三原則でテクノロジーを自覚して扱うことが第一歩。
共に回復する――「ルール」と「理解」がつくる未来
コントローラーも「つながり」がなければ操作できない。
ルールを作るときは、一方的に押し付けず、本人と一緒に話し合ってルールを作ること、作ったルールでうまく行かないときは、一緒に話し合ったうえでルールを作り直せると決めておくこと、作ったルールは書き出して、見えるところに貼り出すなどいつでも見られるようにしておくことが大切です。
三原聡子著『マンガケーススタディゲーム依存』
⇒ 一方的な禁止ではなく、“共に決めるルール”が信頼を生む。
ルール作りの考え方
●話し合って一緒に決める
●使用できる時間、場所、ほかにしなければいけないことを決めておく
●文章にして見えるところに掲示しておくとよい
●いつでも話し合いによって改善、変更できると決めておく
ルールを守れなかったときのペナルティの考え方
●機器の使用停止
●制限の強化などを話し合っておく
あまりよくない例
●一方的に押し付ける
●例外を認めたり、なし崩しで守らなくなる
●「勉強をしたらいつもより長く使わせてあげる」など取引に使う
依存の治療において、最も重要なのは「家庭の関わり方」である。
親が力でスマホを取り上げても、一時的に静まるだけで根本解決にはならない。
むしろ反発を招き、隠れてプレイするなど、信頼関係をさらに壊してしまう。
有効なのは、親子で「ルール」を共に作ることだ。
たとえば「夜10時以降はゲームをしない」「課金は月〇円まで」「守れなかった場合は次の日の時間を減らす」など、現実的な範囲で合意を形成する。
その際に重要なのは、「ルール=罰」ではなく「約束」と捉えること。
親が一方的に押し付けるのではなく、子どもと対話を重ねながら決めることで、主体性と責任感が育つ。
また、家族の理解を深めるためには、ゲームの構造自体を知ることも有効だ。
ログインボーナスや課金ガチャ、レベル報酬など、ゲーム会社はユーザーを長く留めるよう巧妙に設計している。
仕組みを理解すれば、「子どもが弱い」のではなく、「仕掛けが巧み」なのだと気づける。
さらに、依存は子どもだけの問題ではない。
在宅勤務の増加やストレス社会の中で、大人のゲーム・SNS依存も急増している。
「自分は大人だから平気」と思うほど、無自覚な依存は進行する。
ゲーム依存の回復は、家族・個人・社会の三位一体の取り組みが不可欠だ。
最も大切なのは、批判ではなく「共感」から始めること。
本人を責めるのではなく、「一緒に乗り越えよう」と寄り添う姿勢が、治療の扉を開く。
家族間だと近くにいるために甘えが生じたり、なにを言ってもよいと思いがちですが、身近にいて絶えず存在を意識しているので、悪いコミュニケーションが頻繁に行われてしまうような関係性だとお互いに影響が大きいものです。 遠慮せず、言いたいことが言えるのがよい関係性とはいえ、相手を不快にさせたり、傷つけたりすることはどんな間柄でもよくありません。親でも子でも兄弟でも、相手に感情や事情があることを忘れず、尊重することを忘れないようにしましょう。
三原聡子著『マンガケーススタディゲーム依存』

エドワード・L・デシ 著『人を伸ばす力』
心理学者ハリー・ハーロウは、サルの檻にパズルを入れてみた。
すると何も報酬を与えないのに熱心に楽しそうにパズル解きに取り組んだという。
ハーロウはこの現象に「内発的動機付け」と名付けた。
自己選択がやる気を高める。
「自ら学び、やる意欲」を引き出せれば組織は強くなる。
自らの意思で行動することで、達成感や学びへの意欲が持続し、深い満足感を得ることができる。
逆に「報酬・脅し・競争」が内発的動機付けを弱めてしまう。
この本には希望がある。 なぜなら、自分たちのために、子どもたちのために、雇われている人たちのために、患者のために、学生のために、スポーツをする人のために、私たちは何ができるのか――私は社会のために何ができるのか――を提示しているからである。
エドワード・L・デシ 著『人を伸ばす力』
まとめ
✅ ゲーム依存は進行性の病気である。
✅ 家族の理解とルール作りが回復の第一歩。
✅ 「やめさせる」より「支える」姿勢が必要。
ゲーム依存治療の取り組みの第一歩は、ゲーム依存によって生じているデメリットを少なくしていくことです。とくに大切なのは健康へのリスクを減らすことです。生活リズムを整えましょう。
三原聡子著『マンガケーススタディゲーム依存』
⇒ 「理解することが、最初の治療である」。
⇒ 依存を断ち切る鍵は、「理解と共感」である。
ゲーム依存は、努力や我慢だけでは克服できない。
それは脳の仕組みと社会構造が絡む複雑な現象であり、誰にでも起こり得る。
だからこそ、「問題行動」ではなく「支援の対象」として向き合うことが大切だ。
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆
