- 投稿日:2025/09/13
- 更新日:2025/10/01

初めまして!シロマサルです。
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今回は山本七平 著『日本資本主義の精神』1995年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
著者:山本七平
出典:日本経営合理化協会
東京出身。戦中は陸軍、戦後は聖書関連書を中心に出版業を営む傍ら、評論家として活躍。日本文化の深層に切り込む視点は「山本学」と称され、多くの知識人に影響を与えた。日本の社会、文化、宗教、経済に対して深い洞察を提供した評論家である。
「なんで日本人ってそんなに働くの?」
ある一面を切り取ればそうではないかもしれない。
日本の年間平均労働時間は1,607時間(2021年OECDデータの場合)
OECD加盟国の中では特別に長いわけではない。
日本の祝日は年間16日~17日程度あり、主要先進国(G7)の中では最も多いとされている。
引用画像:坂本貴志 著『ほんとうの日本経済 -データが示す「これから起こること」-』
近年、日本の労働時間は年々短くなっており、「働きすぎ」とは言い切れないという見方も増えている。
しかし、非正規雇用や時短勤務者の増加で、平均労働時間が下がっている面もあり、正社員や特に管理職など一部の層では依然として長時間労働が常態化しているともいえる。
参考外部サイト
世界の働き方を比較!労働時間や男女差、気になる日本のランキングは?
私自身、「働きすぎ」というイメージは、長時間労働だけでなく、休みづらさや精神的プレッシャー、低い生産性など複合的な要因から来ているように感じる。
今回は、山本七平の名著『日本資本主義の精神』をもとに、「働きすぎの正体」を暴きながら、日本人の経営観や価値観を解き明かしていく。
✅ 日本的経営は修行観と顧客第一で成り立つ
✅ その倫理観は江戸時代の思想に根ざしている
✅ 時代とともに進化が求められている
「名刺を千枚もまきやあ、必ず一軒や二軒はお客がとれるし、まじめにやれば以後は一生の付き合いだから安いものさ。」であったという。戦後の復興を担ったのはこういう人であった。彼らは丸焼け裸一貫になってもべつに驚かなかった。なにしろ一人で何もかもできたからである。
山本七平 著『日本資本主義の精神』
ちなみに、本書の出版は高度成長期の真っ最中。
当時の日本人は「何だかわからないが、成功してしまった」というのが現実だった。
そして現在、「失われた30年」と呼ばれるような、「何だかわからないが、ひどい状況になった」というのが現実である。
過去や現在は未来につながるのだ。
日本資本主義の精神
現代はまことに不思議な時代である。
たとえば、「資本主義」という「言葉」があり、それをレッテルのようにはられると、はられた対象はすべてその言葉に定義された内容をもつものと規定されてしまう。となると、同じ資本主義国であるアメリカと日本はその面では同じということになり、そうなると、アメリカで通用するさまざまな分析や研究成果、またそれに基づく対策等は、すべて日本でも通用することになってしまう。
だが、それらははたして本当に、通用しているのであろうか。
山本七平 著『日本資本主義の精神』
生物が進化や適応によって変化していくなら、国や地域ごとの文化や思想が存在しているはずである。
本書はその日本的経営を理解する上でベストな一冊といえる。
日本人はなぜ「修行」のように働くのか?
江戸初期の禅僧・鈴木正三は、日々の農作業や商売も「修行」だと説いた。
鈴木正三(すずき しょうさん、1579年 – 1655年)は、江戸時代初期の武士出身の曹洞宗の僧侶であり、仮名草子(かなぞうし)の作者。
「世俗的行為は仏行なり」
(あらゆる仕事は修行である)
鈴木正三
天然自然の秩序の中に、人間の内心の秩序があり、この秩序に従えば、本来人間は苦しまないはず。
しかし、内心の秩序が三毒(貪欲、怒りや憎しみ、愚痴)に冒されると人は苦しむ。
そこで修行に励めば、三毒に冒されなくなるぞ。と説いた。
しかし、当時は長い戦国時代が終わった「戦後」であることに目を向けなければならない。
つまり、農民や商人は生き残るために日々の仕事で精一杯なのだ。
そこで、仕事に励めばいい。
心がけ次第で、あなたのその仕事が修行になるのだと発想の転換をしたのだ。
「畑仕事が忙しすぎて、修行が無理なら、その畑仕事こそが修行であり、自分が食べる以上の分を世の中に返しているあなたがた農民は、ろくに修行もしていない僧侶なんかよりもずっと立派だ。」
仏に感謝して日々の畑仕事をすれば、悟りが開けると諭した。
しかし、成果は二の次で、仕事がなくても残業するのは避けなければならない。
修行のように仕事をする日本人は海外から見ると不可解だが、その源流は正三にあると語る。
村山太一 著『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?』
料理人の世界では下積みを経験することは文化である。
職人世界特有の「見て覚え、盗む文化」は「修行」に他ならない。
決して、過去や昔の文化ではない。
顧客第一主義のルーツは石田梅岩にあり
石田梅岩(いしだばいがん)は、江戸時代中期の思想家で、石門心学の創始者。
当時は江戸幕府8代将軍徳川吉宗の時代。
幕府財政の立て直しを目的とした享保の改革は、1716年(享保元年)から1745年(延享2年)。
その主な原因は、 幕府直轄の鉱山の採掘量の減少、長崎貿易における金銀の流出、貨幣経済の浸透に伴う財政支出の増加といわれている。
石田梅岩は、同じ時代に活動していた。(享保の改革と直接的な関係はない。)
当時の商人は金儲け第一主義で力も強く、世の反発が多かった。
そこで梅岩は「誠実な商売は武士の忠義に等しい」とし、顧客第一の姿勢を商人に求めた。
武士たるもの君のために命を惜しまば、士とは言われまじ。
商人もこれを知らば、我道明らかなり。
わが身を養わる売り先を粗末にせずして真実にすれば、十に八つは売り先の心に合う者なり
石田梅岩
「武士が主君への忠義がないのに禄をもらえば武士といえない。商人も、顧客への誠実さがないのにモノを売るのは、商人といえない。顧客への誠実さが第一である」と言った上で、「経費を3割節約し、利益を1割減にする方法を取ろう。常に顧客への奉仕を心がけ、欲を出してはダメだ。」と説いた。
現代の「顧客ロイヤルティ」や日本企業の丁寧な接客は、ここに源流がある。
伊藤雅俊 著『商いの道』
イトーヨーカドー創業者・伊藤雅俊氏の残した、商売人の原則(あたりまえ)は江戸時代の商人から受け継いだものである。
「商いは信用第一」と言います。 この言葉は、多くの商家の家訓にも入っている当たり前のことです。
伊藤雅俊 著『商いの道』
日本人的な資本主義への倫理観はこうして生まれた
日本の企業がオイル·ショックにも、不況にも、意外なほど強く、エネルギー節約の達成にも、驚くべき速度を示した理由は、ここにあるであろう。共同体は、いずれの共同体であれ、「共同体が消減しようがしまいが、自分には関係ない。」という態度を許容しないからである。
山本七平 著『日本資本主義の精神』
⇒ 働くこと=修行という思想が根底にある。
⇒ 経営者の質素さは江戸時代からの文化。
「自分に与えられた仕事を粛々とこなしていくことこそが、人が歩むべき道である」という倫理観。
「必要以上の利益を欲せず、浪費をせず、倹約に励む」という生活態度。
この2つが相まって、日本人的な資本主義的倫理観を形成したと著者(山本)は分析している。
日本的経営の美点と盲点
だが、この許容しないという態度は、プラスにもマイナスにも作用する。
私企業的限界があれば、それは内なる合理化に進まざるをえないが、国鉄のような形になれば、その共同体を維持するための費用を、無限に他に転化するという形になる。
これは、日本のような社会構造の国では、つねに考えねばならない問題であろう。
山本七平 著『日本資本主義の精神』
つまり、国の財政の立て直す際、「支出の削減」ではなく「増税や賃金増加」を進めるのは、他に転化しているといえる。
「働ける人には働いてもらう」「年金や補助金を減らす」といった動きは内なる合理化の一端でもあるが、政治家や支持団体の思想が絡むことで複雑化する。
そして「何だかわからないが、ひどい状況になった」のかもしれない。
⇒ 一心不乱の姿勢は時に「思考停止」を招く。
明治維新や戦後の高度経済成長期は「欧米に追いつき、追い越せ」という時代では、「与えられた仕事を頑張る」だけで結果が出た。
しかし現代は「自分で何をするか」を考える時代。
「与えられた仕事を一生懸命にやるだけ」と考えてきた人たちは、「何をやるべきか」が考えられない。
結果、仕事がないと、不安に陥り、仕事もないのに、会社に夜遅くまで居座って「忙しい~」と言いつつ、残業するという。
過去の成功体験が今の硬直性を生むリスクもあることは私たちは知らないといけない。
学校の生徒は、先生と教科書にひっぱられて勉強する。 自学自習ということばこそあるけれども、独力で知識を得るのではない。 いわばグライダーのようなものだ。 自力では飛び上がることはできない。 グライダーと飛行機は遠くからみると、似ている。
外山滋比古著『思考の整理学』
新原浩朗 著『日本の優秀企業研究』
この本で六つの共通点を紹介する狙いは、優秀企業を研究して引き出された「寓話」それ自体が米国式であれ日本式であれ「カタカナ」の難しい経営理論よりはるかに示唆に富むと考えるからである。
新原浩朗 著『日本の優秀企業研究』
日本型経営を支えるのは日本型経営風土であることを理解しなければならない。
いつの時代も、社会的状況から人々の思想は変化していく。
⇒ 仕事は自らで創り出すもの。
⇒ 商売も倫理と誠実の上に成り立つ。
⇒ 私欲をもたずに、経済的合理性を追求すること。
「正解のない時代」を生き抜くために必要な力は、「完璧な計画」ではなく「試行錯誤に基づいた適応力」である。
過去の良い部分を時代とともに進化させるのだ。
個人ができる範囲で今日よりも明日を良くしていこう!
「今日が人生で一番若い日!」
まとめ
✅ 日本的経営は修行観と顧客第一で成り立つ
✅ その倫理観は江戸時代の思想に根ざしている
✅ 時代とともに進化が求められている
日本の道徳は、現に自分が行っていることの規範を言葉にすることを禁じており、それを口にすれば、たとえそれが事実でも、口にしたということが不道徳行為とみなされる。 従ってそれを絶対口にしてはいけない。
これが日本の道徳である。
山本七平 著『日本資本主義の精神』
⇒ 精神の伝統を問い直すことが未来の戦略になる
変化を拒むのではなく、精神だけを受け継ぎ、戦略を変えることが重要だ。
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆