- 投稿日:2024/02/10
- 更新日:2025/09/29

注意点
害虫駆除において種類を特定すること("同定"といいます)は必須です。そのため、写真は実写を使いますので、見るのも嫌!という人はブラウザバックしてください。
また、基本的には地球の陸上に住んでいる限り、虫と無縁で生活することは不可能だと思ってください。虫がいなければ、ヒトは今ほど豊かな食生活を送ることは出来ません。見えていないだけです(とはいえ別に無理に見る必要もありません)。
虫との距離感は人それぞれなので、各自でいい距離感を見出すためのヒントが本記事の趣旨となっています(そのため害虫"退散"という言葉を使っています)。
害虫とは?
ゴキブリ編の冒頭に記載しておりますので、主な害虫の分類はそちらを参照ください。
ハエは衛生害虫と不快害虫にあたります。イエバエ、ニクバエ、ノミバエ、チョウバエには衛生害虫の面もありますが、ショウジョウバエ、キノコバエには衛生害虫の面はほぼありません(特にキノコバエ)。
ハエとは?
ハエ目(双翅目)>ハエ亜目(短角亜目)>ハエ下目に属する生き物の総称です。昆虫は本来4枚の羽を持っているのですが、ハエ目(双翅目)では2枚の羽しかありません。
羽の代わりに平均棍と呼ばれるこん棒ような器官を持っているのが特徴です。ハエかハチかわからない!という人は、平均棍を探して見ましょう。
なお、この特徴を持つハエ目(双翅目)には他にはカ(蚊)やアブも含まれます。
完全変態
ハエは完全変態です。とてもスケベなやつって意味ではありません。完全変態の話をすると多くの人にそんな顔をされますが、ちゃんとした生物学用語です(笑)
蛹(サナギ)というステージを持つという意味です。昆虫において、この性質の獲得は幼虫と成虫で異なる環境で生育できるという意味があります。
卵→幼虫→蛹→成虫となります。ハエの幼虫はウジムシです。
一方で不完全変態というグループもあります。こちらはバッタやゴキブリに代表されるような種類で、幼虫と成虫が同じ姿をしています(一部例外アリ)。そのため、幼虫も成虫も似たような環境で過ごしています。
家で出来るハエ対策
家に出るハエは主に6つのグループです。種類により対策が全く異なるため、同定が必要です。実写を使いますのでご注意ください
家に出るハエの種類(実写注意!)
✅イエバエ類
ザ・ハエの風貌をしています。人間生活と共に世界各地に広がっている種類です(コスモポリタンと言います)。
体長は4~9mm程度の比較的大型のハエです。腐った食物や排泄物を好み、人家以外に畜産場やゴミ捨て場などにも多く見られます。
Muhammad Mahdi Karim - 投稿者自身による著作物, GFDL 1.2, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7672794による
✅ニクバエ類
イエバエと似た風貌をしていますが、イエバエより更に大型で10mm程度の大きさまで達します。
食性もイエバエと似ていますが、より動物の死骸を好みます。とはいえ、種類によって食性が異なるため、一概には言えません。
ちなみにギンバエという種類は存在せず、ニクバエ類、キンバエ類の中で金属光沢を持つ種類を総称してギンバエと言います。
たかはし - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=130009872による
✅ノミバエ類
2mm~4mm程度のコバエです。白色~肌色っぽい体色をしています。後ろ足の太ももが太く、全体的にずんぐりむっくりしてるのが特徴。また、ノミのようにぴょんぴょんと跳ねるように移動するのが特徴です。
動物性の腐肉や糞などを食べます。
Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=733421
✅チョウバエ類
蛾(ガ)のような風貌をしたハエです。小型種ですが、大きさにバラツキがあり、4mm程度のオオチョウバエと1mm程度のホシチョウバエが主な種類です。
トイレ、浴室、洗面所などの水回りに発生します。石鹸カスや皮脂などの有機デトリタスを好みます。
実は生物学的にはハエよりも蚊(カ)に近い仲間ですが、本記事ではハエとして扱います。
写真はオオチョウバエ
Daiju Azuma - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1111356による
✅ショウジョウバエ類
2mm程度の小型種で、黄色い体と赤い目が特徴です。
腐った果物やお酒を非常に好みます。バナナやリンゴを放置しておくと湧いてくるのは大体コイツです。
なぜか野外では全く見たことがないです。室内ではどこからともなく、やってきて、繁殖します。
名前の由来は妖怪の猩猩(しょうじょう)というオランウータンみたいな姿の生物です。酒(アルコール発酵)を好み、目が真っ赤なので。
余談なんですけど、英名はFruit flyとしている書物も多数ありますが、実際に使うとショウジョウバエではなくミバエ(農業害虫)を想像してしまうので、学名のDrosophila(ドロソフィア)のほうが通じやすいと思います。
André Karwath aka Aka - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=227170による
✅キノコバエ類
3mm程度の細長いハエです。体色は黒で、蚊(カ)に似た風貌をしています。生物分類学的にも蚊(カ)に近い仲間ですが、本記事で取り扱います。
土の中の腐食物やキノコの菌糸を好みます。室内にプランターやポットなどの観葉植物を置いていると大発生することがあります。
James Lindsey at Ecology of Commanster, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1971356による
対策方法
✅発生源を絶つ
餌がなければ彼らも生きていけません。食料を与えないようにしましょう。
・イエバエ、ニクバエ、ノミバエ
生ごみを掃除します。三角コーナーに生ごみを放置しないようにしましょう。また、夏場は魚のアラなどはゴミ箱に直接捨てずに、ビニールに入れてゴミの日直前まで冷凍庫へ入れておきましょう。
・チョウバエ
特に水回りをこまめに清掃します。浴室や洗面所の髪の毛や石鹸カスが大好物です。チョウバエ対策を行うと、自然とゴキブリ対策にもなります。
・ショウジョウバエ
イエバエ、ニクバエと同様に生ごみをこまめに清掃で対策します。このハエは特に果実を好むので、果物の皮や芯を放置しないようにしましょう。
・キノコバエ
室内の観葉植物を外に出しましょう。カブトムシを飼っていてもどうしても発生します。キノコバエ自体は特別に害があるわけではないので、自身の生活環境へ入ってこないことを意識して、玄関などの隔離した環境で完結するようにしてください。
あたりまえですが、ハエ用に殺虫スプレーなどを使えば、カブトムシも死にます。
✅物理で倒す
素早いイメージのあるハエですが、止まっているもの・ゆっくり動いているものには反応しません。ゆっくりと近づいて素早くデコピンすると倒せます。輪ゴムなども有効です。
✅薬剤を使う
ゴキブリと同様に置き餌(ベイトトラップ)をオススメします。コバエがホイホイなどが有名ですね。ただし、ショウジョウバエ、ノミバエ以外のハエにはほとんど効果がありません。
ハエの性質上、自作が簡単なので後述します。
✅天敵を導入する(上級者向け)
ハエのハンターとしてはハエトリグモが優秀です。後述します。
✅退治は家の中だけ
ハエは不快ですが、分解者としての生態系での重要な役割を持っています。特にキノコバエは野外でうかつに退治すると、分解が遅れ、植物の成長に支障をきたします。
自家製ハエトラップを作ろう!
用意するもの
500mmペットボトル、めんつゆ、酢(野菜ジュースorお酒でも代用可能)、食器用洗剤
ペットボトルの準備
ペットボトルの下から3cmくらいのところに針や画鋲で直径1mmくらいの小さな穴を10個ほど開けます(コバエが通れない穴)。
その後ペットボトルの小さい穴の上に直径5mm~7mmくらいの穴を2~4個開けます(コバエが通るための穴)。カッターで×をつけたあとに、ボールペンなどで穴を開けると楽です。
液体の準備
ペットボトルの底1cmくらいにめんつゆを入れ、同量の酢を入れる(合計2cmくらい)。その後、食器用洗剤を数滴加える。
以上で完成!
台所や観葉植物、カブトムシのケースの近くに設置しましょう。
注意点
卵には食器用洗剤の効果はなく、成虫が死に際に卵を放つため、トラップを放置しておくと、トラップ内で繁殖してしまいます。
10日ごとに交換する、トラップ内の液体はキッチンペーパーに染み込ませて、ビニール袋で密閉して捨てましょう。
また、このトラップではショウジョウバエ、ノミバエ、キノコバエが誘引できます。イエバエ、ニクバエ、チョウバエは退治できません。
加えて、お子さんがいる家庭では誤飲に注意してください。
Q&A
Q.なんで小さな穴を開けるの?
A.匂いで誘引するためです。そのため、ハエよりも小さい穴をあけて脱出できないようにしましょう。
Q.なんで食器用洗剤を加えるの?
A.食器用洗剤は界面活性剤という物質で水と油を融和させます。水だけだとハエは脱出できますが、水と油が混ざると、溺れて死にます。
Q.液体じゃなくてゼリー状にしたいんだけど
A.めんつゆとジュースを煮込んでゼリー物質を溶かしてください。
その場合は注意点がいくつかあり
・ゼラチンは使わず寒天かアガーを使う(ゼラチンは常温で溶ける)
・ジュースを使う(食酢とお酒は煮込むと蒸発する)
・農薬など殺虫成分を使う(ゼリーだと溺れ死なない)
を守ってください。
まとめ
✅ハエにはいろんな種類がいる
大型 |イエバエ、ニクバエ
コバエ|ノミバエ、ショウジョウバエ、チョウバエ、キノコバエ
それぞれ特性が違うので、対策が異なります。また、発生源も異なるので理解しておきましょう。
✅基本は餌を絶つ
害虫と呼ばれる虫全般ですが、こまめに掃除すれば大発生はしません。種類によって餌は異なりますが、生ごみを放置せず水回りをキレイにすればおおよそ防げます。
ただし、キノコバエだけは環境によってどうしようもないので、自室と隔離する方法を考えましょう。
✅自家製トラップも有効だよ
めんつゆと食酢で簡単に作れます。大型のハエやチョウバエにはほとんど効果が無いので注意しましょう。
ハエのコラム集
蛇足の時間です(笑)
役に立つハエ
なにかと嫌われ者のハエですが、人間生活に役立つ種類も豊富です。もちろん自然界においては重要な役割を果たしているので、すべての虫に言えることですが、目的もなく退治するのはやめましょう。
✅捕食性のハエ
いわゆる害虫のハエはほとんどが死肉や腐ったもの、糞便などを餌としていますが、ハエの仲間には虫を食べる捕食性のものも多くいます。
それらは自然界の生態系の中で大きな役割をもつだけでなく、農業における天敵利用としても役に立ちます。
✅農業利用
前述の捕食性ハエの天敵利用だけでなく、植物の受粉にもハエは使われています。沖縄ではマンゴーの受粉に利用されており、気温が低いときはハチよりも良く働くため、マンゴーの花が安定して実を着けることが出来ます。
安くて美味しいマンゴーを食べたい人はコチラの記事で紹介してます。
✅実験動物
ショウジョウバエは飼育が容易で、遺伝子の表現型が豊富なので、遺伝学の分野で実験動物として扱われてきました。
また、餌生物としても優秀なので、繁殖させてる人は結構います。私も大学時代は実験用に増やしていました。
やれうつなハエが手をすり足をする
小林一茶の有名な句です。ハエが手をこすり合わせている様子を「殺さないでくれ、助けてくれ」と命乞いしているように見立てています。
当然ですが実際に命乞いしてるわけでありません。
実はハエは足が感覚器官になっていて、舌のように足で食べ物の味がわかるそうです。そのため、こすり合わせてメンテナンスしてます。
図鑑:ハエハンター紹介
上級者用にハエハンター(天敵)を紹介します。天敵だけでは完全駆除は出来ませんが(理由はゴキブリ編を見てください)、数を減らすことが出来ます。また、ゴキブリハンターたちより可愛いので、ハンターを導入することへの抵抗が少ないです。抵抗ないよね?
ハエトリグモ
名は体を表す!正真正銘のハエハンターです。日本だけでハエトリグモの仲間は100種類以上いますが、屋内では主に4種類ほどいます。とはいえ、種間で行動や特性に大きな差異がないので、まとめてハエトリグモとします。詳しく知りたい人はDMなりで直接問い合わせてください。
ハエトリグモはいわゆるクモの巣を張らないクモです。ピョンピョンと飛び跳ねながら、ハエを中心とした小型の昆虫に飛び掛かって捕えます。
ずんぐりむっくりとしていて、モコモコした姿がカワイイ人気の種類です。
室内でハエトリグモを見かけたら、頑張ってるなぁ~と思ってそっとしておくとよいでしょう。