• 投稿日:2025/08/15
  • 更新日:2025/10/30
企業型DC(iDeCo)移管後の戦略比較:運用指図者か加入者か?

企業型DC(iDeCo)移管後の戦略比較:運用指図者か加入者か?

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のぶとら@オルカンとS&P500ごぶごぶ

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要約
56歳退職後、iDeCoを運用指図者として維持するか、加入者として最低掛金2,000円を拠出するかを比較。65歳以降も75歳まで運用し一時金受取とした場合、加入者継続は退職所得控除の追加と運用益上乗せで手取りが増加。少額負担で大きな差が生まれる可能性が示された。

第1章 まえがき

私は現在56歳。2025年8月末で長年勤めた会社を退職し、企業型DC(確定拠出年金)はiDeCoへ移換する予定です。

前回までの記事はこちら。
企業型DC(iDeCo)受け取り戦略:一時金と年金の徹底比較
企業型DC(iDeCo)受け取り時期の比較:65歳か75歳か、どちらが得か?

今回のテーマは、「退職後のiDeCo/DCを65歳や75歳で受け取るか」ではなく、退職から受け取りまでの間に「運用指図者」で過ごすか、「加入者」として最低額(2,000円/月)を積み立て続けるかによる違いを比較するものです。

背景として、私は20年前の会社分社化時に一度退職金を受け取り、今回の退職金(19年分)で退職所得控除を使い切ります。このため、同じ企業で積み立てた企業型DCを将来一時金として受け取る場合、通常の退職所得控除はゼロとなります。

しかし、退職後も「加入者」として掛金を拠出すれば、その期間に応じた退職所得控除(年40万円)を新たに積み増すことができます。たとえば、56歳から65歳まで9年間×40万円=360万円が追加控除されます。

そこで今回は、56歳から65歳まで

・ケース1:運用指図者(掛金拠出なし)

・ケース2:加入者(毎月2,000円拠出、9年間)

という2パターンを想定し、両者とも65歳以降は75歳まで年利6%でDC内運用を継続。その後一時金として受け取り、税金を引いた最終手取り額を比較しました。

試算の結果、加入者パターンの方が約128万円有利という結論になりました。差は、追加控除360万円による税負担減と、わずかな掛金積立の複利効果によるものです。

第2章 退職所得控除と「加入者」継続のメリット

退職金や企業型DC・iDeCoの一時金受け取り時には、「退職所得控除」という大きな税制優遇があります。
この控除額は勤続(または加入)年数に応じて決まり、

・20年以下:年40万円
・20年超:21年目以降は年70万円

という計算式で求められます。

私の場合、今回の退職で19年分×40万円=760万円の控除を使い切ります。

そのため、同じ会社で積み上げた企業型DCを将来一時金として受け取る際には、この控除を再び使うことはできません。控除ゼロの場合、受取額の2分の1が「退職所得」として課税対象になってしまいます。

しかし、退職後も「加入者」として掛金を拠出すれば、その加入期間は新しい控除の対象となります。

今回検討しているのは、最低拠出額である月2,000円を9年間(56歳~65歳)積み立てるケースです。これにより、

・年40万円×9年=360万円

の控除枠が新たに追加されます。

この追加控除があるかないかで、75歳で受け取るときの税金が大きく変わります。加えて、この間の掛金は全額非課税で運用されるため、運用益も税金を抑えたまま積み上がっていきます。

次章では、この2つのパターン(運用指図者 vs 加入者)を数値で比較し、その差を具体的に確認します。

第3章 「運用指図者」と「加入者」の税負担と最終手取りの比較

ここでは、次の2つのケースで、65歳から75歳まで企業型DC(iDeCo)で年利6%運用し、75歳時点で一時金として受け取る場合の税負担と最終手取りを比較します。

・ケースA(運用指図者)
56歳で退職後は掛金拠出をやめ、65歳まで運用のみを行う。退職所得控除は追加されないため、75歳受取時の控除額は0円。

・ケースB(加入者)
56歳から65歳まで毎月2,000円を拠出し続ける。加入年数分(9年×40万円=360万円)の退職所得控除が追加され、75歳受取時の課税額が軽減される。

試算条件

・65歳時点の残高:2,200万円

・運用利回り:年6%(複利)

・課税方式:退職所得=受取額×0.5(控除差引後)

・所得税は累進課税+住民税10%

・75歳で一括受取後に課税

試算結果(概算)

プレゼンテーション1_7.png差額

加入者パターンの方が約110万円手取りが多くなります。

この差は、単に掛金分の積立益ではなく、追加された退職所得控除360万円による税負担軽減効果が大きく寄与しています。

第4章 加入者継続のメリットと注意点

今回のシミュレーション結果から明らかになったのは、退職後もiDeCo加入者として掛金を拠出し続けることで、最終的な手取り額が増えるという事実です。

その理由は大きく分けて2つあります。

1. 退職所得控除が追加される

退職所得控除は「加入年数 × 40万円(20年未満の場合)」で計算されます。

56歳から65歳までの9年間、加入者として掛金を拠出すれば、360万円の退職所得控除が追加されます。

これにより、75歳で一時金を受け取る際の課税対象額が減り、税負担が大きく軽くなります。

2. 少額でも複利運用の恩恵を受けられる

今回の試算では、毎月2,000円の掛金でも9年間積み立てることで、約43万円の運用益を上乗せできました。

掛金そのものは少額ですが、控除効果と合わせることで、結果的に手取り額の差は約110万円にもなります。

注意点

・税制や制度改正によって、将来の控除額や受け取り方法の有利不利が変わる可能性があります。

結論として、加入者継続は少額の掛金でも退職時の控除枠を広げる有効な手段です。

ただし、制度条件と自身のライフプランを照らし合わせたうえで選択することが重要です。


第5章 まとめと私の選択

今回の検証では、56歳で退職後、iDeCo(企業型DCを移管)を「運用指図者」として65歳まで運用する場合と、「加入者」として最低掛金2,000円を拠出し続ける場合を比較しました。

そして、両ケースとも65歳で解約せず、そのまま75歳まで運用し、一時金として受け取る前提で試算しました。

結果は以下の通りです。

・加入者として掛金を拠出した場合、退職所得控除360万円の追加が可能となり、75歳での一時金受取時に課税額が大幅に減少。

・少額掛金でも9年間の積立運用により、約43万円の運用益が上乗せ。

・控除効果と運用効果の合計で、最終手取り額は約110万円多くなりました。

・これらの結果を踏まえ、私は次のように結論づけました。

可能であれば、加入者継続が有利

・掛金額は最低の2,000円でも十分効果がある

・制度改正や将来の税制変化には注意が必要

つまり、「毎月わずかな負担で、最終的な手取りを大きく増やせる」可能性があるということです。

私自身は、制度条件を確認のうえ、加入者継続の方向で検討を進めることにしました。

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