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  • 投稿日:2026/02/21
  • 更新日:2026/04/04
第1章 第10話「予算3倍の物件を「買いなさい」と言った妻。数字のプロが完敗した、幸せの投資基準

第1章 第10話「予算3倍の物件を「買いなさい」と言った妻。数字のプロが完敗した、幸せの投資基準

ザトくん@Hands-on FIRE

ザトくん@Hands-on FIRE

この記事は約5分で読めます
要約
元税務調査官として数千の帳簿を見てきた私。でも、人生で一番大切な「投資の物差し」を教えてくれたのは、妻の何気ない一言でした。予算オーバーの恐怖を「住みたいかどうか」という直感が上回ったあの日。じわじわと動き出した私のFIRE物語、その核心にある「心の納得」をお届けします。

【第10話】

前回の読者レビューのご紹介

前話も、素敵なレビューをいただきました。

『OGA@🔰FIRE1年生さん、ありがとうございます。

「20年前に読んだ本が、今になって血肉となる感覚、よく分かります。知識は「情報」として入れる時と、「体験」として腑に落ちる時で、全く別物に見えますよね。」

私の不動産投資も、まさにそんな「じわじわ」とした納得の連続です。

金曜日の折り込みチラシと、夕暮れのジョギング

 当時の私は、週末になると金曜日の新聞に挟まった不動産の折り込みチラシを広げるのが密かな楽しみでした。気になる物件を見つけると、夕方のジョギングついでに外観をチェックしに行く。

「いつかは、自分でも中古アパートを修繕して運営してみたい」

そんな想いを、妻は隣で静かに見守ってくれていたのでしょう。

「気になるなら、買えば?」という静かな号砲

ある月曜の夜、帰宅した私に妻がさらりと言いました。

「週末に見てきた物件、気になるなら買えばいいじゃない」 不意を突かれました。

元税務職員として、借金の怖さは誰よりも知っています。「公務員を勤め上げれば完済できる」という計算は立っていましたが、いざとなると足がすくむ。

そんな私の背中を、彼女は「だって、いつかあなたは買うんでしょ」という、まるで「私の心をお見通し」ような自然な口調で押してくれたのです。その一言は、私の人生にとって「静かな号砲」となりました。

数字のプロが、妻の「感性」に完敗した日

さっそく不動産屋へ走り、20枚以上のチラシを握りしめて現地調査に明け暮れました。しかし、予算内の物件はどれも日当たりが悪かったり、ペンキが剥げ落ちていたりと、胸が高鳴りません。

意気消沈する私に、妻が放った二言目が、今の私の哲学を決定づけました。 「駅前のあの物件、いいんじゃない?」

「いや、あれは予算の3倍だよ。とても無理だ」

「でも、あなたが住みたいと思わない場所に、入居者さんが住みたいと思うかしら?」

ハッとしました。税務調査官として「数字の正しさ」ばかりを追ってきた私ですが、不動産賃貸業の本質は「人の暮らしを整えること」にある。自分が愛せない物件に、誰が愛着を持って住んでくれるのか。 数字上の利回りよりも大切な「手触り感のある納得」。

この瞬間、私の中に「Hands-on FIRE(自ら手を動かし、生活を整える)」の種が宿ったのだと思います。

「言うは易し、行うは難し」のDIY奮闘記

結局、その駅前の運命的な物件を手に入れました。

私が最初に取り組んだのは、2DKのアパートを「少しでも広く、心地よく感じてもらう」こと、リビングとキッチンの床を、統一した木目調のクッションフロアに張り替える計画を立てました。 「同じ色にすれば、視覚的に広く見えるはずだ」 理屈では完璧でした。

しかし、いざカッターと接着剤を手に床に這いつくばると、現実は甘くありません。部屋の角の複雑なカット、空気が入らないように押し出す指先の痛み。 「言うは易し、行うは難し」 鼻をつく接着剤の匂いと格闘しながら、悪戦苦闘する数日間。でも、不思議と心は晴れやかでした。自分の手で、誰かの「住まい」を整えているという確かな手応えがあったからです。

「じわじわ」と通じ合う、心の家主業

そうして「自分が住みたい」と思えるまで手をかけた物件には、温かな空気が流れ始めました。

ある日、アパートの庭で腰を屈めて草むしりをしていると、入居者さんが近づいてきました。 「大家さん、お疲れ様です。よろしければどうぞ」 差し出されたのは、冷たい缶コーヒーと小さなお菓子。

税務調査官時代、人から受ける視線には常に「警戒」や「緊張」がありました。でも今は、土に汚れた手で受け取るコーヒーの温かさが、何よりの報酬です。

「じわじわ」と。 最初は小さな節約や、一枚のチラシから始まった私の物語。それが妻の言葉で火がつき、DIYの苦労を経て、入居者さんとの交流という豊かな「社会資本」に変わっていきました。

定年を控えた皆さんに問いかけたいのです。 「その選択に、あなたの心はワクワクしていますか?」 数字の裏付けはもちろん大切です。でも、最後にあなたの背中を押すのは、きっと計算機ではなく、大切な人の一言や、自分自身の「手触りのある納得」ではないでしょうか。

結びに

 私のFIREは、あの日、妻がくれた「住みたいと思える場所を選びなさい」という言葉から始まりました。 65歳になった今、週3日の税理士仕事を終えた帰り道、夕日に染まるアパートを眺めるたびに思います。あの時、勇気を出してハンドルを握ってよかった、と。

人生、今日が一番若い日。 あなたも、まずは一枚のチラシを眺めることから、自分だけの「じわじわFIRE」を始めてみませんか。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


※第11話は、「そして、不動産投資(苦労所得)はその芽は現実の選択の中で試されていく。」お話です。第11話はこちらから読めます

https://library.libecity.com/articles/01KHG9ECCVSB4A0F4DXY5800N1

第11話 サムネイル 苦労所得.png

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ザトくん@Hands-on FIRE

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ザトくん@Hands-on FIRE

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この記事のレビュー(3
  • 会員ID:ZhWOoq1f
    会員ID:ZhWOoq1f
    2026/03/02

    ザトさん いつも有益なノウハウ図書館へのご寄稿ありがとうございます。😌 今回のノウハウ図書館を読んで、FIREを達成するには資産の積み上げだけでなく、家族の理解も同じくらい重要であることが分かりました。 ザトさんは、常日頃からの信頼貯金があったからこそ、奥様から不動産投資の背中を押していただけたのですね。 私も家族とよく話し合い、安心したFIRE生活を送れるようにしたいと思いました。😊

    ザトくん@Hands-on FIRE

    投稿者

    2026/03/02

    OGAさん いやいや、信頼貯金の残高は厳しいですね。 どちらかというと、あきらめモード貯金のほうが近いかもです(;^_^A OGAさんの益々のリベ活動応援していきます。 レビューありがとうございました。

    ザトくん@Hands-on FIRE

    投稿者

  • 会員ID:guj5p6q3
    会員ID:guj5p6q3
    2026/03/02

    勇気がでる内容でした。ありがとうございます。私も後に続くように頑張ります!

    ザトくん@Hands-on FIRE

    投稿者

    2026/03/02

    くらげさん レビューありがとうございます。プロフィールも拝見しました。 たくさんの資格をお持ちで、学び続けている姿勢が素敵ですね。 私は48歳で初めて不動産物件を購入しました。そこからの試行錯誤を、連載として「ノウハウ図書館」にまとめています。よろしければ第1話から読んでいただけると、流れがつかみやすいと思います。 https://library.libecity.com/articles/01KFR4DVTQN8T4FMB4GGWRF2C3

    ザトくん@Hands-on FIRE

    投稿者

  • 会員ID:7DxmWYJ1
    会員ID:7DxmWYJ1
    2026/02/21

    不動産も、趣味と言えるくらい好きになることが大切だと感じました😊 気になる物件を実際に見に行き、自分なりに気づいたことをチェックしていく。 そうやって経験を積み重ねることで、不動産の価値を見抜く目が育っていくのだと思います。 奥さんの「自分が住みたいと思える物件を買いなさい」という言葉も、 日頃のさまざまな行動を通して、不動産の価値をしっかり見極めていると感じたからこそ出た言葉なのかなと思いました✨ 私はまだ不動産のことは全然わかりませんが、 何事も趣味と言えるくらいまで深く学び、 いつか周りから「あなたの考えている通りにしなさい」と言ってもらえるようになりたいです💪 これからもコツコツ学んでいきます!

    ザトくん@Hands-on FIRE

    投稿者

    2026/02/21

    まいちさん、今回も丁寧なレビューをありがとうございます。前回に続いて読んでいただけて、とても励みになります。 不動産の世界には「千三つ(せんみつ)」という言葉があります。1000件の情報のうち、本当に価値のある物件は3件ほどしかない、という意味です。だからこそ、数を見ること・現地で感じること・自分の感覚を育てることがとても大切になります。 最近はネットで数百件を一気に見られる時代になりました。最初は大変に感じても、だんだん「見る目」が育ってくると、物件探しそのものが楽しくなっていきます。まいちさんのように、気づきを丁寧に積み重ねていく方は、必ず強い目利きになります。 追伸 ファーマーズマーケットの活動、 まいちさんは出品などはされないのでしょうか。農業と相性の良い加工品や小さな販売は、不動産と同じく“生活の線”を育てる良い経験になると思います。 次に気になっている物件や、最近見に行った場所があれば、また教えてください。

    ザトくん@Hands-on FIRE

    投稿者