- 投稿日:2025/11/29
- 更新日:2025/11/29
初めまして!シロマサルです。
知ることで、人生はもっと楽しくなる!
今回は左巻健男著『世界史は化学でできている』2021年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
著者:左巻健男
東京大学非常勤講師。元法政大学生命科学部環境応用化学科教授。『理科の探検(RikaTan)』編集長。専門は理科教育、科学コミュニケーション。1949年生まれ。千葉大学教育学部理科専攻(物理化学研究室)を卒業後、東京学芸大学大学院教育学研究科理科教育専攻を修了。中学校理科教科書(新しい科学)編集委員・執筆者。大学で教鞭を執りつつ、精力的に理科教室や講演会の講師を務める。
✅ 化学は人類史の中心である
✅ 生活や文明は化学によって進化してきた
✅ 「わかったつもり」を捨てて深く学べ
一番のルールは自分自身を欺かないことだ。
そして、一番欺きやすい人間はあなたである。
アメリカの理論物理学者:リチャード・フィリップス・ファインマン
「化学って暗記ばかりでつまらない…」
そう思っていないだろうか?
実は、あなたの生活、社会、歴史までもが化学に支配されている。
火を手に入れた瞬間から、人類は化学と共に進化してきた。
今回は、そんな壮大な物語を覗いてみよう。
各章の内容のつながりや、歴史と化学の因果関係の掘り下げがシンプルな分読みやすく、勉強になる本だ。
子どもたちは実験が大好きだが、そこから疑問が生まれて「なぜだろう」と考えることが本当の楽しさである。
同じように、肩ひじの張らない読み物が結局、勉強を面白くする。
「別にテストのために知りたいわけじゃない。」
『世界史は化学でできている』
小さな火花はときに大きな炎を起こす。
世界史(人類史)上、最初に人類が知った化学的現象は、おそらく「火」であった。
火は、「燃焼」という化学反応にともなう激しい現象である。
左巻健男著『世界史は化学でできている』
火がもたらした文明の始まり
出典:Wikipedia
原始的な松のたいまつからパラフィンロウソクに至るまで、その道のりの何と長かったことか。
そしてこの2つにはなんと大きな違いがあることだろう。
夜、どのような手段で自分の住み家を照らすかにより、その人間の文明の尺度が刻印される。
イギリスの化学者:マイケル・ファラデー
本書の冒頭で著者が人間として最も好きな化学者としてファラデーを挙げている。
その理由は、ファラデーが貧しい生まれで正規の学校教育を受けていなかったため数学は苦手だったが、その代わりとして「すごい洞察力」で自然界の現象を数式なしに直感的にイメージすることができた点を挙げている。
⇒ 我々は火を制御し、生活を変えた。
火の制御は人類史上最大の発明の一つである。
自然の野火、山火事から生まれ、私たちの祖先は「おそれ」を乗り越えて「火」を利用することになった。
火を使うことで人類は食物を加熱し、消化を容易にし、食中毒のリスクを下げた。
さらに、寒冷地への進出を可能にし、生存範囲を飛躍的に拡大したのである。
しかし火の力はそれだけではない。
金属を精錬し、土器やガラスを焼き固めるためには高温が必要であり、それを可能にしたのが火である。
これにより、石器時代から金属器時代への移行が進み、道具や武器の性能が飛躍的に向上した。
つまり、火の利用は「文明の母」と言っても過言ではない。
暖房、照明、狩猟、焼き畑、調理、土器、レンガ、金属加工、精錬など「火の技術」は私たちの生活を豊かに便利にした。
とくに炉を発明することで火をいつでも利用できるようになった。
火を囲んだ食事と団らんによって、お互いのコミュニケーションも密になり、人類の社会性は高まったのだろう。
左巻健男著『世界史は化学でできている』
火は単なる熱源ではなく、文明の起点となった存在だ。
金属とセラミックスが築いた文明
自然に生まれない物質を自然の法則から生み出す。
私たちの文明は石器から金属器に移り変わった。
現代は、鉄器文明の延長線上にある。
金属は自由に加工でき、しかも硬いために有用性が高く、大きく文明が進歩した。
左巻健男著『世界史は化学でできている』
⇒ 土器と鉄が社会を変えた。
金属の発見と精錬は、戦争・農業・建築などあらゆる分野を変革した。
青銅器の出現は強靭な武器と農具をもたらし、文明を強化した。
そして鉄器の登場は決定的である。
鉄は青銅よりも強く、豊富に存在するため、社会全体に広く普及し、国家間の力関係を大きく変えた。
また、金属の精錬技術と並行して、土器やセラミックスの進化も重要であった。
高温で焼き固めることで、食品や水を安全に保存する容器が生まれ、農耕社会の発展を後押しした。
やがて、陶磁器は美術品としても価値を持ち、東西貿易の中心的な商品となった。
そして、現在のインターネットは必ず光ファイバーにつながっている。
ガラスがなければ、インターネットも存在しない。
情報は光ファイバーの中を全反射しながら、私たちの稼ぐ力を支えている。
これらの物質文化の進歩は、単なる技術革新ではなく、文明の構造そのものを形づくったのである。

大野耐一著『トヨタ生産方式』
金属がなければ、自動車産業は生まれず、集団や組織をフルに活用した製造業は生まれなかっただろう。
すべての道具というものは、それがよい道具であればあるほど、すばらしい効果を発揮するものだが、ひとつまちがうと、逆効果をもたらすものである。
大野耐一著『トヨタ生産方式』
エリック・シュミット著『第五の権力 Googleには見えている未来』
「第五の権力」とはインターネットのことを示している。
技術革新も権力も「化学」によって支えられている。
インターネットは、人間がその手でつくっておきながら、まだ十分に理解することができていない。数少ないものの1つである。 インターネットの世界はつかみどころがなく、絶えず変異を繰り返し、ますます巨大で複雑になっている。
エリック・シュミット著『第五の権力 Googleには見えている未来』
アルコールと蒸留の発見
国家が穀物(資産)を貢物として集め(税金)、労働の対価として再分配している。
貨幣制度や職業の始まりも化学である。
つまり、人間関係も「化学」である。
農業を中心とした定住生活をするようになると、余剰穀物のおかげで農業に従事せずに、別の仕事をする人々も出てくる。
彼らの給料はパンとビールで支払われた。
たとえば、紀元前2500年頃、エジプトのピラミッド建設の労働者への標準的な配給はパン3~4斤とビール約4リットルだった。
左巻健男著『世界史は化学でできている』
⇒ ビールと蒸留酒が社会を支えた。
アルコールは偶然から生まれ、やがて人類の文化に深く根づいた。
パンとビールは同じ発酵技術によって誕生し、農耕社会における主食と嗜好品として発展した。
発酵は微生物の働きによる自然現象だが、人類はこれを利用し、アルコールを楽しむ文化を築き上げた。
さらに蒸留技術の発明により、より高濃度のアルコールを得ることが可能となった。
蒸留酒は保存性が高く、航海や遠征の必需品となり、香料や薬品の抽出にも応用された。
アルコールは単なる嗜好品ではなく、経済や労働、探検といった社会の基盤となる活動に深く組み込まれてきた。
技術革新は単なる飲酒文化の発展にとどまらず、化学実験や医薬品製造の基礎を築いたのである。
美と香りと化学の関係
日用品が必要不可欠なら、「化学」も必要不可欠だ。
衣食住の中で、「衣」は暑さ寒さをしのぐだけでなく、美しく着飾りたいという人間の欲望とともに発展してきた。
衣服は染料で染められている。染料となる物質は、美しい色を持っているだけでなく、布や糸にうまく染まるという染着性(せんちゃくせい)を持っていなくてはならない。
左巻健男著『世界史は化学でできている』
⇒ 香水と染料が文化を彩った。
香水の歴史は、衛生観念や美意識と切り離せない。
中世ヨーロッパの宮廷では、入浴が不衛生とされ、悪臭が充満していた。
そのため、香水は単なる贅沢品ではなく、生活必需品だったのである。
やがて化学が香水の製造を変革した。
天然香料の代わりに、合成香料が誕生し、安価で安定した供給が可能になった。
また、19世紀には合成染料の発明が世界を一変させた。
ドイツの化学者たちが石炭タールから染料を合成し、これが巨大な化学産業の基盤となり、世界経済を動かしたのである。
染料の歴史から、最初の合成染料の発見、ベンゼンの構造解明、そして有機化学産業が経済を牽引した。
これらの事例は、貴族の虚飾や不衛生といった一見無関係な社会の側面が、香水や染料という化学製品の発展を促したという因果関係がある。
美や装飾という一見無関係な欲望が、科学を進歩させた事実は興味深い。
大切なこと
DHMO(ジハイドロゲンモノオキサイド:一酸化二水素)という非常に恐ろしい化学物質がある。
無色、無臭、無味で、毎年数えきれないほどの人が、この化学物質で亡くなっている。
この物質は川、湖、ダム、南極の氷といった世界中のどこでも発見されている。
この液体の中にいると人は呼吸できなくなり、固体に長時間さらされると、皮膚に深刻な損傷を与え、気体は重度のやけどを引き起こす可能性もある。
がん細胞からも発見され、がん細胞が増殖する原因の一つでもある。
私たちの食べ物も、体もこの「化学物質」に汚染されていて、少量なら特に問題はないが、過剰に摂取すれば中毒症状となる。
では、DHMO(ジハイドロゲンモノオキサイド)とは何か?
別名をH₂O。つまり、「水」である。
文章は人を不安や恐怖にも駆り立てる。
人を騙す、都合のよい方向に誘導するのも、文章だ。
それが、動画や信頼している人からの情報ならより信じるだろう。
「化学物質」というだけで、「恐ろしい物質」というイメージを持った人がいるかもしれないが、化学物質とは、「モノの材料になる物質」のことだ。
左巻健男著『世界史は化学でできている』
もちろん、「化学物質」という単語が「恐ろしい物質」というイメージが生まれたのにも、歴史や事件がある。
⇒ 「わかったつもり」になるな。
本書が伝える核心は、「わかったつもり」になってはいけない、ということである。
化学も歴史も、一見すると簡単な知識に思えるが、その背後には深遠な構造と相互作用がある。
化学は便利さと繁栄をもたらす一方で、制御を誤れば人類に大きな災厄をもたらすことを忘れてはならない。
麻薬や覚醒剤などの化学物質は、当初医療目的で合成された。
だからこそ、学び続けることが重要だ。
学問は単なる暗記ではなく、世界を理解し、未来を選択する力となる。
そしていつまでたっても、学び終わることがないことに気がつくのだ。
「創造性の発現には相当大量の語彙の蓄積が必要だ」
湯川秀樹

堀内勉著『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』
「世界は何からできているか?」という哲学的な問いが、元素の探求、すなわち化学の探求の始まりであった。
どんな情報でも瞬時に手に入るインターネット時代において、超多忙な実業家がわざわざ貴重な時間を割いて読書をするのは、単に知識を得るためではありません。それは、ビジネスリーダーとして、あるいは人間としての洞察力を高めるためです。
堀内勉著『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』
まとめ
✅ 化学は人類史の中心である
✅ 生活や文明は化学によって進化してきた
✅ 「わかったつもり」を捨てて深く学べ
「世界史と化学がこんなに密接に関係していたのか」と思っていただけたのならば、また、化学という学問の魅力に関心を持っていただけたのならば、私としては嬉しい限りである。
左巻健男著『世界史は化学でできている』
⇒ 歴史を変えたのは人間の知恵と化学だった。
本書は、火の利用から核兵器に至るまで、化学が人類に与えた「光」と「影」の両面を明確に提示している。
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆

