• 投稿日:2025/07/12
  • 更新日:2025/10/01
デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』:合理的に考える支援の意味

デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』:合理的に考える支援の意味

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シロマサル@本の要約:ほぼ土曜日週1投稿

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要約
遠くの貧困は他人事ではない。 感染症、テロ、気候変動、経済不安——私たちの生活に直結する課題として、ヒュームは援助の正当性を「道徳・責任・共通利益」から論じる。 『貧しい人を助ける理由』を通して、貧困支援の「正しさ」と「得」をロジカルに再発見する。

初めまして!シロマサルです。

知ることで、人生はもっと楽しくなる!

今回はデイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』2017年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。

著者:デイビッド・ヒューム

1952年生まれ、マンチェスター大学国際開発学部教授、グローバル開発研究所長。英国開発学会(Development Studies Association)の会長職を2014年から2017年まで務めるなど、英国を代表する開発研究者。

ちなみに、イギリス哲学の軸となった経験論である『人間本性論』の著者:デイヴィッド・ヒュームとは異なる。あちらは1711年生まれの哲学者。


貧困とは「生きていくのに必要なものに事欠く状態」である。

デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』


「世界の貧困は私には関係ない」

「どうして遠い国の問題を放送するのか?」

そう思ったことはないだろうか?

しかし、気候変動や感染症、新型ウイルス、経済不安…。

すべては地続きで、遠くの「貧しさ」があなたの日常に影響する時代になっている。

今回は、貧困支援を「道徳」ではなく「合理性」から語るヒュームの視点をご紹介。


00000.png✅ 遠い国の貧困も、あなたの生活に関係する

✅ 道徳と利己のバランスから援助を考えよう

✅ 富裕国の安定には、貧困対策が不可欠


『貧しい人を助ける理由』

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相互連関の高まっている地球上では、「どこか遠くで」起きた問題は、あっという間に「どこにでもある」問題になるのである。

デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』

0.png遠くの貧しい人を救うことには、4つの理由があるという。

❶道徳的義務
5ドルでアフリカの子どもを救える薬を買えるのに、1杯5ドルのおしゃれなコーヒーを優先すべきか?

❷因果関係に基づく道義的責任
富裕国が出した環境破壊で貧困国の海面上昇が深刻化し、国土が減った分への経済補填。植民地支配や奴隷貿易で富を得た歴史が背景にあるのだから保証しなければならない。

❸共通利益
貧しい国と人々の所得が増えれば、増えるほど、富裕国の経済的な機会は増大する。

❹短期的な政治的・商業的利益
政治家の実績づくりやディール(取引)の結果。


また、遠くの貧しい人を救うことに対して3つの反論もある。

❶ほとんどの対外支援は無駄づかいされており、貧しい国の指導者や公務員は汚職まみれだから

❷対外援助は一部の官僚やコンサルタント、天下り業者のために計画したものだから

❸最貧国はまだしも、新興国に対して援助は必要か?

しかし、遠くの貧しい人を救うことは道徳や利己だけではない部分がある。


0000000.png329.pngハンス・ロスリング著「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」

分断本能 「世界は分断されている」という思い込み ネガティブ本能 「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み 直線本能 「世界の人口はひたすら増える」という思い込み 恐怖本能 「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み 過大視本能 「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み パターン化本能 「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み 宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み 単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み 犯人捜し本能 「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み 焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

ハンス・ロスリング著「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」

すなわち、「悪い」と「良くなっている」は両立する。


私たちはなぜ、遠くの貧しい人を助けるべきなのか?

悪いのは誰?
今まで真面目に勉強してきた学生が、ふと通りかかった家に鍵がかかっておらず、ドアが少し開いていたので、つい出来心が生じて物を盗んでしまった。🤑 この学生は警察に捕まり裁判にかけられたが、「つい出来心で」という弁解は裁判では通らない。😖  学生は有罪になり、大学も退学処分になって、就職もできず、結局心が荒んで、今度は本気で盗みに走るようになってしまった。😠  再犯で捕まると、刑務所に行く年数も長くなり、結局この学生は、刑務所を出たり入ったりする人生を送ることになった。😡 この学生の犯罪で、何人もの人が物を盗られる被害に遭った。👿 もし最初の家の人が鍵をかけていれば、この学生は道を踏み外すことはなく、まっとうな人生を歩んでいたかもしれない。🧐 いったい誰が悪いのだろうか。🤔

石角完爾 著「ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集」

0.png⇒ 因果関係が生活に返ってくるから。

遠くの国の貧困は、暴力、感染症、環境破壊となって私たちの生活に影響を及ぼす。

人類が狩猟生活から農耕社会にシフトせざる負えなくなったのは、人口爆発によるものだといわれている。

農耕社会では富や資源の保有から「職業」や「腰痛」といった健康被害が生まれた。

物々交換や相互関係の社会が薄れていくと、同じ民族でも分裂が起こる。

人類にとって、人口が増えたことは喜ばしいが、「個人」を尊重する仕組みではない。

カロリーベースでは、狩猟生活よりも農耕生活の方が安定しており、人口爆発につながる。

農耕民族の人口と定住先が増えれば、自然の狩猟民族のコミュニティは追いやられる。

結果、狩猟生活から農耕生活にシフトしていかなければならなかった。

純粋な人口の数が多いということは、「個性の強さ」である。


私たちは幸運にも島国にいる。

地続きで移民が入ってくることは難しいし、海上から渡ってくるものは事前に発見できる技術がある。

しかし、遠くの石油産出国で戦争が起これば、ガソリンや石油製品の価格が上がる。貨幣の価値や株券も価格も変動する。

遠くの国の衛生事情が悪くなり、新型ウィルスが蔓延すれば、パンデミックとなり都市部の経済活動がマヒする。

治安が悪くなれば、治安維持にかかる費用が高くなり、犯罪率の増加や自衛にかかる費用も上がる。

テロ・組織犯罪の拡散、気候変動といった課題は国境を越えて影響を及ぼす。


私たちは、誰でも貧すれば鈍するし、鈍すれば貧する。

闇バイトによる民家や証券口座の襲撃数が増えれば、防犯対策の費用増加や知り合いに被害者が出てくる確率も上がっていく。

生活保護者、年金受給者といった税金や補助金の利用者が増えれば増えるほど、国民の税負担も増えていく。


原価ギリギリでの商品しか利用されないお店は、潰れるかサービスを縮小しなければならない。

家庭内の雰囲気が悪ければ、ストレスになるし、余計な衝突やケンカが生まれるかもしれない。

国家間~1つの家庭といったどの視点(マクロ、ミクロ)から見ても、ピリピリしてていいことはないのだ。

0.png全てはつながっており、正しく因果応報である。

だが、自業自得ではない難しさがある。

だからこそ、❸共通利益としての支援が必要である。

貧困国が安定すれば、治安も改善し、経済的な市場も広がる。

支援は自国にとっても「得」になる。

しかし、悪用してはいけない。

0000000.png283.pngA・プランデンパーガー著『ゲーム理論で勝つ経営』

✅ 競争だけでなく、協調による価値創造が重要である。

✅ 他者の視点を取り入れた戦略が成功の鍵となる。

⇒ 「ビジネスはゲームであり、ルールを知る者が勝つ」


援助の限界と有効な対策とは?

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絶望的に貧しいラテンアメリカの人々は、コカイン栽培をするか、それをアメリカに密輸しようとする。 なぜなら、それ以外にまともな金儲けの機会がないからである。 その結果、中米の多くの国は不安定化し、麻薬関連の暴力の連鎖がアメリカの都市にも波及していくのである。

デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』

①発展途上国政府の経済・財政基盤の強化
(税制整備、天然資源課徴金、多国籍企業の資金流出規制など)

②国際貿易体制の是正
(先進国の保護主義的な補助金や知的財産権ルールの緩和要求など不公正是正)

③移民受け入れ促進
(出稼ぎ送金や帰国時の技術移転による貧国支援)

④教育・保健・社会保障など公共サービスの投資拡大
(市場原理一辺倒ではなく政府・市民社会の関与強化)

といった多面的戦略を展開すべきだと論じる。

援助よりも構造の改革が長期的に有効だと本書は語る。

腐敗や依存を防ぎ、現地の制度を整えるアプローチが重要である。

不正や犯罪に頼らない「正しく稼げる場や仕組み」をつくらない限り、改善したとは言えない。

⇒ 政策と援助はセットで考える必要がある。

もちろん、個人では難しい。

「平和」や「公平」にも、優先度があるのが人間である。

0000000.png340.png・岡奈津子 著『〈賄賂〉のある暮らし』

コネとカネの問題は、その広まり具合や背景は異なるものの、日本に住む私たちにとっても決して他人事ではないのである。

岡奈津子 著『〈賄賂〉のある暮らし』

✅ 賄賂は単なる不正ではなく社会の「制度」でもある

✅ 経済成長は社会を必ずしも健全にしない

⇒ 豊かさとは金だけでは測れない。

文化や常識が変わって一歩後ろに下がると、「交渉の延長線上」であり、昇給も、ボーナスも、チップも、賄賂も本質は変わらない。

腐敗にも腐敗する理由と歴史的背景がある。


・高野秀行 著『アヘン王国潜入記』

実はこの地でもアヘンを吸うのは《国家》によって禁止されている。 最初はけっこう意外な感じがしたけれども、よく考えればこれは至極当然の措置であった。 倫理的な問題ではない。 唯一最大の外貨獲得手段を無節操に消費されたらかなわないからだ。

高野秀行 著『アヘン王国潜入記』

著者自らがミャンマー北部の「ワ州」に潜入し、ケシの種まきからアヘン中毒までを体験したノンフィクション。

ルポの域を超えた「人生を賭けたフィールドワーク」は、善悪や常識が覆される一冊だが、ここで要約して紹介することはないだろう。

それ以外にまともな金儲けの機会がない状態が良くわかる書籍である。


331.png・箕曲在弘 著『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』

人を救う前には、文化や背景、歴史といった「あたりまえ」が存在する。

⇒ あたりまえの正体を知ることは、自分を変える旅の第一歩である。


では、私たち個人ではどうすれば良いのか?


貧困は絶対的でなく相対的にも広がる

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「相対的貧困」と算定される。 なぜなら国民の大半が当然のように享受しているいくつかのことーーレストランで外食する、パソコンを所有する、海外旅行をするなどーーができないからである。

デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』

貧しいというのは、遠い国の話でもない。

相対的な貧しさもある。

特に厄介なのが、「他人の注目を集める」ことに金銭がより強く絡むようになってしまった。

現代の資本主義は、人が「成功を手に入れるまで、成功しているフリをする」ことそれ自体を、1つの立派な産業にしている

モーガン・ハウセル 著『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』

支援は決して「他人事」ではない。

あなたの隣にもあるかもしれない。


私たちはちょっとした不運がいくつか重なることで、簡単に誰でも貧しくなれる。

そのために保険があり、社会制度がある。

少なくとも、江戸時代よりは救われている人数は多い。

0.png⇒ 私たちの日常に「貧困」は存在する。

この記事で言いたいのは、まず自分が貧しくならないように日々を生きていくことである。

そして、明らかに身の丈以上の富や自分の力で変えられないことは「手放す勇気」を持つことである。

あなた自身が貧困についてどんな概念を持っているかは重要である。

デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』

私たちの中に間違いなく存在する基準がある。

「支援に値する貧しい者」と「支援に値しない貧しい人」という基準だ。

この価値観の相違は、簡単に区別を生み、良い結果を招くことはない。


だから、「次の代は、私よりも良い生活を送ることができるようにする」

この点に注力しよう。

「不幸」は理不尽かつ平等に(認めたくないが)訪れる。

人の力ではどうすることもできない「不幸」には、抗うのでも立ち向かうのでもなく、「超えて行かなければならない」。

適度に、より良く生きていくことを心がけよう。

生きていくということは、常にある人々を傷つけ、別の人々を助ける。
私たちは、こうした人生の振る舞いをありのままに受け止めるしかない。
ありのままを受け止めることが人間らしさなのだ。
泣き言を言ってばかりではいけない。
泣き言を言って気持ちを整理したら、前に進むのだ。

デビッド・クラーク著『マンガーの投資術』


まとめ

リベシティ用サムネ.png✅ 遠い国の貧困も、あなたの生活に関係する

✅ 道徳と利己のバランスから援助を考えよう

✅ 富裕国の安定には、貧困対策が不可欠

我々が問うべき問いは単に「金持ち国は貧しい人を助けるべきか」ではなく、「どうすれば金持ち国は貧しい人を最も良く助けることができるか」なのである。

デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』


⇒ 支援は道徳ではなく、合理的な自己防衛でもある。

神が怒ってこの地上に大洪水を起こされた時、ノアの方舟にだけは男と女、そして動物もオスとメス一番ずつを乗せられた。 最後に「善」が方舟に乗ろうとしてやって来たが、神は「カップルでしか乗せない」と言われ「善」の乗船を拒否された。😠 そこで「善」はもう一人の「善」を連れて来たが、神は「善と善はカップルではない」と言われ、再び乗船を拒否された。🙁 😩やむなく「善」は、大嫌いな「悪」と手を繋いでやって来たところ、神は「よし」と乗船を許された。😊

石角完爾 著「ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集」


知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。

是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!

見ていただきありがとうございました!😆

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