- 投稿日:2026/02/11
- 更新日:2026/02/11
はじめに|地域包括に届く詐欺被害の相談
地域包括支援センターには、介護や生活の相談だけでなく、高齢者の詐欺被害に関する相談 も数多く寄せられています。
ニュースで見るような話ではなく、「実際に地域で起きていること」として、本人や家族から切実な相談が届くのが現状です。
中には、「まさか自分が」「少額だから大丈夫だと思った」そんな言葉とともに相談につながるケースも少なくありません。この記事では、地域包括支援センターに実際に寄せられた相談内容をもとに、どのような詐欺が起きているのかなぜ被害につながってしまうのかを整理してお伝えします。
地域包括に実際に寄せられた詐欺被害の相談
ここからは、地域包括支援センターに実際に寄せられた、高齢者の詐欺被害に関する相談事例を紹介します。
なお、内容は個人が特定されないよう十分に配慮し、相談の背景や流れが伝わる範囲で整理しています。「どこで」「どのように」被害につながったのかを知ることで、同じような被害を防ぐヒントとしていただければと思います。
① 独居高齢者に金銭を要求
80代女性。マンションで一人暮らしをしている方です。ある日、自宅に若い男性が訪問(マンションの管理会社の職員と名乗る)し、「決められたことなので」などと説明しながら、金銭を要求されました。
本人はその場で手持ちの現金がなかったため、近くの郵便局に出向き、5万円を引き出して送金したとのことです。その後、郵便局職員が状況を不審に感じ、警察へ通報しました。
この方には認知機能の低下がみられ、話の内容が前後で変わる場面もあり、当時の詳しいやり取りや経緯については、はっきりしない部分も残っています。
本人にとっては「よく分からないが、断ってはいけないことのように感じた」状況であり、強い不安の中で対応してしまった可能性が考えられます。
✅ この事例から見えてくる注意点
この相談から分かるのは、詐欺被害が「巧妙な話術」だけで起きているわけではない、という点です。本人は、「よく分からないけれど、断ってはいけないことのように感じた」「決められたことだと言われ、不安になった」
そうした気持ちの中で対応してしまった可能性があります。
特に、
・ 一人で生活している
・ 突然の訪問に対応せざるを得なかった
・ 相談できる相手がその場にいなかった
といった状況が重なると、冷静な判断が難しくなりやすくなります。
✅ なぜ被害に気づきにくかったのか?
このケースでは、本人に認知機能の低下がみられていました。
そのため、出来事の順序や相手とのやり取りを、後から正確に説明することが難しい状況でした。
認知機能の低下がある場合、
・ 相手の話をそのまま信じてしまう
・ 「おかしい」と感じても言葉にできない
・ 不安をうまく周囲に伝えられない
といったことが起こりやすくなります。
本人の中では「何かおかしい」という感覚があっても、それが相談につながる前に、金銭のやり取りが行われてしまうケースも少なくありません。
✅ 周囲が早めに気づくためのサイン
詐欺被害を完全に防ぐことは簡単ではありません。
しかし、周囲が少しの変化に気づくことで、被害の拡大を防げる可能性があります。
例えば、
・ 急に現金を引き出すことが増えた
・ 理由をうまく説明できない送金があった
・ 知らない人が来た話を繰り返す、内容が変わる
・ 「決まりだから」「言われたから」といった言葉が増えた
こうした変化は、「年齢のせい」「気のせい」で済ませてしまいがちですが、実は重要なサインであることもあります。
✅ 迷ったときは、早めの相談を
「詐欺かもしれない」「でも、はっきりしない」そう感じた段階で、相談につなげることがとても大切です。
地域包括支援センターでは、
・ 被害に遭ったかどうかが分からない段階
・ 本人がうまく説明できない場合
でも、相談を受け付けています。
結果的に「詐欺ではなかった」と分かることもありますが、相談すること自体が、被害を防ぐ一つの手段になります。
② 公的機関を名乗り、個人情報を聞き取る詐欺の相談
高齢者本人の携帯電話に、「厚生労働省の職員」を名乗る人物から電話がありました。相手は、「本人の医療保険者証を利用した可能性がある事件が発生している」と伝え、事件番号、請求内容、病名、請求金額、医師名、入院期間、医療機関名などを一方的に説明しました。そのうえで、「今伝えた内容をすべて書き留め、指定された警察署に連絡するように」と指示を受けました。
本人が指示通り警察署を名乗る番号に連絡すると、対応した人物から
「これは特例秘密保護法に抵触する内容のため、誰にも話してはいけない」
と強く念を押され、以降も連絡時間を指定されながら、複数回のやり取りが続きました。
その後、電話やLINEでのやり取りの中で、特定の名義の銀行通帳の写真や、
「検察庁の手配情報」とされる画像(複数の顔写真やプロフィールが掲載されたもの)が送られてきました。
本人はそれらを信用してしまい、ビデオ通話の中で、自身の運転免許証を相手に見せてしまったとのことです。
その後、地域包括支援センターへ相談が入り、改めて警察へ確認したところ、一連のやり取りは詐欺であることが判明しました。
警察の助言を受け、
・ 相手とは一切連絡を取らない
・ 自宅に自動通話録音機を設置
・ 自宅および携帯電話の国際電話発着信を停止
といった対応を行い、再発防止の対策を講じました。
✅ なぜ信じてしまったのか?
このケースでは、相手が最初から「厚生労働省」「警察」「検察」といった、公的機関を連想させる言葉を使っていました。
さらに、事件番号や医療内容、金額など、具体的で専門的な情報を一方的に伝えられることで、「本当に何かが起きているのではないか」と感じてしまいやすい状況が作られていました。
高齢者に限らず、突然こうした話を聞かされると、冷静に判断することは難しくなります。「自分が何かしてしまったのではないか」「周囲に迷惑をかけてしまうのではないか」という不安が強まることで、相手の話を信じてしまうことがあります。
✅ 公的機関を名乗る詐欺の特徴
地域包括支援センターに寄せられる相談を見ていると、
公的機関を名乗る詐欺には、いくつか共通した特徴があります。
・ 突然、電話やメッセージで連絡が来る
・ 専門用語や制度名を多用する
・ 「事件」「違反」「調査」など不安をあおる言葉を使う
・ 対応を急がせる
・ 他人に相談しないよう強く求める
実際の公的機関が、電話やLINEで個人情報を細かく聞き取ったり、
身分証をビデオ通話で提示させたりすることは、基本的にありません。
✅ 「誰にも言わないで」は、危険なサイン
詐欺の相談で、特に多く見られるのが「誰にも言わないでください」「家族には伝えないように」といった言葉です。
これは、周囲に相談されることで詐欺が発覚するのを防ぐための手口です。
本来、正規の手続きであれば、家族や第三者に相談しても問題になることはありません。
もし、「誰にも言わないように」と言われた時点で、一度立ち止まり、誰かに相談することが大切です。
✅ 早めに相談につながったことの意味
このケースでは、本人が地域包括支援センターに相談したことで、詐欺であることが判明し、被害の拡大を防ぐことができました。
結果的に、金銭被害が発生する前に対応できたこと、再発防止の対策を取ることができたことは、とても大きな意味があります。
地域包括支援センターでは、「すでに被害に遭ったかどうか分からない段階」「少し不安を感じている段階」でも、相談を受け付けています。
まとめ|詐欺被害は「特別な人」の問題ではありません
地域包括支援センターに寄せられる詐欺被害の相談は、決して珍しいものではありません。
今回紹介した事例も、
✅ 「自分は大丈夫だと思っていた」
✅ 「まさか詐欺だとは思わなかった」
✅ そうした思いの中で起きています。
詐欺被害は、注意が足りなかったから起きるものでも、判断力が弱かったから起きるものでもありません。
一人で判断しなければならない状況や、不安をあおられる言葉が重なることで、誰にでも起こり得るものです。
だからこそ大切なのは、早めに相談できる環境があること「少し変だな」と感じた時点で立ち止まれること です。
地域包括支援センターは、被害が確定していなくても、「これって大丈夫なのかな?」という段階から相談できる場所です。
一人で抱え込まず、家族や周囲、地域の相談窓口につながることが、
被害を防ぐ大きな力になります。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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