- 投稿日:2024/12/06
- 更新日:2025/09/29

はじめに
人間は必ず死にます。しかし、自分の死期を知ることは出来ません。そのため、自分の死を感じてしまうと激しく動揺し、通常の精神状態でいることは難しいです。
そんな時に注意してもらいたいのが「詐欺やぼったくりにあわないこと」です。人間は死を意識すると守る力が激減します。そんな時こそ、日ごろの守る力が試されます。また、メカニズムを知ることで、守る力が下がっていると客観的に見れて、対応しやすくなるでしょう。
死を受け入れるまでの5段階
ヒトが大きな事故や病気をした場合に、すぐに死を受け入れることは出来ません(即死の場合を除く)。下記の5段階を経ると言われています。
否認
まずは否認です。
発言例
「違う、俺は病気なんかじゃない!まだ生きているんだ!何かの間違いだ!」
怒り
次に怒りです。
発言例
「俺が病気になるなんておかしい!今まで何ともなかったじゃないか!」
取り引き
3段階目は取り引きです。
発言例
「ああ、神様。大好きだった酒もたばこもやめるので、どうか私を助けてください」
抑うつ
4段階目が抑うつです。
発言例
「ああ、もう駄目だ。俺はどうせ死ぬんだ・・・。」
受容
最後に受容です。
発言例
「俺は今までに十分に生きた。いい人生だった。」
参考HP|MSDマニュアル家庭版
守る力の低下
さて、死との向き合い方には段階があると言いましたが、特に注意すべきが3段階目の「取り引き」の状態です。この状態では
〇〇をすれば、病気が治る
××をしなければ、病気が治る
という状態になりがちです。発言例では酒やたばこを辞めるという例を出しましたが、ここにトンデモ商品やトンデモ医療、トンデモ信仰などが紛れ込む余地が十分に有ります。
溺れる者は藁をもつかむ、自分の死を意識し、受け入れていないときにはトンデモに引っ掛かりがちです。そして大金を失います。
まぁ健康に関しては、別に何を選ぼうが本人の自由なので好きにしたら良いのですが、お金が絡むと家族を巻き込むハメになります。
昔から、この手の話は枚挙にいとまなく、これが原因で一家離散などは良くある話です。
有名人などは大病になると詐欺師みたいな人達がワラワラと寄ってくるそうです(※1)。有名人でなくとも、聞きつけた近所の人から噂が広がり怪しい人を呼び寄せてしまうかもしれません。
また、たちが悪いことに治療に成功した(と思われる)先駆者たちが"善意で"トンデモ系を勧めてくることもしばしばあります。まさしく「地獄への道は善意で舗装されている」のです。
その人が行った行為と病気やケガが治ったことに果たして関係はあるのでしょうか?典型的な前後即因果の誤謬なので、話半分程度で聞き流しておきましょう。
対応策
少し難しめの話をするので、難しい人は読み飛ばしてください。
トンデモ系に引っ掛からないようにするにはいわゆるエビデンス(※2)を確認することです。
じゃあそのためにはどうするのかというと客観的にデータを見ることが重要です。
客観的にデータを見るには基本的な統計の考え方が必要になります。
まずは要素(ファクター)を抽出するという考え方です。これは対象(サンプル)が持っている性質を細かく分類していきます。どの性質が結果に影響を与えるかわからないので、実験するときは着目する性質以外は基本的に統一して実験します。
次に母集団という考え方です。これはランダムなバラツキを考慮して、単一の対象(サンプル)ではなく、複数のデータを収集することで個体差の影響を軽減するという考え方です。
最終的にはとある性質の母集団と母集団を比較して、とある事柄が言えるか、言えないかを検証します。
これが代表値の差の検定です。
統計をまるっきり無視した具体例で言うと、年収を比較するときに
Aさん:東京都在住、24歳、女性、コンビニアルバイト、年収250万
Bさん:三重県在住、53歳、男性、弁護士、年収900万
このデータで三重県の方が東京都より年収が高いと言っているようなものです。統計的に比較するなら、所在地以外のデータはなるべく均一にしたうえで複数からデータを取得して比較するべきなのです。
上記を考慮すると
「〇〇するだけで、健康になる」
「××(日本に普通に売ってるもの)は毒だ、健康に悪い」
とかは大体間違ってます。物事は単一の要素で決まることは少ないし、そもそも何と比較してそのような結論を出しているのか非常に気になります。
実験設定が組めない、帰無仮説がわからない、実験結果からの考察も導き出せない、ANOVAを知らない。前述はすべて差を見るための土俵の話です。土俵がわからない人間が言っていることになんの信憑性もありません。
普段は複雑な思考が出来ていても、死に直面して取り引きの段階になると、単純な思考に支配され、自身の健康、家族との大事な時間、お金のすべてを失いかねません。普段から単純な思考をしていれば言わずもがなです。
N(サンプル数)=1の体験談には「再現性(※)あるんですか?それ?」と聞き返したくなります。
この辺の話は詳しくは「偽情報の見分け方」に書いていますので、気になる方はご覧ください。
※2 日本語の定義の範囲が広すぎるから個人的には嫌いな言葉である。
※3 こちらも日本語の定義の範囲が広すぎて、同様に嫌いである。
「同様のマテメソを実施した際に、検定の有意水準に相違がない」
程度に定義を狭めて欲しい。
難しすぎるよって人には
科学とか統計とか法律は難しいからわからない!という人にはオススメの方法があります。
それは「国や大手企業を全面的に信用する」です。
具体的には
✅公的機関の情報を採用する
✅行政機関のサービスを受ける
✅大手の企業が展開する安い商品を購入する
などです。大手企業についてはたまにとんでもない高額商品とかありますが、基本的には法の範囲内なので、まだマシかもしれません。
客観的なデータを用いた判断が出来ないのに、どこの馬の骨とも知れない個人(※4)の言っていることを信用するなど、正気の沙汰ではありません。
もちろん、国や大手企業が不正・間違いをすることはあります。ニュースにもしばしば取り上げられています。しかし、小さな企業や個人であればより簡単に不正を達成できるし、間違いの修正も困難です。
最近の学長マガジンでも標準治療こそが最高治療とありました。
せっかく日本という良い国に生まれているので、メリットを最大限に生かしましょう。
それでも少しずつでも勉強したいという人は、いきなり難しい書籍などには手を出さずに小中学生向けの本から始めていってください。バカにしているわけではなく、基礎がなくいきなり難しい本を読もうとすると挫折するか、トンデモ本にぶち当たって色々失うリスクがあります。
個人的に科学リテラシー系でオススメなのは
まんがサイエンスシリーズ
入門として最適です。若干古く、小学生向けですが、非常にわかりやすいです。化学、物理、生物、地学を広く浅く理解できます。
※4 もちろん私(BAL)も含まれるのでエピメニデスのパラドックスが
発生するが、そんなことを気にしてはいけない
関連する書籍など
私は無職で暇なので、よく死に関して考えてたりします。死を受け入れる準備をすることも守る力を高めてくれるでしょう。最近読んだ中でも読む難易度順に紹介します。一番上が難しく、下に行くほど易しくなります。
洋書(訳本)
「死とは何か」
正直難しくて、あまり理解していませんが、パーソン機能の消失や余命宣告された学生が学び続けるというエピソードトークが心に残りました。
「DIE WITH ZERO」
学長もオススメの本。オフィスにもあった気がします。実は私が無職になるきっかけの本です。お金と人生について立ち止まって考えることが出来ます。
和本
「人はどう死ぬのか」
現代在宅医療にかなり否定的で思想は強めだけど、「死とは何か」の機能消失の話などと繋がる面白い考え方です。特にネガティブ・ケイパビリティを「求めない力」として、死を受け入れ、安易にトンデモに飛びつかない精神的な心構えとしており、合点がいきました。
小説
「死に金」
大病を患い余命僅かな反社会的な人間が隠し持っている大金を、同じく反社会的な人間たちから狙われる話。
「本気で金を追い求めたもののみ、金が無意味と知る」というセリフがとても良かったです。
漫画
「天-天和通りの快男児」
顎が尖ってることで有名なカイジやアカギの作者の初期作品です。序盤は画風が今と若干違うため、それほど顎が尖っていません。実はアカギはこの作品のスピンオフだけど、アカギの方が有名だったりします。
さて、全然死とは関係なさそうですが、15巻からアカギの生前葬編が始まります。ここにアカギの人生観、失われつつあるパーソン機能、人はどう生きるべきなのかというテーマが集約されています。生き方や価値観マップに通ずるところがあるので、絵柄が苦手ではない人には是非読んでもらいたいです。
1-15巻は普通に麻雀打ってるので、読まなくても良いです(笑)
「バンオウ-盤王-」
吸血鬼が将棋を打つ漫画・・・なのだが後半には寿命、努力、才能などと色々と考えさせられます。漫画自体も非常に王道で単純に面白いです。全8巻で完結しているのも読みやすいポイント。