• 投稿日:2025/09/20
  • 更新日:2025/10/01
『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』

『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』

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シロマサル@本の要約:ほぼ土曜日週1投稿

シロマサル@本の要約:ほぼ土曜日週1投稿

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要約
ゲームは偶然の楽しみではなく、緻密に設計された構造から生まれる。 本書は、ボードゲームを中心に「おもしろさ」を作る仕掛けを徹底解剖する一冊だ。 ルールや構造の背後にある「隠された文法」を解き明かし、ゲームを深く理解し、新しいデザインのヒントを与えてくれる。

初めまして!シロマサルです。

知ることで、人生はもっと楽しくなる!

今回はジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』2020年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。


著者:ジェフリー・エンゲルステーン

卓上ゲームのデザイナー。

ニューヨーク大学ゲーム学部にボードゲームデザインの客員教授として在籍し、パックス、ジェンコン、メタトピア、ゲーム開発者会議などのイベントに招待されてゲームデザインについて講演している。ゲームについて語ったり、デザインしたり、プレイしたりしないときは、医療機器を専門とする製品開発会社「Mars International」を経営する。マサチューセッツ工科大学で物理学と電気工学の理学士号を取得している。


著者:アイザック・シェレブ

本書の共著者。ボードゲームのデザイナー。

ウェブサイト「www.kindfortress.com」ではゲームデザインについても書いており、卓上ゲームのデザインパターンに関するシリーズは、ゲームデザイナーの間でも人気がある。


00000.png✅ ゲームの面白さは偶然ではなく設計されている。

✅ ルールと構造の背後に「文法」がある。

✅ その理解はゲームだけでなく現実世界にも応用できる。


本書はゲームの秘密の言語のための辞書である。 ご存じのように、ゲームと遊びは古代の人間の努力のたまものである(エジプトのゲーム『セネト』は5500年以上前のものである)が、ゲームが民族文化から文字のメディアに移行したのは20世紀になってからにすぎない。

ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』


「なぜあのゲームは夢中になるのか?」

「ルールひとつで面白さは変わるのか?」

そんな疑問を抱いたことはないだろうか。

元は『Building Blocks of Tabletop Game Design』という古今東西に数多あるボードゲームを、要素(メカニクス)ごとに体系化した、ボードゲームの論文・辞典を邦訳したものである。

ボードゲーム好きだけでなく、ビデオゲームなどすべてのゲームデザインに関わる人にとって重要な参考書として評価され、すでに第2版が出ている。

L.png2020年の初版に続き、第2版では新たに19のメカニクスが追加されて、幅広いゲームデザイナーやプランナーに役立つ知識体系を提供している。

もちろん、これを読めば面白いゲームを作れる訳ではない(笑)


私たちが現実のマネーゲームやスポーツ、あそびに夢中になる(なった)のは「かけひき」があるからである。

ビジネスモデルだろうが、制度の組み合わせや仕様の穴を突いた悪用も「面白いから」行われる。

ボードゲームという、何百億円を失っても笑うことができる「かけひき」はそうないものである。

ちなみに百科事典なので、5000円はしないものの、中々高価である。


『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』

Image_fx (7).jpgボードゲームの良いところは「アレンジ」ができることだ。

子どもたち同士で遊びを「こうした方がもっと面白くなる!」とトライ&エラーできる余地がある。

そして、最初のルールがいかに考えられていたのかを知るのだ。

厄介で混乱を招くことがある。ひどく残酷だったり、とても創造的だったり、意外に美しかったりもする。あなたが知らなかった心の一部をくすぐる会話、あなたを虜にする会話、知り合いを厳しいライバルに変え、後に親友に変える会話もある。 しかし、ゲームは単なる言語ではない。 それよりも複雑である。

ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』

ゲームは「言語」である

Image_fx (8).jpg顔と顔をずっと合わせずに、ボードだけを見ていても会話ができる素敵なツールなのだ。

あなたはある意味、会話を始めている。 ゲーム中に打つ一手一手は、相手に対して自分自身を表現する方法、つまり意味を作る方法である。無謀な侵略や内気なブラフも、貪欲な収奪も防御のための時間稼ぎも、そのゲームの言語による単語であり、成句であり、声明である。

ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』

0.png⇒ プレイヤーの一手一手は、意味を持つ会話である。


ゲームはただの娯楽ではなく、一種のコミュニケーションツールだ。

プレイヤーの一手一手は、無言のメッセージであり、対戦相手との会話である。

たとえば、チェスでポーンを一歩前に進める。

それは単なる駒の移動ではなく、

「このラインを制圧するつもりだ」という意思表示といえる。

カードゲームでブラフを仕掛けるとき、

それは「あなたは私を信じるべきだ」という心理戦のメッセージになる。

本書は、この“ゲームの言語”を支える「文法」=メカニクスを体系的に解説している。


おもしろさのDNAを探る

Image_fx (1).jpg何が面白いのかわからない時が一番面白い。

卓上ゲーマーにとって今ほどよい時代はないだろう。
愛好家は『カタン』と『マジック:ザ・ギャザリング』が台頭した1990年代半ばがゲームの黄金時代だったのか、それとも今日が黄金時代なのか議論している。
あなたの個人的な見解が何であれ、現代の卓上ゲームは非常に肥沃な時期にあり、繁栄していることは間違いない。

ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』

0.png⇒ ルールと構造はゲームの骨格である。


なぜ、モノポリーは長時間遊ばれても飽きないのか?

なぜ、カタンはプレイヤーを交渉の渦に引き込むのか?


答えは、ルールと構造の組み合わせにある。

・勝敗条件

・プレイヤー間の関係性(協力・競争・裏切り)

・資源管理や交渉などの要素

・運と戦略のバランス


これらが絶妙に絡み合い、「遊びのDNA」を形成する。

例えば、サイコロを振るだけのゲームは、完全に運任せで戦略性がないと飽きやすい。

逆に、将棋のように情報が完全公開されると、

「実力差が大きく出る=初心者は負け続ける」ため、敷居が高くなる。


つまり、運と実力の黄金比をどうデザインするかが、

ゲームの面白さを決定づけるのだ。


ゲームは心理と戦略が交差する世界

Image_fx (5).jpgボード上の国ならいくら滅ぼしても、楽しい物語で終わることができる。

本書は私たちが大好きなゲームを、新鮮な目で見るのを助ける虫眼鏡であり、システムの複雑さに関する高度なセミナーであり、創造的なプレイのレシピ満載の魔法の本である。

ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』

0.png⇒ 数学と心理学がゲームを支配する。


ゲームには「計算」と「心理戦」が共存している。
ここで重要なのが、プレイヤーの意思決定を揺さぶる仕掛けだ。

たとえば、オークション形式のゲーム。
「欲しいけど、相手の出方がわからない」
このドキドキ感は、人間のリスク選好を刺激する。

さらに、囚人のジレンマのような協力ゲームでは、
「裏切った方が得かもしれない」
という心理と倫理の葛藤が発生する。

数値上の最適解と、人間らしい感情のせめぎ合い
これこそが、ゲームを面白くしている。

確率やランダム性の背後には、囚人のジレンマや外交術が潜む。

戦略の選択は心理戦そのものだ。


完全に趣味の世界なので、知らない単語や作品名も多いと思うがご了承いただきたい。

0000.png1. 資源管理(Resource Management)系

① ワーカープレイスメント(Worker Placement)

仕組み:自分のコマ(ワーカー)をボード上のアクションスペースに配置し、資源を得たり行動を実行する。

代表例:『アグリコラ』

面白さのポイント
→ 限られたアクションをどこに割り振るかの最適化。
→ 他プレイヤーとの「場所の取り合い」による緊張感。


② エンジンビルディング(Engine Building)

仕組み:序盤は弱いが、資源やカードの組み合わせで「効率的な生産サイクル」を構築する。

代表例:『テラフォーミング・マーズ』

面白さのポイント
→ 「雪だるま効果」で少しずつ強化される快感。
→ 最適なコンボ発見の楽しさ。


2. カード・デッキ構築系

③ デッキビルディング(Deck Building)

仕組み:ゲーム中に自分の山札を強化し、戦術をカスタマイズする。

代表例:『ドミニオン』

面白さのポイント
→ 「ランダム性」+「構築戦略」の絶妙なバランス。
→ ドローの運と計画性の駆け引き。


④ ハンドマネジメント(Hand Management)

仕組み:持っているカードをいつ・どの順番で使うかを最適化する。

代表例:『バトルライン』

面白さのポイント
→ 相手の出方を読む心理戦。
→ 手札制限の中で最適解を探すジレンマ。


ここにあげた仕組みはほんの一部であり、現実の仕組みを簡略化したものもある。

品薄になればメルカリで高く売ることができると判断して買い占めるのも、金融商品の特性を組み合わせて毎月配当金や分配金を得るのも、自分にあるスキルを組み合わせて副業するのも「人生」という大きなゲームの中にある仕組みだ。

だから面白い。

「リソース」という用語は、建物や無形物ではなく、「お金」や「品物」を指す。 エコノミー(経済学)とは、希少なリソースの配分に関する学問である。ビジネスと経済学の多くの側面がボードゲームのメカニクスに適用されていることは驚くべきことではない。

『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』

借金というメカニズムもしっかり紹介されている。

IMG_7060.jpeg出典:『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』


ゲームデザイナー目線から見ても、借金(ローン)は取り扱いが難しいのである。

このメカニクスはプレイヤーから選択肢を奪い、負けているプレイヤーの「死へのスパイラル」を不必要に長く、遅く延長させてしまうと明確に語っている。

作り手側が良いと思っていない仕組みに飛び込んではいけない。


0000000.png253.pngロバート・B・チャルディーニ著『影響力の武器[第三版]』

心理学とは「かけひき」である。

ゲームなら良いが、ずるい相手が仕掛ける“人の弱味を突く戦略”でもある。

日常生活でのトラブルを招くこともあれば、こちらが賢く利用する技術でもある。

ブラフ(はったり)に騙されて大金を失ってはいけない。


学びはゲームを超える

Image_fx (6).jpg社会問題も面白く解決できるほうが楽しい。

本書の洞察とアイデアは、ゲーム外にも応用できる。
議論で2つの立場がはっきり対立しているとき、どのように解決できるか?
複数の候補者がいる選挙で、当選者をどのように決定するべきか?
どのような経済的インセンティブがあれば富の分配が一番うまくできるか? 
すべての人に公平性を保証する正しい方法は何か?  これらは現代社会のジレンマであり、ゲームデザイナーが日常的に取り組む問題でもある。

ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』

0.png⇒ 構造理解は社会問題解決のヒントになる。

「所詮ゲームでしょ?」と思うかもしれない。
だが、ゲームメカニクスの理解は、ビジネスや社会問題の解決にも役立つ。

投票制度 → 複数候補がいる場合、票割れをどう防ぐか?

インセンティブ設計 → 会社で「サボらせない仕組み」はどう作る?

行動経済学 → ポイント制度やランダム報酬でモチベーションを高める方法


実はこれらすべて、ゲーム理論と同じ発想で設計できる。
つまり、ゲームの世界を学ぶことは、現実世界をより良くするためのトレーニングでもある。

投票制度やインセンティブ設計など、ゲーム理論はビジネスや政治の現実課題にも応用可能である。

仕事をおもしろくするゲーム性にもつながるかもしれない。

シングルルーザー(1人負け)ゲームは、「他の全員よりもよい」パフォーマンスを目指すのではなく、「少なくとも他の誰か1人よりもよい」パフォーマンスを目指すようにインセンティブを与えることで、台本の意味を反転させてくれる。
クマに追いかけられた老人でも、「友人より速く走る」ことができれば「クマよりも速く走る」必要はないように、このようなゲームは自分自身を進めることよりも他のプレイヤーを邪魔することに強い動機を持たせる。
この構造を持つ有名な古典カードゲームは『ババ抜き』である。

ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』


0000000.png283.pngA・プランデンパーガー著『ゲーム理論で勝つ経営』

⇒ 「ビジネスはゲームであり、ルールを知る者が勝つ」


デザインの黄金ルール

Image_fx (9).jpgこの本を読むと何らかの「仕組み」をつくりたくなってしまう。

各項では、メカニクスによって異なるプレイヤー経験を生み出す方法や、これらのメカニクスが用いられるゲームのタイプ、実装する際のよくある落とし穴、およびこれらのメカニクスによって生じる実際的なユーザーインターフェイスの問題についても説明する。

ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』

0.png⇒ 「偶然の面白さ」も設計できる。

最後に、本書が教える本質はシンプルだ。
「おもしろさは、偶然ではなく設計できる」。

サイコロの目でさえ、面白さを生むために意味を持たせる。
資源の配置、報酬のタイミング、プレイヤー間の情報格差…。
こうした微細な設計が、「中毒性」と呼ばれる没入体験を生む。

ページをめくるたびに、「あのゲームはこういう仕組みだったのか!」と膝を打つ発見がある。

デザインの視点を手に入れれば、ただのプレイヤーから、クリエイターの脳にシフトできる。

本書はゲームデザインの教科書であり、創造的なアイデアの宝庫。

ページを開けば、新しい仕掛けが見つかる。

そして繰り返すが、これを読めば面白いゲームを作れる訳ではない(笑)


0000000.png88.pngダンカン·ワッツ著「偶然の科学」

⇒ 成功は運とタイミングの産物である。

だが、正しい検証と試行回数が多ければ、成功できる。

とにかくいろいろやれば、どれかが当たる。

「ぼくも前から思っていたんだが、実は何ひとつわかっていないのにわかっている気分になるために、人々はありとあらゆるばかげたことを信じている」

ダンカン·ワッツ著「偶然の科学」


まとめ

リベシティ用サムネ (1).png✅ ゲームの面白さは偶然ではなく設計されている。

✅ ルールと構造の背後に「文法」がある。

✅ その理解はゲームだけでなく現実世界にも応用できる。

ゲームは1つの言語である。

ジェフリー・エンゲルステーン/アイザック・シェレブ著『ゲームメカニクス大全 ボードゲームに学ぶ「おもしろさ」の仕掛け』


⇒ ゲームの魅力は偶然でなく、文法と構造に支えられている。


そして最後に一つだけ。

この本を読んだからといって、ゲームの勝率が上がるわけではない(笑)

勝てないときは、本当に勝てない。

それがこの上なく、面白いのだ。😆


知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。

是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!

見ていただきありがとうございました!😆

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