• 投稿日:2026/01/02
アバンダンス(Abundance):「豊かな時代」を呼びさませ:なぜ善意の政治は、国を貧しくしたのか

アバンダンス(Abundance):「豊かな時代」を呼びさませ:なぜ善意の政治は、国を貧しくしたのか

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シロマサル@ノウハウ図書館×本の要約🍀

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要約
『Abundance』は住宅高騰、インフラ不足、技術停滞といった現代社会の問題を「選択された不足」という視点から解き明かす。善意で積み重ねられた規制や手続きが、結果として「何も作れない社会」を生んだと著者は指摘する。不足を前提に分配する政治から供給を増やし豊かさを構築する政治へ。

初めまして!シロマサルです。

知ることで、人生はもっと楽しくなる!


なぜ家は足りないのに建たないのか。

なぜ技術はあるのに社会実装が遅れるのか。

なぜ善意の政策ほど、現実を悪化させるのか。


今回はエズラ・クライン/デレク・トンプソン著『Abundance』2025年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。

著者:エズラ・クライン

A19u32Wg07L._SX300_CR0,0,300,300_.jpg出典:Amazonプロフィール

受賞歴のある解説型ニュースメディア「Vox」の編集長(エディター・アット・ラージ)であり、共同創設者である。2014年に立ち上げられたVoxは、各プラットフォームを通じて毎月5,000万人以上にリーチしている。

クラインはポッドキャスト「The Ezra Klein Show」のホストであり、「The Weeds」の共同ホスト、さらにVox制作のNetflix番組『Explained』ではエグゼクティブ・プロデューサーも務めている。以前は『ワシントン・ポスト』のコラムニスト兼編集者、MSNBCの政策アナリスト、ブルームバーグの寄稿者として活動していた。『ニューヨーカー』や『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』にも寄稿し、「Face the Nation」「The Daily Show」「PBS NewsHour」など数多くの番組に出演している。


著者:デレク・トンプソン

61KCojBtVSL._SX300_CR0,0,300,300_.jpg出典:Amazonプロフィール

『アトランティック』誌のシニア・エディターであり、NPRの番組「Here and Now」で週刊ニュースアナリストを務めている。1986年にバージニア州マクリーンで生まれ、2008年にノースウェスタン大学を卒業。専攻はジャーナリズム、政治学、法学の三つだったが、後者二つについてはあまり活かしていない。

2015年には、仕事とテクノロジーの未来を扱った表紙記事「A World Without Work(仕事のない世界)」を執筆した。ポップカルチャーのヒット作の知られざる歴史と人気の科学をテーマにした初の著書『Hit Makers』は、2017年2月に刊行された。フォーブス誌の「30 Under 30」や、タイム誌の「140 Best Twitter Feeds」にも選ばれている。現在はマンハッタン在住。

00000.png✅ 問題は資源不足ではなく、作れない仕組みにある。

✅ 豊かさは分配ではなく、構築によって生まれる。

✅ 未来は思想ではなく、実行力で決まる。

世界をよりクリーンで、健康で、豊かにする技術を発明し、実装することに失敗してきた。最も重要な問題を解決する能力を、自ら制限してきたのだ。なぜか。 欠乏は選択である 本書が捧げるのは、きわめて単純な考えだ。望む未来を手に入れるには、必要なものをもっと建設し、もっと発明しなければならない。それだけだ。これが本書の主張である。

エズラ・クライン/デレク・トンプソン著『Abundance』


ちなみに邦訳版も最近出ている。

81Sg+dUp5NL.jpg2025年の12月25日に出たばかりである。


今回は、現代社会を覆う「不足」の正体と、そこから抜け出すための思考法を解説する。

アメリカに関する内容がほとんどのため、現実感が無い方もいるかもしれない。

だが、アメリカの流れは同盟国である以上は日本にも流れてきやすい。

遠い話のことが、気がつくと目の前まで来ていることがある。

そして私たちはいつも後悔する。


Abundance(あり余るほどの豊かさ)

Image_fx.png道具は多ければ多いほど良いのか?

経済学の核心には、供給と需要がある。供給とは、どれだけ存在するか。需要とは、人々がそれをどれだけ欲しがるかだ。供給と需要が一致すれば経済は均衡し、乖離すれば混乱する。需要が多すぎて供給が少なければ、欠乏、価格上昇、配給が生じる。供給が多すぎて需要が少なければ、過剰、失業、不況が起きる。現実世界では、供給と需要は結びついている。だが政治の世界では、切り離されてきた。民主党と共和党が分け合ったのだ。

エズラ・クライン/デレク・トンプソン著『Abundance』

00.png「アバンダンス」(abundance)とは何か?

「あり余るほど豊かな状態」を意味する、近年アメリカで政治・経済・社会の未来を語る際の最重要キーワード。

日本の「もったいない」の対極にある概念。

対義語はscarcity(「不足」「欠乏」「希少」などの状態をさす言葉)。


アメリカの民主党と共和党

EL57EHOWPNAIFNHGRER4GKBI34.png共和党(左)と民主党が公式サイトで使用しているシンボルマーク

どちらも「アメリカをよくしたい」と考えているグループ。

国のリーダー(大統領)や国会議員を出して、法律やルールを決める役目をしている。


民主党ってどんなグループ?

困っている人を国が助けることをわりと大事にするグループ。

お金の少ない人や病気の人を、国の仕組み(保険や福祉)で守ろうとしやすい。

地球温暖化などの環境問題や、人種・性別などによる差別をなくすことにも力を入れることが多い。


共和党ってどんなグループ?

「自分のことはできるだけ自分の力でがんばろう」と考えるグループ。

国があまりお金やルールで口を出しすぎず、みんなの自由な仕事や商売にまかせようとしやすい。

伝統的な考え方や家族の形、宗教などを大事にすることが多い。


民主党:国がよく手助けする「大きめの国の力」を好むことが多い。

共和党:国の力は小さめにして、みんなの自由と自分の力を大事にすることが多い。

そして、現トランプ政権は共和党の政権。

ドナルド・トランプ大統領が共和党の代表として2024年に再選され、2025年1月に就任した。

共和党らしい政策として、関税強化や規制緩和を進めている。

2024年選挙でトランプは、ほぼ全米を右に動かして勝利した。しかし民主党が最も恐れるべきシグナルは、青い州や青い都市で右へのシフトが最大だったことだ。つまり、日常的にリベラルな統治に触れている有権者ほど右に動いた。カリフォルニアのほぼ全ての郡がトランプ寄りに動き、ロサンゼルス郡は11ポイント右へ動いた。

エズラ・クライン/デレク・トンプソン著『Abundance』


私たちは「不足」を選び続けてきた

Image_fx (1).pngとにかく足りないパイをどう切り分けるかで人類はもめてきた。

「今、車の価格が高すぎるなら、解決策は二つある」とバイデンは言った。「供給を増やしてもっと作るか、アメリカ人を貧しくして需要を減らすかだ。それが選択だ」。

エズラ・クライン/デレク・トンプソン著『Abundance』

0.png⇒ 不足は偶然ではなく、設計の結果である。


住宅が足りない。
インフラは老朽化し、更新が進まない。
新技術は存在するのに、社会実装が異様に遅い。
これらは不運でも、能力不足でもない。
私たちが長い時間をかけて選び取ってきた結果である。

本書が突きつけるのは、不足は自然現象ではなく「政治的選択」だという事実だ。

環境を守る。
安全を確保する。
住民の声を尊重する。

どれも正しい。
だが、それらをすべて同時に、完全な形で満たそうとした結果、何も作れなくなった。

守るためのルールは、いつの間にか作る力そのものを奪った。

建てる前に止まり、直す前に詰まり、始める前に疲弊する。

こうして社会は、静かに「不足」を常態化させていった。

経済とは、切り分けるパイではなく、大きく育てるパイだ、という決まり文句を聞いたことがあるかもしれない。この比喩がどこから間違っているのか語り始めるのは難しい。なぜなら、ほとんど何も正しくないからだ。もしブルーベリーパイを成長させられるとしたら、手に入るのはブルーベリーパイが増えるだけだ。しかし、経済成長とは「同じものが増える」ことではない。成長する経済と停滞する経済の違いは「変化」にある。

エズラ・クライン/デレク・トンプソン著『Abundance』


日本でいうならば、家が高い。電気代が上がる。
病院も人手不足で、将来が不安だ。

多くの日本人は、これらを「人口減少だから仕方ない」「もう豊かになれない国だから」と受け止めている。

だが本書が示す視点は逆だ。

問題は「足りないこと」ではなく、「作らないこと」を選んできた点にある。

日本には住宅を建てる技術も、発電する技術も、医療を高度化する知識もある。

それでも建たないのは、規制、前例、反対、責任回避によって、供給が止められてきたからだ。

そして、市場に回るお金だけを増やそうとしている。

お金はあくまでサービスや商品を効率的に交換するための媒介でしかない。

市場に流れているお金の数が外貨に比べて増えれば増えるほど、円安となり、お金はお金を増やすために使われるようになるのだ。

お金は物を増やすために投資されなければならない。


分配ではなく「供給」を増やせ

Image_fx (2).pngがんじがらめを乗り越えるには、「物量」なのだ。

民主党と共和党は、合わせて何兆ドルもの資金を投じ、人々がそれらを買えるようにしてきた。しかし供給が詰まった財に補助金を与えるのは、上昇し続けるエレベーターに届こうとして梯子を立てるようなものだ。

エズラ・クライン/デレク・トンプソン著『Abundance』

0.png⇒ 豊かさは配ることでなく、作ることで生まれる。

⇒ お金を配っても、モノが増えなければ値段は下がらない。


環境も福祉も掲げたが、現実に建設できなかった。

住宅不足、インフラ遅延、高騰する生活費。

統治の失敗は信頼を失わせ、ポピュリズムを招いた。

00.pngポピュリズム:「みんなの怒りを代弁して人気を取る政治家」のスタイル

民衆の気持ちや不満に直接訴えて支持を集める政治のやり方。

お金持ちや政治家を「悪いやつ」と批判し、普通の人々の味方になる。

難しい話より、みんなが「そうだ!」と思う単純なスローガンを使う。

トランプ大統領は、共和党だが、ポピュリズムの例としてよく挙げられる。

「アメリカ・ファースト」と民衆に直接訴え、エリートを批判した点から。


不足が深刻になると、政治は分配に走る。
補助金を出す。
給付金を配る。
家賃を補填する。

だが、モノやサービスの総量が増えない限り、価格は下がらない。


需要を助けても、供給が足りなければ奪い合いになる。

結果として、補助金は価格に吸収され、問題は固定化される。

住宅、医療、教育。

これらの分野で起きているのは、需要過多ではなく供給制限だ。

本書は繰り返し強調する。

まず増やせ。
作れる量を増やせ。
供給が増えれば、競争が生まれ、価格は下がり、選択肢が広がる。
豊かさとは、余りが生まれる状態のことだ。


日本では問題が起きるたびに、給付金や補助金が議論される。

家賃補助、電気代補助、子育て支援。
だが生活が劇的に楽になった実感は薄い。

理由は単純。
需要だけを増やして、供給を増やしていないからである。

家が足りないまま家賃補助を出せば、家賃は上がる。

電力が不足したまま補助を出せば、税金で穴埋めするだけになる。

子育て支援を出しても、供給側が少なくなれば値上げされる。

結果として得をするのは、供給側だけだ。

モノとサービスそのものを増やさなければ、生活は軽くならない。


「詰め込み」をやめ、政府を加速装置にせよ

Image_fx (3).png国の運営はいつだって「緊急事態」なのだ。

政治では、公正な現在を想像し、そこに至る社会保障を逆算するのが常だ。同様に、公正で、さらには楽しい未来を想像し、その到来を早める技術的進歩を逆算することも重要だ。

エズラ・クライン/デレク・トンプソン著『Abundance』

0.png⇒ 国家能力とは、速く作り、終わらせる力である。


一つの政策に、あらゆる善意を詰め込む。

多様性。
環境配慮。
労働条件。
地域合意。
理想としては正しい。

だが現実では、条件が増えるほどコストは膨らみ、スピードは失われる。

結果、計画は遅れ、現場は疲弊し、完成前に頓挫する。
重要なのは、手続きの完璧さではない。
成果が出るかどうかだ。

非常時には、迅速に行われる。

災害対応や緊急開発では、手続きは簡略化され、決定は速く、実行は大胆になる。

そして結果を出す。

本書は問う。
なぜそれを平時にできないのか。

政府はブレーキである必要はない。

本来は、社会を前に進める加速装置になれる。

決める。
作る。
終わらせる。

この循環を回せるかどうかが、国家能力の正体である。

必要なものを、十分に、速く作る。

クリーンエネルギー、住宅、医療、科学。

技術と政治を結び直し、供給を解放する。

豊かさは分ける前に、生み出さねばならない。

あまりにも単純すぎるように、私たち自身にも読める。しかし、21世紀のアメリカの物語とは、選び取られた欠乏の物語である。これらの欠乏が選択の結果であり、別の選択もできたのだと認識することは、胸が躍る。一方で、なぜ私たちが別の選択をしてきたのかを直視することは、苛立たしい。

エズラ・クライン/デレク・トンプソン著『Abundance』


特に、日本の政治は長く「どう分けるか」に集中してきた。

高齢者か若者か。
現役世代か非現役か。

だが分配の前提となる土台が痩せ細っている。

豊かさとは、奪い合いではない。
未来を前倒しで実現することだ。

日本が再び前に進むには、もう一度「建てる」「作る」「増やす」という選択をするしかない。


0000000.png387.pngローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル共著『ピーターの法則』

ピーターの法則は、階層社会において、誰もが最終的に“能力の限界”に達する構造を説明している。

経済危機や政治危機にもいろいろありますが、1つだけはっきりしていることがあります。 それは、さまざまな学識経験者がてんでばらばらな解決策を提言するということです。

ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル共著『ピーターの法則』

この理由は3つ考えられ、

❶専門家は既に無能レベルに達していて、その指摘が見当違いである。

❷筋は通っているが、実行に移す能力を持っていない。

❸政治や経済をつかさどる組織が、無能に満ちた階層社会の数珠つなぎ状態であるため、どのような提言も実行されるに至らない。

とのことである(笑)。


386.png田内学著『お金のむこうに人がいる』

お金はお金のためにあるのではなく、「人」のためにある。

本来、「価格の高さは、『どれだけ働きたくないか』を表している。」

個人、家庭、会社、組織、どのような経済、社会問題も結局は「人」に行きつく。

モノを手に入れる力を持つお金、価値のモノサシとしてのお金を過信してはいけない。 お金への過信が消えると、人と人との関係が見えてくる。

田内学著『お金のむこうに人がいる』

真の豊かさとは「支え合いの循環」があること。

政府の負債(借金)は、国民や企業、銀行の預金等の金融資産の裏返しだ。

誰かが「貯金」を増やすと、経済全体で見れば「どこかが借金」を増やさなければならない。

よくよく考えれば変な話である。

少子高齢化や景気低迷といわれながら、日経平均は5万円を超えているのか?


445.pngエミール・デュルケーム著『社会分業論』

コンパス(自立心)を持っていても、地図(規範)がなければ、混乱する。

近代人はバラバラになったかのように見えるけれども、実は何らかの絆で結ばれているはずだし、そうでなければ諸個人から構成される社会も、当の個人自身も崩壊してしまうに違いない――。そうした観点から、近代社会にあって人びとをつなぎ合わせるものとして彼が注目したのが、「分業」なのです。

エミール・デュルケーム著『社会分業論』100分de名著版

真に信頼できる人間とは、リスクを共有する人間である。


まとめ

note_見出し用 (1).png✅ 問題は資源不足ではなく、作れない仕組みにある。

✅ 豊かさは分配ではなく、構築によって生まれる。

✅ 未来は思想ではなく、実行力で決まる。

長年にわたり、私たちはホームレス、貧困、未治療の病、平均寿命の低下を受け入れてきた。欠乏を和らげ、望まれる機会を生み出すために何を建設すべきかは分かっていたのに、建てなかった。世界をよりクリーンで、健康で、豊かにする技術を発明し、実装することに失敗してきた。最も重要な問題を解決する能力を、自ら制限してきたのだ。なぜか。

エズラ・クライン/デレク・トンプソン著『Abundance』


⇒ 豊かさとは分け合うものではなく、作り続けるものである。


知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。

是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!

見ていただきありがとうございました!😆

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