• 投稿日:2024/10/28
  • 更新日:2025/09/29
【2億年分の教訓】カブトエビに学ぶ 分散投資の重要性

【2億年分の教訓】カブトエビに学ぶ 分散投資の重要性

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BAL@虫料理研究家

BAL@虫料理研究家

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要約
投資の格言「卵は一つのカゴに盛るな」 何かあった時にすべてダメになってしまうリスクを回避するために 分散の重要性を説いている格言です。 実は2億年前から実践している生物がいます。 それがカブトエビです。 大先輩から生き残りの歴史を学びましょう。

はじめに

"卵は一つのカゴに盛るな"という投資格言はご存知でしょうか?
リスク分散のために、分散投資しろという教えです。

実は、この教えを2億年前から守っている生物がいます。
それがカブトエビです。

それでは早速カブトエビの生存戦略から、投資スタイルを学んでいきましょう。

カブトエビとは?

カブトエビは鰓脚綱(さいきゃくこう※1)に分類される生き物で、大きく言うとエビやカニの仲間、小さく言うとミジンコの仲間です。

卵は0.5mm程度ですが、成長すると最大で3cmを超え、鰓脚綱では大型の生き物です。現代日本における主な生息地は田んぼで、雑草を食べたり表層の泥をかき回すことから有用生物とされています。
1年周期で発生しますが、そのうち11カ月ほどは卵で、1か月ほどの間に1mm⇒3cmと急成長します。

また、2億年前からほとんど姿形が変わっておらず、生きた化石として小学生向けの飼育キットの販売などがされています。

ちなみにカブトガニはクモやサソリに近い仲間で50cm以上の大きさを誇る全然違う生き物です。お間違えないように。

※1 綱(こう)ってなんやねん!って思った人は分類階級についてコチラ
   の記事にザックリ書いてますので、参照ください

カブトエビの分散投資

さて、ここからが本題です。カブトエビは分散投資の達人なのですが、どのように分散しているかというと卵の孵化パターンを分散させています。
どういうことか、詳しく見ていきましょう。

カブトエビのライフスタイル

カブトエビは卵で11カ月ほど過ごしますが、卵は耐久卵と呼ばれます。この耐久卵は、寒さや乾燥に強く日本の冬の気候をやり過ごすことが出来ます。こうして、カブトエビは環境が悪い時は卵でやり過ごし、6~8月の暖かく、水が豊富にあるときに一気に成長して、次世代を残していくのです。

ちなみに同じ仲間のミジンコも耐久卵を持ち、泥の中で環境の悪い時期をやり過ごします。

田んぼの環境は不安定

田んぼは常に水が張られているわけではありません。おおよそで5~9月の間しか水は張られておらず、中干と言って、一時的に水を抜くこともあります。常に一定の環境ではなく、不安定な環境と言えるでしょう。加えて、日本には四季があり、10℃以下ではほとんどの動植物が生育できません。

そのため、カブトエビにとって好適な環境はわずかな期間しかないのです。

※2 田んぼのなかった時代においても、カブトエビは頻繁に干上がってし
   まう池や水溜まりを主な生息地としていたと考えられています。

好適な環境の時に孵化

一生のうちの大半を卵でやり過ごすカブトエビですが、いずれは外の世界に飛び出さなければなりません。永遠のピーターパンにはなれないのです。

次の手順を行うと、卵から幼生が飛び出してきます(孵化と言います)。

✅寒さに当てること
✅濡れること

これは自然界では、冬を越して、再度水溜まりが出来たということになります。

分散によって生き残り

では冬を越した後に一度だけ濡れた場合にすべての卵が一斉に孵化するのでしょうか?答えは否です。
一度濡れただけで孵化するスタイルの卵しかない場合は、もう一度干上がった場合に全滅します
前章の通りカブトエビは、不安定な環境を生き抜いてきました。
そのため、卵ごとに、「一度濡れたら孵化」「二度濡れたら孵化」「三度濡れたら孵化」・・・と幅を持たせることで、全滅のリスクを回避しています。

効率は落ちる

多数の孵化スタイルの卵を持つことは生き残る上で非常に有効だったことは間違いありません。しかし、生き残りを優先した結果どうしても効率が犠牲になります。卵の孵化パターンを分散するということは、どの状況が来ても生き残れるというこです。しかし、裏を返せば特定のパターンに特化していないので、来なかったパターンについては無駄になります。

しかし、進化の中では全滅してしまえばそこで終わり、再チャレンジはできませんので、効率よりも生き残り戦略の方が強いバイアスがかかると言われています。

未来のことは分からない以上、一つの戦略に賭けることは出来ません。

この話から得られる教訓は・・・

投資においても水場がある(相場がいい)と言って、資産をすべて株式にするのは、一度水を被ったからと言って、一斉に孵化するカブトガニのようなものです。
干上がった時(相場が悪い時)に全滅(破産)します。どんな状態でも生き残れるように耐久卵(現金・コモディティetc)も、ちゃんと残しておきましょう。

コラム:明日使えるドヤ知識

ダーウィンとビジネス格言

"最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもなく、唯一、生き残る者は変化できる者である"

上記言葉は有名で、ビジネス界隈でも度々使われていますが、ダーウィンはそのようなことを言ったという記録はありません

このセリフを言った人に対して
「え?それって本当にダーウィンが言ったの?ダーウィン自身にはevolutionっていう概念無かったはずだけど?」
「そもそも変化とは個体における変化なの?個体における変化ならダーウィン関係ないよね?じゃあ集団の適応なの?集団だとしたらどの程度のサイズのメタ個体群なの?世代はどの程度交代するの?」
などと、矢継ぎ早にツッコミを入れていきましょう。
確実に友達を減らすことが出来ます

進化の概念では過程を軽視し、結果のみを重視します。そこに道徳・倫理と言った、人間のあるべき姿などとは本来無縁です。当時の社会情勢上(宗教・大航海時代etc)、都合よくつかわれてきた面もあり、ダーウィン本人も苦悩を漏らしていたそうです(勝てば官軍という考え方になってしまう)。
「自然=良いもの」という考えは捨ててください。
それでは、カブトガニの例を分散投資に無理矢理結び付けた、当記事を引き続きご覧ください^^

参考記事|ダーウィンの呪いの正体
     進化論誤用・悪用・乱用問題

トレードオフの逆輸入

トレードオフという言葉は経済学発祥と言われています。その後にトレードオフの概念が進化生態学にも取り入れられたそうです。進化生態学は経済学の上位分野(※3)なので、逆輸入と言えるでしょう。同様に、ゲーム理論や頻度依存選択なども経済学から逆輸入されたらしいです。

本記事においても、"リスク分散"と"効率"はトレードオフの関係にあります。カブトガニは効率を犠牲に生き残りに賭けているということです。

※3 包括するという意味。優劣があるわけではない。     

まとめ

✅環境は不安定である
⇒カブトエビの住む田んぼでは、水があったりなかったりします。水が無い時(相場が悪い時)にも生き残れるようにしましょう。

✅最大効率を追求するな
⇒少し水があるとき(相場が良い時)にフルベットするのは辞めましょう。確かに効率は良くなりますが、常に水があるとは限りません。長期的に見たら生き残ることの方が重要です。

✅時には余白も大切
⇒長い目でみたら環境は変化するもの。時にはまったりとやり過ごすことも重要かもしれませんね。

※決して私自身が無職でダラダラしていることに対する言い訳ではありませんので、ご留意ください。

参考図書|面白くて眠れなくなる生物学  著:長谷川 英祐
     Animal Behavior ninth edition chapter7 著:Jonh Alcock
Evolution, Second Edition. chapter7
     著:Douglas J.Futuyma.

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