- 投稿日:2025/10/12
初めまして!シロマサルです。
知ることで、人生はもっと楽しくなる!
今回は田崎基著『ルポ 特殊詐欺』2022年発行をつまみ食いします。まさに超、超、要約。おもしろいので興味があれば読んでみましょう。
著者:田崎基(たさきもとい)
1978年生まれ。神奈川新聞記者。デジタル編集部、報道部遊軍記者、経済部キャップ、報道部(司法担当)を経て、現在報道部デスク。憲法改正問題、日本会議、経済格差問題、少子高齢化問題、アベノミクス、平成の経済などを担当し、取材を続けている。参画した神奈川新聞『時代の正体』取材班が、2016年度JCJ賞受賞。
✅ 特殊詐欺は「一部の犯罪者」ではなく社会構造の産物である。
✅ 若者が加害者になる構造的な背景を理解せよ。
✅ 被害防止には、若年層への啓発と法改正が不可欠である。
特殊詐欺を取り巻く状況は年々深刻化していると言っていい。
新聞社の報道部に身を置き、事件の取材をしている。
事件は発生の第一報から、逮捕、送検、起訴、公判と続き、判決が下される。
凶悪な緊縛強盗致傷事件を引き起こした男が、実は特殊詐欺の末端を担当していた男で、やがて組織に追い詰められ、やむにやまれず犯行に及んでいたこと。
その詳細な組織とのやりとりを知ると、事件のありようは全く違って見えてくる。
田崎基著『ルポ 特殊詐欺』
「闇バイトで高収入」――その一言が、あなたの人生を壊すかもしれない。
SNSを通じて若者を犯罪の末端に引き込む特殊詐欺。
一方で被害者は増え続け、法整備の遅れが問題となっている。
今回は、田崎基氏の『ルポ 特殊詐欺』をもとに、社会の歪みと人間の弱さが生む犯罪構造を読み解く。
ニュースというのは、「新しい情報」だから報道される。
報道されなくなったからといって、被害がなくなったわけではない。
当たり前のように存在し、警戒することに越したことはない。
これからは、映像や音声に正しさを保証できない世界なのだから。
『ルポ 特殊詐欺』
なに、簡単さ。君が直接強盗するわけじゃない。リスクは低いよ。
引用画像:田崎基著『ルポ 特殊詐欺』
2021年に発生した特殊詐欺の1日あたりの平均被害額は、約7730万円に上ると語る。
社会全体で考えても、その損失は大きい。
一人の悪人が起こした凶悪事件という一面的な評価から、社会構造を背景とした究極的な事案なのではないか。
あるいは、組織構造を俯瞰すると、弱者が弱者を叩き、虐げ、脅迫することで起こされ、その最下層の男による犯行だったのではないか。
こうして一つの事件が、多面的、多層的にみえてくる。
田崎基著『ルポ 特殊詐欺』
2022年までの情報なので2025年は8月末時点までの特殊詐欺の認知件数・被害総額もAI(パープレキシティ)にお願いして調べてみた。
もちろん、間違いがあるかもしれないので、参考程度で見てほしい。
手口には「オレオレ詐欺」や「架空請求」「還付金詐欺」などが含まれ、高齢者が主な被害層だが、直近では若年層への被害増加やSNSを利用した新手口も発生しているため、特殊詐欺を取り巻く状況は年々深刻化していると言っていいだろう。
特殊詐欺の構造――進化し続ける犯罪の再現性
最近の特殊詐欺はブロックチェーンのように複雑化している。
「特殊詐欺」とは、警察庁の定義によると「被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座へ振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝も含む)の総称」とされる。
田崎基著『ルポ 特殊詐欺』
⇒ 「昔の手口」が現代技術で再生産されている。
特殊詐欺は、一度衰退したかに見えながら、再び社会の表舞台に戻ってきた。
オレオレ詐欺、還付金詐欺、架空請求――それらは「古い犯罪」として忘れ去られたわけではなく、デジタル社会の仕組みに合わせて形を変え、より効率的に、より匿名性を高めて復活した。
その背景には、二つの構造的要因がある。
一つは高齢化社会。高齢者の孤立やデジタルリテラシーの低さが、詐欺グループにとって格好の標的となっている。
もう一つはテクノロジーの進化。通信アプリや暗号資産を駆使すれば、詐欺の“実行から資金洗浄まで”が容易に行える。
さらに恐ろしいのは、これらの犯罪が「再現可能なビジネスモデル」として確立してしまったことだ。
大きく分けると9種類にもなる。
①「オレオレ詐欺」
②「預貯金詐欺」
③「架空料金請求詐欺」
④「還付金詐欺」
⑤「融資保証金詐欺」
⑥「金融商品詐欺」
⑦「ギャンブル詐欺」
⑧「交際あっせん詐欺」
⑨「キャッシュカード詐欺盗」
マニュアル化された台本、分業化された指示系統、クラウド上で管理される口座情報――まるで企業組織のような効率性を持ち、模倣犯を次々と生む。
もはや「一部の悪人の犯罪」ではなく、「誰でも再現できる犯罪の仕組み」へと進化しているのだ。
若者が「加害者」になる時代
時給や労働条件の相場観を知らなければ、その奥にある悪意に気がつけない。
スマホを手にし始める中高生は、特殊詐欺で末端のリクルートに利用されているツイッターへも容易にアクセスできる年齢となる。
SNSの適正な使い方とともに、特殊詐欺の入り口の気軽さと恐ろしさを啓発してしかるべきである。
田崎基著『ルポ 特殊詐欺』
⇒ SNSが犯罪の入口となり、無知が加害を生む。
「1日3万円」「即日現金」「在宅で稼げる」――。
こうした文言に惹かれ、SNSの闇バイトに応募してしまう若者が後を絶たない。
彼らが知らぬ間に関わっているのは、詐欺の「末端作業」。
被害者から金を受け取る「受け子」や、口座から引き出す「出し子」と呼ばれる役割だ。
実際、警察の摘発記録を見ると、10代後半から20代前半の加害者が急増している。
多くは「バイト感覚」「すぐ辞めれば大丈夫」という軽い意識で関与してしまう。
だが実際は、初犯でも実刑が下るケースが多く、犯罪歴が一生残る。
重要なのは、彼らが「悪意ではなく無知から犯罪に巻き込まれる」という点だ。
被害を受けた高齢者に「騙されてしまった」という精神的屈辱を与えてしまう点も忘れてはいけない。
騙されたと気付いても被害を申告しない高齢者もいる。
逮捕した被疑者が自白し、その裏付け捜査で警察官が調べたところ、被害が発覚した事案もあった。
田崎基著『ルポ 特殊詐欺』
経済的困窮、孤独、社会的疎外感――そうした弱さを突かれて加害者へと変わる構図は、もはや個人のモラルだけで防げる問題ではない。
特殊詐欺は、「加害者=悪人」という単純な図式では語れない。
むしろ、無知の連鎖が、若者を「使い捨ての駒」として犯罪の歯車に組み込んでいるのだ。
しかし、無知を破るのは相場観であり、相場観は致命的にならない失敗を何度もしないと身につかないジレンマがある。
社会が生む無力感と、その先にある希望
いつの時代も、誰かに認められて、社会的つながりを持ちたいだけだった。
高齢者へ「だまされないで」と啓発するのと同じように、むしろそれ以上に若年層への啓発が欠かせない。
捜査関係者は「徹底的に末端を摘発する」と憤怒を込めて言う。
逮捕されるのはいつも末端の若者たちだ。
初犯でも悪質な場合は実刑判決を受ける。
田崎基著『ルポ 特殊詐欺』
⇒ 弱者を責める前に、社会の構造を変えなければならない。
特殊詐欺が20年を経ても根絶できない理由の一つに、法整備の遅れがある。
現行の刑法では「詐欺罪=10年以下の懲役」とされており、犯罪の規模や組織性を十分に裁く枠組みが整っていない。
詐欺は詐欺であって、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役」(刑法第246条)である。下限は定められていない。財産犯は、生命、身体への侵害に比べて、回復困難とまではいえないため、傷害(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)や、下限が定められている強盗(5年以上の有期懲役)と比べて、軽い法定刑が定められているという特性もある。
田崎基著『ルポ 特殊詐欺』
裁判官の酌量に依存する現状では、再犯防止や組織壊滅の抑止力が働きにくい。
さらに、啓発の焦点もずれている。
「だまされるな」という高齢者向けのキャンペーンは多いが、いま本当に必要なのは若年層への警告だ。
「だます側にならないように」という教育こそが、社会全体の免疫を強化する鍵になる。
とはいえ、単に罰則を強化し、道徳を説き、受け子としてやってきた男を「詐欺未遂」で逮捕するだけでは解決には至らない。
特殊詐欺に詳しい捜査関係者は言う。
「これでは詐欺未遂罪でしか送検できない。被害がまだ発生していないので、刑は当然軽くなる。被疑者がその事案しか供述しなければ、不起訴になる場合も少なくない」
田崎基著『ルポ 特殊詐欺』
必要なのは、「なぜ人は詐欺に加わるのか」「なぜだまされるのか」を冷静に見つめ、社会全体で初犯と再発を防ぐ仕組みを設計することだ。
SNS企業による監視強化、学校教育での情報リテラシー授業、孤立する若者への支援は一見地味で時間はかかるが、最も有効な対策である。
悪いのは誰? 今まで真面目に勉強してきた学生が、ふと通りかかった家に鍵がかかっておらず、ドアが少し開いていたので、つい出来心が生じて物を盗んでしまった。 この学生は警察に捕まり裁判にかけられたが、「つい出来心で」という弁解は裁判では通らない。 学生は有罪になり、大学も退学処分になって、就職もできず、結局心が荒んで、今度は本気で盗みに走るようになってしまった。 再犯で捕まると、刑務所に行く年数も長くなり、結局この学生は、刑務所を出たり入ったりする人生を送ることになった。 この学生の犯罪で、何人もの人が物を盗られる被害に遭った。 もし最初の家の人が鍵をかけていれば、この学生は道を踏み外すことはなく、まっとうな人生を歩んでいたかもしれない。 いったい誰が悪いのだろうか。
石角完爾 著「ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集」
最終的に問われているのは、「誰が悪いのか」ではなく、「私たちは何を変えるのか」である。
特殊詐欺の問題は、社会の鏡である。
日本の家計の金融資産約2000兆円の約7割を世帯主が60歳以上の世帯が保有し、資産の内訳は現金と預金がその半分を占めている。
なぜそうなるかというと、負債額が最も多いのは40歳未満の世帯となっている。
現役時代には住宅ローンを中心に借金して生活を営み、退職金でローンを完済して、負債が一気に減り貯蓄が増える。
参考:橘玲著『新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ』
だから60歳以上になると負債が激減し、貯蓄残高が急増するという全体的な動きである。
「貯蓄できていない」ということは私たちが思っている以上に危険性を持っている。
これからよりインフレ株高が進み、資産を持つ者の資産は増えやすくなれば、短絡的な犯罪や詐欺が増えていく。
行き過ぎた格差は、必ず社会全体が不幸になる。
「もうどうなってもいいや」と本気で思う人間が100万、1000万人となれば、収容する刑務所は足りないし、経済や生活も今のようにできなくなる。
そこに映るのは、弱者を救わずに放置してきた私たち自身の姿なのかもしれない。
個人で出来ることは、「変な情報には近寄らない、近づけない、持ち込まない。」「赤字にならない。」「健康で正常な判断能力を維持する。」
このあたりだろう。
人間は周囲や環境に流されやすい。
ほんの少しでも誰かに魔が差さないように無防備であってはいけない。

カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』
Sora2を私は早い段階でたまたま触ることができた。
動画にはAI動画であることを示す透かしが入るのだが、web上のAIサービスで簡単に消せてしまうのである。
一般に開放されている技術で高いレベルの捏造が3分とかからずにできるなら、本当の最先端は人の目を騙すレベルに十分到達している。
「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」
そこに人間の悪意が乗れば、いともたやすく人は悪魔になれる。
ディープフェイクの作成とその検出のいたちごっこは軍拡競争と同じだ。 コンピューターの計算力をより多く使える方が勝つ。
カイフー・リー/チェン・チウファン著『AI 2041』
上流層はAIを「仕事」や「学習」のために使う。
そうでない人達は、AIを「娯楽」のために使うか、使わない。
そして、一部の人間はAIを「詐欺」のために使う。
魔が差さない人間はいないと考えよう。
デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』
遠くの国の貧困は、暴力、感染症、環境破壊となって私たちの生活に影響を及ぼす。
同じ国ならその影響はより素早くなる。
私たちは、誰でも貧すれば鈍するし、鈍すれば貧する。
相互連関の高まっている地球上では、「どこか遠くで」起きた問題は、あっという間に「どこにでもある」問題になるのである。
デイビッド・ヒューム著『貧しい人を助ける理由』
マルコム・グラッドウェル著『急に売れ始めるにはワケがある』
本書では、背景の力を活かしているとも語られる。
「何をしても良い」と思われる環境では、人を犯罪へ向かわせる。
1980年代後半のニューヨークは物騒な犯罪都市だった。
特に地下鉄は荒れ放題・落書きだらけ・犯罪多発ゾーン。
至るところで窓ガラスが割れている無法地帯の雰囲気は「ここでは何をしてもいい」と思わせて犯罪を誘発すると考え、地下鉄の落書きや軽犯罪を徹底的に取り締まった。
落書きされても毎日その上から何度も塗り潰す。
「落書きは絶対許さない」という強いメッセージを伝え、無賃乗車も厳しく罰した。
この戦略を活用して、ニューヨーク市全体で展開して犯罪は激減した。
流行るかどうかは、時期と場所の条件や状態で大きく変わるというのが背景の力。
または、割れ窓理論(ブロークンウィンドウ理論)という社会学の理論。
軽微な問題や秩序の乱れを放置すると、それがエスカレートしてより深刻な問題や犯罪を引き起こす。
アイディア、製品、メッセージ、行動などはウィルスのように広がっていくのである。
マルコム・グラッドウェル著『急に売れ始めるにはワケがある』
まとめ
✅ 特殊詐欺は「一部の犯罪者」ではなく社会構造の産物である。
✅ 若者が加害者になる構造的な背景を理解せよ。
✅ 被害防止には、若年層への啓発と法改正が不可欠である。
私たちの社会が対峙している「特殊詐欺の害悪」は根深い。
本書を読んだ後に、いまも身の回りで日々絶え間なく起きている被害と加害に思いを巡らせてもらえたら、それが抑止の一助になるに違いない。
田崎基著『ルポ 特殊詐欺』
⇒ 「人を欺く社会は、いずれ自らを欺く」
忘れてはいけない。ニュースで聞かなくなったからといって犯罪がなくなったわけではない。
今もどこかで、特殊詐欺は行われている。
「無関係」と思った瞬間、あっという間にあなたは「被害者」になるのだ。
知識や見聞は、いずれ力になってくれると教えてくれます。
是非、皆様のより良い人生の選択肢が増えますように!
見ていただきありがとうございました!😆
