- 投稿日:2025/10/23
初めまして!シロマサルです。
知ることで、人生はもっと楽しくなる!
今回は津野香奈美著『パワハラ上司を科学する』(2023年発行)をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
講師:津野香奈美(つの・かなみ)
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。博士(医学)・博士(保健学)・公衆衛生学修士。和歌山県立医科大学助教・講師、ハーバード公衆衛生大学院客員研究員を経て、現在神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科准教授。これまで100本以上の原著・総説論文を発表。
✅ パワハラは「性格」ではなく「構造」で起きる。
✅ 優しさだけでは防げない。科学的知識と仕組みが必要である。
✅ 正しい指導法を知れば、誰でも“パワハラしない上司”になれる。
本書により、職場で科学的知見に基づいた効果的なパワハラ防止対策が実施されることにつながることを願っています。
津野香奈美著『パワハラ上司を科学する』
パワハラ:「パワーハラスメント」の略。
パワハラは「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題」と表現され、「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの」と定義される。
2020年、厚生労働省の調査で過去3年間にパワハラを受けたことのある労働者の割合は31.4%である。
また、国内外のどの研究においても、パワハラの行為者は上司や上の立場の人であると報告されており、最も多かったのは「役員以外の上司」で67.9%である。
引用画像:津野香奈美著『パワハラ上司を科学する』より
「部下に厳しくしただけでパワハラと言われた」「何がセーフで、何がアウトなのか分からない」。
現場の上司たちが抱えるこの混乱に、科学的な答えを出したのが本書『パワハラ上司を科学する』である。
感情論ではなく、データと行動科学に基づいて“なぜ上司はパワハラをしてしまうのか”を解明する。
この記事では、津野氏の研究から導かれた3つの核心を紹介する。
『パワハラ上司を科学する』
その玉座は簡単に崩れるし、脆い立場だ。
法律上、パワーハラスメントの「パワー」の部分を「優越的な関係」と表現しているわけですが、この中に入るのは、単に職権があることや職位が上であることだけではありません。他にも例えば、勤続年数が長いこと、組織のトップや上層部と仲が良いこと、最新の知識があること、人数が多いこと等も、パワハラの背景となる「優越的な関係」になりえます。
津野香奈美著『パワハラ上司を科学する』
権力が「共感」を奪う──パワハラの正体は脳の錯覚にある
人間は、立場が違うというだけで変容する。愚かだね。
上司になると、慈悲や同情の気持ちが減るだけでなく、部下の感情を適切に読み取ることもできなくなる傾向にあります。実際に、社会的地位の高い人は、そうでない人と比べて、相手の表情から感情を適切に読み取ることができなかったという研究報告が複数あります。つまり、部下が辛そうにしていても、上司はそれに気付きにくいため、さらにパワハラ行為をエスカレートさせてしまうのです。
津野香奈美著『パワハラ上司を科学する』
⇒ 権力を持つと、人は「優しさ」を失う。
パワハラは、一部の悪質な上司だけの問題ではない。
津野氏によれば、それは「誰でも起こりうる人間の心理的バイアス」だという。
社会心理学の研究では、社会的地位が上がるほど他者への共感が低下し、倫理意識も鈍化することが明らかになっている。
カリフォルニア大学バークレー校の実験では、高級車に乗る人ほど横断歩道で歩行者を無視し、また地位の高い人ほど「自分の成功を実力と錯覚しやすい」傾向が確認された。
職場でも同様だ。上司になると、多くの部下が指示に従う。
それを「自分の能力」だと勘違いすることで、優越感が肥大し、相手の痛みに鈍くなる。
つまり、権力がもたらすのは“支配”ではなく、“共感の欠乏”である。
津野氏はこの現象を「優越性の錯覚」と呼び、そこからパワハラが生まれると指摘する。
悪気がなくても、人は権力を得ると“正義の名のもとに暴走”する。これがパワハラの本質だ。
だからこそ、「自分は優しくしている」と思う上司ほど危険なのだ。無意識のうちに、言葉が刃となる。
パワハラは性格ではなく構造の問題――それが津野氏の科学的結論である。
「放任型上司」という新たな脅威──関わらないことが最大のリスク
パワハラと言われたくないからと、問題を遠ざけても解決しない。
実は、部下と積極的に関わらない、放任型の上司がいる職場では、パワハラが発生しやすいことがわかっています。部下と関わろうとしないことが、むしろパワハラを誘発してしまうのです。このように、パワハラ対策やパワハラにならない部下指導は、個々人の経験や勘を頼りに行っていると、知らず知らずのうちに誤った対応になりがちです。
津野香奈美著『パワハラ上司を科学する』
⇒ 無関心こそ、もっとも危険なハラスメントである。
脱線型:感情が暴走し、思い付きや怒りで叱る。
まさに「いきなり怒鳴る」「成績が悪い部下を壁際に呼ぶ」など典型的。
専制型:結果を極端に求め、部下の自主性を奪い、支配・管理を強める。「君には任せられない」「私が全部指示する」など、部下の成長余地を縮める。
放任型:近年最も見落とされがちだが、ハラスメントを恐れて「関わらない」ことを選び、むしろ部下が孤立・無支援状態に陥る。
「どうせ何も言えない」「放っておけばいい」という姿勢が、結果的に部下のメンタルを蝕む。
この3タイプを知ることで、自分の指導スタイルがどこに偏っているかを自己点検することが可能になる。
防止の第一歩は、「私はどのタイプになりやすいか」を知ることだ。
パワハラというと怒鳴る・叱責するといった「攻撃的上司」を思い浮かべがちだ。
「何がまずい?」「言ってみろ」「お前は私が言うことを否定するのか?」
逆に言えば、わかりやすくアウトなので問題が表面化するのでわかりやすい。
著者が危惧するのは、第三のタイプ「放任型」としている。
脱線型(感情的な暴走)・専制型(支配的な圧力)に比べ、この放任型は一見“穏やか”に見える。
しかし実際には、部下の孤立とストレスを深刻化させる要因となる。
「最近は何でもハラスメントと言われるから、関わらないようにしている」――著者が研修現場で頻繁に耳にする言葉だ。
「ハラスメントに関わらない」という意味で“安全”と思われがちだが、むしろ「無害であろうとして無責任になる」リスクを孕んでいる。
著者は明言している:“関わらないことこそ最大のリスク”。
だが、上司が関わらなくなれば、部下は評価も指導も得られず、仕事の方向性を見失う。
結果として、ミスや離職を招き、組織の生産性が低下する。
ハラスメント防止の目的は「沈黙」ではなく「信頼関係の再構築」である。
上司が対話を放棄した瞬間、チームは機能不全に陥る。
放任はハラスメントの“反対語”ではなく、別の形のハラスメントなのだ。
津野氏は、理想の上司像を「観察し、支援し、尊重する人」と定義する。
部下を過剰に管理するのではなく、適度な距離感で成長を支えること。これこそ、真のマネジメントである。
科学が導く「叱り方の公式」──パワハラしない指導の技術
何事もバランスだ。天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず。
部下に耳の痛いことを伝えるにはどうしたらよいか 注意や指導をしなければならない時はどうしたらいいのでしょうか。「もっとこうしてほしい」「ここを直してほしい」というような、「改善してほしいけれども、口にすると傷つけてしまうのではないか」という指摘は、部下に負担をかける、あるいはハラスメントだと訴えられることを恐れて躊躇してしまう場合もあるようです。
津野香奈美著『パワハラ上司を科学する』
⇒ 感情ではなく、構造で人を育てよ。
上司の役割は、部下の成長を支援し、チームの成果を最大化することにある。
だが、その過程で避けて通れないのが「指摘」や「叱責」だ。
津野氏は「正しい叱り方」にもエビデンスがあると説く。
その中心が「3プラス3の鉄則」である。
周囲に人がいない状態で伝える
先に良い点をほめる
人格を否定せず行動を指摘する
+
a. 何が問題か
b. なぜ問題か
c. どう改善すべきか
この手順を踏むだけで、叱責は“攻撃”から“対話”に変わる。
特に重要なのは、「人格」と「行動」を分けることだ。
「君はだめだ」ではなく、「この手順を改善してほしい」と伝える。
指摘の矛先を“人”ではなく“行動”に向けることで、相手の自尊心を守りながら行動変容を促すことができる。
さらに津野氏は、マネジメント力の核心を「感情知能(EQ)」に見出している。
自己認識・感情制御・共感・関係管理――これらを意識的に鍛えることが、パワハラ防止と成果向上の両立につながる。
つまり、上司が磨くべきは“強さ”ではなく“感情のマネジメント力”なのだ。

平井一夫著『ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」』
変革を成すのは権威ではなくEQである。
5000億円の赤字という絶望的な状況の中、ソニーを再び世界の舞台に立たせた男・平井一夫。
彼が語る「異端のリーダーシップ」は、数字よりも人を信じ、権威よりも謙虚さを武器にした経営哲学だ。
なにも聖人君子であれというわけではない。 私も欠点だらけの人間だ。 ただ、仕事に取り組むリーダーとしては「EQが高くあれ」と心がけているつもりだ。
平井一夫著『ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」』
スティーブン・P・ロビンス著『新版 組織行動のマネジメント』
組織行動学とは、組織の人間の行動や態度を体系的に考察する学問。
私たちが会社の組織で遭遇する多くの問題の対処方法がわかる。
本書は組織に関するほぼすべての問題を取り上げ、網羅的かつ簡潔にまとめた良書である。
感情性知性(Emotional Intelligence:EI)の重要性
または「心の知能指数(EQ)」とも言われ、平均的な管理職とすぐれた上級管理職の違いは、EIの違いによるものと語られる。
まとめ
✅ パワハラは「性格」ではなく「構造」で起きる。
✅ 優しさだけでは防げない。科学的知識と仕組みが必要である。
✅ 正しい指導法を知れば、誰でも“パワハラしない上司”になれる。
パワハラ対策は難しいと考えられがちですが、私は全く難しくないと考えています。なぜなら、既に国内外に知見と実践知がたまっているからです。
津野香奈美著『パワハラ上司を科学する』
⇒ 「優しさ」は感情ではなく、構造でつくれる。
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆

