• 投稿日:2025/12/09
『証券分析』:1万円以上するバリュー投資の本

『証券分析』:1万円以上するバリュー投資の本

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シロマサル@ノウハウ図書館×本の要約🍀

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要約
『証券分析』はベンジャミン・グレアムが投資の本質を解き明かした古典である。安全域の概念を通じ、投資は感情ではなく知的フレームワークに基づくべきだと説く。株式を債券のように評価し、定量的な根拠を重視する姿勢は、変動の激しい市場で投資家を守る盾となる。

初めまして!シロマサルです。

知ることで、人生はもっと楽しくなる!

今回はベンジャミン・グレアム著『証券分析』2002年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。

著者:ベンジャミン・グレアム

ベンジャミン_グレアム.jpeg出典:Wikipedia

「現代の証券分析の父」と言われ、ウォール街で新時代を画した人物である。「バリュー投資スクール」の創始者として、グレアムはウォーレン・バフェット、マリオ・ガベリ、ジョン・ネフ、マイケル・プライス、ジョン・ボーグルといったその後の多くの伝説的な投資家たちに大きな影響を与え続けてきた。ニューヨーク市で育ち、コロンビア大学を卒業した。

彼は、「投資はギャンブルではない」ということを世の中に広めた1人である。

00000.png✅ 投資は知的フレームワークに基づく技術である。

✅ 安全域を確保し、損失を避ける姿勢が重要だ。

✅ 市場の気まぐれに振り回されず、企業価値を見極めよ。

配当株式によって株価をつり上げるというそうした手口は投資家の目を欺くものである。こうした株式配当の弊害をよく理解するためにも企業の会計操作には厳しい目を向ける必要がある。

ベンジャミン・グレアム著『証券分析』

投資は才能や直感に頼るものではなく、冷静な分析と規律に支えられた「技術」である。

本記事では、『証券分析』の要点を抜粋し、グレアムが提唱した安全域や市場との距離の取り方を解説する。

投資の基礎を確実に固めたい人に。

この書籍はなんとページ数が955頁もある。

1万円以上する本とは何か?という1つの答えかもしれない。

「家具つきの家を家具の値段で買う」ことを目的に、企業の財務諸表を徹底的に分析して、実態価値よりも割安な株式への投資を唱えたこの「証券分析」のパイオニアは、「量」で計れないものは一切信用しない数学好きなアナリストでもある。

浦上邦雄著『相場サイクルの見分け方』


『証券分析』

Image_fx (1).jpg本を読んでいるだけなら、少なくとも損はしない。

「うまい投機はへたな投資より明らかに優れている」という論理に従って、投資家の目が投機のほうに向くのは当然であろう。しかしそうはいっても、やはり投機というのは成功するのが極めて難しいという現実に変わりはない。

ベンジャミン・グレアム著『証券分析』

多くの投資家が失敗する理由は「売られている」銘柄を買っているからだという。

買い手にとって有利ではない銘柄とは、財務内容が悪かったり、会社規模に対して発行株数が過大な場合であるという。

株価の安い銘柄にはそれなりの理由があり、本当の価値(本質価値)と比較したうえで買わなければならない。


『証券分析』が生まれた時代背景

証券分析の目的は、極めて実際的な問題についてその解決策を提示し、またそれを支援することにある。そのなかで最も一般的な問題は次のようなものであろう。すなわち、①特定の目的を満たすにはどの証券に投資すべきか、②当該証券を購入すべきか、それとも売却すべきか――なのである。

ベンジャミン・グレアム著『証券分析』

0.png⇒ 1929年の株価大暴落後の混乱が理論を鍛えた。


この本の本質は出版された時期にある。

1929年の世界恐慌は、アメリカでの株価大暴落をきっかけに、世界中へ広がった未曾有の経済危機だった。

投資家が一斉に株を売り、市場が大混乱し、銀行や企業が次々に破綻。

アメリカ国内の失業率は最大23%から一部では33%にもなった。

1930年代、もう企業の財務諸表は当てにならないという空気が流れていた。

投資と言えば債券、株式は投機と見なされるような時代だったことは興味深い。

大恐慌後の市場は投機色が強く、投資家を守る理論が必要だった。

①選択する証券
②購入価格
③投資時期
④投資家

この4つの視点が主要因になると考えて「損をしない投資」の指針を与えるために書かれた。

そのメッセージは90年近く経過した現在でも全く輝きを失っておらず、普遍的な知恵と価値を持っている。


0000000.png421.pngリチャード・スミッテン著『世紀の相場師ジェシー・リバモア』

ジェシー・リバモアは1929年の世界大恐慌において、リバモアは暴落を予測し、一人勝ちをおさめた「伝説の相場師」。

リバモアの投資哲学は、単なるテクニックや相場観ではなく、投資家の「心構え」に重点を置いている。

推奨はできないかもしれないが、そこら辺の情報商材よりは有益である。

金を失ってはならない。特に株取引の資金はトレーダーの命綱であることを肝に銘じること。 現金を持たない相場師は、在庫を持たない小売業と同じで、相場師としての命脈は保てない。

リチャード・スミッテン著『世紀の相場師ジェシー・リバモア』


株式を債券のように評価する

Image_fx (5).jpg水深を測る際、いきなり飛び込む必要はない。まずはモノサシで。

「投資とは成功した投機である」

ベンジャミン・グレアム著『証券分析』

私たちが考えている10年、20年の長期投資であっても「投機」であると語る。


証券の選択の4つの原則

❶証券の安全性は発行会社の財務能力で決まる
(証券自体の担保内容によらない)

❷債券は不況期に購入する
(収益の安定性は不況期にこそ明らかになる)

❸利回りのために元本の安全性を犠牲にしてはならない

❹厳しい安全基準を適用する
(消去法の原則に従うとともに定款記載条項には厳しい基準を適用する)


以上の4点を守ることが、安全かつ継続的に行える「投資」である。

それ以外はすべて「投機」である。

本当に長期投資というなら、iDeCoのように引き出せない状態でなければ「投機」という心構えは正しいかもしれない。

バリュー投資を生みだした人物の考えがうかがえる。

0.png⇒ 本質価値と価格の差を確保せよ。

⇒ 収益と資産に基づき合理的に判断せよ。


投資の重要なポイントとして、「元本の安全性と満足できる利回り」を挙げている

グレアムの提唱した「知的フレームワーク」の核心は、株式を債券として捉えるという点にある。

企業が生み出すキャッシュフローを、債券の利払い(クーポン)に例えて評価せよと提唱した。

債券の価値がその信用力と将来の利回りによって決まるように、株式の価値もまた、企業が将来生み出すであろうキャッシュフローの「確実性」と「メカニズム」を分析することによって評価されるべきと語る。

0000.png

債券利回りが 3%:株式利回りも 3%

この場合はリスクの低い債権が選ばれる。

普通、株式はリスクがあるため、債券より高い利回りがなければ投資価値がないと判断される。(買う動機付けが弱いため)

実際の株式の利回りには、配当金だけでなく株価の値上がりも含むため大抵はこんな感じ。

債券利回りが 3%:株式利回りは 7%

雑にいうなら、3%の固定給と3%以下~7%の歩合制のリターンを考えることになる。
(もちろん地球が滅ぶ確率はゼロではないのでどちらもマイナスになる可能性もある。現金もね。)

つまり、安全域は「元本安全性(投資の失敗をカバーする余裕)」を具現化したものである。


企業のキャッシュフローを債券の利息に例え、将来の確実性を分析する。

本質的価値を測る習慣が長期的な成功を導く。

そもそも、株式にはリスクがあるのだから、より大きな安全域を確保することが望まれる。

それこそが「過小評価されている」証券を探すことであり、

バリュー投資は価値に対して割安に買うことが投資の出発点である。

株式投資の根底には未来で大きなリターンが得られると期待していることがよくわかる。


知的フレームワークと心理の制御

Image_fx (6).jpg会社の業績アップと増配を喜ばない投資家はいない。

①初心者向けの原則――「二流企業の証券に絶対におカネを投じてはならない。」②プロの原則――「すべての証券はある値段では安いかもしれないが、別の値段になれば高くもなる」

ベンジャミン・グレアム著『証券分析』

「未熟な投資家」であれば、比較的高い値段を払っても超一流企業の商品を購入したほうが良いのは株券でも同じであると語る。

つまり、投資、投機でどうこうするのに時間をかけられないのなら、絶対に複雑な投資手法をメインにしてはいけない。

儲けようとしているのか、貯金とは別の資産保有の為なのかでも、株券を買う理由は変わってくる。

0.png⇒ 感情ではなく規律を優先せよ。

⇒ 市場の感情を利用し、支配されるな。


市場の楽観や恐怖に流されず、冷静に判断する。

理性と感情のバランスを保つことが賢明な投資家の条件である。

という単語だけだと何とも言えないので、「知的フレームワーク」を、誰でも利用可能な具体的な「定量的基準」へと落とし込むために、株式の適正価値を算出するための簡易的なモデルを下に示す。


株式の価値(妥当な時価総額)=純利益×(8.5+成長率%×2)

妥当PER倍=8.5+成長率%×2

成長率は、営業利益のCAGR(年平均成長率:Compound Annual Growth Rateを用いて計算されることが多い。


営業利益とは、企業が本業(主たる営業活動)で得た利益のこと。

営業利益=売上高−(売上原価+販管費)である。

CAGR(年平均成長率)は、複数年にわたる売上や投資価値の平均的な年間成長率を示す指標のこと。

スクリーンショット 2025-09-17 165503.pngなぜ成長率は、営業利益のCAGR(年平均成長率)かというと、営業利益は企業の「本業」でどれだけ効率よく利益を上げているかを示す。

つまり、企業の実力や競争力の評価に直結している。

本業はダメダメなのに、仮想通貨で資産だけはものすごいことになっていれば、儲けている会社に見える。

でもそれは…健全で持続可能かと言われるとどうだろうという話だ。


話を戻すと、CAGR(年平均成長率)の計算例として、初期値が1,000万円、5年後の最終値が2,000万円であれば、「5年間、毎年約15%成長した」ことを意味する。

スクリーンショット 2025-09-17 175208.png当然、各年の成長率にばらつきがあってもCAGRは均された平均成長率として算出される。

成長率0%なら、妥当PERは8.5成長率5%は、妥当PERは18.5成長率10%は、妥当PERは28.5成長率15%は、妥当PERは38.5

ただし、このモデルはあくまで「妥当な」価値を算出するものにすぎないので、参考程度に。

0000.png今はAI(パープレキシティ)を株の検討に使える良い時代になった。

皆に大人気な「花王(TYO: 4452)」で調べてみよう。

スクリーンショット 2025-09-17 170352.png直近5年の全社売上高は増加傾向で、成長率は4.3%という一桁台の安定成長である。

先ほどの式に当てはめると、

妥当PER倍=8.5+4.3%×2 = 17.1倍 となる。

IMG_7062.jpeg2025年9月時点での花王(4452)のPER(株価収益率)は、概ね25.6倍~26.8倍の範囲で推移している。

う~ん。今は割高やな!とわかる。


必ずしも、PERが13倍以下じゃないと「割安」とは言い切れない。

業界によっても目安は多少異なる。

スクリーンショット 2025-09-17 171823.png業界で見ても、花王は現在割高と言える。

大暴落のときにでも買おうかな!と判断材料になるわけだ。

大型株や人気株の参考にはなるだろう。他にも…。

①確実に継続して支払われる配当の利回り
②安定した収益の実績
③十分な有形資産による裏付け

最終的な判断は本人の責任だが、分厚い本を持つこともなく簡単に「割安」かどうかを検討できる時代になったことは間違いない。


0000000.png407.pngベンジャミン・グレアム著『賢明なる投資家』

感情に流されず、「欲と恐怖を規律でコントロール」できる者が「賢明な投資家」である。

そして、自身の知恵と道具を適切に使いこなすことも「賢明な投資家」である。

金融界は面白い可能性に満ちあふれており、賢明かつ積極的な投資家たちは、その目まぐるしさのなかで楽しみと利益の両方を得られるはずだ。 エキサイティングなことだけは、長年、投資に携わってきた私が100%保証する。

ベンジャミン・グレアム著『賢明なる投資家』

1950年代から70年代にかけ、株式投資を少し専門的に勉強してみようと考えた人々は、必ずといってよいほどベンジャミン・グレアムの著書「賢明な投資家」に目を通したものだ。

浦上邦雄著『相場サイクルの見分け方』


まとめ

note_見出し用 (1).png✅ 投資は知的フレームワークに基づく技術である。

✅ 安全域を確保し、損失を避ける姿勢が重要だ。

✅ 市場の気まぐれに振り回されず、企業価値を見極めよ。

①普通株の価値を決めるときに配当率はそれほど重要ではない。
②その企業の資産と収益力には明確な相関関係がないとすれば、資産価値はまったく意味がない。
③過去の収益は、それが将来の収益にどのような変化をもたらすのかといった程度の重要性しか持たない。

ベンジャミン・グレアム著『証券分析』


⇒ 「損を避け、安全域を確保する」


現代の投資環境は、AIや高速取引の普及により、市場のボラティリティがさらに高まっている。

しかし、このような短期的なノイズに満ちた時代だからこそ、市場の喧騒に惑わされず、企業の本質的価値を見極めるグレアムの哲学は、より一層その重要性を増しているだろう。


知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。

是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!

見ていただきありがとうございました!😆

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