• 投稿日:2025/12/06
「闘争」としてのサービス──顧客との緊張が価値を生む理由

「闘争」としてのサービス──顧客との緊張が価値を生む理由

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シロマサル@ノウハウ図書館×本の要約🍀

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要約
「サービスとは顧客を満足させること」という常識を覆すのが山内裕著『「闘争」としてのサービス』である。 高級鮨屋やフレンチの事例を通じ、顧客と提供者の緊張関係こそが真の価値を生むことを明らかにする。 本記事では、その核心を紹介する。

初めまして!シロマサルです。

知ることで、人生はもっと楽しくなる!

今回は山内裕著『「闘争」としてのサービス』2015年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。

著者:山内裕

京都大学経営管理大学院講師。京都大学工学部情報工学科、同大学院情報学研究科社会情報学専攻修了(情報学修士)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California,Los Angeles)、UCLAアンダーソン経営大学院(UCLA Anderson School of Management)博士課程修了(Ph.D.in Management)。ゼロックス(Xerox)社パロアルト研究所(Palo Alto Research Center/PARC)研究員を経ている。

00000.png✅ サービスは「闘争」であり緊張が価値を生む。

✅ 顧客満足を追求するほど逆に満足度は下がる。

✅ 対等な緊張感が顧客と提供者を共に成長させる。

本書はサービスの原理を解明しようというものである。
この研究を進めるにつれて次第に明確になってきたのは、サービスというものが誤解されやすいということであった。

山内裕著『「闘争」としてのサービス』


「サービスはお客様を喜ばせることだ」と信じていないだろうか?

しかし本書は、その常識を真っ向から否定する。

むしろ顧客に緊張や努力を強いる「闘争」の中でこそ、サービスは真の価値を帯びるという。

鮨屋やフレンチ、スターバックスの事例を通じ、サービスの新しい本質を探っていく。


自分の商品を高く買ってもらうためにはどうすればいいか?


今回の話は直接活用することは難しいかもしれない。

だが、これらを学び続けることで、ビジネスの大きな力になるはずである。


『「闘争」としてのサービス』

Image_fx (5).jpg私たちは「お客様に気を配り、徹底的に尽くすのがサービスだ」と思っている。

だが、高級サービスほど「細やかに気配りし徹底的に尽くす」とは真逆の世界がある。

データを説明するためには理論が必要であるが、その理論を自明なものとして受け入れるのではなく、その理論がどのように生み出され、正当化されるのかを検討しなければならない。

山内裕著『「闘争」としてのサービス』

高級サービスはなぜ「不親切」に見えるのか

Image_fx (1).jpg……鮨を食べる前から、オレは……試されているッ!

顧客を満足させるためには顧客を満足させようとしてはいけない。顧客は緊張感があるほうが、サービスを高く評価する。サービスは高級になるほど、笑顔、親しみやすさ、情報,迅速さなどの所謂「サービス」が減少する。

山内裕著『「闘争」としてのサービス』

0.png⇒ あえて緊張を与えることで体験価値を高めている。


一流の鮨屋やフレンチレストランでは、店側が顧客に寄り添うよりも、むしろ顧客に緊張を強いる空間を意図的につくり出している。

高級フレンチはしきたりが多い。

予約は必須。最低限、ジャケット&革靴着用といった服装のマナー。

Tシャツで来店、音を立てて食べる、ワインの一気飲み、落としたフォークを自分で拾うといった行為がすべてNGだったりする。
(もちろん、店によってルールは違ったりする。)

鮨屋の親父は、頑固で無愛想に「自分のために仕事をしてる。お客なんて関係ねぇ」という姿勢を貫くからこそ、客はその価値を逆にありがたがるという。

何度も通いつめて、ついには鮨屋の親父に「おう、よく来たな!」と言われると、不思議と嬉しくなってしまう。

注文の仕方が難しかったり、無愛想だったりするのは、顧客を試すための仕掛けとなる。

最初から親切だと、それが「当たり前のサービス」になってしまう。


0000.png高級鮨屋:すきやばし次郎
(2007年より12年連続ミシュラン三つ星獲得)

​すきやばし次郎公式サイト:鮨をおいしく食べる

ドレスコードは特別に設けていないが、ほとんどのお客はジャケットを着用して来店する。

すきやばし次郎では、「おまかせコース」のにぎりのみ。

お酒のおつまみの用意はない。

にぎりが目の前にある黒板(くろいた)の上に置かれたら、なるべく早く召し上がる。


ゲストに合わせない、媚びない、必要以上におもねらない。

ゲスト側にも相当の味覚の鋭さと経験と見識を強く求められる


この緊張と特別感があるからこそ、客は一皿ごとに集中し、体験そのものを「特別なもの」として受け止める。

過剰に親切で心地よいだけのサービスは記憶に残らず、むしろ厳格で挑戦的な場が深い満足を生む。

「品質が高い」「応対がいい」は、高級サービスにおいて表面的なものに過ぎない。

もちろん、”実力があってこそ”である…。


0000000.png222.pngスコット・ベドベリ著『なぜみんなスターバックスに行きたがるのか?』

スタバもドリンクのサイズはS・M・Lでなく、ショート、トール、グランデといった、馴染みがない呼び方でわかりにくくしている。

これもまた、記憶に残る行為である。

「人間は、生きてきたあいだの経験や行動で定義される。ブランドも、しかり。」

スコット・ベドベリ著『なぜみんなスターバックスに行きたがるのか?』


「顧客満足」が逆効果になる理由

Image_fx (6).jpgこの店はつまらない!もっとややこしくしなさい!

日本人の心のこもった「おもてなし」が客に安らぎを与えるとか、サービスとは客を満足させることであるというようなことが頻繁に聞かれる。

山内裕著『「闘争」としてのサービス』

0.png⇒ サービスの上下関係を生み、価値を下げてしまう。


サービス業界では「顧客満足度」が絶対指標のように扱われてきた。

しかし顧客に徹底的に尽くすと、顧客は提供者よりも上の立場に立ち、サービスの当たり前にある価値を安く見積もるようになる。

逆に、顧客に努力や緊張を強いることで、サービスは「勝ち取る価値」として感じられる。

顧客は挑戦に応じて振る舞うことで自己成長を実感し、その経験が記憶に深く刻まれる。

これは心理学的に「努力の正当化」と呼ばれる現象に通じる。
(多大な努力を費やした結果に対して、もしその成果が期待ほどでなかったとしても、その努力を無駄にしたくないという心理から、対象物の価値を高く評価してしまう心理現象のこと。)

また、リピーターとなれば、客側が”わかっている”ので無駄なやり取りや手間もなくなるので店側もラクになる。

単価の高い店舗経営は、サービス提供者と顧客による価値共創が鍵になるかも?

0000000.png363.pngマシュー・ディクソンほか 著『おもてなし幻想』

✅ 感動より「手間のなさ」が重要。

✅ 顧客努力を減らすことでリピートが増える。

✅ 良いサービスは「おせっかい」と「おもてなし」の線引きがはっきりしている。

知りたいのは、顧客を喜ばせるべきかどうかではなく、どうやって喜ばせるかだ。

マシュー・ディクソンほか 著『おもてなし幻想』


歴史が示す「緊張の価値」

IMG_6977.jpeg出典:漫画『へうげもの』


サービスの本質は、提供者と顧客が互いにメッセージを投げ合い、それを読み解く相互作用にある。

鮨職人が黙って差し出す一貫に込められた意図を客がどう受け取るか、その反応を見て職人が次の一貫をどう握るか。

そこには言葉を超えた「闘争」が存在する。

この緊張感があるからこそ、サービスは単なる取引以上の体験へと昇華する。

0.png⇒ 茶道や高級料理は闘争の文化を持つ。

⇒ 提供者と顧客の相互作用が価値を生む。


千利休の茶道は、亭主と客が互いに緊張を共有する「場づくり」の典型である。

IMG_7049.jpegIMG_7050.jpeg出典:漫画『へうげもの』


茶室は意図的に狭く暗く設計され、客は身を正して亭主の所作や茶道具、空間の趣(おもむき)に向き合わざるを得なかった。

まさに茶会は一回限りの「真剣勝負」として成立した。

現代の高級サービスもまた、この文化的背景を継承している。


「高い金を払えば、高級サービスが受けられる」というものではない。

そう考える客はお金をもっていても、店に値踏みされるだけで終わる。

だが決して、店側も自分勝手なサービスではなく、真剣にお客のことを思って準備する。


つくられた小さな世界にお客自ら歩み寄り、他では得られない体験や気づきに興奮する。

テーマパーク、舞台、映画館、美術館、リアル脱出ゲーム、謎解き、TRPGやボードゲームといった娯楽も”没入すること”でより面白さを強める。

あらゆる物事に意味や価値を見出し、考察し、良い体験や思い出にしていく。

遊ぶ時間のない人生なんてばかばかしい。働くに働けなくなっちゃう。

本田宗一郎 著『俺の考え』

日本に根付く「闘争としてのサービス」は、歴史的にも裏付けられているのである。


今までになかった価値を創造し、他者に衝撃を与える活動。

それこそが「数寄(すき)」であり、「粋(いき)」であり、「文化」である。


0000000.png323.png森岡 毅・今西 聖貴著「確率思考の戦略論」

強い商品、サービス、ブランドは、明確なポジショニングではなく「思い出される頻度」で決まる。

脳内の“ガチャ”で選ばれる確率=シェア。

戦略は、この無意識の選好をどう高めるかに尽きる。

私の中での戦略づくりは「つくる」というよりむしろ「さがす」という感覚です。 戦略は必ずそこにあるものだからです。

森岡 毅・今西 聖貴著「確率思考の戦略論」


まとめ

note_見出し用.png✅ サービスは「闘争」であり緊張が価値を生む。

✅ 顧客満足を追求するほど逆に満足度は下がる。

✅ 対等な緊張感が顧客と提供者を共に成長させる。

本書は読者に闘いを強いるものにもなっている。
それは内容が難しいから読むのに労力を要するということではなく、あるいはサービスに関する読者の考えを批判するからではなく、読者自身が言説を閉じてしまうのではなく、闘いと向き合って闘い続けることによって考え続けないといけないことを主張しているからである。

山内裕著『「闘争」としてのサービス』


⇒ サービスとは顧客と提供者が対等に競い合う「闘争」である。


サービスでは奉仕する側と奉仕される側が、互いに階段を登るということ。

そこに楽しさがある。

知らないことを知っていくというかけあいが楽しい体験となる。


知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。

是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!

見ていただきありがとうございました!😆

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